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台風の前の荒川沖

285001.jpg8月11日のお休みは、台風が接近しているので荒天準備をしに母港へ。もやいを倍にしたり、オーニングが吹き飛ばないようロープをかけたりするのですが、さて自艇の前まで来ると色気が出て、ちょっと様子を見に散歩してこようか、という気になったのです。

すでに南風は6~8m、港外に出ればもう波浪しているはず。久しぶりに波にもまれるのも一興、と軽く考えていたら天罰てきめん、結構な緊張を強いられることになりました。

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航路管制の警戒船に手を振りながら新砂水門を出て、さて波の具合はどうじゃろうと荒川河口へ向き直ったところ‥‥一面白波の奔騰する厳しい状況。まあ、風向風速から考えて、当たり前といえばそうなんですが。

「しばらく我慢すれば、砂町南運河へ逃げ込めるし」と、前向きに考えつつスロットルを押し込み、河口の橋梁群をくぐり始めたところ‥‥。

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これまた当然ながらドシャン、バシンと硬い衝撃が盛大なしぶきとともに連続して襲い、フロントグラスを濡らすまでに。イヤ、南風で湾奥が荒れるのはわかり過ぎるほどわかっていたとは申せ、久しぶりの荒天航行だけにココロの準備が追いつきません。

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何度か顔面にしぶきを浴びて、こりゃナメたらいけんと、スロットルをしぼり2000回転前後まで落として、ガブるのは変わらずとも何とか均衡状態に。

ほぼ同時に河口を出た艇が4~5艇あったでしょうか、皆さん同様に行き足を抑えて、波に正対し「つかせ」ているのが見られました。こういう波長の短い波だと、波に対し少しでも角度が付けば、舷側から盛大に波が打ち込むばかりか、乗り切る際の傾斜がひどくなり、極端な場合は転覆しかねないからです。

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砂町南運河へ入りたくとも、急角度の操舵は禁物。波に対し腹を晒せないので、ときどきチョイ、チョイと軽く面舵を当ててすぐ戻し、様子を見ながら少しづつ右手に寄せてゆくしかありません。

そんな一瞬とて気の許せないときに、若洲のヘリポートから大型ヘリコプターの飛び立つ貴重なシーンが。舵からは手を離さず、顔は前方を向いたまま、右手でカメラを構えてパシャパシャやったうちの一枚。ガブる船上とて、この写真以外はすべてブレていました。

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激闘(?)15分、砂町南運河へ進入。風向とほぼ直角に伸びた運河とあって完全な風裏で、水面はついさっきまでの荒れっぷりがウソのように穏やか。ヨット訓練所の前には、普段どおりたくさんの小型ヨットが教習中でした。

いや~、やはり内水面はありがたいなあ、などと安心しきっているわけにはまいりません。砂町南運河、どの川や運河とも接続していないいわば独立水路で、このまま西航すれば、ふたたび広い水面に放り出されるからです。

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西端まで来ると、「琉球エキスプレス 5」が接岸中。その美しい姿を堪能する精神的余裕はなく、船首の右手にのぞける荒れた水面を目にして、怖気をふるうばかり。う~ん、悩んでも仕方なし、行ってみよう!

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出てみると、荒川沖より厳しい感じが。陸岸や構造物の形で、反射波が複雑になるのでしょうか。「木材投下泊地の南には、防波堤があったな。泊地を横切ればすこし波はやわらぐかも」と考えて、西へ舵を切ったのですが、すぐに考えが甘かったことを思い知らされました。

左舷に横波をまともに受けたとたん、30度近い傾斜に。まあ、横転するかと泡を喰ったのは、いうまでもありません。直ちに船首を波に正対させ、僅かに右へ舵を当てながら、南下しつつ大きく遠回りするルートを、セオリーどおり採ったのであります。

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またも激闘(??)20分あまり、泊地西端近く、傾いたドルフィンの列に達したところで、面舵一杯して一転北上。今度は追い波を受ける形になるため、また別の注意が必要ですが、波も先ほどよりやわらいだ感じがして、気をつけていれば船尾を振られたりしませんでした。

いま考えてみると、南風はわずかに西寄りで、東端近くが反射波もあり、最も荒れていたのかもしれません。少しだけピッチを上げて北上、貯木場の北側に早く逃げ込みたい一心で舵を取ります。

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ようやく12号地貯木場(現在は業務船溜)の南端にある防波堤が近づいてきました。波に対し大きな三角を描く航路を採った‥‥いわばタッキングをしたようなものですから、ずいぶん時間がかかったものです。

昔、三浦から東京湾を縦断して川走りをしていたころは、南風が繰り出す波にさんざん悩まされたものですから、それなりに鍛えられてはいたのだと思います。都内に母港を移してこのかた、気楽に水路めぐりを楽しんできた結果、どうも波浪した水域への対応力がなまってしまったことを、実感させられたことではありました。

まあ、わざと危険なことをするのは論外ではあるものの、たまにこうした緊張下に身を置くのは、かつての経験を呼び覚ますという意味では、悪くないかもしれません。
撮影地点のMapion地図

(令和4年8月11日撮影)

(『8月11日の墨田川造船辰巳』につづく)

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タグ : 荒川砂町南運河新砂水門