横利根閘門の絵葉書六題

140001.jpg利根川の増水から霞ヶ浦沿岸を守るため、大正時代に建造された、赤レンガの構造を持つマイタゲート、横利根閘門。改修を経て自動化され、今なおバリバリの現役なのが素晴らしく、閘門好きとして何度か訪ねたものです。

この横利根閘門、竣工から間もないころは、水郷の名物として大いに注目されたようで、現在でも当時の絵葉書が、比較的多く出てくる物件でもあります。そんな横利根閘門の絵葉書を、手持ちのものからいくつかより抜き、水運時代をしのんでみました。
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佐原沖東洋一關門
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行。

近隣の農舟でしょうか、タテイタ造りらしい角張った船首の和船が、艪漕で下流側から入閘する様子をとらえたもの。少し引いたところから見たレンガの堰堤と、静かに進む舟の位置が絶妙で、お気に入りの一枚でもあります。

帆は降ろしているものの、帆柱を倒さずに進入してゆくあたり、高さ制限のないマイタゲートの長所をも感じさせて、「いいなあ」と、一人唸ってしまうのです。

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水郷名勝 利根川 佐原沖關門
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行。

こちらも上と同じく、下流側の岸から撮ったものですが、ぐっと近寄って、扉体や角落としの溝など、ディテールが見て取れる距離です。黒くつぶれて見えにくいですが、扉体の手前には艪漕で進入中の舟が写っていますね。

堰堤上の植木には、まだ支え木がされていて、植えて間もないことが感じられます。葉を落としているところから、季節は冬なのでしょうか。

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(水郷の潮來)常陸下總國境の關門
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行。

「香取神風こちらへ吹かせ 主の歸りをとゞめたい」と、何かせつなくなるような唄が入っています。高瀬舟時代を思わせる歌詞からして、昔から遊女の間などで伝わったものなのでしょうか。

趣味的にはせつないどころではなく、結構コーフンさせられる一枚なのです。手前右側に写っている部分、船‥‥外輪川蒸気の上甲板(屋根)じゃないですか! 扉体は上流側なので、土浦や潮来を発して佐原に向かう船の、左舷外輪付近から撮ったものということになります。

そればかりでなく、扉体の手すりを透かした向こう、閘室内にも、数隻は下らない船と、船上に立つ人影が見えます。その向こう、下流側にも船らしきものが‥‥。閘門上の人の多さから見ても、何かのお祭り、例えば香取・鹿島神宮の船渡御があったとか、イベントのさなかに撮影されたものかもしれません。

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東洋一の佐原關門
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行。
「福弥(?)旅館 電四三」の風景印あり

こちらは閘室を写したもの。閘室の側壁は法面となっているので、注排水時に入閘する船が乗り上げたりしないよう、緩衝杭と呼ばれるフェンダーを、閘室全長に渡って備えています。ズラリと並ぶ柵状の構造物は、見る人々に強い印象を与えたことでしょうね。

まず目に入るのは、左側にいる小型の川汽船。煙突がないことから、発動機船でしょう。右側にはもう一隻、小型船がもやっているようですが、発動機船の排気煙が立ち込めているのか、白く靄がかかってよく見えません。両岸に目をやると、ずいぶん緑が濃いことから、植えられた木々も成長したことが感じられ、上の3枚より、時代がかなり下ってからの撮影ということがわかります。

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水郷の護り大利根治水工事中の最大の記念物横利根の關門
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行。
表面「不許複製(香取神宮社務所發行)」、裏面「PRINTED BY KAIGAKENKYUKAI」の銘あり。

140009.jpg法面の芝生の質感や、緩衝杭を組んだボルトまでとらえられた鮮明な仕上がり、その上汽船までと、嬉しくなるような写真ですね。閘室から下流側扉体を写したものです。

進入してくる汽船、恐らく水郷汽船の一隻で、残念ながら船名はわからないものの、屋根上のオーニングや操舵室、その後ろにチラリと見える煙突と、観光船らしいスタイルが見て取れます。屋根や回廊までお客をあふれさせて、大入り満員なのも、かつての賑わいを感じさせていいですね。そういえば水郷汽船、閘門のすぐ脇に、戦後に至るまで汽船ターミナルを擁していたのでしたっけ。

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(水郷十六景)佐原沖關門
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行。

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水郷の名物 利根川の閘門
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行。

上流へ向けて、閘室を出てゆく外輪川蒸気‥‥煙突の白線3本ですから、銚子丸船隊の一隻ですね。閘室や扉体とくらべて、川蒸気の大きさがよくわかり、また外輪船の立てる引き波にも、現代の動力船とは違ったものが感じられて、興味をそそられます。

2枚をご覧になっておわかりのように、原版は同じ種板(ネガ)から焼かれたもので、どちらかが裏焼きです。昔の絵葉書では、ときどき見られるやり方ですよね。詰所など建物が写っていれば即座にわかるのですが、陽の当たり方と、季節が冬らしいことから推定するしかなさそうです。上のものは、下のそれよりトリミングされていることも、ヒントになるかもしれません。

ちなみに、「川の上の近代」(過去ログ『川蒸気本の決定版』参照)には、「(水郷十六景)佐原沖關門」と同じ焼き方の、キャプション違いが掲載されていました。

さて、お気づきの方もおられると思いますが、今回紹介した6題7枚、最後のひとつをのぞいて、「關門」(関門)表記です。以前も何度か触れたように、横利根閘門の地元通称は「カンモン」。絵葉書にまで、その呼び方がしっかり根付いていたことが感じられて、これまた面白く思ったことでした。

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タグ : 横利根閘門 閘門 川蒸気船 和船 水郷 横利根川 絵葉書・古写真

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