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旧毛馬第一閘門を訪ねて…5

(『旧毛馬第一閘門を訪ねて…4』のつづき)

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では、閘室内に降りてみましょう。頑丈そうなステンレスの柵が設けられた階段と通路を踏みしめて、かなりの深さがある閘室底へ。扉体周りは凹部が造ってあって、閘室内の排水をここで処理できるようになっています。

「鋼製ゲート百選」には、マイタゲートの扉体高4.3947mとありますが、前扉室のそれは少なくとも10m超はあるように思えます。何かの間違いか、竣工時の寸法か何かを記載したのでしょうか。ウェブ上の記事を拾ってみても、例えば「毛馬閘門・洗堰群の解説シート」(土木学会 選奨土木遺産)では、全長105.80m、閘室長75.38m、閘室幅11.35mとのみあり、どれも扉体高には言及されていませんでした。なぜでしょう?

305022.jpg階段を降りてまず目に入るのが、この説明板「閘門のしくみ」ですが‥‥う~ん、残念ながらベロベロのボロボロで、判読に堪えない状態でした。

屋外展示物の説明板は、雨や紫外線に常時曝されるだけに、材質を選びますよね。特にここは湿気もたまり風通しも悪そうですから、傷みやすかったのかもしれません。


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前扉室上流側に設けられた、角落しの戸溝を見上げて。精密加工された石材の美しさ、質量が醸す重厚さ、そしてこの高さを底部から仰いだとき、一直線に切られた戸溝の乱れのない見事さ‥‥。これも、閘室の底という視点を得られた賜物でありました。

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扉体の間から、制水門周りの構造物を見上げて‥‥いや~、いいですねえ。左右に見えるマイタゲート斜接部の木製水密材、補修時に復元されたものらしく、角度が直角でホンモノ臭が薄いのはちょっと残念ですが、全体に傷んだ様子は見られず、よく整備されています。

しかし、現地で静態保存された閘門は数あれど、こうして閘室底を整備して、つぶさに鑑賞できる閘門って、実に貴重かつありがたい存在ですよね。構造物が残されていても、閘室は埋め立てられているのがほとんどですから。

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制水門周りをほぼ直下から仰いで。並列した鋼アーチの間に、ゲートが上下するスペースを設けた構造で、橋台部分はご覧のとおり石造です。

戸溝の中にストーニーゲートの特徴である、梯子状ローラーが見えますが、この天地寸法からしても、複数枚の扉体を積み重ねるやり方だったように感じられるのですが、いかがでしょう。

あと、左手に見られる石造の枠の開口部、用途がわからず気になりました。後扉室にも前後に同様のものが認められ、「毛馬閘門の絵葉書」で紹介した、竣工間もないころと思われる写真にも後扉室には確認できるので、後年の追加ではないと考えられるのですが。

(令和5年9月30日撮影)

(『旧毛馬第一閘門を訪ねて…6』につづく)

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旧毛馬第一閘門を訪ねて…4

(『旧毛馬第一閘門を訪ねて…3』のつづき)

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前扉室の手前に設けられた、制水門ゲートを眺めて。まあ、格好いいこと! アーチを渡した上に、ご覧のような鋼ラーメンの吊り金物というべき構造が一対あって、ストーニーゲート(後でディテールを掲載します)の扉体を吊り下げているもの。

扉体は無骨なリベット組みながら、吊り金物は溶接なあたり、製作年代に差がありそうですね。左手奥、吊り金物の脚部分に、何かプレートが掲げられているのに気付き、いそいそと拝見。

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2つあるうちの下に掲げられた、大きい方のプレートをズームでたぐってみて、いや、驚きました。「操作要領」と題し、遠隔操作、機側操作、そして手動操作のやり方を詳しく記したマニュアルだったからです。

鋳物か叩き出しかわかりませんが、金属のプレートで、設備の諸元などでない、こんな長文が掲げられているのを目にしたのは、おそらく初めてではないでしょうか。わざわざこの方法を採った理由は、どのあたりにあったのでしょう。

305018.jpgこちらは操作要領の上に掲げられた銘板。メーカーは丸島水門製作所、製作は昭和39年3月とありますが、これは下で触れるとおり設備の改修年で、制水門自体の竣工は昭和3年です。

径間が11.354mなのはいいとして、扉高はわずか3.31mしかないのが、以前から謎でした。制水門としては少なくとも、マイタゲートと同様の高さがないと、意味が薄いと思えるからです。

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前扉室側からもう一枚。主構造たるアーチ、桁の上には巻上機など動力部、開度計もちゃんと残されていて、眺めていて嬉しくなる角度です。いいですなあ。

「鋼製ゲート百選」によると、昭和39年に固定式に改造されたものの、竣工時上部構造は電動走行式で、普段は扉体を吊り下げたまま格納庫にあり、使用時にアーチ上へ移動したとのこと。トラベリングゲートだったわけですね。

トラベリングゲートであれば、天地の短い扉体を一枚づつ持ってきては重ねてゆき、最終的にマイタゲートに等しい扉高とする、角落しのようなやり方も考えられるわけです。しかし固定してしまっては、この扉高しかも一基のみだと、制水の用をなさないように思えるのですが。

「鋼製ゲート百選」には、上記した竣工時の運用と、固定式に改造された事実が記されたのみで、この疑問には答えてくれませんでした。ご存じの方、ご教示いただければ幸いです。

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前扉室ゲート、制水門のコンビを淀川堤防上から。いや~、レンガと石材造りの閘室に、"無骨美"といってよい鋼製の構造物たち! もう絶景といっていいかも。

堤防の高さはよい視点を提供してくれはするものの、高々と盛られた土の塊に、正面を塞がれた閘門の姿は、何かもの悲しさも漂いますね。平成25年に訪ねた、来原岩樋を思い起こさせるものがありました。

(令和5年9月30日撮影)

(『旧毛馬第一閘門を訪ねて…5』につづく)

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旧毛馬第一閘門を訪ねて…3

(『旧毛馬第一閘門を訪ねて…2』のつづき)

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橋を渡り、後扉室ゲートに駆け寄りました。閘室の周囲には史跡や記念碑がいくつかあるのですが、何はともあれ閘門ということで、後でまとめて紹介しますね。

私が毛馬第一閘門のことを知った、水門写真集ともいうべき本「鋼製ゲート百選」(技報堂出版・平成12年)掲載の写真では、半ば埋まった状態ななのは今と変わらないものの、扉体は閉じていて散策路も設けられていませんでした。これを掘り起して開いた状態に持ってゆくのは、かなりの工事量だったでしょうが、記念物としては鑑賞できる視点が増えて、実によい判断だったと思います。

305012.jpg北岸のゲート近傍には、ご覧のような巻上機が2組残されていました。落ち葉は溜まっていますが、機械がそんなに傷んだ感じがしないのは、ときどき手入れをしているのでしょうか。

配置から見て、右が扉体開閉のラック駆動用、左が排水のバイパスゲートを動かすものに違いありません。銘板は残っているかな?


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ラック駆動用の方を探してみたら、すぐ見つかりました。「電動捲揚機」の書体がすでに泣かせますが、竣工は1964‥‥昭和39年と新しいのですね。現役の末期まで、機器の更新が行われていたことがわかります。電動機の出力1.5kw、日立製作所、日立機電工業の製造。

目を引かれたのは、右下に「電動/中立/手動」の表記があったこと。下にレバーが突き出ていることから、いわばシフトレバーであることがわかりました。

305014.jpg扉体をのぞき込んで。天端の凹部に落ち葉が溜まっているのは同様ながら、こちらも比較的きれいに保たれています。

この角度からだとわかりづらいですが、ラックの素材がステンレスなのか、過ごしてきた星霜に似合わずピカピカで、少々異様ではありました。上からではいま一つ眺めづらいので、ディテールは下に降りてから堪能するとしましょうか。

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橋上に戻って、前扉室方向を望んだところ。閘室の底は下り勾配がついていて、後扉室と異なり、扉体の全貌が眺められるようになっています。そしてその手前に架けられたゴツい鋼アーチ! 後年設けられた制水門の構造物ですね。

まだまだ見どころは盛りだくさんながら、時間は限られています。暑くて汗だくになるのもいとわず、走り回らざるをえないのが閘門好きの性‥‥。因果なものよと一人ぼやきながら、楽しく鑑賞を続けます。

(令和5年9月30日撮影)

(『旧毛馬第一閘門を訪ねて…4』につづく)

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旧毛馬第一閘門を訪ねて…2

(『旧毛馬第一閘門を訪ねて…1』のつづき)

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眼鏡橋のつづき。先ほどとは反対、東側からアーチ径間を見て。埋め立てられた長柄運河跡の上に立っていることになります。アーチは形鋼を曲げて沿わせたもので、補強されているのですね。

まあしかし、木も草も鬱蒼といって大げさでないくらい。こちらから眺めると、山中の廃墟さながらのおもむきがありました。

305007.jpg眼鏡橋の少し東側には、レール上に載った変形凸型の電動車が、扉体をチェーンで吊り下げたまま横移動する、いわゆるトラベリングゲートの遺構があるのですが、ご覧のとおりジャングル状態で生い茂った木々に吞み込まれ、この角度から眺めるのがやっとの状態。

長柄運河の現役時は、橋詰近くの両岸に切られた戸溝へ、この扉体をはめ込む仕組みだったわけで、いわば自走角落し。枝が剪定されていたら、鑑賞できたのですが‥‥。

305008.jpg落ち葉の積もった眼鏡橋を渡り、北詰から見て。アーチは運河のあった径間のみで、ほかはRC桁(ラーメン)といってよいのでしょう。

手前の親柱には「眼鏡橋/昭和三十七年三月補修/東興建設株式会社施工」とありました。ちなみに竣工は大正3年だそうです。高欄の装飾もなかなか瀟洒で、時代が感じられてよいものでした。


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橋を渡ってすぐのところが、本題の旧毛馬第一閘門、後扉室のゲートが見える場所でした。長年書籍やウェブサイトで見慣れた光景を、生で目にした感動はまた格別のものが。レンガのくすんだ褐色と、芝生の緑が織りなすコントラストが目に沁みますなあ‥‥。

扉体の向こうに見える建物は、毛馬排水機場の施設の一つであるポンプ場。この延長線上に毛馬第二閘門の遺構(『毛馬閘門…1』参照)と、大川があるわけです。

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閘室の中央に架かった橋から、改めて後扉室を望んで。芝生の真ん中を散策路が貫く閘室の底は、後扉室に向かって登り勾配をつけられており、扉体は半ば埋まった形で保存されています。後で歩いてみましょう。

毛馬第一閘門の来歴をまとめておくと、毛馬洗堰とともに毛馬閘門として明治40年に竣工。大正7年に第二閘門が設けられたことで第一閘門を名乗るようになり、閘門機能は第二閘門に任せて常時全開、増水時のみ閉鎖する制水門へ転用されました。

その後昭和3年、淀川改修増補工事の堤防拡築に合わせ閘室の翼壁をかさ上げ、後で触れるストーニーゲートが追加されるなど、長きに渡り淀川~大川間の通船・水防施設として機能してきましたが、昭和49年、新毛馬閘門の完成とともに廃止、歴史的遺構として保存されています。
撮影地点のMapion地図

(令和5年9月30日撮影)

(『旧毛馬第一閘門を訪ねて…3』につづく)

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タグ : 旧毛馬第一閘門閘門

旧毛馬第一閘門を訪ねて…1

305001.jpg9月30日は、業界の集まりで大阪へ。朝東京を出て、夜に最終の東京行き「のぞみ」で帰ってくるというあわただしさでしたが、会合は昼からだったので、早めの便で大阪へ着き、午前中少しだけお散歩してきました。

ほんの3時間弱で見て回れる物件となると、おのずと限られてきます。超のつく有名物件ながら、未訪だったあそこを置いて他にあるまいと、淀川と大川の分流点を目指したのであります。

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予報では雨が心配された空模様も、幸い好天に恵まれ、気温も上がって暑いほどに。まず降り立ったのはここ、毛馬閘門。平成21年、枚方行きの水上バスで通って以来(『毛馬閘門…1』参照)、実に14年ぶりの再訪であります。

305003.jpg‥‥しかし、まだ新しいフェンスのこの厳重さ、鑑賞には具合がよくありませんね。よじ登るのを防ぐためか、網目も縦長で狭く、コンデジの鏡筒が入らないのです。

閘門だけでなく橋を含めた川景色も撮りたかったのに、周りにフェンスより高い場所もなく、早々に引き上げるか‥‥。とあきらめかけていたところ、ほぼ正面に、一つだけ何とか網目を通して撮れそうなものが!


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砂船の船溜です。14年前も、淀川を続々と下航してくる砂船たちに行逢(『砂船づくし…2』ほか参照)し、現役で盛業する"河川内舟運"の姿に感動したことが思い出されます。

行逢時はデッキを河水が洗うような満載状態でしたが、空船で憩う姿もまたよいものですね。船底塗料を塗った喫水線が、思ったより下にあるのが意外な感じがします。以前見た状態、ものすごい過積載だったのかな‥‥。

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大川を渡って対岸へ。本日の主たる目的地は、史跡として保存されている旧毛馬第一閘門です。天下の淀川に設けられた閘門のはしりという、超有名物件ながら今まで訪ねるに至らず、ようやくこの地に立つことができて、まことに感無量といったところ。

閘門を含む公園地の入口には、ご覧のような古びたRCアーチが。眼鏡橋‥‥またの名を長柄運河頭部橋梁といって、新淀川開鑿時に出る土砂搬出のため設けられた、長柄運河をアーチによってまたいでいたもの。

あれ? 以前各所で見た写真の印象と違って、だいぶ傷んでいるようだし、草ぼうぼうで茂った木の枝がかかるなど、手入れの行き届いていない印象です。ともあれ、この古豪橋を渡って、いざ閘門鑑賞とまいりましょう。
撮影地点のMapion地図

(令和5年9月30日撮影)

(『旧毛馬第一閘門を訪ねて…2』につづく)

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タグ : 毛馬閘門閘門大川砂船