10月10日の江戸川閘門
(『江戸川閘門のディテール…4』のつづき)

●出渠後、10月10日に見た帰路の川景色を少し。上は本流からの江戸川水閘門遠望。この朝はあいにくの薄曇りで、少し肌寒いほどでしたが、朝靄にけぶる水門風景は風情があって、よいものでした。
4日と違って水位差があるので、例によって楽しみながら通ろうと、さっそく魚探の感をチェック。
入閘時4.8m、出閘時3.1mと、数字の上ではその差1.7mという結構な閘程でしたが、自分の感覚ではせいぜい1.2mといったところで、そんなに下がった気がしませんでした。魚探がおかしかったのか、それとも気泡や底質で、エコーが狂わされていたのかしら。

●いつもと違ったのは、排水が終わって水位の低下が止まったものの、すぐ開くはずの後扉室のゲートが、なかなか開かなかったこと。
その間ほんの数分でしたが、艇とともに閉じ込められた格好になったわけで、さすがに閘門好きとはいえ、ちょっと不安になったものです。係の方がお手洗いにでも立たれていたのかな? しかし、今考えてみると、シーンと静まり返った閘室の雰囲気は一種独特で、貴重な体験ではありました。

●藤代繁造船所の前を通ると、4日は河道上にもやっていた測量船「たんかい」が、船台が空いたようで上架していました。
二つのプロペラを外して、軸系の修理をしているようですね。カタマランの水線下の形も興味深く、いいタイミングで出会ったと嬉しくなりました。

●荒川を横断して砂町運河へ入ると、ちょうど独航艀「第二十三芝浦丸」が進入するところに出くわしました。過去にも何度か出会ったことがある(『4月2日の川景色…7』参照)、おなじみの船影です。
低い爆音を轟かせて、ゆっくりと重量感ある走りぶり。ウェーキにつけて排気の匂いを嗅ぎながら、新砂水門を通りました。
【撮影地点のMapion地図】
(27年10月10日撮影)
(この項おわり)

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4日と違って水位差があるので、例によって楽しみながら通ろうと、さっそく魚探の感をチェック。
入閘時4.8m、出閘時3.1mと、数字の上ではその差1.7mという結構な閘程でしたが、自分の感覚ではせいぜい1.2mといったところで、そんなに下がった気がしませんでした。魚探がおかしかったのか、それとも気泡や底質で、エコーが狂わされていたのかしら。

●いつもと違ったのは、排水が終わって水位の低下が止まったものの、すぐ開くはずの後扉室のゲートが、なかなか開かなかったこと。
その間ほんの数分でしたが、艇とともに閉じ込められた格好になったわけで、さすがに閘門好きとはいえ、ちょっと不安になったものです。係の方がお手洗いにでも立たれていたのかな? しかし、今考えてみると、シーンと静まり返った閘室の雰囲気は一種独特で、貴重な体験ではありました。

●藤代繁造船所の前を通ると、4日は河道上にもやっていた測量船「たんかい」が、船台が空いたようで上架していました。
二つのプロペラを外して、軸系の修理をしているようですね。カタマランの水線下の形も興味深く、いいタイミングで出会ったと嬉しくなりました。

●荒川を横断して砂町運河へ入ると、ちょうど独航艀「第二十三芝浦丸」が進入するところに出くわしました。過去にも何度か出会ったことがある(『4月2日の川景色…7』参照)、おなじみの船影です。
低い爆音を轟かせて、ゆっくりと重量感ある走りぶり。ウェーキにつけて排気の匂いを嗅ぎながら、新砂水門を通りました。
【撮影地点のMapion地図】
(27年10月10日撮影)
(この項おわり)

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江戸川閘門のディテール…4
(『江戸川閘門のディテール…3』のつづき)
●逆光で写りがいま一つですが、前扉室ゲートのアップはあまり撮ったことがなかったので一枚。
この時点での光の加減か、日照時間によるのか、壁面の感じが後扉室のそれより歳相応に見える気が‥‥。しかし、小さい扉体は竣工時、もう一組の巻上機一式を備えていたのでしょうか。もし巻上機室の中に入れる機会があったら、確かめてみたいものです。

●日照時間といえば、これも触れておきたい物件。入口の壁面に一つづつ掲げられている、「徐航」の看板。「航」のアレンジされた書体が味わいがあって、よいものです。
上の写真は前扉室のものですが、これが後扉室になると‥‥。

●ご覧のとおりすっかり褪色して、そろそろ判読も難しくなりそうなくらいですね。「10月4日の新中川…1」で触れた今井水門の扉体同様、“日陰者”ほど命長らえる好例であります。
看板は天地計6か所でボルト留めされていますが、周りの壁面に着脱痕らしきものが見えるので、何度か交換されているのでしょう。最初から同様の書体だったのでしょうか。
●というわけで、長い付き合いの閘門にもかかわらず、注意してみるとさまざまな発見があって、楽しめました。例によって行徳可動堰も眺めてゆこうと、分流点を右へ折れて本流を南東へ。
近づこうとすると、堰の右手水面に猛スピードで水煙を上げて走り回るナニカが見え、カン高い爆音も聞こえてきました。どうやら、ラジコンボートの競技会を催しているみたいですね。引き波でお邪魔をしてはいけないので、残念ですが堰見物はあきらめました。

●180度回頭、京葉道路・江戸川大橋を望んで。青空を映す川面はいかにも水量豊かで、爽やかなことこの上なし。
そういえば、江戸川本流もしばらく遡上していないなあ‥‥。優しく波打つ流路を眺めていたら、三郷中之島以北とはいわないまでも、金町浄水場の取水塔や、緑したたる国府台の風景を、久しぶりに訪ねてみたくなりました。
【撮影地点のMapion地図】
(27年10月4日撮影)
(『10月10日の江戸川閘門』につづく)

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この時点での光の加減か、日照時間によるのか、壁面の感じが後扉室のそれより歳相応に見える気が‥‥。しかし、小さい扉体は竣工時、もう一組の巻上機一式を備えていたのでしょうか。もし巻上機室の中に入れる機会があったら、確かめてみたいものです。

●日照時間といえば、これも触れておきたい物件。入口の壁面に一つづつ掲げられている、「徐航」の看板。「航」のアレンジされた書体が味わいがあって、よいものです。
上の写真は前扉室のものですが、これが後扉室になると‥‥。

●ご覧のとおりすっかり褪色して、そろそろ判読も難しくなりそうなくらいですね。「10月4日の新中川…1」で触れた今井水門の扉体同様、“日陰者”ほど命長らえる好例であります。
看板は天地計6か所でボルト留めされていますが、周りの壁面に着脱痕らしきものが見えるので、何度か交換されているのでしょう。最初から同様の書体だったのでしょうか。

近づこうとすると、堰の右手水面に猛スピードで水煙を上げて走り回るナニカが見え、カン高い爆音も聞こえてきました。どうやら、ラジコンボートの競技会を催しているみたいですね。引き波でお邪魔をしてはいけないので、残念ですが堰見物はあきらめました。

●180度回頭、京葉道路・江戸川大橋を望んで。青空を映す川面はいかにも水量豊かで、爽やかなことこの上なし。
そういえば、江戸川本流もしばらく遡上していないなあ‥‥。優しく波打つ流路を眺めていたら、三郷中之島以北とはいわないまでも、金町浄水場の取水塔や、緑したたる国府台の風景を、久しぶりに訪ねてみたくなりました。
【撮影地点のMapion地図】
(27年10月4日撮影)
(『10月10日の江戸川閘門』につづく)

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富山みやげ? アクアプレイの外輪船!
●富山のお話で、積み残しが一つありました。「松川遊覧船ふたたび…5」の直後のことです。中村船長と別れた後、ご当地の水路に関連した郷土史の本でもあればと、バスで総曲輪フェリオの紀伊国屋書店へ向かいました。
残念ながら、めぼしい本は見つからなかったのですが、エスカレーターで降りながら店内をぶらついていたところ、4階の知育トイコーナーで、何と運河玩具・アクアプレイ(過去ログ『アクアプレイで遊ぶ…1』『ラジコンボートでアクアプレイ…1』ほか参照)が陳列されているのを発見! アクアプレイが店頭販売されているのを実見するのは初めてで、妙にテンションが高くなってしまいました。

●見れば、セットだけでなく、船やアッセンブリーパーツの分売もされていて、力を入れていることがうかがえ、嬉しくなりました。さすが富岩運河と松川を推している街!
目の色が変わったのは、次の瞬間。タグ入りで分売されているフネブネの中に、外輪船が! コレ、初めて見るぞ、新製品だ!
しかも船頭の大好きな、舷側外輪タイプときています。即座に購入決定、一隻はもちろん自分用に、もう一隻は子供のお風呂のおもちゃにと、色違いを都合二隻つれて帰ることにしました。

●帰宅後、封を開けてみると、実に可愛らしくまとまったセンスの良いプロポーション。単純そのもののラインながら、デザインした人の船への愛情が伝わってくるような、飽きのこないスタイルです。
この外輪船、商品名が「パドルスチーマー」、ズバリ外輪蒸気船ときていますから、これまた嬉しくなろうというもの。外輪船の小物や玩具は結構見かけるものの、どれも米型の大ぶりな上部構造物を持った、船尾外輪タイプが多く食傷していましたから、舷側外輪というだけでも貴重で、おつむもヒートしようというものです。
●ポリ製の船体は、甲板と船底、舷側周りと煙突、そして左右一体の外輪と、たったの3ピースで構成。外輪の軸を挟みながら、上下をパッチンではめ込むという明快かつ頑丈な構造で、このあたりはさすが幼児向け玩具の老舗であります。
船首で高めたブルワークに合わせ、甲板のモールドもそれらしく段を作ってあるあたり、ぬかりがありません。曳航杭も備えているので、艀を曳かせて遊ばせることもできるでしょう。

●気になってしょうがないのは、この船尾甲板を占拠する、横倒しにしたタルに、カギ形のナニカを付けたようなモノの存在。積荷にしては妙だし、汽罐(ボイラー)ならば、杓子定規にいえば煙突の直下にあるであろうと、楽しい玩具相手に無粋なことを考えていたので、しばらく謎となっていました。
しかしまあ、「パドルスチーマー」を名乗るなら、まずボイラーと思って無理はないであろうと、今のところ結論しています。タルの横倒しはともかく、カギ形のコレは何を表現しているのか、まったく謎ですが‥‥。無粋ついでにいうなら、ボイラーの端面から立ち上がるものがあるとすれば、煙道にほかなりません(もうやめろ)。
●ちなみに、水に浮かせてみると、重心が高いのかどちらかに傾きがちで、船尾にあるモールド時の空気抜き穴から、少し水を入れると安定しました。水中モーターを付けてラジコンにしてみたい‥‥などと、これまた無粋な妄想がむくむく。
ともあれ、富山で川舟をさんざん楽しんだ後で、大好物の外輪船のおもちゃに出会える、というタイミングの良さが何より嬉しく、ご褒美をもらったような気持ちになったものでした!

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残念ながら、めぼしい本は見つからなかったのですが、エスカレーターで降りながら店内をぶらついていたところ、4階の知育トイコーナーで、何と運河玩具・アクアプレイ(過去ログ『アクアプレイで遊ぶ…1』『ラジコンボートでアクアプレイ…1』ほか参照)が陳列されているのを発見! アクアプレイが店頭販売されているのを実見するのは初めてで、妙にテンションが高くなってしまいました。

●見れば、セットだけでなく、船やアッセンブリーパーツの分売もされていて、力を入れていることがうかがえ、嬉しくなりました。さすが富岩運河と松川を推している街!
目の色が変わったのは、次の瞬間。タグ入りで分売されているフネブネの中に、外輪船が! コレ、初めて見るぞ、新製品だ!
しかも船頭の大好きな、舷側外輪タイプときています。即座に購入決定、一隻はもちろん自分用に、もう一隻は子供のお風呂のおもちゃにと、色違いを都合二隻つれて帰ることにしました。

●帰宅後、封を開けてみると、実に可愛らしくまとまったセンスの良いプロポーション。単純そのもののラインながら、デザインした人の船への愛情が伝わってくるような、飽きのこないスタイルです。
この外輪船、商品名が「パドルスチーマー」、ズバリ外輪蒸気船ときていますから、これまた嬉しくなろうというもの。外輪船の小物や玩具は結構見かけるものの、どれも米型の大ぶりな上部構造物を持った、船尾外輪タイプが多く食傷していましたから、舷側外輪というだけでも貴重で、おつむもヒートしようというものです。

船首で高めたブルワークに合わせ、甲板のモールドもそれらしく段を作ってあるあたり、ぬかりがありません。曳航杭も備えているので、艀を曳かせて遊ばせることもできるでしょう。

●気になってしょうがないのは、この船尾甲板を占拠する、横倒しにしたタルに、カギ形のナニカを付けたようなモノの存在。積荷にしては妙だし、汽罐(ボイラー)ならば、杓子定規にいえば煙突の直下にあるであろうと、楽しい玩具相手に無粋なことを考えていたので、しばらく謎となっていました。
しかしまあ、「パドルスチーマー」を名乗るなら、まずボイラーと思って無理はないであろうと、今のところ結論しています。タルの横倒しはともかく、カギ形のコレは何を表現しているのか、まったく謎ですが‥‥。無粋ついでにいうなら、ボイラーの端面から立ち上がるものがあるとすれば、煙道にほかなりません(もうやめろ)。
●ちなみに、水に浮かせてみると、重心が高いのかどちらかに傾きがちで、船尾にあるモールド時の空気抜き穴から、少し水を入れると安定しました。水中モーターを付けてラジコンにしてみたい‥‥などと、これまた無粋な妄想がむくむく。
ともあれ、富山で川舟をさんざん楽しんだ後で、大好物の外輪船のおもちゃに出会える、というタイミングの良さが何より嬉しく、ご褒美をもらったような気持ちになったものでした!

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タグ : アクアプレイ
江戸川閘門のディテール…3
(『江戸川閘門のディテール…2』のつづき)

●管理橋直下、側壁に見える繋留用のアイ。お椀型の金物を埋め込んだ中に、鉄環が備えられているタイプです。「北上運河閘門めぐり…7」の、石井閘門にも似た形式のものが見られますね。写真左角と右の角落しの戸溝に見られる、石材とあわせて、これまた時代を感じさせるディテールです。
下流側の後扉室側壁にもあるのですが、こちらは管理橋の分延長があり、ズラリと並んだアイの穴が壮観。これは通航船の繋留用というよりは、場所から見て、扉体メンテナンス時に供するためのものなのでしょうか。

●扉体を見上げて。後扉室のそれより、草の繁り方がだいぶ多め(笑)。こちらの特徴は、ご覧のとおり下流側に、鋼製の梁が設けられていること。
‥‥と、単なる梁だと長年思い込んでいたのですが、どうも、もう一枚の扉体だったようです! 前回触れた「土木建築工事画報」昭和14年6月号の「江戸川水門工事に就て」によれば、
「扉は引揚式で、上扉室に高6.0米(重量30瓲)1枚及高1.5米(重量10瓲)1枚計2枚」
「扉運転の動力は、50馬力電動機2臺、10馬力1臺を装置」
ええええ!?
●いや、驚いたと同時に、恥ずかしくなりました。最も長い付き合いの閘門について、こんな肝心なことを知らなかったとは。江戸川閘門君に心からお詫びしたい。小さい扉体のワイヤーや滑車は、取り外されて久しいのか、それとも左右の戸溝の中にでも隠れているのでしょうか。
記事の諸元でもお分かりのように、高さ1.5m・重量10tがこの小さい扉体のスペック。2枚に分けた目的は、通常の通船は主扉体のみで運転し、恐らく本流が増水したときのみ、小さい扉体を積み増して計画高水位をクリアする、ということでしょう。
それがわかると、さて気になったのは、この扉体がいかなる動作をしていたかです。
●小さい扉体は段の上に載っているので、大きい扉体の下に入るにせよ、上に積み増すにせよ、現在地から上流側へ前進する動作が必要になります。
航過しながら仰いだかぎりでは、どういったからくりなのかわかりませんでしたが、下流側に凸部がある扉体の構造から考えても、前進させて、大きい扉体に「乗るか、乗せるか」しなければ、水密は保てないでしょう。ちなみに大きい扉体の全閉時、天端は小さい扉体の現在地下端より、ずっと低い位置になります。
●戸溝を改めて観察してみると、下流側に、ぷつりと途切れる鋼製のレールがあるのに気づきました。大きい扉体のローラーは、この向こうにあるレールと接しているようだし、もしかしたらこれが、小さい扉体のレールなのかもしれません。だとすれば、大きい扉体の上に乗るかたちだったことになります。
そうだとしても、大きい扉体の上には滑車とワイヤーがあり、扉体の厚みも上にもう一枚乗せるような、特別な厚みがあるようには見えず、疑問が残りますね。動作の仕方を含めて、これはぜひ、陸路観察して謎を解きたいものです! ‥‥いや、これすらも、よく探せばウェブ上に資料があるのかしら?

●前扉室をくぐった直後に振り返って。縦に帯状の継手を見せるスキンプレートの下端には、アングルで作られた樋が取り付けられ、通航船への水垂れを軽減するようになっているのがわかります。
いやしかし、江戸川閘門で通航初体験をしてから実に20年目にして、新たな事実に気づかされるとは! お恥ずかしいかぎりではありますが、何か妙な因縁も感じさせたりして、ますます惹かれてしまうのでした。
(27年10月4日撮影)
(『江戸川閘門のディテール…4』につづく)

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下流側の後扉室側壁にもあるのですが、こちらは管理橋の分延長があり、ズラリと並んだアイの穴が壮観。これは通航船の繋留用というよりは、場所から見て、扉体メンテナンス時に供するためのものなのでしょうか。

●扉体を見上げて。後扉室のそれより、草の繁り方がだいぶ多め(笑)。こちらの特徴は、ご覧のとおり下流側に、鋼製の梁が設けられていること。
‥‥と、単なる梁だと長年思い込んでいたのですが、どうも、もう一枚の扉体だったようです! 前回触れた「土木建築工事画報」昭和14年6月号の「江戸川水門工事に就て」によれば、
「扉は引揚式で、上扉室に高6.0米(重量30瓲)1枚及高1.5米(重量10瓲)1枚計2枚」
「扉運転の動力は、50馬力電動機2臺、10馬力1臺を装置」
ええええ!?
●いや、驚いたと同時に、恥ずかしくなりました。最も長い付き合いの閘門について、こんな肝心なことを知らなかったとは。江戸川閘門君に心からお詫びしたい。小さい扉体のワイヤーや滑車は、取り外されて久しいのか、それとも左右の戸溝の中にでも隠れているのでしょうか。
記事の諸元でもお分かりのように、高さ1.5m・重量10tがこの小さい扉体のスペック。2枚に分けた目的は、通常の通船は主扉体のみで運転し、恐らく本流が増水したときのみ、小さい扉体を積み増して計画高水位をクリアする、ということでしょう。
それがわかると、さて気になったのは、この扉体がいかなる動作をしていたかです。

航過しながら仰いだかぎりでは、どういったからくりなのかわかりませんでしたが、下流側に凸部がある扉体の構造から考えても、前進させて、大きい扉体に「乗るか、乗せるか」しなければ、水密は保てないでしょう。ちなみに大きい扉体の全閉時、天端は小さい扉体の現在地下端より、ずっと低い位置になります。
●戸溝を改めて観察してみると、下流側に、ぷつりと途切れる鋼製のレールがあるのに気づきました。大きい扉体のローラーは、この向こうにあるレールと接しているようだし、もしかしたらこれが、小さい扉体のレールなのかもしれません。だとすれば、大きい扉体の上に乗るかたちだったことになります。
そうだとしても、大きい扉体の上には滑車とワイヤーがあり、扉体の厚みも上にもう一枚乗せるような、特別な厚みがあるようには見えず、疑問が残りますね。動作の仕方を含めて、これはぜひ、陸路観察して謎を解きたいものです! ‥‥いや、これすらも、よく探せばウェブ上に資料があるのかしら?

●前扉室をくぐった直後に振り返って。縦に帯状の継手を見せるスキンプレートの下端には、アングルで作られた樋が取り付けられ、通航船への水垂れを軽減するようになっているのがわかります。
いやしかし、江戸川閘門で通航初体験をしてから実に20年目にして、新たな事実に気づかされるとは! お恥ずかしいかぎりではありますが、何か妙な因縁も感じさせたりして、ますます惹かれてしまうのでした。
(27年10月4日撮影)
(『江戸川閘門のディテール…4』につづく)

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江戸川閘門のディテール…2
(『江戸川閘門のディテール…1』のつづき)
●夜間設備の中でも目立つのが、堰柱側面に設けられた、この電柱取り付け型水銀灯。各堰柱に前後2本、計8本あります。街灯としてはLEDタイプに駆逐され、もはや懐かしいスタイルですよね。
夜設にはこの他、巻上機室上に16基、閘室左右にポール型の水銀灯が6基、巻上機室桁内に後述の照明が3基と多彩で、ここが通船の要衝であることを改めて実感できます。

●くぐりながら扉体を見上げて。扉体は一度更新されているので、リベットの見られない溶接組み。(訂正・竣工当初より溶接組立、追記参照)中央の梁4列分に渡って、木製の平角材がボルト止めされています。船舶などの衝突に備えての、フェンダーといったところでしょうか。
構造の水平部分には泥が溜まるようで、上から2列目は湿気と日照の塩梅もよいのか、草が生えてしまっていますね。

●そして、開放時ならではの一枚を。扉体の断面というか、水密材の様子を記録しておきたかったのです。
ご覧のとおり、黒く分厚なゴム板をボルト止めしたものでした。改修後、バイパス装置での注排水を取りやめ、扉体を細めに開けて注排水を行うようになりましたが、そのあたりの対策も講じられているのでしょう。
●くぐってから振り返って、巻上機室桁裏を見上げたところ。ここにも3つの照明があって、扉体を真上から照らす形になっています。4つの水銀灯で十分とも思うのですが、扉体の上下を確認するためでしょうか。
平成7年8月に、夜に撮った写真(過去ログ『平成7年8月・江戸川…2』参照)を確かめてみたら、前扉室のこれを点灯していることがわかりました。堰柱の水銀灯は点いていなかったので、ここを照らしておくことに、何か特別な意味があるのかもしれません。

●閘室周りは過去にたびたび触れているので、前扉室に視点を移してみましょう。管理橋の高欄に刻まれた英国旗のような模様、最近の橋ではまず見られない意匠で、時代を感じさせるパーツではあります。
以前から気になっているのは、水門の径間を渡る部分にも同様の装飾が施されているものの、水門のそれは向こうに抜けているのに、閘門の部分は凹凸の表現のみで抜けていない、いわばムクであるということ。これにも何か、意味があるように思えます。例えば通船の安全や、閘室の保全を考えて、小石など異物の落下を極力防ぐようにしたため、というのはいかがでしょうか。
【11月5日追記】
土木学会附属土木図書館で公開されている、「土木建築工事画報 第15巻6号(昭和14年6月発行)」の記事「江戸川水門工事就いて」(PDF)によれば、扉体は「電弧溶接扉」とあり、竣工当初より溶接組みであることがわかりました。お詫びして訂正します。
(27年10月4日撮影)
(『江戸川閘門のディテール…3』につづく)

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夜設にはこの他、巻上機室上に16基、閘室左右にポール型の水銀灯が6基、巻上機室桁内に後述の照明が3基と多彩で、ここが通船の要衝であることを改めて実感できます。

●くぐりながら扉体を見上げて。
構造の水平部分には泥が溜まるようで、上から2列目は湿気と日照の塩梅もよいのか、草が生えてしまっていますね。

●そして、開放時ならではの一枚を。扉体の断面というか、水密材の様子を記録しておきたかったのです。
ご覧のとおり、黒く分厚なゴム板をボルト止めしたものでした。改修後、バイパス装置での注排水を取りやめ、扉体を細めに開けて注排水を行うようになりましたが、そのあたりの対策も講じられているのでしょう。

平成7年8月に、夜に撮った写真(過去ログ『平成7年8月・江戸川…2』参照)を確かめてみたら、前扉室のこれを点灯していることがわかりました。堰柱の水銀灯は点いていなかったので、ここを照らしておくことに、何か特別な意味があるのかもしれません。

●閘室周りは過去にたびたび触れているので、前扉室に視点を移してみましょう。管理橋の高欄に刻まれた英国旗のような模様、最近の橋ではまず見られない意匠で、時代を感じさせるパーツではあります。
以前から気になっているのは、水門の径間を渡る部分にも同様の装飾が施されているものの、水門のそれは向こうに抜けているのに、閘門の部分は凹凸の表現のみで抜けていない、いわばムクであるということ。これにも何か、意味があるように思えます。例えば通船の安全や、閘室の保全を考えて、小石など異物の落下を極力防ぐようにしたため、というのはいかがでしょうか。
【11月5日追記】
土木学会附属土木図書館で公開されている、「土木建築工事画報 第15巻6号(昭和14年6月発行)」の記事「江戸川水門工事就いて」(PDF)によれば、扉体は「電弧溶接扉」とあり、竣工当初より溶接組みであることがわかりました。お詫びして訂正します。
(27年10月4日撮影)
(『江戸川閘門のディテール…3』につづく)

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