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「里帰り」した話…5

(『「里帰り」した話…4』のつづき)

113060.jpgうらり」の受付に駆け込んで乗船券を買い、乗り込んだのが「水中観光船・にじいろさかな号」。水中といっても、潜水するわけではありません。喫水線下に窓を開けた、いわゆるグラスボートというやつです。

餌付けされて集まる魚を、水面下から見物するための船ですが、自分の目的は毎度のごとくよこしまで、城ケ島水道を東へ出たところで餌付けするので、城ケ島大橋を間近に眺めたり、水道通航を楽しむことができると踏んだため。風が強い日でもあったので、外海に出たらガブることは明らか、スリリングな道々になりそうですね。

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乗ってすぐに、上甲板から下の展望室に下りてみました。本来ならば、餌付けをして魚が集まってから下りるべきなのでしょうが、やはりめったにないグラスボート、興味を惹かれて空いているうちに一枚。

実は10年ほど前、「うらり」の対岸から発着していたころに、一度乗ったことがあるのです。海底の様子や魚たちももちろん面白かったのですが、もっとも興奮させられたのは、航行中の情景でした。猛烈な勢いで、泡を噛み後ろに流れゆく海水、キャビテーションを生じさせながら回転するスクリューと、フネ好きとしては血沸き肉躍るシーン!

特にスクリューの回転ぶりは、眺め続けていても飽きない面白さだったのですが…。残念なことに、今回乗った船は、以前とは違う船体のようで、スクリューは窓よりはるか後ろにあり、見ることができませんでした。

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階段の横に掲げられていた、本船の配置図。主機やプロペラシャフトまで描かれているのがそそりますね。

まるでナマズのようにだんびろな船体に、紡錘形のゴンドラが吊り下げられているような、変わった構造なのはグラスボートならでは。展望室の床に立つと、主機はちょうど頭くらいの位置にあり、四周を圧する流水の音とともに、エンジンの爆音が楽しめました。

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さて、主な目的は橋と水道ですので、上甲板に戻って風景を楽しみます。お客さんもそこそこあって、結構な賑わい。オーニングで視界はいまいちですが、猛暑日だったのでかえってありがたいくらいでした。

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城ケ島大橋が近づいてきました。風が強いこともあって視程はよろしく、橋脚の間を透かして、房総の山並みまでくっきりと望めました。

ここをくぐって水道を出れば、南からのうねりと半島南岸からの反射波で、木っ端ブネにとっては一番の難所である剣崎沖。目もくらむような波頭に押し上げられ、次の瞬間は周りが全く見えない谷間に落ち込むという、大荒れの中を突破したこともあったけなあ…。

しぶきが間断なく顔面にぶち当たるため、水中メガネをしていなければ、まともに前を向いていられないという、思い出しても恐ろしい厳しさでした。

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いや~。

赤い橋桁が西日に輝いて、スマートな橋をさらに美しく見せてくれました。乗ってよかった!

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塩梅のいいことに、ほぼど真ん中で橋の裏側をとらえることに成功。全長575m、桁下高23.5mの威容(参考:Wikipedia『城ケ島大橋』)。

橋脚もこうして近くで眺めると、直線的ながら、主脚や梁のラインにどこか時代を感じさせるものがあって、最近のものとは違った味がありますよね。整備されてまだ間がないのか、桁裏も橋脚もきれいです。

かつて、城ケ島大橋をよくくぐっていたころは、よもやここまで橋に惹かれるとは、思ってもいませんでしたねえ。

113067.jpg水道の東口も近くなってくると、船は次第にガブりだし、丸い船首が波を分けるたび、ドシン、ドシンと結構な衝撃が。すでに風は強く、船の速度も加わり、船首近くではちょっと息苦しくなるほどです。

しばらくすると、さらにローリングが激しくなってきました。船になれないお客さんが、魚を見る前に酔ってしまわないか、心配になってきます。


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航路を示すブイ越しはるかに、三浦半島南端の風景を望んで。発電風車のそびえる緑濃い海食崖、胸のすくような雄大さですが、水辺の岩には白波が砕け、波高の高いことがうかがえますね。

この揺れの中で、展望室から海中を見てみたらどんなものか、惹かれるものがあって、下りてみることにしました。さて…。

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おおお! 思った以上の迫力! 

舷側がスッと持ち上がると、一瞬ですが、ご覧のように水面上が見えそうになったことも何度かありました。船体が波を越え、水の抵抗にあらがって進むさまが、生で体感できる面白さ! 魚もよいですが、フネ好き的にはこちらも大いに魅力があります。

113070.jpg海中展望ポイントに到着、下りてきたお客さんと並んで座り、船上から撒かれた餌に寄ってくる魚たちを見学です。

この波とあって、水深の浅いポイント付近は、泡と海底から巻き上げられた砂で、ほとんど視界が効きません。海底の様子はもちろんのこと、魚たちもごく近いもの以外は、ぼんやりとしか見えませんでした。前回乗ったときは、冬ということもあって水がよく澄み、岩場に揺らぐ海藻の林が見事だったのですが…。

113071.jpg船上に上がって、舷側に群らがるお魚さんたちを一枚。

以前訪ねた鯛の浦では、船上から眺めても鯛の鱗まで見分けられるほどでしたが、荒れ模様とあってはご覧のとおりいまひとつ。海のご機嫌次第となれば、これは致し方ありません。



113072.jpg餌付けポイントを後にして、船は帰路に着きました。遠ざかる半島南岸の風景を、名残りにもう一枚。

沖から見ると、岩勢いかにも荒々しく、寄らば船底を噛む暗礁も多くひそんでいそうで、文字どおり寄る辺のない、心細さがつのる眺めに感じられたものでした。ここを通ったときはほとんど、南風の吹きつける波荒い時季だったことも、そうした印象を手伝っているのかもしれません。

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だいぶガブったこともあり、他のお客さんにすれば、ちょっとツラいひとときだったかもしれませんが、自分にとっては、剣崎沖の厳しさを思い出させたり、城ケ島大橋を2回もくぐって仰いだりと、短時間ながら充実した船旅でした。

時間と体力が許せばですが、自艇でもう1回くらい、「里帰り」してみてもいいかなあ…。そんなことも想わせた、昨年夏の三浦探訪でありました。

(24年8月26日撮影)

(この項おわり)

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タグ : 城ヶ島水道城ケ島大橋三崎港橋の裏側

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