外輪を見ていた午後…6
(『外輪を見ていた午後…5』のつづき)
●以下覚え書き的に、「ミシガン」で実運用されている船尾外輪を見ての感想というか、思い浮かんだあれこれを垂れ流させていただきます。
●ご存知のように、国内の外輪汽船はその多くが、船体ほぼ中央の両舷側に設けられたタイプのもので、「ミシガン」のような船尾外輪は普及しませんでした。下に掲げた昭和戦前の絵葉書のように、旧満州など、日本の勢力圏下にあった外地の大河では見られたようですが、内地での採用例がきわめて乏しかったのは、なぜでしょうか。

●外輪という推進器は、喫水が浅くて済み、水線下に軸穴を開けずともよく工作がしやすい、初動からダッシュがきくなど、特に内水航路の船にとっては、多くの長所を持っています。
反面、かさ高で水面上に大部分が出ているため、機関を含めたレイアウトに制限が多い、波浪や浮流物で損傷しやすい、騒音が大きいなどの短所があり、スクリュープロペラの改良が進むと、その座を明け渡すこととなりました。
●短所の中でも大きかったのが、やはり、ちょっとしたことで壊れやすい、ということではなかったでしょうか。特に小型の川汽船など、流木でも衝突したら一発で、大雨の後などはずいぶん悩まされたものと思われます。
たびたび引用している、「通運丸と黒田船長」(筑波書林)にも、波浪時の空回りなどで外輪が損傷したときの、修理の苦労が語られていました。カバーを外し、外輪を軸から抜いて修繕なり交換をするというのは、吊り上げ設備のない場所では、さぞ大変なことだったでしょう。
●その点ケーシングもなく、外輪へのアクセスが容易な船尾外輪は、舷側外輪にくらべて、短所を補って余りある利点があったように、素人考えでは思えたのですが。
舷側外輪とくらべての、船尾外輪のマイナス点を挙げるとすれば、全長が長くなるというあたりでしょうか。舷側のそれが、機関・罐室の真横に並列できるのに対し、船尾のそれはいわば直列で、同じ容積を保とうとすると、外輪の分船体が長くなり、狭い水路では取り回しに難が出てきます。容積は甲板室を多層にすれば解決できるものの、橋のある街場の水路を通るとなれば、それも難しいでしょう。
●あと、曳航がやりにくそう、というのもあったかもしれません。上の絵葉書のそれのように、外輪周りに曳索がからまぬようガードをとりつけ、上甲板から曳索を伸ばすようにすれば可能ではあります。ただ、やはり船尾に回廊があるタイプにくらべ、素人目にも使い勝手が悪そうではありますね。
まあ、フタを開けてみると、単に初の国産船が舷側外輪で、それを模倣して同様のタイプが増えていっただけ、といったあたりが真相のような気もするのですが‥‥。勝手にあれこれ妄想を広げてみたお粗末であります。

●二回目の寄港地で、停止した外輪を眺めていると‥‥あらら、藻がごっそりとからんでいますね。スクリューだったら、下手をしたら動けなくなっているところで、木っ端ブネ乗りとしては気味のいいものではありません。このくらいで済むのも、外輪の良いところではあるのでしょう。
大津港内を含めて、沿岸には何ヶ所か藻が群生しているところが見られました。水深が浅いところもあるのかな、と思っていたら、案内の放送によると、湖南水域には4m程度のところが多いとのこと。浅喫水船、外輪船がその長所を遺憾なく発揮できるフィールドなんだと、ちょっとした感動がありました。
●初めから終わりまで、ほぼ外輪漬けだったので、他の船内はほとんど見ていないというていたらく。操舵室くらい見学しておけばよかったなあと後悔したのですが、すべては後の祭りであります。
3層目のステージでは、航行中ずっとライブショーが催されており、曲の合間にクイズや観光案内、お土産がもらえるお子さんたちの参加コーナーもあるなど、大入り満員の盛況。皆さんノリノリで楽しそうでした。
●船首錨甲板に行ってみると、黒光りしたごついストックアンカーが、二つ鎮座していました。ダミイのアンカーデリックやマストが所狭しと並んでいるので、あまり視界は良くありませんが、浅喫水船特有の水面の近さが感じられて、やはり嬉しいものがありますね。
ステージからのアナウンスで、間もなく大津港とのお知らせが。ほぼ外輪を眺めることだけに費やした楽しい時間も、終わりが近づいてきました。

●大津港の防波堤では、先ほども見た大噴水が放水中でした。防波堤をかわしたところで振り返ると‥‥おお、キレイな虹が何重にも! 皆さん歓声を上げて、いっせいにカメラ(いや、スマホですね)を構えていました。
(26年9月21日撮影)
(この項おわり)

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●以下覚え書き的に、「ミシガン」で実運用されている船尾外輪を見ての感想というか、思い浮かんだあれこれを垂れ流させていただきます。
●ご存知のように、国内の外輪汽船はその多くが、船体ほぼ中央の両舷側に設けられたタイプのもので、「ミシガン」のような船尾外輪は普及しませんでした。下に掲げた昭和戦前の絵葉書のように、旧満州など、日本の勢力圏下にあった外地の大河では見られたようですが、内地での採用例がきわめて乏しかったのは、なぜでしょうか。

●外輪という推進器は、喫水が浅くて済み、水線下に軸穴を開けずともよく工作がしやすい、初動からダッシュがきくなど、特に内水航路の船にとっては、多くの長所を持っています。
反面、かさ高で水面上に大部分が出ているため、機関を含めたレイアウトに制限が多い、波浪や浮流物で損傷しやすい、騒音が大きいなどの短所があり、スクリュープロペラの改良が進むと、その座を明け渡すこととなりました。
●短所の中でも大きかったのが、やはり、ちょっとしたことで壊れやすい、ということではなかったでしょうか。特に小型の川汽船など、流木でも衝突したら一発で、大雨の後などはずいぶん悩まされたものと思われます。
たびたび引用している、「通運丸と黒田船長」(筑波書林)にも、波浪時の空回りなどで外輪が損傷したときの、修理の苦労が語られていました。カバーを外し、外輪を軸から抜いて修繕なり交換をするというのは、吊り上げ設備のない場所では、さぞ大変なことだったでしょう。
●その点ケーシングもなく、外輪へのアクセスが容易な船尾外輪は、舷側外輪にくらべて、短所を補って余りある利点があったように、素人考えでは思えたのですが。
舷側外輪とくらべての、船尾外輪のマイナス点を挙げるとすれば、全長が長くなるというあたりでしょうか。舷側のそれが、機関・罐室の真横に並列できるのに対し、船尾のそれはいわば直列で、同じ容積を保とうとすると、外輪の分船体が長くなり、狭い水路では取り回しに難が出てきます。容積は甲板室を多層にすれば解決できるものの、橋のある街場の水路を通るとなれば、それも難しいでしょう。
●あと、曳航がやりにくそう、というのもあったかもしれません。上の絵葉書のそれのように、外輪周りに曳索がからまぬようガードをとりつけ、上甲板から曳索を伸ばすようにすれば可能ではあります。ただ、やはり船尾に回廊があるタイプにくらべ、素人目にも使い勝手が悪そうではありますね。
まあ、フタを開けてみると、単に初の国産船が舷側外輪で、それを模倣して同様のタイプが増えていっただけ、といったあたりが真相のような気もするのですが‥‥。勝手にあれこれ妄想を広げてみたお粗末であります。

●二回目の寄港地で、停止した外輪を眺めていると‥‥あらら、藻がごっそりとからんでいますね。スクリューだったら、下手をしたら動けなくなっているところで、木っ端ブネ乗りとしては気味のいいものではありません。このくらいで済むのも、外輪の良いところではあるのでしょう。
大津港内を含めて、沿岸には何ヶ所か藻が群生しているところが見られました。水深が浅いところもあるのかな、と思っていたら、案内の放送によると、湖南水域には4m程度のところが多いとのこと。浅喫水船、外輪船がその長所を遺憾なく発揮できるフィールドなんだと、ちょっとした感動がありました。

3層目のステージでは、航行中ずっとライブショーが催されており、曲の合間にクイズや観光案内、お土産がもらえるお子さんたちの参加コーナーもあるなど、大入り満員の盛況。皆さんノリノリで楽しそうでした。

ステージからのアナウンスで、間もなく大津港とのお知らせが。ほぼ外輪を眺めることだけに費やした楽しい時間も、終わりが近づいてきました。

●大津港の防波堤では、先ほども見た大噴水が放水中でした。防波堤をかわしたところで振り返ると‥‥おお、キレイな虹が何重にも! 皆さん歓声を上げて、いっせいにカメラ(いや、スマホですね)を構えていました。
(26年9月21日撮影)
(この項おわり)

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