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箱庭の川舟たち

(『隅田川畔のテラスにて…2』のつづき)

236031.jpgこのシリーズの冒頭で触れた、梅雨空の下ここ本所を訪ねた用足しのお話を最後に。

数年前だったと思いますが、このあたりをほてほてお散歩していたら、灯篭や四阿など、焼物の箱庭用品をガラスケースに並べているお店が目に留まりました。模型のような小さい細工物全般が好きなのと、伯父が趣味で箱庭をやっていたことを思い出したこともあり、ちょっと眺めてゆこうと軽い気持ちで近づいたところ、「コレハ!」とくぎ付けに。

そこには、素晴らしく雰囲気のよい和舟たちの雛型が並んでいたのです。それも川舟ばかりときていれば、この道のファンとしては、眺めるだけで済ませろという方が無理なご相談。興奮しつつ店内に飛び込んだのでした。

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特に目を引かれたのは和舟たちですが、艪舟、帆掛け舟とも苫がふかれ、人形の仕草も自然でしっくりきていて、真艫に風をはらむ帆の形もよろしく‥‥と、なかなか細密な仕上がりの逸品揃い。筏はちょっと小さすぎる気もしますが、棹さす川並さんのポーズも堂に入っています。細密でありながら、質感に適度な照りがあり、リアル過ぎないのもいいじゃないですか。もうすっかり気に入ってしまいました。

ストラクチャーも灯台、鳥居などがあったものの、やはり惹かれたのは、和舟に雰囲気の合った何種類かの橋。この日は懐が少々寂しかったこともあり、全種類揃えるわけにはいかず、上写真の品を求めるにとどまりましたが、小さな土橋一つでもストラクチャーの効果は満点で、舟や筏と一緒に小さなケースの中に並べ、飽かず眺めたものでした。

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さて数年経って、ふとあるとき「アレ、まだあるかなあ」と急に気になりだしたのであります。放置しておいていきなり欲しくなるとは、なんとも虫のよい話ではありましたが、思い立ったが吉日とお店に電話してみると「だいぶ少なくなったけれど、まだありますよ」とのこと! というわけで、横っ飛びに本所へ向かったのでありました。

今回連れ帰ったのは、前から欲しかった筋違いの板橋と大きい方の筏、お客を4人乗せた棹舟、釣り師2人乗りの艪舟と、そして河岸棒を突いてもやった空舟。この空舟の枯れた感じが一番気に入りました。

コーフンのあまり、お店の方とろくに会話もせず帰った前回と違い、今回は品物を梱包してもらいながら、お話をうかがう余裕がありました。ご主人によれば、まず主な材質はアンチモニーで、鋳型は石型だそう。一時期は他店に卸したこともあったほどだったが、作家さんはだいぶ前に亡くなられ、今は店頭の在庫のみとのことでした。

独特の照りと重みから、少なくとも帆や棹など、ディテール以外は精密な焼物だと思っていたのですが、これは私の勘違いでした。お恥ずかしい。石型のアンチって、明治~昭和戦前の小物玩具によく見られますよね。作家さんが亡くなられたとは残念です、この味わい深さというかセンスの良さは、模型製品でもまずお目にかかれない独特のもの。作風から見てもある時代の舟に、相応の思い入れがあった方とお見受けしました。

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入手したフネブネや橋を並べて、悦に入ってみました。昭和一桁くらいまでは見られたであろう、本流からちょっと入った街場の水路風景が思い起こされて、実に楽しいものです。

ここまで揃えば、舟や橋の居場所をあつらえる意味でも情景を作ってみたくなりますが、リアル志向の強い最近の素材やパーツだと、質感が違いすぎてアンバランスなものになってしまいそう。品物の作風が独特なだけに、かえって難しいかもしれませんね。

(元年6月30日撮影)

(この項おわり)

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