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東京湾フェリーとフネブネ…2

(『東京湾フェリーとフネブネ…1』のつづき)

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さっそく客室甲板に上がって船尾方向を見ると、すぐそばの岸壁にガット船・第六十八伸光丸がもやい、荷ほこりをたてて荷役中。積み荷はお決まりの建材ではなく、スクラップのように見えました。

そうそう、(社)日本作業船協会のサイトはご存知ですか? トップページから「作業船とは?」をクリックすると、ガット船を始めとする、さまざまな働くフネブネが一堂に会した、楽しい作業船図鑑が見られます。

84007.jpg一段下の甲板を見下ろせば、ヘルメットをかぶった乗組みの方が、岸壁でしょうか、よそと連絡を取り合いながらウィンドラスを操作して、もやいを巻き取ったりと忙しそうに作業中。

すでにエンジンの振動は高まって、船は岸を離れつつあり、船体と岸壁の間には、緑色の水面が広がりつつありました。

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久里浜港の突堤をぐるりと迂回して南東へ変針、金谷まで約40分のささやかな船旅の始まり。湾口も近いとあって、海の色は外洋のそれを思わせる美しさ、しかも海況はおだやかそうで、まずはいうことなし。

写真の右に写っている装載艇、複合艇でペラはシュラウドリング付きというのに惹かれるものが。

84009.jpg震災からこのかたの電力不足で、にわかに注目の集まりつつあった横須賀火力発電所の真横を通過。

平成7年のスナップに拾う」でも触れましたが、三浦が母港だったころ、剣崎を回って湾奥へ向かい北上するときの、最初の大目標がこの煙突群。フェリーから眺めたかぎりでは、ズラリと並ぶタンクを前に穏やかな表情でしたが、発電所内は運転再開に向けて忙しかったことでしょう。

84010.jpg我がフェリーと入れ違いに、久里浜へ入港してゆくのもまた、ガット船でした。

房総半島といえば、建材としての砂の供給地、この型の船は房総から砂を運んでくるフネ…という先入観があるものですから、彼らの姿を目にすると「千葉県に向かっているんだなあ」という実感がわいてくるのです。


(23年6月6日撮影)

(『東京湾フェリーとフネブネ…3』につづく)

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タグ : 東京湾フェリー

東京湾フェリーとフネブネ…1

海の航路のお話で、ご容赦ください。あっため過ぎてすっかり忘れていたのですが、昨年6月に東京湾フェリーに乗って、南房総へ行ったときのお話をしたいと思います。

三浦・房総両半島部の陸上交通の未整備を補うべく、かつては東京湾内に幾多の沿岸航路、また東西両岸を結ぶ渡船航路がありました(『航洋型』通運丸も就航していました)が、鉄道や道路の発達によって、今や久里浜~金谷間の一航路を残すのみとなりました。

84001.jpgその孤塁である東京湾フェリーも、アクアラインや館山道の開通以降、苦戦を強いられているとの話を耳にして、一度乗っておこうと思ったのです。

海の都大路・東京湾口を横切るとなれば、フネブネの姿も期待できるし、これは楽しみ…とニヤついていたら、フェリーに行きつく道々ですでに、強烈な船影に遭遇。深田サルベージ建設の「駿河」(2200t吊り)かな? これは幸先がいいですね。

84002.jpg久里浜のフェリーターミナルに到着。特に時刻表も確かめずに来たのですが、日中約1時間ヘッドとあれば、待ち時間もそう苦になりません。何より久しぶりのフェリーとくれば、じっとしていられないのが人情。お土産選びもそこそこに、外へ飛び出しました。

ちなみに、相互リンク先である「コチャックの操舵室3」には、現役の2隻から、過去に就航した歴代のフェリーたちまで、東京湾フェリーのさまざまな船影が貴重な写真で紹介されています。ぜひご覧あれ。

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港の風景を眺めてお散歩していたら、入港のアナウンスが。さっそく桟橋の見える護岸まで走り、カメラを構えました。

静々と入ってきたのは、かなや丸。3580総t、全長79m、航海速力13kt(東京湾フェリーフェリーのご紹介』より)。車輌航送船らしい、船首尾が箱型に張り出した、ボリュームのある船型がまた魅力的。船体の塗装もきれいで、よく手入れをされていることがうかがえます。

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接岸作業が終わると、ランプが降りてバウドアがぱっくり開き、クルマの下船開始。誘導員の方が慣れた手つきで交通整理を始めました。いやが上にも気分が盛り上がります!
撮影地点のMapion地図

84005.jpg我々はバウドアから乗り込んだわけですが、金谷では逆に艫づけをするので、このまま前進して下船できるという寸法。しかし、想像以上に空いていますね。

子供のころから最近まで、少なくとも数回は乗ったと思うのですが、常に混んでいた印象が強かった(行楽シーズンということも、あったでしょうが)ので、ちょっと寂しくなりました。内湾渡船航路という違いがあるとはいえ、いにしえの河川航路と同様の苦衷のさまを、リアルで目の当たりにした思いでありました。


(23年6月6日撮影)

(『東京湾フェリーとフネブネ…2』につづく)

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タグ : クレーンバージ東京湾フェリー

那珂川河口再訪

(『萬右衛門川の面影…6』のつづき)

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83033.jpg前後しますが、旭橋周辺に向かう前に、前回も訪ねた河口近くの公園(過去ログ『那珂湊には…』参照)に寄り道してみました。駐車場やお手洗いも完備した、テラスのある気持ちのよい公園でしたが、やはり地震と津波の爪痕は今なお生々しく、至るところが陥没し、砕石やコンクリート片が散乱していました。

それでも駐車場は一杯で、散策や釣りを楽しむ人々で賑わっていたのに救われる思い。冷たくも爽やかな風を浴びて、河口風景をしばし堪能。

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隣接する変わり型水門、那珂湊漁港水門(過去ログ『那珂湊漁港水門』参照)ものぞいてみると、こちらも傷跡未だ癒えず…。

水門や左右の建屋、信号器もしっかりと健在だったのは頼もしく感じましたが、左側のシャッターがべっこりと凹んださま、津波の水勢の凄まじさが迫ってくるようで、言葉がありません。

83035.jpg北側、港内に目を転じてみると、旗を掲げた松飾りも勇ましい漁船がもやい、お正月らしい雰囲気です。

昼食時に入った魚市場の食堂で、ご主人にうかがったところによると、津波は漁港一帯を0.8mほど冠水させ、復旧はほぼ成っても客足の衰えは著しく、震災後は例年の約6割減とのことでした。


83036.jpg漁船たちの左側には、保安庁船艇らしいシルエットの「とうかい」が。漁業監視艇か何かでしょうか。

検索してみたら、bambooさんのブログ「向こう側に」がヒット。記事「買い物に行って。」によると、茨城県の漁業取締船で、37.9ktも出るのだとか。他にも港内にもやうフネブネを詳しく解説されているので、ぜひご覧ください。
撮影地点のMapion地図

(24年1月2日撮影)

(この項おわり)

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タグ : 那珂湊那珂川那珂湊漁港水門

閘門様平癒祈願

今月14日より、閘門様が故障して通行不能であることにようやく気づき、愕然とする船頭。都内3閘門と付き合いが始まってから、メンテナンス以外で閘門が通航できない状態になったのを耳にしたのは、これが初めてでした(気づいていなかっただけかも)ので、そりゃもう驚かされました。

故障のため荒川ロックゲート(閘門)が使用できません」(荒川下流河川事務所あらかわ告知板2012年

むう、先月訪ねたときは、あんなに元気だったのに。まずは閘門様崇敬会(会員一名)として、ご病気の平癒を祈願申し上げますです。

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ニュースはリンク先でご覧のとおり、実にあっさりしたもので、その後1週間を経た今に至るも続報はなく、ちょっと不安になってきました。近々再訪を予定していたこともあり、修理の進捗状況でも聞ければと、荒川下流河川事務所に電話してみることに。

電話に出てくださった男性職員に、いつも利用させていただいているものですが、修理の件で…といって用件を切り出すと、「すでにお知らせしたように、開閉装置が故障してしまい、現在通航ができなくなっている。ご迷惑をおかけして申しわけない。」と、まずは告知と同じ内容のお答えが。
復旧のめどについてはどうでしょう? と訊けば、「できるだけ早く復旧できるよう努力している」とのこと。

ご対応いただき、ありがとうございました。どうやらまだ、通航再開の時期を発表できるまでには至っていないようですね。

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これで水位低下化区間に出入りができなくなったら、ちょっとマズいなあ…と勝手に不安に駆られ、念のため扇橋閘門にも電話(お忙しいところ、申しわけありませんでした)。

確か先月10日に訪ねた折に見た横断幕では、工事は12日までの予定とありましたから、平常運転しているはずですが。

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受話器に「ハイ、扇橋閘門です!」と元気な職員さんの声が。脳裏に、一昨年見学させてもらった閘門管理所の建物(これ↑)を想い浮かべながら、来月×日に通る予定ですが、大丈夫でしょうか…と問うと、カレンダーの通航予定を見ているのか、「え~と」とやや間があってから、
「大丈夫だと思います。小名木川に工事の船が入っているので、途中、少し通りにくいところがあるかもしれませんが。」と、明快なお答え。

工事といえば…そうだ、ついでに訊いてしまおう。来月は、内部河川で通航禁止の区間はありますか? との質問には、
「それも大丈夫でしょう。ただ、荒川ロックゲートが故障中でしてね、内部河川的にはちょっといっぱいいっぱいで、その時にならないとわからないこともありますから、通る日が近くなったらもう1回お電話ください」細やかかつ親切なアドバイス、ありがとうございました!

ともあれ、閘門様の故障がどのくらいのレベルなのか、修理は可能な状況なのかが気にかかります。続報のアップが待たれますが、ここは一日も早く平常運転に戻れるよう、お祈りしたいものです。

【24年1月26日追記】
復旧予定が告知されました! 
故障のため荒川ロックゲート(閘門)が使用できません(第2報)復旧見込みのご案内
2月1日より通航可能になる見込みとのこと。復旧に当たられている皆様、お疲れさまです。しかし、「平成24年度に恒久対策を実施」とあるので、とりあえずの応急処置ということかもしれませんね。

【24年2月1日追記】
予定どおり、無事復旧成ったようですね。よかった。
《荒川ロックゲート(閘門)》ご利用可能です(第3報)


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タグ : 荒川ロックゲート扇橋閘門閘門

萬右衛門川の面影…6

(『萬右衛門川の面影…5』のつづき)

83026.jpgさっそく反対側の親柱をのぞいてみると、ありました。「あさひはし」と平仮名の銘板が!

西側高欄の親柱が2つとも失われていたので、漢字はわかりませんでしたが、仮に旭橋としておきましょう。同様に竣工年も不明ながら、まず戦後の建造と思って間違いありますまい。
「運河論」の挿図を見ても、この付近に橋があったようですから、あるいは現役時代の萬右衛門川に架かっていた橋に続いて、2代目なのかもしれません。



83027.jpg橋を外れて、水路終端部の北岸から南を見たところ。暗渠が口を開けており、海側へ排水を導いていました。ここが「新川」の事実上の最下流部です。

写真右側が旭橋で、河床から低い落差を経て、四角い溜升に注いでいました。




83028.jpg「あさひはし」の銘があった親柱の位置から、北側を見たところ。北と東、二方とも暗渠が開口しているのが見えます。この溜升、側溝や周囲の雑排水が集中する、地域にとって重要な施設だったのですね。

そんなわけで、ここまで来ると萬右衛門川の面影は、全くといっていいほど見られなくなっていました。まあ、このあたりの「新川」も、萬右衛門川の幅を単純に狭めたというよりは、埋め立てた後に改めて整備された、と考えた方が自然のような気もしますが…。
運河時代の萬右衛門川は、この先道なりに東へ向かい、和田町3丁目、ひたちなか市武道館のあるあたりが旧海岸線で、海へ開口していました。

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現役時代の萬右衛門川にゆかりはない、単なる割下水となり果てた時代の橋とはいいながらも、旭橋のひなびた雰囲気には惹かれるものがあり、改めて西側高欄を一枚。

外側に歩道が増設されたせいでしょう、親柱は2つとも撤去されて、残った高欄もクルマに体当たりされ、剥離やひび割れも著しく、息も絶え絶えといったありさま。昨年の津波でも、もちろん痛めつけられたことでしょう。それでも、現役の橋として活躍していることを思えば、川が埋め立てられて、記念に親柱のみ残される橋より、境遇としてはましなのかもしれません。

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ホンモノのGoogleマップで萬右衛門川を見る

「運河論」の挿図をGoogleマップに落として、昭和10年時点での萬右衛門川の略図を描いてみました。何分資料が少ないのでごくラフなものです、悪しからず。いずれ古地図でも入手して、訂正したいと思っています、まずはご参考まで。両端がぶつりと途切れたように描いたのは、当時の基終点であった川岸・海岸線を想定したためです。

描きながら感じたのは、萬右衛門川は那珂湊漁港そのものだったということです。小型漁船の安全な繋船地と、市街地に接した荷揚場の延長を稼ぐために造られたものでしたから、おそらく現在の漁港の建設が決定したとき、萬右衛門川の役目は終わったのでしょう。

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帰り際、旭橋をふたたび通ったら、高覧の上に真っ白なコサギ君が留まっていました。寒いのでしょう、首をうずめてふくらまった姿が可愛らしいですね。驚かさないようにそーっと近づき、ズームでたぐって一枚撮らせてもらいました。

(24年1月2日撮影)

(『那珂川河口再訪』につづく)

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タグ : 萬右衛門川那珂湊水辺の鳥たち