中川口閘門…1

(『堀川口防潮水門…4』のつづき)

206046.jpg次に目指したのは、中川運河南端。いわずと知れた、名古屋を代表する運河の玄関口であります。目的地は西岸なので、どこかで運河を渡らなければならないのですが、迷わず第一橋である中川橋をえらびました。

中川橋は、運河開鑿に合わせ昭和5年に竣工した美しい鋼タイドアーチ橋ですが、橋を横にずらせて活かしつつ、橋台の更新をするという数年来の大工事中。

今年2月、新橋台の工事がようやく成って、元の位置に納まったばかり。まだ開通はしておらず、引き続き下流側に設けられた仮橋が、道路として供されていました。

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西岸のテラスから見たところ。まだ真新しい、真紅の塗装が目に沁みるよう。やはり橋や水門は、赤系の色に限りますねえ。ここまで手間をかけて、昭和初期の橋を現役に留めるところが素晴らしいです。背景に見える大観覧車は、臨海部の遊園地「シートレインランド」のもの。運河や閘門が一望できそうですね、後で行ってみましょう。

工事については、「中川橋(中川運河)架け替え工事」(『アレコレコレクション』さんより)が、この5年間の様子を豊富な写真で記録しておられ、一見の価値あり。

206048.jpg中川橋を眺めている同じ位置から、180度向きを変えると、北側はるか向こうに見えるのが第三の目的地、中川口閘門! いや~、積年の念願かない、ついに訪ねられたと感慨もひとしおです。

せっかくですから、久しぶりに「運河論」(矢野剛著・昭和10年)をひもといて、「第十款 中川運河」の項目より、少し引用させていただきましょう。漢数字の使い方は原文ママです。

本運河は大正一三年一一月都市計畫事業として開設確定し、運河法に依る免許を受け、名古屋市に於て大正一五年度から起工し、昭和七年一〇月一日竣功し、同年一二月二〇日から開通して居る。

諸元が列挙されている中から一つ、興味深いのは料金設定。
閘門通航料‥‥船舶一入河に付噸數に依るものは一噸に五銭以内、石數に依るものは一〇石まで毎に八銭以内、間數に依るものは一間に付八銭以内
このころは、和船式の積載量である「石」や、間尺で容積を示す艀が多かったことをうかがわせ、惹かれるものがあります。

中川運河は、名古屋港で瀬取りした艀を、直接笹島貨物駅隣接の船溜まで乗り入れさせ、併せて沿岸に製造業・物流業を誘致し、商工業地帯としての発展を図るものでした。つまり、鉄道と舟運の効率的な結節が目的の一つだったわけです。

関東にも、近い性格の新規開鑿運河がありました。京浜工業地帯の草分け的埋立地である安善町・末広町から、京浜電鉄(現京浜急行)の八丁畷駅までを結んだ川崎運河(大正11年竣工、延長1350間=約2.5km)です。過去ログ「京浜運河を散策する…2」でも少し触れましたが、大半は埋め立てられたものの、現在その一部が旭運河となって残っています。

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さて、テラスをずんずんと肩をいからし鼻息荒く北上し、ほど良いところでぐっとズームして、ゲートをアップで一枚。扉体直上に管理橋が渡され、その上に機側運転室らしいボックスを重ねている独特の風貌。信号が位置的に前照灯のようで、どこかラッセル車を思わせる面構えだなあ、というのが第一印象でした。

ちなみにこの閘門、運河竣工当初からのものではありません。このシリーズの冒頭でも紹介した「中川運河」にも述べられているように、「中川口第二閘門」として昭和38年に竣工したもの。元からあった第一閘門は平成3年に廃止、跡地に中川口ポンプ所が設けられ、現存していません。

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閘門からぐっと右端まで振って、排水機場のゲートらしい部分を同じくアップで。この7径間あるアーチの部分は、どうやら竣工当初からのもののようですね。昔の絵葉書や史料がいくつか手持ちであるので、後ほどまとめて掲げ、現在の写真と比較して楽しんでみましょう。

左端に見える「放水注意」の看板が、黄色いランプを交互に点滅させていたので、排水機場が運転していたのかもしれません。
撮影地点のMapion地図

(29年5月3日撮影)

(『中川口閘門…2』につづく)

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タグ : 中川運河 中川口閘門 閘門

堀川口防潮水門…4

(『堀川口防潮水門…3』のつづき)

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高欄にもたれて水門を眺めていたら、ヌッ、といった感じで突如船が出現、驚かされました。
うおおお、本船だ!

回転数を押さえていたせいか、爆音も直前まで聞こえず、不意を突かれたと同時に大喜び。これで、マイタゲートの本領発揮の瞬間、本船の通航が拝めるんだと!

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船名は「さんこう金栄」。見たところ、東京港でいう「えど」のような集油船のようでしたが、いかがでしょうか。船橋の横にもタイヤのフェンダーを備えているあたり、大型の本船に接舷する用途が垣間見えます。

引き波もほとんど立たないくらいの最微速で歩かせながら、軸線は右から2番目の下航径間にピッタリと合わせ、すでに通航の構え。ちょっと緊迫するような雰囲気に、こちらも息を呑みながら船尾を正面に見る位置に移動。これはイイ瞬間に出くわせたものだ‥‥。

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船首が径間の下流側をかわった刹那、爆音が高まって、プロペラ後流が白く泡立ちました。

船橋を備え、マストを高々と上げた船が水門をくぐる、しかもそれを俯瞰できる幸せ! いや~、最高ですわ!

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206045.jpg後流がさらに盛り上がり、「さんこう金栄」は軽く面舵に当てて、港内へ向け行き足を上げ離脱。わずかな滞在時間に、マイタゲートの本領を発揮したシーンを拝めて、まことに幸いではありました。

最後にポンプ所の説明板をカメラに収めて、慌ただしく次の物件へ。名古屋を代表する舟航施設といってもいい過ぎでない、アレを前にしてさらにテンションが上がります!

(29年5月3日撮影)

(『中川口閘門…1』につづく)

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タグ : 堀川口防潮水門 堀川

堀川口防潮水門…3

(『堀川口防潮水門…2』のつづき)

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水門を正面にして、初めて見えたものもありました。ポンプ所の影に隠れていた、名古屋海上保安部の巡視艇基地が姿を現わしたのです。

マイタゲートの向こう、岸壁に切られた船溜の凹部に、たくさんの船艇がもやっていました。写真右、接岸している放水銃を備えた巡視艇は、PC23「あゆづき」。消防能力を強化した艇ですね。

206037.jpg5径間のうち、唯一のローラーゲートがこの「排水水門」。全開で水面からの高さがご覧の状態ですから、この径間の通船は考えられておらず、その名のとおりあくまで全閉時の排水を担う径間です。

水門の内外に水位差のある、水圧下での開閉が難しいマイタゲートは、どうしてもこのような「ひと手間」が必要になってしまうのは、致し方のないところ。今なら、セクターゲートで両者を兼ねさせることもできるでしょう。

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こうしてアップで眺めてみると、寄る辺のない水面にぽつりと孤立する姿は、寂しげな中にもどこか可笑しみがありますね。このゲートが真ん中に立っていることが、この水門に独特の魅力を醸し出しているように思えます。

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たびたび水門から離れてしまい、恐縮です。すぐ上流側の東岸に、こんな横堤があるのが目に入っていました。コンクリートの風化具合と、大きな木が生えてしまっていることから、使われなくなって長い時間が経ったことをうかがわせる、廃墟然とした雰囲気。気にならないはずはありません。

岸壁としては、防潮堤がそのまま岸から伸びて、基部を巻いているあたり、形がちょっと変。防波堤としても中途半端だし‥‥。先端の形からして、この先に桟橋でも伸びていたのかしら。

下写真、対岸である西側にも、気になる横堤が。こちらは半ば崩れているようでもあり、この横堤を挟んで、一つづつ橋台跡のようなものが見えるのも気になりました。う~ん、これは何かがかつて、ここにあった(あたりまえだ)痕跡のようですね。

206040.jpg帰宅後に検索してみて、まあびっくり。これは、旧港新橋の橋台跡だったのです! 先代橋は、私の好みど真ん中の、何と単葉式跳開橋! 写真は「堀川を行く4-宮の渡し跡~名古屋港」をご覧ください。

上記サイトによれば、昭和7年竣工とのこと。「当時の面影はありませんが、かろうじて 名残をとどめる橋脚の基礎が残っています」とあり、写真から判断して、東岸のものが跳開橋の橋台のようですね。いや、嬉しい余禄でした。

(29年5月3日撮影)

(『堀川口防潮水門…4』につづく)

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タグ : 堀川口防潮水門 堀川 巡視艇

堀川口防潮水門…2

(『堀川口防潮水門…1』のつづき)

206031.jpg橋上から見て一番左のマイタゲート、閉じていますね。工事中らしく扉体上に作業員の方がおり、手前には角落しがはめられて、パイプから排水されています。

開いて戸袋にはまっていると、扉体のディテールが見づらいので、閉じていたのはある意味幸い(ごめんなさい)ではありました。ああ、いいなあ、閘門でない、マイタゲートの水門って。


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スキンプレートを裏側から支える構造は、思ったより華奢な感じに見えました。筋交のチャンネル材には平角材がはめ込まれ、フェンダーを兼ねているようです。

天端を歩いてきた作業員の方が、靴にビニールのカバーをしているところを見ると、再塗装をしているのでしょうか。扉体が浸かりっぱなしのマイタゲートは、ローラーゲートにくらべて痛みやすく、扉体の保守にも手間がかかりますから、管理する皆さんのご苦労が察せられます。

扉体右端、天端で90度曲がり、構造を貫く配管がされているのは何でしょう。扉体運転時に空圧でジャッキアップするとか、またはシェル式の水密区画があって(下にそれっぽいものが見えますよね!)、浮力をつけて動かすとか、妄想がふくらんでしまいます。

206033.jpgここで、下航船が出現! 高さのない小型船とはいえ、通船シーンが撮れると思わずニンマリです。

カメラを向けていて楽しくなるような、カラフルな塗装の小型曳船タイプ。「きよかわ」という船名と、「港や川をきれいにしましょう」の標語、タモ網や船尾のゴミ入れらしい箱から、東京でいう「手上げ」の清掃船では、と思いました。


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一番右の「下航」、「巾15M徐航」と大書きされた径間を通る「きよかわ」。やはり「通航水門」、通る船と一緒に在ってこそ、イキイキとした表情が拝めるというものであります。

そうそう、写真中央上に写っている「旧1・2号地間運河可動橋」、こちらも寄ってみたかったのですが、今回は余裕がなく、残念ながら見送りました。がーちゃんフォトアルバムVol.2名古屋港跳上橋」によい写真があります。

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水門正面にたどりついたので、改めて全景を。東京では見られない、空に抜けた雄大な水門風景に感動。

両岸から長く横堤が伸び、中央に5径間の防潮水門が配されているのがわかります。左手の建物は、排水機場である堀川口防潮水門ポンプ所。
撮影地点のMapion地図

(29年5月3日撮影)

(『堀川口防潮水門…3』につづく)

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タグ : 堀川口防潮水門 堀川 清掃船

堀川口防潮水門…1

(『松重閘門ふたたび…5』のつづき)

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206027.jpg堀川に沿って南下し、河口近くの港新橋にやって来ました。国道23号線を渡す港新橋は、昭和47年竣工の姿のよい桁橋。側道から階段を登り、下流側の歩道をずんずんと中央部へ。

天下の名四国道とあって、トラックも多く圧倒されそうな交通量を横目に、橋の真ん中を目指すのはもちろん、見たいものがあるからです。何しろ、この橋上をおいて他に、眺められる場所はないのですから。

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防音壁が途切れたところで、南側へ目を向けると‥‥おおお! 堀川口防潮水門です!

「通航水門」と称するマイタゲート4径間、中央ににょっきり孤立しているローラーゲート「排水水門」1径間。本船を通船させるため、高さ制限のないゲート形式を選んだあたり、東京の朝潮水門と同じ伝ですが、規模としては桁違い。しかもこちらは、現在も本船を通していて、十全にその特長が生かされているのです。

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水門の規模に圧倒されながらも、その向こうに見える大型巡視船に、つい目線が吸い寄せられて一枚。ハルナンバーはPLH21、ヘリ2機搭載型「みずほ」!

もやっているのはガーデン埠頭でしょうか。何しろ、2隻しかいない「みずほ」型巡視船の、ネームシップを拝めたのですから、嬉しくなろうというものです。

206030.jpg
さて、この水門の魅力の一つは、マイタゲートにあるといってよろしいでしょう。通航船の高さを制限せず、幅員を確保するとなれば選択肢は限られるわけで、昭和39年という竣工時期を考えると、このタイプをおいて他になかったと思われます。もしかしたら、径間数で見ると、現役では国内で最大規模のマイタゲートかもしれません。

写真は向かって左側に、2径間あるうちの一つをズームでたぐったもの。戸袋に格納された扉体はもとより、「上航」とペンキ書きされた表記、堰柱(?)天端ににょっきり立つ信号の灯器と、ディテールが楽しめました。
撮影地点のMapion地図

(29年5月3日撮影)

(『堀川口防潮水門…2』につづく)

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タグ : 堀川口防潮水門 堀川 巡視船

松重閘門ふたたび…5

(『松重閘門ふたたび…4』のつづき)

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前扉室、南側堰柱の先端部分を、ぐっとアップで見てみました。驚いたのが、エッジが極めてシャープであること。築85年ともなれば、表層の剥離による欠けくらいあって当たり前なのですが、見るかぎりその手のくたびれ加減が、まったく感じられない美しさです。

改修時、このあたりも徹底して補修されたのでしょうか。だとしたら素晴らしいですね。壁面の塗色も、12年前に訪ねたときよりずいぶん明るめになり、この点でも竣工当時の近代味(?)を感じさせ、好印象でした。

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扉体周りの観察によいポジションが取れないので、ここもやむを得ずズームで。角の部分に施された石張り、バイパスゲート周りは、船艇の接触から扉体を守るためか、一段張り出した形に造られているのが見て取れます。

ちなみに閘門のゲート寸法ですが、「鋼製ゲート百選」(技報堂出版)によると、径間9・1m、扉高9.09m(←原文は90.9mだが恐らく誤植)とあったものの、これが前扉室か、後扉室のものなのかは記述がありませんでした。施工会社は大同水道工業(株)だそう。

206023.jpg松重橋より南側、堀川の下流を望んだところ。山王橋は工事をしているのか、「この先航路幅員減少」の横断幕が掲げられています。12年前に訪ねたときも、左手に私設の桟橋があり、プレジャーが数隻もやわれていましたが、今回は一隻だけでした。

もやう艇や横断幕の存在が、生きている可航水路としての雰囲気を盛り上げてくれ、よいものです。これで松重閘門が稼働していたら、最高なのですが。

206024.jpgプレジャーといば、松重橋の西詰にもう一隻、小さなセンターコンソーラが。17ftくらいでしょうか、川走りにはもってこいのタイプですよね。

この艇の右、木の根元に隠れているモノ、船頭的には見逃せませんでした。コンクリートのビット! 閘門が竣工し、この船溜が整備された当時のものに違いありません。


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このままなら数年を経ずして、緑に覆われつくしてしまうでしょう。どこかけなげに感じられたその姿をカメラに収めて、松重閘門を後に次の目的地へ向かったのでした。

(29年5月3日撮影)

(『堀川口防潮水門…1』につづく)

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タグ : 松重閘門 中川運河東支線 堀川 閘門

松重閘門ふたたび…4

(『松重閘門ふたたび…3』のつづき)

206016.jpg前扉室周りのディテールが眺められるところを探して、ウロウロするも厳重にフェンスで囲われており、網の目もカメラの鏡筒より小さく、どうにも具合の悪い状況。何とか写して、フェンスの針金をトリミングしたのがこの一枚です。

バイパスゲートの巻上機が、両岸とも草に埋もれずに観察することができました。


206017.jpg
こちらは仕方なく、フェンスに半ばよじ登って撮ったもの。ゲート周りをも少し近くで眺めてみたいのですが、これが精一杯です。

しかし、稼働していないとはいえ、水面に倒立像を映す姿は、現役時を髣髴させよいものです。新緑に見え隠れする堰柱も風情がありますね。

206018.jpg南側からはどうにも撮りあぐねて、北側から狙おうと、松重橋の上に来てみました。あっ、ここもグローブ灯だ。柱や灯器周りの造作もより凝った、なかなか瀟洒なものです。

ここなら南側よりはイケそうかな‥‥と、閘門を振り返り振り返り、橋の真ん中あたりまで出てみると‥‥。



206019.jpg
むう、いい角度ではあるのですが、電線が横切ってしまうのが玉にキズ。それでも午前中の陽射しを浴びて、うっそりと立ついい表情をものすることができました。

尖塔のディテールのきめ細かさ、基部の流れるようなラインの処理や石張装飾‥‥。こうして橋上から眺めてみると、多くの目に見られることを意識し、「街場の閘門」として造られたことを改めて感じました。高い建物がなく、4本の堰柱が抜きんでていた時代、その存在感は想像以上のものがあったでしょう。こうして保存・顕彰されているのも、長きにわたり人々の目に鮮烈な印象を与え続けたからこそ、といった思いを強くします。

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ズームでたぐらずにはおれない、巻上機架台。こちらの方が浅い角度でねらえたので、伝動軸や減速装置がよく見えます。信号の灯器、こちらは下向きに角度がつけてあるのですね。前扉室の方が、堰柱の高さがあるからでしょう。
撮影地点のMapion地図

(29年5月3日撮影)

(『松重閘門ふたたび…5』につづく)

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タグ : 松重閘門 中川運河東支線 堀川 閘門