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飛島木場の閘門…5

(『飛島木場の閘門…4』のつづき)

206160.jpgバイパスゲートの地上部分、ゲートの巻上機であるスピンドルのさやと、開度計を眺めていたら‥‥。ん? さやの根元に伸びる2本の配管、妙に肉厚で頑丈そうだし、1本は天端に、もう1本は根元に直結しているみたい。よく見ると、空圧(油圧かな?)っぽい配管に思えますよね。

ということは、これはスピンドルのさやなどでなく、筒はシリンダーで、中を圧でピストンが上下しているタイプの駆動装置なのでしょうか。そういえば、開度計に至るホースもそれらしいし‥‥イヤ、お見それしました。バイパスゲートはスライドゲートが多く、スライドゲートはスピンドル駆動が多い、という先入観にとらわれていたようです。外見だけで判断してはいけませんね。


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堤防越しに南方を眺めたところ。柵列の並ぶ水路を隔てた向こうは、王子埠頭・コンテナ埠頭を擁する西浜・東浜の埋立地。柵列には船がもやい、ローボートで釣りに漕ぎ出す人も見られました。ここもかつては、原木で埋まっていたに違いありません。

206162.jpg前扉室ゲートのすぐ横を通る人道橋、目の前に銘板と塗装記録票が見えて、オッと思ったので一枚。

名前は「第三ひのき橋」なのですね! 先ほど後扉室を撮った橋が第二でしたから、北から順に番号を振ったというわけでしょう。竣功は平成10年、メーカーは鉄道車輌の製造で知られる、日本車輌というのがちょっと意外な感じがしました。


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うしろめたさもあって、ものすごい勢いで撮り終え、そそくさと退散。のんびりしているように見えますが、この間たった5分。本当に申しわけありませんでした。どうかお目こぼしくださいますよう。

去り際、それでも後ろ髪引かれる想いで、後扉室と草生した閘室のフラットをもう一度。そうそう、ゲートの軸線がはすになった、胃袋のような、平行四辺形をした変わった閘室について。手持ちの古書の中に、これについて触れていた記事があったのを覚えていたのです。以下に紹介しましょう。

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手元に「運河・閘門」(福田秀夫・幕田貞夫共著、理工圖書株式會社、昭和19年7月発行)という本がありまして。いうまでもなく、そのものズバリのお題に惹かれて飛びついたものです。

発行時期が時期だけに、紙質、印刷とも粗悪で、経年も手伝いページを開くだけで、ポロポロと崩壊してしまうのは致し方のないところ。詳しい内容はまた改めて紹介するとして、著者のお二方とも、江戸川水門監守所にお勤めなのが、特に惹かれたところではありました。江戸川水閘門の竣工が昭和18年ですから、当時最新の閘門を運用する立場におられたということになります。

話を戻して、本文中「第4章 閘門」の「[Ⅱ]種類」で、さまざまなタイプの閘門を挿図も併せ紹介する中、載っていたのが上の図です。まさに今回見た閘室、ほぼそのままの型式が描かれていて、アッと思ったものでした。

本文の解説では「二重閘門 Doppelschleuse」と題し、「(前略)一度に小さい船を多く通閘せしめる時等に使用せられる。(中略)この型を採用する時には、最初に入閘した船から順次出閘せしめらるゝために、(中略)閘門内で混亂を生ずるやうな不便を伴はない。」とありました。

なるほど、入閘した船から順次右奥に寄せてやれば、出閘時も非常に能率がよく、閘室の幅をむやみに四角く広げるより、よほど合理的ではありますね。

一番上の図のように、バージを曳いた曳船でも、曳索を長く取って並列させれば、大型のバージも入閘でき、出るときも自然とゲートへ導かれるという寸法で、実によく考えられています。今回のような、筏を長々と曳いて出入りする必要がある閘門には、まさにうってつけのタイプといえるでしょう。

気になったのは、「二重閘門」という名称が、閘室の形をまったく思い起こさせず、奇妙に感じられた点でしょうか。各タイプの見出しにはすべてドイツ語が併記されており、引き合いに出される例もドイツのものが多いので、ドイツ語文献から直訳されたものと思われますが、これが特定の一閘門を指すのか、本型式全体を総称する名前なのかはわかりません。

(29年5月3日撮影)

(『飛島木場の閘門…6』につづく)

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タグ : 西部第2区閘門閘門木場金岡埠頭貯木場