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川蒸気船の玩具

218021.jpg明治も二桁に入ると、各地の河川や湖沼で就航が相次いだ川蒸気のこと、その姿に親しみ、憧れた人々も少なからぬ数に上ったことでしょう。

となれば、絵や写真ばかりでなく、ミニチュアにあつらえて手元に留めておきたい、という欲求が必ず出てきたでしょうし、人気にあやかって商品化しようという動きもあったはずです。

もともと模型好きということも手伝ってそう確信し、川蒸気を題材にした玩具のたぐいを探していたところ、ありがたいことにご縁に恵まれて、この十年でほんのいくつかですが、手にして愛でることができるようになりました。
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まずは焼物玩具からまいりましょう。
左奥の大きい方が長さ170㎜、右手前の小さい方が58㎜です。

大きい方は、初期の鉄道を描いた錦絵を思わせる、和風テイスト濃厚なアレンジで、独特の魅力があります。船体を見ると、「下がり」のある船首、舵柄の露出した舵と明らかに和船で、木型を流用し甲板室だけ後付したように思えますね。意匠のセンスから考えて、原型が作られたのは明治初め~中ごろでしょうか。

15117.jpgこの「和風外輪船」、21年9月11日に訪ねた「三十石舟の宿・月見館…2」で、伏見人形として展示されていたほぼ同じものを見つけ、ぜひ欲しいと思っていたものです。

さっそく製造元に問い合わせたものの、2年連続で「今年は作らない」といわれてしまい、すっかりあきらめていたところ、幸いにも別ルートから古物として入手できました。


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裏側には「小幡土人形」と肉筆で記されていました。琵琶湖畔の名物だった小幡人形も、今や製造元は1軒のみだそうです。泥絵具の素朴な質感が好ましいですね。

というわけで、製造はごく近年のものですが、そのおかげで川蒸気が淀川筋から消え70年以上を経てなお、伝統玩具に姿を留めてくれていたのですから、感謝のほかありません。

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小さい方は、手のひらに収まってしまうくらい小さな、可愛らしいサイズ。下の写真でもお分かりのように土鈴で、煙突に開いた穴へひもを通して用います。小さい割にディテールはシャープで、窓や舷側のライン、パドルの一枚一枚に至るまでくっきり。錨には墨入れまでしてあります。

「コレ、本当に川蒸気かな? 単に外輪船を漠然とモディファイしたんじゃ?」という疑いがないでもないんですが、甲板室が船体にくらべ大きく四角いのと、船首尾があいまいなダブルエンダーぽく仕上げてあり、海船らしさが感じられないことから、川蒸気なんだと一人決めです。

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これも裏返してみると、「龍」「眼」と読める刻印がありました。今のところ手掛かりはありませんが、屋号でしょうか。塗色はすっかり剥落しているところを見ると、過ごした星霜はもとより、実際に愛用されていたのではとも思えます。製造はやはり明治ごろでしょうか。

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大新板舩の組立・大新板淀川上氣
版面250×367㎜、発行年月不詳。


さて、お次は大物です。立版古(たてばんこ)の淀川川蒸気! 江戸時代から大正ごろまで親しまれたペーパークラフトですが、川蒸気も存在したことを知って、本当に嬉しくなりました。

一枚目の床板パーツ(ごめんなさい、天地逆に取り込んでしまいました)にある「石川屋和助」という銘が見えますね。手元にあった「立版古 江戸・浪花透視立体紙景色」(INAXブックレット・平成5年)を開いてみたら、大阪駅や浪花橋の情景を題材にした立版古の版元「石川和助」という名前が出てくるのですが、同一人物でしょうか。

組立には一切の説明がなく、番号と余白に描かれた完成図のみをたよりに、切り抜いたパーツを貼り合わせ組み上げるのがパターンで、パズル的な面白さもあります。

見たところ水平垂直が甘く、円弧も歪んでいて、果たしてちゃんと組み上がるのか不安にさせるものが‥‥。これを研究者の某氏にお見せしたところ、スキャナーで取り込んで厚手の紙に出力し、組み立てて写真を送って下さったのです。おお、ちゃんと組めるんだ!

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某氏の技術力もあって、絵柄の歪みも味わいに転じる素晴らしい仕上がりに。丹塗りの外輪やブルワークの装飾に、先ほどの土人形のそれに近い錦絵テイストを感じさせます。

立版古はもともと、盂蘭盆に飾る灯籠の一種「切り組み灯籠」として始まったそうで、バックにロウソクを立てて、透かした絵柄を楽しむ構成のものが多かったとのこと。しかしこの川蒸気は、完成状態が密閉されており、車輪もついているので、純粋におもちゃとして考えられたものですね。今なら、豆電球を仕込んでもきれいで面白そうです。

しかし、スマートな完成図とはだいぶ違った寸詰まりというか、ずんぐりむっくりな川蒸気になりましたね! このちょっとした「がっかり感」も、立版古の楽しみの一つなのかもしれません。

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これは玩具ではありませんが、淀川の川蒸気つながりということで、おまけに一つご紹介。ずいぶん前に入手したもので、「淀川蒸氣寶舩」と題した、これまた旗差物も賑々しい錦絵風味の川蒸気。

「昭和十四年節分」と発行年月が記されているのはよいものの、紙質、絵柄ともいま一つの上、引札でもなしと用途が読めず、「何じゃこりゃ?」というのが正直なところでした。いや、川蒸気が描かれているのは、もちろん嬉しいことなのですがね。

機会があって、物流博物館の玉井幹司氏に伺ったところ、「お正月に枕の下に入れる、宝船の絵」とのこと! えっ、あの七福神と回文が描かれた、よい初夢を見るための絵?

なるほど、一回こっきりで使い捨てる絵なら、少々粗末でもうなずけるものがあります。しかし、七福神やムカデなど、縁起物が何一つ描かれていなくとも、ここ淀川流域では、川蒸気だけでよい夢が見られると思われていた時期があったのかしら?

いや~、玉井氏にお伺いしてよかったです、ありがとうございました! 「何じゃこりゃ?」などといってお恥ずかしい限り。コピーを枕の下に入れたら、素敵な川蒸気の夢が見られそうですね!

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タグ : 川蒸気船 淀川 立版古 小幡人形