江戸川閘門のディテール…3
(『江戸川閘門のディテール…2』のつづき)

●管理橋直下、側壁に見える繋留用のアイ。お椀型の金物を埋め込んだ中に、鉄環が備えられているタイプです。「北上運河閘門めぐり…7」の、石井閘門にも似た形式のものが見られますね。写真左角と右の角落しの戸溝に見られる、石材とあわせて、これまた時代を感じさせるディテールです。
下流側の後扉室側壁にもあるのですが、こちらは管理橋の分延長があり、ズラリと並んだアイの穴が壮観。これは通航船の繋留用というよりは、場所から見て、扉体メンテナンス時に供するためのものなのでしょうか。

●扉体を見上げて。後扉室のそれより、草の繁り方がだいぶ多め(笑)。こちらの特徴は、ご覧のとおり下流側に、鋼製の梁が設けられていること。
‥‥と、単なる梁だと長年思い込んでいたのですが、どうも、もう一枚の扉体だったようです! 前回触れた「土木建築工事画報」昭和14年6月号の「江戸川水門工事に就て」によれば、
「扉は引揚式で、上扉室に高6.0米(重量30瓲)1枚及高1.5米(重量10瓲)1枚計2枚」
「扉運転の動力は、50馬力電動機2臺、10馬力1臺を装置」
ええええ!?
●いや、驚いたと同時に、恥ずかしくなりました。最も長い付き合いの閘門について、こんな肝心なことを知らなかったとは。江戸川閘門君に心からお詫びしたい。小さい扉体のワイヤーや滑車は、取り外されて久しいのか、それとも左右の戸溝の中にでも隠れているのでしょうか。
記事の諸元でもお分かりのように、高さ1.5m・重量10tがこの小さい扉体のスペック。2枚に分けた目的は、通常の通船は主扉体のみで運転し、恐らく本流が増水したときのみ、小さい扉体を積み増して計画高水位をクリアする、ということでしょう。
それがわかると、さて気になったのは、この扉体がいかなる動作をしていたかです。
●小さい扉体は段の上に載っているので、大きい扉体の下に入るにせよ、上に積み増すにせよ、現在地から上流側へ前進する動作が必要になります。
航過しながら仰いだかぎりでは、どういったからくりなのかわかりませんでしたが、下流側に凸部がある扉体の構造から考えても、前進させて、大きい扉体に「乗るか、乗せるか」しなければ、水密は保てないでしょう。ちなみに大きい扉体の全閉時、天端は小さい扉体の現在地下端より、ずっと低い位置になります。
●戸溝を改めて観察してみると、下流側に、ぷつりと途切れる鋼製のレールがあるのに気づきました。大きい扉体のローラーは、この向こうにあるレールと接しているようだし、もしかしたらこれが、小さい扉体のレールなのかもしれません。だとすれば、大きい扉体の上に乗るかたちだったことになります。
そうだとしても、大きい扉体の上には滑車とワイヤーがあり、扉体の厚みも上にもう一枚乗せるような、特別な厚みがあるようには見えず、疑問が残りますね。動作の仕方を含めて、これはぜひ、陸路観察して謎を解きたいものです! ‥‥いや、これすらも、よく探せばウェブ上に資料があるのかしら?

●前扉室をくぐった直後に振り返って。縦に帯状の継手を見せるスキンプレートの下端には、アングルで作られた樋が取り付けられ、通航船への水垂れを軽減するようになっているのがわかります。
いやしかし、江戸川閘門で通航初体験をしてから実に20年目にして、新たな事実に気づかされるとは! お恥ずかしいかぎりではありますが、何か妙な因縁も感じさせたりして、ますます惹かれてしまうのでした。
(27年10月4日撮影)
(『江戸川閘門のディテール…4』につづく)

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下流側の後扉室側壁にもあるのですが、こちらは管理橋の分延長があり、ズラリと並んだアイの穴が壮観。これは通航船の繋留用というよりは、場所から見て、扉体メンテナンス時に供するためのものなのでしょうか。

●扉体を見上げて。後扉室のそれより、草の繁り方がだいぶ多め(笑)。こちらの特徴は、ご覧のとおり下流側に、鋼製の梁が設けられていること。
‥‥と、単なる梁だと長年思い込んでいたのですが、どうも、もう一枚の扉体だったようです! 前回触れた「土木建築工事画報」昭和14年6月号の「江戸川水門工事に就て」によれば、
「扉は引揚式で、上扉室に高6.0米(重量30瓲)1枚及高1.5米(重量10瓲)1枚計2枚」
「扉運転の動力は、50馬力電動機2臺、10馬力1臺を装置」
ええええ!?
●いや、驚いたと同時に、恥ずかしくなりました。最も長い付き合いの閘門について、こんな肝心なことを知らなかったとは。江戸川閘門君に心からお詫びしたい。小さい扉体のワイヤーや滑車は、取り外されて久しいのか、それとも左右の戸溝の中にでも隠れているのでしょうか。
記事の諸元でもお分かりのように、高さ1.5m・重量10tがこの小さい扉体のスペック。2枚に分けた目的は、通常の通船は主扉体のみで運転し、恐らく本流が増水したときのみ、小さい扉体を積み増して計画高水位をクリアする、ということでしょう。
それがわかると、さて気になったのは、この扉体がいかなる動作をしていたかです。

航過しながら仰いだかぎりでは、どういったからくりなのかわかりませんでしたが、下流側に凸部がある扉体の構造から考えても、前進させて、大きい扉体に「乗るか、乗せるか」しなければ、水密は保てないでしょう。ちなみに大きい扉体の全閉時、天端は小さい扉体の現在地下端より、ずっと低い位置になります。
●戸溝を改めて観察してみると、下流側に、ぷつりと途切れる鋼製のレールがあるのに気づきました。大きい扉体のローラーは、この向こうにあるレールと接しているようだし、もしかしたらこれが、小さい扉体のレールなのかもしれません。だとすれば、大きい扉体の上に乗るかたちだったことになります。
そうだとしても、大きい扉体の上には滑車とワイヤーがあり、扉体の厚みも上にもう一枚乗せるような、特別な厚みがあるようには見えず、疑問が残りますね。動作の仕方を含めて、これはぜひ、陸路観察して謎を解きたいものです! ‥‥いや、これすらも、よく探せばウェブ上に資料があるのかしら?

●前扉室をくぐった直後に振り返って。縦に帯状の継手を見せるスキンプレートの下端には、アングルで作られた樋が取り付けられ、通航船への水垂れを軽減するようになっているのがわかります。
いやしかし、江戸川閘門で通航初体験をしてから実に20年目にして、新たな事実に気づかされるとは! お恥ずかしいかぎりではありますが、何か妙な因縁も感じさせたりして、ますます惹かれてしまうのでした。
(27年10月4日撮影)
(『江戸川閘門のディテール…4』につづく)

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