綾瀬新橋こそ都内最低橋

163001.jpgときどきコメントをくださる、プロの船乗り「とも @TomoLinux」さんのツイッターを拝見して、アッと声を上げると同時に、本当に申しわけなく、かつ恥ずかしい気持ちになりました。

何についてかといえば、お題のとおりなのですが、ここは皆さんへのお詫びと、自分なりの整理も兼ねて、順を追って記させていただくこととします。
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ともさんが12月6日にツイートされた中に、以下のようなご指摘がありました。


ご覧のとおり、「誰がこういった」と名指ししたものではなく、それに対して、私ごときが当事者づらをして云々するのは、おこがましいにもほどがあるかもしれません。

ただ、「茂森橋が都内可航水路の最低橋である」という説を、旧ブログから何度も繰り返し記事に書き、また少なくとも複数回、各所でおおやけに取り上げられるきっかけを作り、そのお手伝いをしたのは事実ですし、それらに関して責任も感じています。ですから、このご指摘への説明をさせていただくことも、あながち間違ってはいないであろうと判断しました。

さて、結論からいえば、ともさんのご指摘は正しいものと思われます。

詳しくは後ほど述べますが、ともさんの発言は「東京都河川図」という、東京水上警察署(現湾岸警察署)の発行による、都内および近郊の河川・港湾を網羅した、水路誌のデータにもとづいたものです。

ともさんがこの翌日、12月7日にされたツイートで、6日の発言で触れられたA.P.高の数値は、本誌によるデータであることが確認できました。警察が調査した結果を元にしたのですから、ある意味お墨付きで、現状はともかく、これ以上信頼のおけるものはないといって差し支えないでしょう。

ともさんの発言中、茂森橋のA.P.高が、「江東内部河川通航ガイド(PDF)」のA.P.+2.3mや、過去の記事「茂森計」で触れた数値、A.P.+2.36mと異なるA.P.+2.2mなのも、ともさんが「東京都河川図」のデータを元にされているからです。

以上のことから、都内可航水路の最低橋は、大横川の茂森橋である、という過去に私が公言していた説は誤りであり、綾瀬川の綾瀬新橋である、と改めさせていただくこととします
同時に、ご迷惑をおかけした皆様に、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。



綾瀬新橋初くぐりまで

結果的とはいえ、誤りを長い間放置し、しかもそれを広める手伝いまでしてしまったのですから、この点について弁明の余地はありません。

では、「綾瀬新橋が都内で最も低い」ということを最初から知りながら、わざと黙っていたのかというと、それはちょっと違います。以下長くなりますが、ここに至る流れについて整理してみました。

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▲過去ログ「初めての綾瀬川…7」より

綾瀬新橋を初めて訪ねたのは、19年9月16日のことです。当時のGoogle航空写真を見て、川面に映る影から、ここに低い橋があるという見当はついていたものの、現物を前にしてその想像を絶する低さに、正直度肝を抜かれる思いでした。

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▲過去ログ「初めての綾瀬川…7」より再掲

潮位の高い日に訪ねたこともあり、すり抜けはかなわなかったものの、かえって低さが強調されたことも手伝い、何とかしてくぐってみたいという欲望をかきたてられました。写真による桁下高の推測なる、今思うと面映ゆくなるようなことをしていたのも、その気持ちのあらわれだったと思います。

この時点では、見たままの低さを実感した以外、何も分かっておらず、この区間の水路誌も持ってはいませんでしたし、また綾瀬川を含む水路誌が、存在することすらも知らなかったのは、いうまでもありません。

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▲21年3月15日撮影(以下3枚、すり抜け時の写真も同日撮影。『綾瀬川再訪…4』ほか参照)

21年3月15日、2年半を経て綾瀬新橋をようやくくぐることができ、頭上を圧する桁の低さを実感することができました。しかしこの時点は、くぐることがかなった達成感が先立っており、頭を冷やして検証するのは、まだ先のことになります。


警察作成の河川図があることを知る

さて、この後5月3日に水道橋分水路を訪ね、8日から「神田川分水路まつり…1」以下の記事をアップしてしばらくたったころ、その道の大先輩から連絡がありました。大先輩いわく、分水路を探検するとは殊勝な心がけである、いいものを見せてつかわそう(こんな偉そうないい方はしていませんが)とのこと。

そのいいものとは、神田川の水路誌! 水深はもとより、桁下高、分水路の略断面図や、基礎護岸の情報まで盛り込まれた詳しいものです。

きけば、水上警察の警備資料として作成されたものとか。「出所はきくな、門外不出であるぞ」とのみことのりに、ひたすらありがたく拝見するばかりでした。
先に触れた「東京都河川図」の存在を、このとき初めて知ったわけですが、拝見したのはごく一部、神田川の区間のみで、書名も明かされなかったため、この時点では「こういうものもあるんだなあ」と、感心するにとどまりました。

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▲「【特盛】最低橋の仲間たち」より


綾瀬新橋が最低橋?

その後しばらく、綾瀬新橋からは遠ざかっていたのですが、半年ほどたって、「最低橋の仲間たち」(22年1月7日アップ)をまとめるにあたり、自分なりに検証してみようと思い立ちました。

ただし、写真と訪問日の感覚をもとに、推算潮位と自艇の全高から、目分量で測ったまったくの推測に過ぎません。潮位推算地点からの距離を加味した、タイムラグを併せ考えてみても、すでに上記の記事に書いたとおり、おおむねA.P.+2.1m前後なのでは、という結論に達したのです。

ただ、正確な測量はもとより望むべくもなく、信頼できる資料の裏付けも欠くため、断言は避けなければいけないことから、「確証なし」の但し書きをつけざるを得なかったわけです。
一般に存在が周知され、冊子の配布までされていた都内の水路誌が「江東内部河川通航ガイド」と、荒川の「河川航行情報図」(ウェブ上では、江戸川・利根川下流部も公開されていましたが)のみでしたから、いち素人としては、いかんともしがたいところではありました。

裏付けがないだけに、私ごときが軽々しく「綾瀬新橋が一番低い」と、公言するわけにはゆきません。ただ、少なくとも自分の中で「綾瀬新橋の方が、茂森橋より低いのではないか」という、いわば疑念が芽生え始めたときをあえて挙げるとするなら、この時点です。


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茂森橋への関心の高まり

確たる裏付けが取れないまま過ごすうち、タモリ倶楽部(『茂森橋の晴れ舞台!』23年7月9日アップ)、日経新聞サイト(『日経Web「東京ふしぎ探検隊」で茂森橋を紹介!』24年2月10日アップ)と、都内最低橋としての茂森橋を主題にしてくださるお話がいくつかあり、そのお手伝いをさせていただきました。
テレビ番組や新聞の記事に採り上げられることで、「茂森橋=最低橋」説をおおやけに広め、結果的にいわば補強してしまったことになったわけです。

それより先に「東京水路をゆく」「水路をゆく」も上梓されており、当然茂森橋については、それぞれ一項を設けて紹介していますから、何をかいわんや、とお叱りを受けても、仕方のない状況ではありました。
せっかく「取材」という名目を得て、方々にお尋ねできる機会が、しかも何度もあったのですから、なぜこの時点で、担当部署に確認するなりしなかったのかと、今さらせんないことながら、かえすがえすも悔やまれます。

この間の状況を正直に申し上げると、綾瀬新橋の件はきれいさっぱり忘れ去っていました。茂森橋が注目されるのが何より嬉しくてならず、それにかまけて、検証はすっかりお留守になっていたというわけです。

ここに至った原因を説明するなら、茂森橋はすでになじみ深く、好きでたまらない存在であったのに対して、綾瀬新橋はそうではなかった(少なくともこの時点では)、ということに尽きると思います。

茂森橋に対する思い入れと、その魅力については、今まで各所で幾度となく述べてきたので、ここでは繰り返しません(参考:タグ『茂森橋』)。しかし、こうして今かえりみれば、まさにひいきの引き倒しだ、といわれても仕方がないでしょう。綾瀬新橋のみならず、茂森橋に対しても悪いことをしたと、後悔することしきりであります。

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東京水上警察署発行「東京都河川図」について

少し脱線しますが、このお話の元データとなった本ですので、紹介させていただきます。
今年になってから、以前大先輩より極秘閲覧の栄に浴した、警察の水路誌のことを思い出しました。何とはなしに「アレ、もしかして図書館で見られないかな‥‥」と、ダメもとといった感じで、検索してみたのです。

意外なことに、実に簡単に見つかったのでした。国会図書館に蔵書されていたのです。「東京都河川図・東京水上警察署」(国立国会図書館サーチより)これに違いない!

いや、大先輩も「門外不出」といわれていたことだし、もしかしたら閲覧には、特別な資格や許可が必要なのかも。読んでみたい一心で、恐る恐る問い合わせてみると、「当日手続きをすればすぐ閲覧可」とのこと。

‥‥いや、拍子抜けしました。あるいは、大先輩が入手された当時は、非公開の極秘資料だったのかもしれません。しかし、少なくとも現在は、天下晴れて誰でも目にすることができる、公開情報であることがわかりました。時間を作って横っ跳びに国会図書館へおもむき、全ページを複製するのはご法度のため、興味深い部分のみ選んでコピーしてもらったのが、以下の写真です。

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▲「東京都河川図」平成12年版表紙(複写)。実物は青系のレザック表紙。

さて、この「東京都河川図」、警視庁東京水上警察署舟艇課の刊行によるもので、少なくとも国会図書館には、昭和54年版と平成12年版が蔵書されています。
手元にあるのは平成12年版のコピーで、巻頭の「発刊にあたって」には、「昭和54年に東京都河川図が発刊されてから20余年」とあるため、54年版が初版とみてよいでしょう。12年版の後、改訂版が出されたかどうかは、今のところわかりません。

A4横判250ページ、同じく「発刊にあたって」によると、収録されたものは「46河川、33運河、451橋梁、105鉄道橋、52高速橋、54水閘門」におよび、都内はもとより、隣接3県の可航水路も一部含まれています。警備艇の出動要請に応じられる範囲、ということなのでしょう。

内容は、水路を地域やいくつかの区間に分け、線図で流路の形が、A.P.およびY.P.基準で水深が主な澪筋に沿って記入され、橋の桁下高はもちろん、水上から見える主な目標、桟橋など河川構造物管理者の連絡先、航行上の注意点まで書き込まれているというもの。
まことに簡にして要を得た、見事な水路誌というべき冊子でした。作成された関係者に、心から敬意を表したいと思います。

惜しむらくは、この本に収録されている水路を、ほとんど自艇で訪ねてしまった後だったということでしょうか。出会うのがあまりにも遅すぎたのです。しかも刊行から14年を経ているため、水路の状況も大きく変化し、収録内容とは違った部分が多いことも確かです。

しかし、東京の水路のある時期を、舟航河川としての環境を主題に(ここ重要)、克明に記録したという意味では、むしろ今後ますます貴重な資料となってくると思います。

余談ながら、注意事項のちょっとしたメモ書きには、ハッとさせられるものや、ユーモラスなものがいくつか見られます。「新左近川は浚渫してもすぐ浅くなる」(新左近川)、「成増橋上流はコイも腹をすりながら泳ぐのに難儀しているらしい」(白子川)あたりが最右翼でしょうか! ‥‥そういえば、白子川もいってみたいものです。


ようやく「綾瀬川=最低橋」の裏付けが取れる

話を戻して、この「東京都河川図」をコピーしてしばらくたってから、綾瀬川の項を眺めていたら、ここでようやく、今まで忘れ去っていた、綾瀬新橋のA.P.高に吸い寄せられました。何しろ「綾瀬川最低橋梁」との注釈つきですから、これはいやでも目につきます。A.P.+2.0m!

念のため記しておくと、「最低橋梁」の注記は、他の水路でもあります。どういうわけだか、茂森橋にはなく、がっかりしたものでした。どうも、その橋をくぐらなければ上流へ遡上できない橋に、「最低橋梁」の称号が与えられるようで、他の水路に迂回しうる茂森橋は、その栄誉に属さなかったのかもしれません。

さて、自分の推測がそう外れていなかったことを確認でき、嬉しくなると同時に、慕ってやまない茂森橋のことを思うと、これは正直、複雑な気持ちになりました。
その、気持ちのもやもやを抱えたまま、最近に至ったわけですが、ともさんのツイートに背中を押していただいた形となり、恥を忍んで、今回のお話を披露させていただく次第となったわけであります。この点ともさんに、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

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自分の思い入れについては措くとして、今は綾瀬新橋こそが都内最低橋であることをお伝えしたい、ただそれのみです。
A.P.+2.0m‥‥、堀割でも細流でもない、本流のさなかに、小面憎いほどの低さを持って遡上を阻む最低橋! 自分の中で、改めて綾瀬新橋の存在が、ひときわ大きくなってきたことを感じざるを得ません。

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タグ : 綾瀬新橋 綾瀬川 最低橋 東京都河川図

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