吊られる桁 VS 喰われるトラス
(『新芝運河に拾う…4』のつづき)
●まずは、一見本題と関係なさそうな写真を、二枚ご覧いただきましょう。隅田川の河上から見た、両国ジャンクションの東側。首都高愛好家なら知らぬ者のない、桁から桁をワイヤーで吊り下げたという、珍しい工法が採られたところです。


●この吊り構造の存在を知ったのは、佐藤淳一氏のブログ「Das Otterhaus」の記事、「【速報】荒川ロックゲートでお腹いっぱいツアー」で写真を拝見してから。最近イカロス出版より発行されたムック「首都高をゆく」(実に面白い本でした!)でも、「橋から橋を吊り下げる!」と題して、大きく取り上げられており、関心の高さがうかがえました。
本来、自身にかかる重さをよそに分担してもらうべき橋桁が、他の橋桁をぶら~んと吊り下げているさまは、まさに奇観。「首都高をゆく」の記事でも、橋脚を設けることが難しかった現地の厳しい環境や、着工前の模型を使った振動実験の様子が説明されており、ナルホドと、見るほどに知るほどに、興味を引かれる光景ではあるのです、が…。
●「橋が、他の橋を支えている」という意味では、両国ジャンクションの朋輩とも言える今回のお題、高浜西運河の芝浦橋(↓)。
コイツの発散する禍々しさと、改めて見くらべてみると、「吊られる桁」の珍奇さもいっぺんで消し飛び、スマートかつ穏便な、周辺景観に配慮した設計に感じられてしまう…というのは、ちょっと大げさでしょうか?

●頭上を圧する二本の高架桁のうち、一方は身を沈めてがっぷりと喰い付いており、もう一方も4本の太い脚で、しかもトラスの天端を延長させてまで(下写真)、ずっしりと体重をかけている凄まじさ。
最初にこれを意識したときは、高架橋脚が工事中だったこともあり、あまりのあり得なさに、「高架桁を支えているのではなく、ぶら下がっているのかしら? いや、これはあくまで一時的な措置で、いずれ別に橋脚が設けられるに違いない」などと、あれこれ妄想したほど。国内に、これほど虐げられた(?)体のトラス橋があるでしょうか。高架下の橋の景観をうんぬんするなら、まず芝浦橋の惨状を見てから議論せよ! と言いたいです(笑)。
まあ、冗談はともかく、橋に関心のない方でも、この状態を見れば、いかにも哀れを誘うのではないでしょうか。このような変わった工法を採るに至った経緯にも、興味をそそられますね。

●今回、改めてしげしげと眺めて、想像するに…橋の前後には、写真にも写っているように、河道をまたいだ橋脚が隣接しているので、芝浦橋自身にかかる高架の重さは、見てくれほどではなく、桁の垂れ下がりを抑える程度の、補助的なもののように思えました。
●芝浦運河地帯、唯一のトラスということもあり、橋めぐりでもアップされていないかしら、と検索してみると…2つヒット。「MINATOあらかると」の「芝浦橋」には、データがありました。昭和45年7月竣工、長さ43.1m、幅9.5mとのこと。頭上を走る貨物線、汐留~東京貨物ターミナル間の開業が、昭和48年とありますから、ごく近い時期の竣工ですね。高架桁を支えるのは、初めから考えられていたことなのでしょうか。(参考:Wikipedia『東海道貨物線』)
今ひとつ。おお、これは…「映画“転校生 さよならあなた”日記」の写真、路上から見たところですが、水上から見た感じより、さらに重苦しいのしかかられっぷり。こりゃ前言撤回! 道路幅のみの短い桁とは言え、全体重が芝浦橋にかかっている感じですね。
●ともあれ、同じ「橋で橋を支える」珍工法とは言え、片や都心のジャンクション、片や運河の隅の文字どおり日陰者と、対照的なロケーションの二物件。皆さんはどちらに興味をそそられるでしょうか。
【撮影地点のMapion地図】
(21年12月13日撮影)
(『高浜運河に拾う…1』につづく)

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●まずは、一見本題と関係なさそうな写真を、二枚ご覧いただきましょう。隅田川の河上から見た、両国ジャンクションの東側。首都高愛好家なら知らぬ者のない、桁から桁をワイヤーで吊り下げたという、珍しい工法が採られたところです。


●この吊り構造の存在を知ったのは、佐藤淳一氏のブログ「Das Otterhaus」の記事、「【速報】荒川ロックゲートでお腹いっぱいツアー」で写真を拝見してから。最近イカロス出版より発行されたムック「首都高をゆく」(実に面白い本でした!)でも、「橋から橋を吊り下げる!」と題して、大きく取り上げられており、関心の高さがうかがえました。
本来、自身にかかる重さをよそに分担してもらうべき橋桁が、他の橋桁をぶら~んと吊り下げているさまは、まさに奇観。「首都高をゆく」の記事でも、橋脚を設けることが難しかった現地の厳しい環境や、着工前の模型を使った振動実験の様子が説明されており、ナルホドと、見るほどに知るほどに、興味を引かれる光景ではあるのです、が…。
●「橋が、他の橋を支えている」という意味では、両国ジャンクションの朋輩とも言える今回のお題、高浜西運河の芝浦橋(↓)。
コイツの発散する禍々しさと、改めて見くらべてみると、「吊られる桁」の珍奇さもいっぺんで消し飛び、スマートかつ穏便な、周辺景観に配慮した設計に感じられてしまう…というのは、ちょっと大げさでしょうか?

●頭上を圧する二本の高架桁のうち、一方は身を沈めてがっぷりと喰い付いており、もう一方も4本の太い脚で、しかもトラスの天端を延長させてまで(下写真)、ずっしりと体重をかけている凄まじさ。
最初にこれを意識したときは、高架橋脚が工事中だったこともあり、あまりのあり得なさに、「高架桁を支えているのではなく、ぶら下がっているのかしら? いや、これはあくまで一時的な措置で、いずれ別に橋脚が設けられるに違いない」などと、あれこれ妄想したほど。国内に、これほど虐げられた(?)体のトラス橋があるでしょうか。高架下の橋の景観をうんぬんするなら、まず芝浦橋の惨状を見てから議論せよ! と言いたいです(笑)。
まあ、冗談はともかく、橋に関心のない方でも、この状態を見れば、いかにも哀れを誘うのではないでしょうか。このような変わった工法を採るに至った経緯にも、興味をそそられますね。

●今回、改めてしげしげと眺めて、想像するに…橋の前後には、写真にも写っているように、河道をまたいだ橋脚が隣接しているので、芝浦橋自身にかかる高架の重さは、見てくれほどではなく、桁の垂れ下がりを抑える程度の、補助的なもののように思えました。
●芝浦運河地帯、唯一のトラスということもあり、橋めぐりでもアップされていないかしら、と検索してみると…2つヒット。「MINATOあらかると」の「芝浦橋」には、データがありました。昭和45年7月竣工、長さ43.1m、幅9.5mとのこと。頭上を走る貨物線、汐留~東京貨物ターミナル間の開業が、昭和48年とありますから、ごく近い時期の竣工ですね。高架桁を支えるのは、初めから考えられていたことなのでしょうか。(参考:Wikipedia『東海道貨物線』)
今ひとつ。おお、これは…「映画“転校生 さよならあなた”日記」の写真、路上から見たところですが、水上から見た感じより、さらに重苦しいのしかかられっぷり。こりゃ前言撤回! 道路幅のみの短い桁とは言え、全体重が芝浦橋にかかっている感じですね。
●ともあれ、同じ「橋で橋を支える」珍工法とは言え、片や都心のジャンクション、片や運河の隅の文字どおり日陰者と、対照的なロケーションの二物件。皆さんはどちらに興味をそそられるでしょうか。
【撮影地点のMapion地図】
(21年12月13日撮影)
(『高浜運河に拾う…1』につづく)

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コメント
知らなかった!!
Re: 知らなかった!!
>lonechuck999さん
おなじみの道でしたか。私も初めて知ったとき、本当に驚きました。
よくよく見てみると、一本橋脚を立てる余地くらいはありそうなのですが、こちらの方がコスト的に優れていたとか、何か理由があったのでしょうかね?
おなじみの道でしたか。私も初めて知ったとき、本当に驚きました。
よくよく見てみると、一本橋脚を立てる余地くらいはありそうなのですが、こちらの方がコスト的に優れていたとか、何か理由があったのでしょうかね?
No title
ん~画像で見る限りだとこのトラスは芝浦橋とは別体で、高架を支持する為だけのもののようにも見えますがどうなんでしょうか。
先週すぐ近くでぶらぶらしていたので気付かなかったのが惜しいです!
先週すぐ近くでぶらぶらしていたので気付かなかったのが惜しいです!
Re: No title
>すぎちゃんさん
ご指摘になるほど!と思い、橋の裏側を撮った写真を見直してみたのですが、裏から見たかぎりでは、支承はトラス直下の4ヶ所しか見えませんでした。
どうもすっきりしないので、歩いて観察に行ってみたいですね!
ご指摘になるほど!と思い、橋の裏側を撮った写真を見直してみたのですが、裏から見たかぎりでは、支承はトラス直下の4ヶ所しか見えませんでした。
どうもすっきりしないので、歩いて観察に行ってみたいですね!
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大胆というか、無謀というか…
いつも走っているアスファルトの下が、こんなことになっていたなんて、やっぱり橋は下から眺めるものですね。