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砂鉄川・平泉周辺散歩

(『雨の猊鼻渓…7』のつづき)

264041.jpg水路とはあまり関係がありませんが、猊鼻渓を訪ねた後の旅の覚え書きとして、お目汚しまで。

川舟が取り持つ縁とでもいいましょうか、地元の皆さんのアドバイスやご案内で楽しく見て回ることができ、気持ちのよい休日となりました。

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今回お世話になった宿は、かぢや別館らまっころ山猫宿。創業300余年のこじんまりとした旅館で、砂鉄川の屈曲に囲まれたご当地、長坂に惹かれたことと、すぐ裏が堤防で河畔のお散歩も気軽にできそうということもあり、お願いすることにしました。

冒頭にも触れたとおり、舟は増水する前に乗った方がよいと強く勧めてくださったり、雨で散策も不如意となると早めにチェックインさせてくださったりと懇切に対応いただきました。ありがとうございました。

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失礼ながら、アンティークといってよい冷蔵庫が現役だったので、惹かれて一枚。古い旅館でも、テレビやお手洗いは更新されているものの、冷蔵庫はあまり開けたてしないせいか、そのままの例が少なくないですね。昔の家電がお好きな向きにはねらい目かもしれません。カギ付き、天板がテーブルになっている小冷蔵庫、大好きなんです!

雨音を聞きながら、濡れた荷物や服を乾かし、お座敷でゴロゴロして夕食までのんびり。まるで親戚の家に泊まりに来たような、くつろいだ時間を過ごさせてもらいました。

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注意報が出るほどの豪雨から一夜明け、翌朝18日は穏やかな快晴。朝食時にうかがったところでは、猊鼻渓は増水でやはり休航となったそう。お勧めどおり乗っておいてよかったです。

宿のすぐ裏手が、砂鉄川の大屈曲の北側に当たるとあって、さっそくお散歩に繰り出しました。堤防道は散策路として整備され、遠くの山肌には山桜が咲いてと、のどかな美しい川景色が楽しめました。豪雨の後とあって河水は泥色でしたが、鴨が泳いでいたりと思ったより穏やか。

もっとも山間の沖積地とあって、平成14年の台風では冠水するなど大きな被害があり、かぢや旅館も県道沿いの本館は再建を断念したのだそう。水害を受けて以来、治水工事も着々と進んでいるようです。

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大船渡線の本数は限られているので、帰路はバスで一関に出ることにしました。バス停のある県道106号・前沢東山線は宿からすぐ。かつて赤松の搬出や、猊鼻渓観光の拠点として賑わったことを想わせる、宿場街風のメインストリートです。

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街道沿いの一角を割いて、佐藤洞潭・猊厳父子の石碑が立てられているのを見つけました。説明板を読んでみると、猊厳翁が父上・洞潭翁の生涯を顕彰して、詠んだ漢詩を刻んだ碑なのだそう。

石組みで囲んで一段高めて造成され、桜の木まで植えられているさまを目にし、佐藤父子がご当地にとっていかに大切な人物か、また石碑が建立されたこの地が、当時の中心地だったことが想われたものでした。

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石碑の桜で、留まっていたスズメさんがうろんげにこちらを見てはさえずっていたので、一枚スナップ。可愛らしい猊鼻渓チュンさん、また会いに来たいものです。

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一関駅ゆきの岩手県交通バスが到着。バスには詳しくないので驚かされたのですが、東京周辺でもなじみのある、国際興業と同じ塗装なのですね。検索してみると、昭和61年に国際興業の傘下に入ったとのこと。

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バスは尾根筋など、鉄道にくらべて高所を走ることが多いので、車窓の風景はむしろこちらの方が抜群によろしく、栗駒山でしょうか、雪を抱いた美しい山塊に歓声を上げるなど、大いに楽しめました。

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一関で乗り換えて西へ向かい、もう一つの景勝地、磐井川の厳美渓を訪ねました。名前が似ているだけでなく、両者とも岩のある川景色を売り物にしているというのが面白いですね。猊鼻渓が石灰岩なのに対して、こちらは火山性のデイサイト質凝灰岩なのだとか。なるほど、岩の質感も形も異なります。

昨夜の豪雨を受けて、水勢は轟音を立てるもの凄さでもう大迫力。これも昨日の雨あったればこそといえ、悩まされるばかりではないと、何か取り返したような気分になったものです。

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さて、ご当地の名物、「郭公だんご」を体験してみようと、岩塊の上に立てられた瀟洒なあずまやへ。対岸のお店と、あずまやの間の河上にワイヤーが渡してあり、索道のように渡るカゴでお団子を運んでくれるという「空飛ぶ団子」ともいわれるもの。

カゴの中に代金を入れ、ワイヤーに下がった木の板をカンカンと木づちで叩き合図すると、店の窓から顔を出していた店員さんがうなずいて、スルスルとカゴをたぐってゆきました。

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お団子がカゴに入れられたのか、間なしに戻ってきたカゴをスナップ。この間1分、まことにスピーディであります。

たったこれだけ、と思われるかもしれませんが、このやり方を設備とも安全・確実に維持してきた努力は、並大抵のものではないでしょう。しかも思わず目尻の下がるこの楽しさ、名物といわれるだけありますよね。

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到着したカゴをのぞくと、お団子3本が入った折の下に、紙コップに入れた人数分の緑茶が。お団子はこし餡、ごま餡、みたらしの3色で、5個を1本の串に刺したもの。激流を眺めながら、美味しくいただきました。あずまやには清潔な屑籠も整えられていて、後始末も安心です。

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厳美渓周辺をあちこち見て回った後は、ほど近い国道沿いにある一関市博物館を見学。道の駅に隣接しているので、連れはお買い物と二手に分かれました。

ご覧のとおり重厚かつモダンな感じの建物で、和算家の業績を中心に展示も充実。残念ながらまたも雲行きが怪しくなり、小雨がときおりぱらつく天候となったため、暗く撮れてしまいました。

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今回の旅行で入手した本、3点。

「北上川・陸と海を結ぶ道 ―江戸時代の舟運―」(平成30年9月発行)、「開業90周年記念 大船渡線 ~ドラゴンレールの謎を解け!~」(平成27年7月発行)は一関市博物館発行。
「北上川」は天保年間の「北上川舟道図」を全て収録した大冊といっていいもの。江戸期東北の河川舟運を語るには、必携の一冊といってよいでしょう。

「大船渡線」は、年少者向けにクイズ形式でこの鉄道の歴史を学べる構成で、中綴じ小冊子ながら明快にまとめられた佳作。なお、この項1回目に触れた佐藤猊厳翁の下りは、本書の記述を参考にさせていただきました。

「岩手老舗物語」(令和2年11月・岩手めんこいテレビ発行)は、中尊寺山麓の土産物店、「らら・いわて平泉店」で購入。地元企業46社が沿革からセールスポイントまで、美麗なオールカラー印刷で紹介された、眺めているだけでも楽しいもの。店主の女性に「この本を買ってくれた人はあなたが初めて」とほめられました。‥‥そ、そうなんですか‥‥。

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厳美渓を離れて平泉に向かい、途中地元の方のお勧めもあって、達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわやびしゃもんどう)に立ち寄ってみました。懸造の堂宇と摩崖仏で知られる、坂上田村麻呂ゆかりの伝承がある神仏習合のお寺さんです。

巨大な岩庇を利用して造られた、懸造(かけづくり)というタイプのお堂は圧倒的で、予想以上の素晴らしさでした。このときも何度か通り雨があったのですが、しだれ桜もちょうど盛りで、雨の合間を縫って楽しむことができました。

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最後は中尊寺へ。土産物店に荷物を預け、寄る年波の体にムチ打って息を切らせながら山登り。見事な杉林を堪能しながら寺院めぐりの散策、展望台では北上川・衣川の合流点と東北本線が一望のもとの絶景と、楽しみながらよい運動になりました。

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中尊寺の山麓、フードコートの駐車場で、「弁慶の立ち往生」の碑がある桜を眺めながら一服していると、踏切の警報機が鳴る音が。かたわらを通る東北本線に、列車が通過するようです。

眺めていると、長編成のコンテナ車を引いた電気機関車が登場。カーブとあって車体を傾けて、なかなか迫力ある通過シーンで、大いにトクをした気分になったものでした。

(令和3年4月17・18日撮影)

(この項おわり)

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タグ : 砂鉄川磐井川厳美渓一関市