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国内の閘門を網羅した大冊!

運河と閘門
―水の道を支えたテクノロジー―


久保田 稔、竹村 公太郎、三浦 裕二、江上 和也ほか共著
発行:日刊建設工業新聞社 
発売:相模書房 
A5並製 378ページ
23年5月31日 第一刷


閘門と名がつくモノなら、誘蛾灯に飛んでくる虫のようにフラフラと吸い寄せられてしまう閘門バカである船頭にとって、欣喜雀躍せざるを得ない本が、ついに刊行されました!


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この本、過去ログ「閘門の研究団体が発足していた!」でも紹介した、「日本の閘門を記録する会」の皆さんによって数年に渡り蒐集・研究された成果の集大成というべきもの。

会のウェブサイトを拝見すると、その道の研究者の方々が名を連ねておられ、閘門の有無や諸元を各地に照会し、また現地に出向くなどされて確認作業を地道に積み重ねてゆくという、真摯な活動ぶりからして、いつかは成果物が世に出るだろうと期待していただけに、刊行の報を耳にしたときは、本当に嬉しく思いました。

もっとも、三浦裕二氏の「まえがき」によると、調査結果は20年10月より、日刊建設工業新聞に週1回、1年間も連載されていて、本書はその連載記事を加筆・再編集したものとのこと。う~ん、知っていたら、定期購読したかった。

この本、一言で無理やりまとめるとすれば、「国内にある閘門の一大ガイド」とでも称すべきでしょう。

本文は4色刷りで、巻頭に運河に関する基礎知識や、海外の事例などをまとめた序章を配し、閘門ガイドは各地方別に8章に整理され、各章の冒頭には索引を兼ねたエリア地図、また1項目につき写真と位置を示した略地図が各1枚掲載されています。

加えて巻末には、撤去されたもの、遺構として残っているものを含めて、実に163箇所の閘門(複数の閘門を1項目としている場合あり)の経緯度や詳細データをまとめた一覧表があるなど、これから閘門を訪ね歩こうとする向きにとっては、この上ない実用書となりうる親切な構成です。

本文の各項目では、163箇所からチョイスした代表的なものが、15名の執筆者により閘門の概要だけでなく、水路や舟運などの歴史も含めて解説されており、読み物としても十分楽しめる内容。
特に閘門の稼働時間、利用法や年間通航量といった情報が盛り込まれているあたり、まさに面目躍如といったところで、いわば通航船にとっても役に立つ部分があるわけです。

個人的には…まあ、閘門バカとしては全体的に面白いので挙げればキリがないのですが、中でも興味深く読んだ記事をいくつか。

北海道の運河の項は、史料は少なく痕跡も残っていない中で、よくぞ採り上げてくださったと膝を叩きました。特に創成運河の7段をはじめ、いずれも一つの水路に多数の閘門が設けられた、国内でも数少ない運河だけに、郷土史の枠を超えて認知されることが、愛好者や研究家にとって、どれほど力になるか知れません。
また、それぞれが「日本最古」を称していた、吉井水門や見沼通船堀など江戸時代の閘門が、各々の価値を認めながら、公刊書上できちんと竣功年順に整理されたのもよかったと思います。

閘門以前の通航設備である、洗堰の舟通しの話も面白かったですが、やはり千両は「門真のバッタリ」でしょう! 上流がマイタゲート、下流を起伏ゲートとした独創的な通航設備で、門真市にはこれが多数(!)設けられていたというあたりにも興奮させられました。

惜しむらくは、この興味深い構造の閘門を説明するイラストがなかったことです。幸い、検索してみたら「南野口町のバッタリ(閘門)が8月末までに移設されます」(門真市会議員・亀井あつし氏ブログ)に詳しい説明図がありましたので、興味のある方はどうぞ。

ところで、国内の閘門を熱心に調査されていたといえば、河川・土木趣味の大先達であり、相互リンク先でもある「日本の川と災害」さん(ハンドルがわからないので、以下『サイト主さん』)が真っ先に思い浮かびます。

何しろ、Googleマップ上に「閘門位置図」も作成されていたくらいで、大いに共感するところがあり、3年前にはサイト主さんからのお話がきっかけで「幻の閘門?」を調べに行ったこともありましたっけ。当時のコメントからして、確かサイト主さんも「日本の閘門を記録する会」の会員、あるいは関係者だったようにお見受けしました。間違っていたらごめんなさい。

上のことを思い出してから、ちょっと気になったのは、参考文献の欄にウェブサイトがまったく、それこそ「日本の川と災害」すら、触れられていなかったことでしょうか。「幻の閘門?」でも触れたように、調査の初期には、大いにウェブを活用されていたようで、しかも個人サイトを丹念に拾われていたような感じがしたのですが…。

いま一つ、港内の水位維持のための水門で、閘門の定義からは外れる三池港閘門が取り上げられているのは、さすがに「?」と首をひねりました。現役の産業遺産ともいうべき希少さは疑いありませんが、名前が「閘門」というだけで本書に収録するのは、無理があるように思えるのですが、いかがでしょうか。

ともあれ、本書が読んで楽しむだけでなく、カバンに入れて連れ歩き、実際に現地へ訪れてみたくさせる素晴らしいガイドブックであることは、論を待たないでしょう。また、わが国にはこんなにも多くの閘門がある、あるいはあったことが周知されるだけでも、大いに意義があると思います。

何より、国内初の「閘門専門書」であることは、いくら声を大にして強調しても、強調し過ぎることはありますまい。閘門ファンはもとより、水運、土木構造物を趣味とする方に、広くお勧めしたい好著であります。


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タグ : 運河と閘門 日刊建設工業新聞社 閘門

コメント

No title

ははぁー。僕も全く存じ上げませんでした。これは居ずまいを正してきちんと読ませていただきます。貴重な情報ありがとうございます。

Re: No title

>yooouさん
とにかく閘門の専門書というのは初めてなので、そのことだけでも手放しで喜んでいます。遺構も含めて、訪ねて歩きたくなりますよね。
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