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阿賀野川頭首工を愛でる…4

(『阿賀野川頭首工を愛でる…3』のつづき)

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193087.jpg管理橋を半ばまで進んで、南側を振り返ったところ。ずらりと並んだ堰柱を橋上から眺めるのは、いつもながら爽快感があるものです。

舟通しからこちら、3径間はローラーゲートで、正式名は洪水吐ゲート。普段は閉鎖されて水面を堰上げ、増水時はその名のとおり堰柱高さいっぱいまで開放され、河水をすみやかに流下させるわけです。

各堰柱には、それぞれの扉体の銘板が掲げられていたのですが、ホテルから遠望したかぎりではどれも同じみたいだったし、最初の銘板一枚で、以下同文とお茶を濁せる(?)かしらと思っていたら、違いました。

径間は確かに3つとも同寸法だったものの、扉高がNo.1から順に5.5m、5m、4mと、段階的に天地を縮めて造っていたのです。

どういった理由からこうなったのか、まさか、河床断面を素直になぞって図面を引いたのかしら? などと妄想しましたが、本当のところはわかりません。これも後で、改めて見てみることにしました。


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北側の2径間は、「越流型鋼製自動顛倒ゲート」、いわゆる起伏ゲートです。のぞき込んでみると、小石の堆積した水たたきから、油圧シリンダーの腕が斜めに伸びて、扉体をつっかえていました。

193089.jpgご覧のとおり堰柱のないゲートのため、銘板を掲げる場所に窮したのでしょう、ローラーゲートの一番北側の堰柱に、2径間まとめた銘板がありました。

この2径間だけメーカーが違うのはともかく、ローラーゲートと竣工がちょうど1年ずれているのは気になりました。短期間ながら、先代の扉体があったということでしょうか。角落しみたいなものをはめ込んで、しばらくしのいでいたのかな?

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ここで、橋上から下流側を見下ろしてみると、おお! 床固(根固、護床工とも)のブロックが、キラキラ光る水面に点々と頭をのぞかせて、なかなかキレイ。どこか地紋を思わせる眺めです。

形からして、メタクロス共和コンクリート株式会社)かしら。‥‥いや、この類が検索ですぐ出てくるなんて、本当にいい時代になったものですじゃ。

(28年5月28日撮影)

(『阿賀野川頭首工を愛でる…5』につづく)

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タグ : 阿賀野川阿賀野川頭首工阿賀野川頭首工舟通し閘門

阿賀野川頭首工を愛でる…3

(『阿賀野川頭首工を愛でる…2』のつづき)

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193082.jpgこの、後扉室の堰柱に至る橋の上からならば、閘室を存分に眺められそうなのですが、ご覧のとおり立入禁止の札が掲げられているとあらば、あきらめるほかありません。

上流側の堰柱には、舟通しゲートの銘板がありました。6m×6m、水深仮に1mとして、スリットのフロー分をさらに引くとしても、閘程4m以上あり、結構なものですね。最上川のそれ同様、閘室長が載っていないのは残念でした。

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橋の上からの舟通し鑑賞は、眺められるアングルが限られ、これ以上は難しいようです。岸か本流内のブロックの上からでも、後で改めて堪能するとしましょう。

しかし、閘程だけ見ると、満潮時の荒川や扇橋を上回るであろうこの舟通し! こうして横から見ても、なるほど閘室の側壁も高く、ボリューム満点で通りでがありそうですね。阿賀の里遊覧船のオプションで、舟通し通航コースとかできないかしら。

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舟通しのすぐ隣、唯一放水しているNo.3ゲートの真上とあって、地響きをともないそうな激しい水音が、足下から絶え間なく聞こえてきます。

上流側をのぞき込むと、真っ赤な扉体の下から、流れるというより「疾る」という文字が似合いそうな、白く泡を噛む激流が垣間見られました。こちらの扉体は、泥の付着もなく塗面もきれいですね。

193085.jpg上流側に出たついでに、右岸取水口の樋門を一枚。一径間多い4径間で、外観も異なり、左岸の樋門とはまた違った顔つきですね。

先ほど見た、頭首工の大きな銘板によると、右岸取水量が最大34.32立米/秒、左岸が最大15.33立米/秒とありましたから、右岸は左岸のそれの倍以上の能力があることになります。

【新発田】くらしを守る阿賀野川頭首工」(新潟県HPより)に、各取水口から分岐する用水路の地図が載っています、ご参考まで。また記事によると、頭首工は平成21~23年度に大きな改修・更新工事を行ったとのこと、竣工年にくらべて、よい状態に保たれている理由がわかりました。

(28年5月28日撮影)

(『阿賀野川頭首工を愛でる…4』につづく)

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阿賀野川頭首工を愛でる…2

(『阿賀野川頭首工を愛でる…1』のつづき)

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193077.jpg最初の径間にあるゲートを見下ろしたところ。銘板によると土砂吐ゲート、扉体寸法は15m×5.5m、佐世保重工業製。

完全に閉鎖されており、表面は越流時の泥で汚れています。下流側は水たたきが透けるくらいの浅さでしたから、水位差は扉体高に近いと見てよいでしょう。とすると、舟通しの閘程もそのくらいあるのか‥‥。



193078.jpgちょっと戻ってから下流側へ、3径間ある魚道も見ておきましょう。

‥‥まあ、堰のたぐいにある魚道というものは、舟通しの航路に激流を吹きつけ、通船にとってはた目にもぞっとしない存在であることが多いのですが、この魚道もその例に漏れないようですね。個人的には、吐口に板状の構造物を立てて、閘室の方に行かないよう導流したくなります。

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気になる舟通しの直上から、下流側を見て。右側、巻上機室に至る管理橋、さみだれ大堰舟通しのそれに勝るとも劣らない、下腹スースー感が‥‥。右端、下流はるかに霞むのは、国道290号線馬下橋。左にはホテルさきはなも見えますね。

堰柱間に渡された管理橋上に、閘室を照らす夜設のライトが見られるくらいの、至ってシンプルなディテール。右の堰柱には銘板らしきものがあったのですが、遠くてうまく撮れませんでした。‥‥イヤしかし、眺めるにつけ、通航するにはいかに厳しい環境か、覚悟を突きつけてくるような視点ではあります。

排水が終わり後扉が開いたら、回転数を思い切り上げて閘室からラビットスタート、左から叩きつける魚道からの激流に負けじと、大きく取舵でカウンターを取りつつリーウェイを抑え込み、それが済んだら正面に立ちはだかる岸めがけて突進、ギリギリまで我慢してから面舵でかわし、ゴロタ石の洲と床固のブロックを避けつつ河道中央へ‥‥。

‥‥と、脳内シュミレーション、イヤ妄想するだけで怖気をふるうものが。通航された方の体験談を、ぜひ伺いたいものです、はい。

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妄想はさておき、閘室のディテールは如何とのぞき込んでみたところ、高欄の外側にあるステンレスのダクトが邪魔をして、真下が見られずこれが精一杯。閘室内は満水で、壁面の様子もわかりませんでしたが、周りのあっさり具合からして、繋船設備は特にないように思えました。

目についたのは、扉体の上端近く、左右に一つづつスリットが切られ、排水させるようになっていること。オーバーフローで扉体を痛めないためか、通航船への配慮かわかりませんが、珍しいやり方ではありますね。

(28年5月28日撮影)

(『阿賀野川頭首工を愛でる…3』につづく)

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阿賀野川頭首工を愛でる…1

(『頭首工の見える宿!』のつづき)

193071.jpgホテルさきはなを勇躍出発、気持ちのよい木立ちの間をしばらく進むと、右手に倉庫らしい建物が。壁には「阿賀野川頭首工資材格納庫」とありました。水防資材を保管しているのですね。

看板の下には 「設計積雪量1.3m」「下記の積雪量を越えるときは雪おろしをしてください」との表示もあり、豪雪地帯であることが感じられます。いわば、屋根の耐荷重表示といったところですね。

左手奥はもう、管理橋の取り付け道路で、ちょうどクルマが出てきたところです。幅が狭いため交互通行で、両橋詰に赤い×と緑の〇が表示される信号が設けられ、交通整理をしていました。

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橋は高度を上げつつ木立の間を抜け、視界が開けるといよいよ、お待ちかねのご本尊が間近に。すでに舟通しの擁壁や堰柱も見え、自然に足も早まろうというもの。

朝の曇天がウソのように、ちぎれ雲がぱらぱらとあるばかりの快晴! 山肌も川面も午後の日差しを浴びて、この日この時の訪問を待っていてくれたかのように輝いています。いや、いいタイミングで訪ねられたものでした!

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勾配を登りきったところで目線を吸い寄せるのが、最初の堰柱に掲げられた銘板。タタミ四畳敷きもあろうかという、大きくて立派なものです。

堰堤全長206.4m、諸々のゲートを含めた全径間が7、昭和41年3月竣工。ちょうど50年目を迎えたことになりますが、この後方々を眺めまわしてみて、竣工半世紀を経たとは思えないほど、美しく保たれていることに感心したものでした。

193074.jpg最初の堰柱の横から、上流側に通路が伸びている建物は、運転室を兼ねた管理棟ですね。恐らく遠隔監視・制御となり、こちらはあまり使われていないのか、手入れにところどころ甘いところがあり、年齢相応といった古び方ではあります。

下の写真でもわかるように、櫓の上に2階建てを乗っけたような構造です。これは後ほど、下に降りたときに見にいってみましょう。

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管理棟に接して設けられている樋門が、左岸取水口。頭首工自体が灌漑施設なのですから当然ですが、ここから用水路に取水しており、対岸にも同様のものがあります。

管理棟の真横、ちょっと岸壁ぽくて惹かれるものがありますね。船での資材荷役とかあったのかなあ、などと妄想しましたが、ビットやアイなど繋船設備のたぐいが見られなかったので、これは単なる護岸と考えてよいでしょう。
撮影地点のMapion地図

(28年5月28日撮影)

(『阿賀野川頭首工を愛でる…2』につづく)

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タグ : 阿賀野川阿賀野川頭首工樋門

頭首工の見える宿!

(『阿賀の里遊覧船…5』のつづき)

193066.jpg次なる目的地は、先ほど遊覧船からも遠望できた、阿賀野川頭首工。名前のとおり灌漑のために設けられた堰で、何より惹かれたのは、結構な規模の閘門(舟通し)があるからです! 閘門バカとして、これを見ずして帰られようかという好物件なのでした。

老船頭さんのコメントに無粋なものいいをつけたのは、曲がりなりにも通船が確保されていたからというわけ。それはさておき、なぜ中途半端に遠いところから、眺めているかというとですね、

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ここが本日の宿だからです!

193068.jpgこの宿、ホテルさきはなと申しまして、連れが偶然見つけてきたのですが、ご覧のとおりこぢんまりとした素敵な温泉旅館。左の看板が傾いているように見えるのは、ズームレンズのせいで建てつけが悪いわけではありません。

当日はお部屋がほぼ満室のところ、キャンセル待ちをしてどうにか確保できたほどでした。ここが、船頭含めその筋の人にとって、いかに素晴らしいお宿であるか、暑苦しく垂れ流させていただきますと‥‥。

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上の写真から90度右へ向き直ると、ホラ、もう意識を吸い寄せる看板がドンと!

ホテルさきはなの入口は、阿賀野川頭首工の管理道路のそれと、同じ場所というこの、何と申しましょうかロケーションの良さ(?)。ちなみにこの道路は、管理橋を含めて一般にも開放されており、渡橋する地元のクルマが結構頻繁に通りますので、お散歩の際はお気をつけて。

山間を流れ下る大河と、頭首工(しかも閘門つき←ここ重要)の威容を部屋からほしいままに望み、扉体から流れ出る水音を聞きつつ床につける、もうそれだけでも十分素敵で、得がたい立地の旅館であります。

そして、そして、船頭的に強調してもし過ぎることがないと断言できるのが、「夕食前に、ちょっと散歩してくるかな」と宿を出たところで、行き先が

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ホンモノのGoogleマップで阿賀野川頭首工・ホテルさきはな付近を見る(上は単なる画像)

頭首工と河畔しかない

私にとって、こんなもったいなくもありがたい旅館が他にあるかと。いうまでもなく、くさしているのではありません、この点誤解のないように願います。

地図でもお分かりのように、咲花温泉郷からは約1km離れており、対岸の阿賀野市小松の集落にも頭首工の橋を渡って0.6kmと、ほぼ一軒家状態ともなれば当然ではありますが、船頭の目線で見れば、まさに頭首工を愛でるためにあるようなもの!

荷物を部屋に置いて心ゆくまで頭首工を愛で、ハッスルし過ぎて汗だくになっても、まかり間違って川に落ちても、熱いお風呂と快適なお部屋が待っている!
重要なことなので繰り返しますが、こんな良い旅館が他にありますか! ‥‥イヤ、立地ばかりでなく、お料理もお風呂もサービスも、とてもよかったです。お世話になりました!

というわけで、旅装を解くのもそこそこに、ガツガツと阿賀野川頭首工におもむいたのであります!

(28年5月28日撮影)

(『阿賀野川頭首工を愛でる…1』につづく)

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タグ : 阿賀野川阿賀野川頭首工ホテルさきはな