雨の猊鼻渓…6
(『雨の猊鼻渓…5』のつづき)

●舟を造ってる!
いや~、この雨でいま一つだったテンションが、一気に急上昇ですわ!
奥のシキ(船底材)を上の梁から、東京湾奥ではツヅと呼ばれるつっかえ棒で押さえ、船首はシキの延長部をジャッキでそのまま曲げているのが見て取れました。「船鑑」に掲載されていた馬渡船だと、船首はタテイタという独立した材なのですが、ここではシキと一体にするやり方なのですね。ご当地独自の船型なのでしょうか。
舷側材‥‥棚板は、先ほど目にしたときは一枚なのではと思ったものの、見たかぎりでは細長い材を3枚くらい継いで、一つの平面を構成しているようです。それでも前後方向は、長大な一つの材だとすれば大したもの。イヤ、あれこれ妄想してキリがありません。専門の船大工さんがおられるのかしら?

●山裾が迫る高水敷に建てられた作業場、眺めている分には風情がありますが、見たところ陸路はなく、資材や人員の行き来は作業艇頼りのよう。ご苦労も多かろうとお察します。
検索してみると、「平泉とその周辺地域に伝わる伝統文化」(The Cuisine Press)がヒット。掲載の写真で、シキを曲げた構造が確認できました。キャプションを読むと、「馬渡し舟から受け継がれたもの」‥‥おお、やはり! また、「船は船頭たちによって造られ、整備されている」との言葉にも驚かされました。専門の船大工さんでなく、船頭さんが兼業されているのですか。
う~ん、まさか、舟造りまで自らの手で行われているとは思いませんでした。この光景を目にしたことで、がぜん興味をそそられ、また自分にとって猊鼻渓の魅力がグッといや増したことは、間違いありません。
●乗り場の近くに帰ってきたところで、次の便と行逢。結構な乗船率で、猊鼻渓の人気のほどがうかがえました。皆さん、雨など何するものぞ、の意気なのでしょう。手を振りあって賑やかに別れました。
しかし、この角度から眺めると、船首の描く立ち上がりのラインが魅力的ですね。馬渡船が出自とあって、ミヨシ付けでの乗降がしやすく、岸にのし上げたときもしっかり荷重を分担できる構造であること、改めて実感した次第です。
●次の便が遡上してゆくと、また別のシーンが目に入ってきました。乗り場の対岸にずらりともやわれたフネブネに、笠をかむった船頭さんたちが一人づつ乗って、長い柄のついたアカ汲みで、懸命の排水作業をしていたのです。
スカッパーで勝手に排水してくれるFRP艇と違い、木造和船は胴の間に溜まった雨水を放置すれば、沈んでしまうのですから‥‥本当にご苦労さまですね。

●ご苦労をしのびながらも、正直に申し上げて、まるで北斎の浮世絵を見るような、希少なシーンを目にしたという感動があったのも確かです。アカ汲みをふるっての排水、和船が活きていればこその舟航風景なのですから。
利根川高瀬舟も、古くなると船材の継ぎ目から自然に水が浸透してくるため、アカ汲みで時間を決めて水を「はらった」とのこと。大水運時代の川面を思い起こさせるような光景を目の当たりにできたのは、この激しい雨があったればこそ‥‥ともいえますね。
作業をされている船頭さんには申しわけないことながら、悩まされ続けたこの雨に、和船好きとしてちょっとだけ感謝したくなったものでした。
(令和3年4月17日撮影)
(『雨の猊鼻渓…7』につづく)

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●舟を造ってる!
いや~、この雨でいま一つだったテンションが、一気に急上昇ですわ!
奥のシキ(船底材)を上の梁から、東京湾奥ではツヅと呼ばれるつっかえ棒で押さえ、船首はシキの延長部をジャッキでそのまま曲げているのが見て取れました。「船鑑」に掲載されていた馬渡船だと、船首はタテイタという独立した材なのですが、ここではシキと一体にするやり方なのですね。ご当地独自の船型なのでしょうか。
舷側材‥‥棚板は、先ほど目にしたときは一枚なのではと思ったものの、見たかぎりでは細長い材を3枚くらい継いで、一つの平面を構成しているようです。それでも前後方向は、長大な一つの材だとすれば大したもの。イヤ、あれこれ妄想してキリがありません。専門の船大工さんがおられるのかしら?

●山裾が迫る高水敷に建てられた作業場、眺めている分には風情がありますが、見たところ陸路はなく、資材や人員の行き来は作業艇頼りのよう。ご苦労も多かろうとお察します。
検索してみると、「平泉とその周辺地域に伝わる伝統文化」(The Cuisine Press)がヒット。掲載の写真で、シキを曲げた構造が確認できました。キャプションを読むと、「馬渡し舟から受け継がれたもの」‥‥おお、やはり! また、「船は船頭たちによって造られ、整備されている」との言葉にも驚かされました。専門の船大工さんでなく、船頭さんが兼業されているのですか。
う~ん、まさか、舟造りまで自らの手で行われているとは思いませんでした。この光景を目にしたことで、がぜん興味をそそられ、また自分にとって猊鼻渓の魅力がグッといや増したことは、間違いありません。

しかし、この角度から眺めると、船首の描く立ち上がりのラインが魅力的ですね。馬渡船が出自とあって、ミヨシ付けでの乗降がしやすく、岸にのし上げたときもしっかり荷重を分担できる構造であること、改めて実感した次第です。

スカッパーで勝手に排水してくれるFRP艇と違い、木造和船は胴の間に溜まった雨水を放置すれば、沈んでしまうのですから‥‥本当にご苦労さまですね。

●ご苦労をしのびながらも、正直に申し上げて、まるで北斎の浮世絵を見るような、希少なシーンを目にしたという感動があったのも確かです。アカ汲みをふるっての排水、和船が活きていればこその舟航風景なのですから。
利根川高瀬舟も、古くなると船材の継ぎ目から自然に水が浸透してくるため、アカ汲みで時間を決めて水を「はらった」とのこと。大水運時代の川面を思い起こさせるような光景を目の当たりにできたのは、この激しい雨があったればこそ‥‥ともいえますね。
作業をされている船頭さんには申しわけないことながら、悩まされ続けたこの雨に、和船好きとしてちょっとだけ感謝したくなったものでした。
(令和3年4月17日撮影)
(『雨の猊鼻渓…7』につづく)

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