世界最小水路の旅!

(『京都市動物園にて…2』のつづき)

159036.jpgゴンドラが最高部を過ぎたところで、この小遊園地を見下ろしたとき、目を見開くと同時に、大げさかもしれませんがこう思いました。

今まで見たモノは、すべて前振りに過ぎなかったと!

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159037.jpg見下ろす視界に、さっきは観覧車に気を取られて、まったく眼中になかったいまひとつの乗り物が、いやでも目に入ってきました。ちなみに、この小遊園地の乗り物は、観覧車、子供汽車、電動カート、そして今見ているコレの、たった4種類のみ。本当に小さな小さな遊園地なのです。

えっ? いや、ちょっと、これは明らかに‥‥。


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ボート? しかも水に浮いているようだ!

金ダライに樟脳舟を浮かべたような、昔のオモチャっぽい、見るからに素朴な雰囲気に一目惚れ! スリルもサスペンスも、全くないであろうことを遠目にも確信させるこの外観。何で、今まで気づかなかったんだろう!

乗る! 乗ります!

とたんに観覧車のスピードが遅く感じ始めたのですから、現金なものです。

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「のりもの券」を買う手間ももどかしく駆け寄って、柵内へ入場。ちなみに名称は、

回転ボート。

もう「そのまんま」と指摘するのも赤面するような、熱いハートをど正面から貫通せんばかりの直球ぶり、名前まで期待を裏切りません!

さっそく艇の細部を検分。ガンネルが張り出した浅い船体は、平水域専用艇の雰囲気十分。長さ/幅比もいい塩梅で、少し大ぶりなオーニングがよく似合っていますね。

達着舷たる左舷には、滑り止め鉄板のステップとハンドレールも付くという、お子様にも安心な親切設計です。ほんのささやかなものながら、フロントグラスも備えて、前方視界の確保に配慮されているのも佳し。

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シートは木製ベンチシートで2列あり、舵輪が6組も備えられていて、乗り組みの誰が突然倒れても、即座に操舵を交代できそうではあります。後甲板には、四角いメンテナンス用と思われるハッチがあり、スターン水線下には、推進器らしい二つの突起も。残念ながら、ちゃんとプロペラの形をしているかは確認できませんでした。

「回転ボート」艇隊は全部で5隻ですが、艇によって整備状態には若干の差が見られました。塗装などはローテーションで、1隻づつ行われているのかもしれません。

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ふと気になったのが、この極小水路世界の中心たる部分。

天を突き高くそびえるこの、白い円筒形の物体は‥‥。

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もしかして、灯台?

塗り分けからして、シャッポそのものの頂部と、眼窩のような丸窓から、最初は古典的なロボットのオブジェかと思ってしまいました。すごく光達範囲が限られそうとか、いろいろとギモンを覚える外観ではありますが、水路世界の中心建造物、ないがしろにしてはいけません。

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そして、頑丈そうな鉄棒で支えられた、のっぺらぼうのカモメ。

これで顔や羽の模様がペイントされていたら、それはそれで錆びてきた後に怖いものになる可能性も捨てきれないので、難しいところではあります(何をいってるんだと)。まあ、この灯台とカモメ周辺に、昔あった情景系のブリキ玩具っぽさが感じられて、魅力をいや増すところではありますね。

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さて、ウキウキと艇内に腰を下ろして、改めて目の前の舵輪をしげしげ。少しざらりとした、快い手触りの鋳物製。ホイール径は手のひらぐらいの、本当に可愛らしいものですが、金属の質感と適度な重さは、ちびっ子艇長も満足するに違いありません。

回してみると、軸に袋ナットで留められていて、軽やかにカラカラと回転します。わが艇でも全席にこれを取り付けて、お客様に艇長気分を味わっていただいくのもよろしかろう‥‥と妄想させるものが。

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しかし、乗った瞬間、艇がゆらりと沈み込み、反動でかすかにピッチングするのを体で感じられたときの、この充実感! 

周囲の水が、ただ満たしただけのダミーでなく、本当に浮いているのが実感され、じわじわと嬉しさがこみ上げてきたものでありました!

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バウのランプケースが気になって、ふと足元をのぞき込んでみると‥‥。おお、ちゃんとコードが配線されている! 

お飾りでなく、きちんと点灯できる充実の装備(?)に妙に感動。ちなみにシート下のデッキは、スノコ状の木製デッキで、使用素材の多彩さ(??)は、我が艇をしのいでいます。

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モーターの唸りが高まって、艇が動き始めました。進むにつれて川風は頬をなぶり、水の匂いが鼻腔をくすぐる‥‥。いつもの水路行と、たがうところのないこの感覚。

ささやかな円形のエンドレスといえど、これはまさに水路! 
これは世界最小水路の旅なのだ(断言)!

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くぐる橋も、仰ぐクレーンもないところが、強いていえば少々さびしくはありますが、秋晴れの美しい青空と、右手にはつねに鉄板臭(?)を発散する灯台さんが、このささやかな旅のお供についていてくれます。

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スピードを増すにつれて、先行艇のウェーキが盛り上がって、白く泡を噛む様子がなかなかの迫力(でもないか?)。

反射波で水面はますます波立ち、ギラギラと陽光を反射して、刻々と表情を変えてゆくあたりも、ホンモノの水路と違いなし。いや、ちゃんとツボを押さえてくれますわ!

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ここで、恥を忍んで告白しますが、

続けて二回乗りました。

船頭の欲望から無理強いしたのでなく、我が艇乗り組みの希望もあったのですが‥‥。もしかすると、「乗りたいオーラ」を発散する様子に気圧されて、付き合ってくれていただけかも。申しわけございませんでした。

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もうホラ、反射波を乗り越える船首波も、ホンモノそっくり(当たり前だ)なんですから! 体に感じる波の振動もそのまま、五感に伝わってくるそれは、まさに川走りそのもの。

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持ち上げられて空を舞うでなし、水を割ってワニが襲ってくるでなし、音曲がかかるわけでもなし。現代の遊具につきもののイベントのたぐいは、全くありません。そのストレートな名のまま、ひたすら円形水路をめぐりゆくのみ。

いってみれば、「回転ボート」の売り物は、水に浮いて進む、この一点なのです。水上をゆくことそのものを、娯楽にしているおっさんにとって、我が意を得たりと膝を百万回たたきたくなるような、ツボを極太のすりこぎでこね回されるような、えもいわれぬ嬉しさが湧きあがってくる遊具でありました。

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おまけ。これが前回も触れた、「のりもの券」のメダル。素朴な刻印がまた味わい深し。金と銀がありましたが、貨幣価値に変わりはありませんでした。

ちなみに「回転ボート」、銘板を探してウロウロしたものの、それらしきものはついぞ見当たりませんでした。京都市動物園の遊園地、この手の遊具を研究されている向きには、きっと有名なスポットだと思われますので、素性をご存知の方がおられたら、ぜひご教示願いたいものです。

(26年9月21日撮影)

(『大津閘門の周辺…1』に続く)

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タグ : 京都市動物園 回転ボート

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