「里帰り」した話…4
(『「里帰り」した話…3』のつづき)
●昨年8月26日は、久しぶりに夏の盛りの三浦を見てみたくなり、小網代と三崎を訪ねました。
まず向かったのは、小網代湾西側の錨地に面した、磯の間の小さな砂浜にある、箱庭のような「横堀海水浴場」。実はこちらに通っていたときは、艇から泳いで上陸(!)した数回のほかは、利用したことがありませんでした。陸路訪ねるのは、これが初めてなのです。
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●尾根線上を走る本道から入った細い道は、すぐに急な下り坂になります。すでに木々や建物の間から、海面や彼方の山並が望めて、実にワクワクする素敵な風景! 子供だったら、親の制止も聞かず走りだしたくなったでしょう。
ちなみに、少し東へ行ったところには公営の駐車場があり、バスターミナルも隣接しているので、交通の便は悪くありません。(『海水浴場情報』三浦市サイト)
【撮影地点のMapion地図】

●半ばまで下ったところで、眺望が開けてきました。青い空、岸をなぞるように連なった雲の群れ、そして緑したたる崖線に、錨泊する艇たちが浮かぶ海! 目の覚めるような、といっても大げさでない、美しい水辺風景ですね。かつて長年親しんできた水面ながら、この視点から見下ろしたのは初めてだったので、感動も深いものがありました。
手前の磯のあたり、よく見ると水面がブイで四角く囲ってあるのがわかりますね。遊泳区域を示すブイですが、ちょっとしたプールよりも狭そうで、この海水浴場の規模の小ささが、実感できる視点でもあります。

●西側の磯から、浜を眺めたところ。砂浜の間口は、50m強くらいでしょうか。左右は崖がそのまま海に落ち込む磯で、この奥行きの浅い谷に生じた、本当に盆景のような浜辺なのです。
小さいとはいえ、交通至便なせいもあるのでしょう、ご覧のとおりなかなか賑わっていて、浜のよい場所はすでに満員御礼。たった一軒の海の家で何か食べようと思っても、主だったメニューは品切れ、何とか焼きイカにありついて、岩の上でいただきながら一息つけました。
●同じ磯の上から東側、シーボニアを眺めて。こちらの水面も錨泊する艇で賑わっています。かつてはあの中の一隻だったわけで、何やら不思議な感じがしたものです。
この日は南西の風がやや強く、湾内にもそこそこの波があって、錨泊している艇もだいぶガブっていました。風の強い日は、アンカーがうまく効いていないと、走錨してしまうこともありましたっけ。
●これは平成7年8月2日に、自艇から上の写真の磯を撮ったもの。朝早いせいか、まだお客さんの姿もまばらです。ちなみに正面に見える「海の家 みかみ」、今回訪ねてみたら、基礎のみを残して、建物はすべて撤去されていました。
見たところ、売店と食堂だけでなく、休憩所も兼ねたような結構な規模で、錨地から見ても目立っただけに、驚かされたものです。
「りりあんと3号 乗艇日誌2009-10~12」によると、「横堀海水浴場の海の家も一階が流されているようです」と、キャプションをつけた「みかみ」の写真が載っていましたから、このときの被害がもとで、廃業されたのかもしれません。

●さすがに焼きイカだけでは物足りなくなり、腹の虫をなだめるため三崎の街に移動。先代艇のころは、ちょっとした買い物や食事にと、よくお世話になった街でもあります。
起伏のある地勢に加えて、道が曲がりくねっていることも手伝い、街並みを眺めながらお散歩するだけでも楽しいところ。建物も歴史を感じさせるものが結構残っていて、遠洋漁業で栄えた街らしいたたずまいが味わえます。
●腹くちくなったところで、最後の仕上げと「うらり」の岸壁へ。三崎港と城ケ島を結ぶ、渡船に乗ったことがなかったので、この機会に体験しておこうと思ったのです。
岸壁に着くと、ちょうど渡船が接岸するところでした。あれ、トランサムに書かれた船名は「うらり号Ⅱ」なのに、舷側や幟にあるのは「白秋」…むう、本名と通称といったところですか。
【撮影地点のMapion地図】

●前に回って見ると、角ばったキャブに回転窓付きの正面と、どこか作業艇ぽい造作がなかなかキュート。船首周りには、各種フェンダーをじゃらじゃらと賑やかにぶら下げているのも、無骨な雰囲気を強調しているようです。
船首甲板上左舷側に、ハンドレール付きの踏み段を備えているのは、城ケ島での接岸がバウづけだからでしょう。賑やかなフェンダーも、そのためのものだと思われました。

●乗り組みは船長さんと甲板員さんの二人。キャブ後ろの扉から中へ入り、料金箱に往復分の料金を入れて、急な階段を下り客室へ。
階段からキャブを振り返る(上写真)と、舵輪とスロットル、スイッチ類のみの質実剛健な操舵席。三方の窓はハメコロシでしょうか、夏はツラいだろうなあ…。
●客室はロングシートで、外の景色を眺めたいお客さんは、必然的に立て膝でカメラを構えたり、窓から首を突き出したり。
通路中央は、ご覧のとおり主機のケーシングが占領しており、ダイレクトに振動が伝わってくるという楽しい状態(笑)。ケーシング真上の天井には、四角い枠が見えますね。整備時にエンジンを出し入れするためのハッチでしょうか。

●「うらり」の乗り場を離れた渡船は、しばらく岸壁と並行に走り、湾入を出て城ケ島水道へ向かいます。
ここはもともと、漁船が水揚げするための施設だったのですが、近年になって産直センターや市民ホールが設けられたと同時に、岸壁もプレジャーボートに解放され、一時繋留して食事や買い物ができるようになりました。
私がよく訪ねていたころは、一般艇の繋留はもちろんご法度だったので、小網代からバスや徒歩(!)で向かうしかありませんでした。今のように艇がつけられたら、ずいぶん楽だったろうなあ…。

●岸壁が後ろに遠ざかると、船は爆音を高めて、城ケ島水道の真ん中に躍り出ました。はるか向こうに架かる長大橋は、城ケ島大橋。関東では珍しい、本土と島の間にある狭水道を渡る橋で、昭和35年に竣工しました。
爽快な水道風景を眺めながら、ある欲望が湧き上がってくるのを、抑えることができませんでした。城ケ島大橋をくぐって、向こう側に行ってみたい!
●実は城ケ島大橋、私の初めてくぐった橋なのです。頭上はるかに架かるこの橋が、往路は東京湾への入口であり、復路は母港の海域が近づいたことを感じさせる、まさに門のような存在でした。
右の写真は、これも平成7年8月2日に撮った、上のそれとほぼ同地点からの水道通航風景。ここを出ると始まる、波荒い剣崎沖の厳しさを思いつつ、水道のつくる平穏な水面に癒されたものでしたっけ。

●思い出ついでに、上と同日の写真をもう一枚。城ケ島の岸壁にもやっていた、遊覧船です。
確か島の周りをぐるりとめぐって、油壺マリンパークの西側に至るコースだったと思います。沖を走っていると、何度か出会ったことがあったなあ…。廃止されたのは、いつごろだったのでしょうか。
●渡船の話に戻って、水道を横断し、城ケ島の船着場に到着。乗る前に予想したとおり、バウ付けでした。他のお客さんは降りてしまい、帰りは我々のみ。
船長さんとよもやま話になり、昔はこのあたりをよくうろついていたこと、船が好きなことを話すと、「ちょっとサービスしてあげよう」と、脇に停まっていた浚渫船と曳船(下写真)に、こんな近くまで寄せてくれました!


●三崎に近づいたときも、ほんの少し遠回りしてくれて、大型漁船群が艫付けする水面の前を通過。
このあたり、昔と変わらないように見えましたが、船長さんによれば、このフネブネは売船で、買い手がつくのを待っているのだとか。そういえば、色あせてどことなくくたびれているような…。
●あっという間の短い船旅でしたが、船長さんのサービスもあって楽しめました。ありがとうございました!
離れてゆく渡船のサイドビュー(下写真)を見てみると、イイ感じのアンバランスなスタイルが、観光用でない、いかにも実用の渡船らしくて、さらに魅せられるものが! 後姿を見送りつつ、先ほど湧き上がった欲望を満たそうと、すぐ近くから出るもう一隻に乗るため、小走りに駆けだしたのでした。

(24年8月26日撮影)
(『「里帰り」した話…5』につづく)

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まず向かったのは、小網代湾西側の錨地に面した、磯の間の小さな砂浜にある、箱庭のような「横堀海水浴場」。実はこちらに通っていたときは、艇から泳いで上陸(!)した数回のほかは、利用したことがありませんでした。陸路訪ねるのは、これが初めてなのです。
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ちなみに、少し東へ行ったところには公営の駐車場があり、バスターミナルも隣接しているので、交通の便は悪くありません。(『海水浴場情報』三浦市サイト)
【撮影地点のMapion地図】

●半ばまで下ったところで、眺望が開けてきました。青い空、岸をなぞるように連なった雲の群れ、そして緑したたる崖線に、錨泊する艇たちが浮かぶ海! 目の覚めるような、といっても大げさでない、美しい水辺風景ですね。かつて長年親しんできた水面ながら、この視点から見下ろしたのは初めてだったので、感動も深いものがありました。
手前の磯のあたり、よく見ると水面がブイで四角く囲ってあるのがわかりますね。遊泳区域を示すブイですが、ちょっとしたプールよりも狭そうで、この海水浴場の規模の小ささが、実感できる視点でもあります。

●西側の磯から、浜を眺めたところ。砂浜の間口は、50m強くらいでしょうか。左右は崖がそのまま海に落ち込む磯で、この奥行きの浅い谷に生じた、本当に盆景のような浜辺なのです。
小さいとはいえ、交通至便なせいもあるのでしょう、ご覧のとおりなかなか賑わっていて、浜のよい場所はすでに満員御礼。たった一軒の海の家で何か食べようと思っても、主だったメニューは品切れ、何とか焼きイカにありついて、岩の上でいただきながら一息つけました。

この日は南西の風がやや強く、湾内にもそこそこの波があって、錨泊している艇もだいぶガブっていました。風の強い日は、アンカーがうまく効いていないと、走錨してしまうこともありましたっけ。

見たところ、売店と食堂だけでなく、休憩所も兼ねたような結構な規模で、錨地から見ても目立っただけに、驚かされたものです。
「りりあんと3号 乗艇日誌2009-10~12」によると、「横堀海水浴場の海の家も一階が流されているようです」と、キャプションをつけた「みかみ」の写真が載っていましたから、このときの被害がもとで、廃業されたのかもしれません。

●さすがに焼きイカだけでは物足りなくなり、腹の虫をなだめるため三崎の街に移動。先代艇のころは、ちょっとした買い物や食事にと、よくお世話になった街でもあります。
起伏のある地勢に加えて、道が曲がりくねっていることも手伝い、街並みを眺めながらお散歩するだけでも楽しいところ。建物も歴史を感じさせるものが結構残っていて、遠洋漁業で栄えた街らしいたたずまいが味わえます。

岸壁に着くと、ちょうど渡船が接岸するところでした。あれ、トランサムに書かれた船名は「うらり号Ⅱ」なのに、舷側や幟にあるのは「白秋」…むう、本名と通称といったところですか。
【撮影地点のMapion地図】

●前に回って見ると、角ばったキャブに回転窓付きの正面と、どこか作業艇ぽい造作がなかなかキュート。船首周りには、各種フェンダーをじゃらじゃらと賑やかにぶら下げているのも、無骨な雰囲気を強調しているようです。
船首甲板上左舷側に、ハンドレール付きの踏み段を備えているのは、城ケ島での接岸がバウづけだからでしょう。賑やかなフェンダーも、そのためのものだと思われました。


階段からキャブを振り返る(上写真)と、舵輪とスロットル、スイッチ類のみの質実剛健な操舵席。三方の窓はハメコロシでしょうか、夏はツラいだろうなあ…。

通路中央は、ご覧のとおり主機のケーシングが占領しており、ダイレクトに振動が伝わってくるという楽しい状態(笑)。ケーシング真上の天井には、四角い枠が見えますね。整備時にエンジンを出し入れするためのハッチでしょうか。

●「うらり」の乗り場を離れた渡船は、しばらく岸壁と並行に走り、湾入を出て城ケ島水道へ向かいます。
ここはもともと、漁船が水揚げするための施設だったのですが、近年になって産直センターや市民ホールが設けられたと同時に、岸壁もプレジャーボートに解放され、一時繋留して食事や買い物ができるようになりました。
私がよく訪ねていたころは、一般艇の繋留はもちろんご法度だったので、小網代からバスや徒歩(!)で向かうしかありませんでした。今のように艇がつけられたら、ずいぶん楽だったろうなあ…。

●岸壁が後ろに遠ざかると、船は爆音を高めて、城ケ島水道の真ん中に躍り出ました。はるか向こうに架かる長大橋は、城ケ島大橋。関東では珍しい、本土と島の間にある狭水道を渡る橋で、昭和35年に竣工しました。
爽快な水道風景を眺めながら、ある欲望が湧き上がってくるのを、抑えることができませんでした。城ケ島大橋をくぐって、向こう側に行ってみたい!

右の写真は、これも平成7年8月2日に撮った、上のそれとほぼ同地点からの水道通航風景。ここを出ると始まる、波荒い剣崎沖の厳しさを思いつつ、水道のつくる平穏な水面に癒されたものでしたっけ。

●思い出ついでに、上と同日の写真をもう一枚。城ケ島の岸壁にもやっていた、遊覧船です。
確か島の周りをぐるりとめぐって、油壺マリンパークの西側に至るコースだったと思います。沖を走っていると、何度か出会ったことがあったなあ…。廃止されたのは、いつごろだったのでしょうか。

船長さんとよもやま話になり、昔はこのあたりをよくうろついていたこと、船が好きなことを話すと、「ちょっとサービスしてあげよう」と、脇に停まっていた浚渫船と曳船(下写真)に、こんな近くまで寄せてくれました!


●三崎に近づいたときも、ほんの少し遠回りしてくれて、大型漁船群が艫付けする水面の前を通過。
このあたり、昔と変わらないように見えましたが、船長さんによれば、このフネブネは売船で、買い手がつくのを待っているのだとか。そういえば、色あせてどことなくくたびれているような…。

離れてゆく渡船のサイドビュー(下写真)を見てみると、イイ感じのアンバランスなスタイルが、観光用でない、いかにも実用の渡船らしくて、さらに魅せられるものが! 後姿を見送りつつ、先ほど湧き上がった欲望を満たそうと、すぐ近くから出るもう一隻に乗るため、小走りに駆けだしたのでした。

(24年8月26日撮影)
(『「里帰り」した話…5』につづく)

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