最上川舟下りを楽しむ…2
(『最上川舟下りを楽しむ…1』のつづき)

●桟橋下流側にもやわれたフネブネ。幅広の船体に温室のような甲板室を設けた、いかにも収容力重視のつくりで、船首側の妻板上にパトランプのような、赤い灯器を揃って掲げているのも目を引かれます。
屋形船とは違って、装飾を一切排した、質実剛健ともいえるスタイルが印象的でした。これは河相の厳しさからくる、長年の運用経験でそうなったのか、興味を引かれるところではあります。
●係の方に引率されて、桟橋へ。船は「第十一芭蕉丸」、入口は船首の妻板1ヶ所で、靴を脱いでお座敷に上がり、座卓を挟んで二列に座るという寸法。
座卓は切れ目なく置かれているので、いったん座ると左右の行き来はできません。列の先頭から順次奥に詰めるかたちになりますから、一番前に座りたい場合は、引率列の最後尾についた方がよいでしょう。
●「温室」がかぶさっているだけあって、中は陽射しでぽかぽかと暖かです。客席はほぼ定員いっぱい、船尾の操舵席に船頭さん、船首の入口を背にして女性のガイドさんが定位置につくと、もやいを解いていよいよ古口港を出港。
密閉された船室が苦手なおっさんとしては、少々落ち着かなくはあるのですが、舷側の小さな窓一つが自由に開けたてできるだけでも、ここは幸いとしなければなりません。

●桟橋を離れた船は、いったん上流側に向かって河道中央に出、ぐるりと転回。さっきの時計付き樋門に見送られて、初めての最上川の旅に出発です。
しかし、岸にもやうフネブネを見ても、見事なほど略同型ですね。隻数の多さもさることながら、同じタイプで揃える徹底ぶり、船社としての堅実な姿勢が現われているように思えたものです。

●転回の途中で窓を開けて、上流側を一枚。先ほど聞いたとおり、霧はウソのように文字どおり雲散霧消して、秋晴れの下、爽やかな山間の川景色が広がっていました。
初めて川面から眺める最上川! 「山内」区間の入口であるこのあたりは、関東でいう「瀞(とろ)」なのでしょうか、三大急流の名が疑わしく思えるほど、鏡のように穏やかな印象。この上流、本合海からの便もいつか乗ってみたいなあ‥‥。
(27年11月22日撮影)
(『最上川舟下りを楽しむ…3』につづく)

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●桟橋下流側にもやわれたフネブネ。幅広の船体に温室のような甲板室を設けた、いかにも収容力重視のつくりで、船首側の妻板上にパトランプのような、赤い灯器を揃って掲げているのも目を引かれます。
屋形船とは違って、装飾を一切排した、質実剛健ともいえるスタイルが印象的でした。これは河相の厳しさからくる、長年の運用経験でそうなったのか、興味を引かれるところではあります。

座卓は切れ目なく置かれているので、いったん座ると左右の行き来はできません。列の先頭から順次奥に詰めるかたちになりますから、一番前に座りたい場合は、引率列の最後尾についた方がよいでしょう。

密閉された船室が苦手なおっさんとしては、少々落ち着かなくはあるのですが、舷側の小さな窓一つが自由に開けたてできるだけでも、ここは幸いとしなければなりません。

●桟橋を離れた船は、いったん上流側に向かって河道中央に出、ぐるりと転回。さっきの時計付き樋門に見送られて、初めての最上川の旅に出発です。
しかし、岸にもやうフネブネを見ても、見事なほど略同型ですね。隻数の多さもさることながら、同じタイプで揃える徹底ぶり、船社としての堅実な姿勢が現われているように思えたものです。

●転回の途中で窓を開けて、上流側を一枚。先ほど聞いたとおり、霧はウソのように文字どおり雲散霧消して、秋晴れの下、爽やかな山間の川景色が広がっていました。
初めて川面から眺める最上川! 「山内」区間の入口であるこのあたりは、関東でいう「瀞(とろ)」なのでしょうか、三大急流の名が疑わしく思えるほど、鏡のように穏やかな印象。この上流、本合海からの便もいつか乗ってみたいなあ‥‥。
(27年11月22日撮影)
(『最上川舟下りを楽しむ…3』につづく)

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最上川舟下りを楽しむ…1
(『最上川舟下りを楽しむ…0』のつづき)
●今回お世話になる船社、最上峡芭蕉ラインの拠点である古口港の本屋は、別名「戸沢藩船番所」といって、その名のとおり、藩政時代にあった舟運のお役所をイメージしたもの。待合所としてだけでなく、物産館や食事処も兼ねていて、すでに多くの人で賑わっていました。
ちなみに最上川には、高屋を発着点とし最上峡を周遊、対岸の仙人堂への上陸コースもある義経ロマン観光、ずっと上流の村山市で、文字どおり渓流下りを楽しめる最上川三難所舟下り(山形県観光情報ポータルより)があるのですが、最も長い距離を乗っていられることもあり、芭蕉ラインを選ぶことにしました。機会があったら、他の船社も利用してみたいものです。

●出港まで少し時間があったので、まずは川景色とご対面したくなり、小走りに河畔へ。桟橋を見下ろすところまで来ると‥‥、おおお! 霧のたなびき具合も塩梅よろしく、まことにしっとりと、幻想的な川景色!
川面を見渡すと、桟橋の前後や対岸に至るまで、10隻を下らない船影がもやい、盛業ぶりが感じられます。こんな山深い水路に、これだけの動力船がひしめき合っているというただそれだけで、水運バカとしては感動ものの風景。
斜面を下る通路や桟橋に、頑丈そうな屋根が設けられているのは、積雪時を考えてのものでしょうか。そういえばここ、こたつを入れた雪見船も運航しているんですよね。

●上とほぼ同じ位置から、上流側を見たところ。樋門の巻上機室の側面、時計が備えてあるのにびっくり。観光地ならではのサービスといったところでしょうか。
眺めていると、霧は周囲の山肌や田んぼから、渦を巻いて次々と湧きでてくるのです。あまり山に縁がないこともあり、霧が産まれる瞬間を目の当たりにするのは、もちろん初めて。霧にかすむ、山間の川景色の素敵なことったら! いや、朝一番の便にしてよかった!
●船番所と桟橋の中間あたり、先ほどの看板船とほぼ同じものが。こちらは乗って記念撮影ができるみたいですね。
芭蕉丸というと、松島で乗った第三芭蕉丸(『第三芭蕉丸の船旅…1』ほか参照)が思い出されました。そういえば電話で船社に問い合わせしたとき、係の方は「芭蕉さん」と、うやうやしく口にされていたっけなあ‥‥。松尾芭蕉がもたらした恩恵の大きさ、はかりしれないものがあります。

●出港時刻が迫ると、呼び出しのアナウンスがかかり、係の方の誘導で桟橋へ。階段や桟橋の構造からみて、増水期と減水期では、相当の水位差があるみたいですね。
できるだけ長く乗って、かつ川景色もたくさん眺めたい、という下世話な欲望から、昨年開設されたこの上流8.5km、元合海からの航路(同社サイト『舟下りの楽しみ方』参照)について問い合わせてみたのですが‥‥。
原則団体さんのチャーター便のみで、一隻分の料金を払えば人数は問わないが、小人数でチャーターできるような小型の船はなく、60人乗りのみでの運航とのことでした。う~ん、残念ですが、定期航路化を待つしかないようです。
(27年11月22日撮影)
(『最上川舟下りを楽しむ…2』につづく)

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ちなみに最上川には、高屋を発着点とし最上峡を周遊、対岸の仙人堂への上陸コースもある義経ロマン観光、ずっと上流の村山市で、文字どおり渓流下りを楽しめる最上川三難所舟下り(山形県観光情報ポータルより)があるのですが、最も長い距離を乗っていられることもあり、芭蕉ラインを選ぶことにしました。機会があったら、他の船社も利用してみたいものです。

●出港まで少し時間があったので、まずは川景色とご対面したくなり、小走りに河畔へ。桟橋を見下ろすところまで来ると‥‥、おおお! 霧のたなびき具合も塩梅よろしく、まことにしっとりと、幻想的な川景色!
川面を見渡すと、桟橋の前後や対岸に至るまで、10隻を下らない船影がもやい、盛業ぶりが感じられます。こんな山深い水路に、これだけの動力船がひしめき合っているというただそれだけで、水運バカとしては感動ものの風景。
斜面を下る通路や桟橋に、頑丈そうな屋根が設けられているのは、積雪時を考えてのものでしょうか。そういえばここ、こたつを入れた雪見船も運航しているんですよね。

●上とほぼ同じ位置から、上流側を見たところ。樋門の巻上機室の側面、時計が備えてあるのにびっくり。観光地ならではのサービスといったところでしょうか。
眺めていると、霧は周囲の山肌や田んぼから、渦を巻いて次々と湧きでてくるのです。あまり山に縁がないこともあり、霧が産まれる瞬間を目の当たりにするのは、もちろん初めて。霧にかすむ、山間の川景色の素敵なことったら! いや、朝一番の便にしてよかった!

芭蕉丸というと、松島で乗った第三芭蕉丸(『第三芭蕉丸の船旅…1』ほか参照)が思い出されました。そういえば電話で船社に問い合わせしたとき、係の方は「芭蕉さん」と、うやうやしく口にされていたっけなあ‥‥。松尾芭蕉がもたらした恩恵の大きさ、はかりしれないものがあります。

●出港時刻が迫ると、呼び出しのアナウンスがかかり、係の方の誘導で桟橋へ。階段や桟橋の構造からみて、増水期と減水期では、相当の水位差があるみたいですね。
できるだけ長く乗って、かつ川景色もたくさん眺めたい、という下世話な欲望から、昨年開設されたこの上流8.5km、元合海からの航路(同社サイト『舟下りの楽しみ方』参照)について問い合わせてみたのですが‥‥。
原則団体さんのチャーター便のみで、一隻分の料金を払えば人数は問わないが、小人数でチャーターできるような小型の船はなく、60人乗りのみでの運航とのことでした。う~ん、残念ですが、定期航路化を待つしかないようです。
(27年11月22日撮影)
(『最上川舟下りを楽しむ…2』につづく)

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最上川舟下りを楽しむ…0
●山形県を貫流し、酒田で日本海に注ぐ最上川は、かねてから気になる川でした。
日本三大急流の一つに数えられるほど、険阻といってよい河相ながら、かつては200㎞超におよぶ可航域があったこと。さらに沿岸が山がちで、陸路を開くことすらままならない区間を擁することから、舟運への依存度が極めて高かったこと。加えて明治には短期間ながら、下流部に川蒸気船も就航していたときていますから、水運趣味の対象としては申し分のないどころか、意識が吸い寄せられる気分になるわけであります。
●その最上川に、複数の観光船社があり、定期(ここ重要)河川航路を盛業中とあれば、乗ってみたくなるのが人情というもの。特に、岡や山が迫る川景色に魅力を覚えるおっさんとしては、山間の可航水路というだけでも来るモノがあるのです。
長らく機会をうかがっていたところ、先日の連休、11月22日に幸いにも諸事宜しきを得て、早朝羽田発の飛行機で庄内空港へ。電車で行きたかったのですが、朝一番の出船にはどうしても間に合わないことから、止むなく空路となりました。離陸直後、東京港第一航路を北上するコンテナ船を眼下に撮ることができ、幸先の良いスタートに。

●東京は曇りでしたが、着陸態勢に入った機上から庄内平野を見下ろすと、薄雲に霞みながらも好天のようですね。
海岸に沿って伸びる防砂林の緑と、平野をうねる最上川、後方はるかにそびえる峰は、鳥海山でしょうか。風景としての美しさもさることながら、海岸砂丘の背後に、沖積地が広がっている地形を目にすると、「日本海側に来たんだなあ」という感を深くします。

●庄内空港を出て、息つく間もなく船着場へ向けて出発。道は次第に山間に入り、重畳たる山並に挟まれて、流れ下る最上川と初の対面。写真は立谷沢川との合流点付近です。
時に岩を噛んで白波を立て、中州や瀬をつくって一見穏やかに見えるところでも、全く泥っ気はなくゴロタ石の河原のみ。聞きしにまさる河相の険しさに、日本三大急流の名は伊達じゃない、と感心したものでした。
●最上川については、まだよい本に出会っていないものの、ウェブ上の論文や記事にいくつか優れたものがあって、ありがたく拝読しては興味を深めていたのですが、中でもお世話になったのが、「最上川の水運」(PDF・長井政太郎氏著・山形大学学術機関リポジトリより)です。
今まさに入ろうとしている、山間の流路についても触れたくだりがありました。
「古口より下流は出羽丘陵を横断するので峡谷をなし、山内と呼ばれている。両岸は絶壁で白糸瀧の如き飛操を懸け明治十年に磐根新道閉塞される迄は道路らしい道路は無く、人も荷物も全く船によらなければならなかった。」
「山内」! 実にストレートな呼び名ですが、山深い内陸の懐をゆく可航水路らしい雰囲気も感じられますね。この山内こそ、これから乗る観光船の航路、そのものでもあるのです。

●さらに奥地に進むと、にわかに濃い霧が湧きあがりだして、ついには視界をさえぎるほどの濃さに。その湧きあがり方がいかにも唐突で、どこか幻想的な風景ではありました。
もっとも霧が濃いままでは、川に出ても眺望が楽しめません。せっかく快晴なのに、と不安になりましたが、後で聞いたところでは、晴れた日の朝、谷間に濃い霧がかかるのはいつものことで、日が高くなれば、短時間できれいに消え去るとのことでした。
●船着場のある古口港に到着。先ほど引用したように、まさに「山内」の入口でもあります。まあ、わざわざ昔の呼び名を持ち出さなくとも、「最上峡」という立派な名前があるのですが。
河口からおよそ40㎞と聞くと、大した距離に思えないかもしれませんが、霧に沈んだ周囲を見回せば、もう全くの山の中。動力船が行き来しているのが、奇跡に思えるような山深さでありました。
ちなみに「最上川の舟運」によれば、舟運全盛期の遡上限界点は糠野目(山形新幹線高畠駅の西)で、河口からの距離実に216㎞! (←長井政太郎氏の論文による)
その急峻さ、かつての舟運依存度を考えても、掛け値なしの大可航河川といってよいでしょう。和船を模した看板、ちょっと形はアレでも、気分を盛り上げてくれます!
【撮影地点のMapion地図】
(27年11月22日撮影)
(『最上川舟下りを楽しむ…1』につづく)

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日本三大急流の一つに数えられるほど、険阻といってよい河相ながら、かつては200㎞超におよぶ可航域があったこと。さらに沿岸が山がちで、陸路を開くことすらままならない区間を擁することから、舟運への依存度が極めて高かったこと。加えて明治には短期間ながら、下流部に川蒸気船も就航していたときていますから、水運趣味の対象としては申し分のないどころか、意識が吸い寄せられる気分になるわけであります。

長らく機会をうかがっていたところ、先日の連休、11月22日に幸いにも諸事宜しきを得て、早朝羽田発の飛行機で庄内空港へ。電車で行きたかったのですが、朝一番の出船にはどうしても間に合わないことから、止むなく空路となりました。離陸直後、東京港第一航路を北上するコンテナ船を眼下に撮ることができ、幸先の良いスタートに。

●東京は曇りでしたが、着陸態勢に入った機上から庄内平野を見下ろすと、薄雲に霞みながらも好天のようですね。
海岸に沿って伸びる防砂林の緑と、平野をうねる最上川、後方はるかにそびえる峰は、鳥海山でしょうか。風景としての美しさもさることながら、海岸砂丘の背後に、沖積地が広がっている地形を目にすると、「日本海側に来たんだなあ」という感を深くします。

●庄内空港を出て、息つく間もなく船着場へ向けて出発。道は次第に山間に入り、重畳たる山並に挟まれて、流れ下る最上川と初の対面。写真は立谷沢川との合流点付近です。
時に岩を噛んで白波を立て、中州や瀬をつくって一見穏やかに見えるところでも、全く泥っ気はなくゴロタ石の河原のみ。聞きしにまさる河相の険しさに、日本三大急流の名は伊達じゃない、と感心したものでした。
●最上川については、まだよい本に出会っていないものの、ウェブ上の論文や記事にいくつか優れたものがあって、ありがたく拝読しては興味を深めていたのですが、中でもお世話になったのが、「最上川の水運」(PDF・長井政太郎氏著・山形大学学術機関リポジトリより)です。
今まさに入ろうとしている、山間の流路についても触れたくだりがありました。
「古口より下流は出羽丘陵を横断するので峡谷をなし、山内と呼ばれている。両岸は絶壁で白糸瀧の如き飛操を懸け明治十年に磐根新道閉塞される迄は道路らしい道路は無く、人も荷物も全く船によらなければならなかった。」
「山内」! 実にストレートな呼び名ですが、山深い内陸の懐をゆく可航水路らしい雰囲気も感じられますね。この山内こそ、これから乗る観光船の航路、そのものでもあるのです。

●さらに奥地に進むと、にわかに濃い霧が湧きあがりだして、ついには視界をさえぎるほどの濃さに。その湧きあがり方がいかにも唐突で、どこか幻想的な風景ではありました。
もっとも霧が濃いままでは、川に出ても眺望が楽しめません。せっかく快晴なのに、と不安になりましたが、後で聞いたところでは、晴れた日の朝、谷間に濃い霧がかかるのはいつものことで、日が高くなれば、短時間できれいに消え去るとのことでした。

河口からおよそ40㎞と聞くと、大した距離に思えないかもしれませんが、霧に沈んだ周囲を見回せば、もう全くの山の中。動力船が行き来しているのが、奇跡に思えるような山深さでありました。
ちなみに「最上川の舟運」によれば、舟運全盛期の遡上限界点は糠野目(山形新幹線高畠駅の西)で、河口からの距離実に216㎞! (←長井政太郎氏の論文による)
その急峻さ、かつての舟運依存度を考えても、掛け値なしの大可航河川といってよいでしょう。和船を模した看板、ちょっと形はアレでも、気分を盛り上げてくれます!
【撮影地点のMapion地図】
(27年11月22日撮影)
(『最上川舟下りを楽しむ…1』につづく)

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