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日本橋の絵葉書

日本橋が洗われたらしい…1」ほかで、すっかりキレイになった日本橋を堪能してから、改めてこの橋のかつての姿に興味がわいてきました。集めた昔の絵葉書から、日本橋を主題としたものを取り出しては眺めていたのですが、その中でも特に気に入っているのが、以下に掲げた5葉の人着写真です。

日本橋の絵葉書は点数が多いこともあって、比較的入手しやすく、書籍やウェブ上で公表されているものも少なくないため、あるいはご覧になったものもあるかと思いますが、水路とともに栄えた商業街の中心として、輝いていたころの日本橋と、人着写真独特の味わいを楽しんでいただければ幸いです。


下流側南岸、現在の野村証券があるあたりから望んだ日本橋。市電の型や背景から、大正末から昭和初期といったところでしょうか。右径間をくぐる舟に、竿さす船頭さんの姿が見えるのもいい感じです。

バックの帝国製麻ビルのレンガ色がよく出ていて、目に沁みるようですね。帝国製麻ビルは、東京駅も手がけた建築家・辰野金吾によるもので、大正3(1914)年の竣工。日本橋の外観ともよくマッチした、橋詰を代表する建物でした。のちに大栄不動産の所有となってから、惜しくも解体され、現在は大栄不動産の新しいビルが建っています。


これも南岸、やや西側の上空から見たところで、現在では絶対に拝めないアングルでもあります。画面右手には旧魚河岸の建物と桟橋群が見られることから、震災前は確実で、大正初めごろでしょうか。中央、今でいう室町1丁目の家並の中に、仁丹の広告がにょっきり突き出しているのに目をひかれますね。

おっ、と気付かされたのは、上流の橋脚左側に、防護杭が見られること。舟がひしめいていた時代ですから、増水時には流れ出した舟が橋脚に衝突することも、少なからずあったことでしょう。


洋風建築が増えていることから、こちらは2枚目よりだいぶ後の撮影のようです。荷足か艜(ひらた)かはわかりませんが、かなり大型の荷船が竿さして橋をくぐりゆくさまに、嬉しくなったものです。ここでも帝国製麻ビルが目立っています。橋詰広場の位置に緑が見えますが、今と違って、木を植えていた時期もあったのでしょうか。

三越をはじめとする巨大ビル群を背景に、電車の轟音と、行きかう人々や船頭たちの話し声までが聞こえてきそうな活気あふれる一枚で、「あきんどの街」の魅力が詰まった写真ですね。


一枚目とよく似たアングルながら、こちらは珍しい夜景を写したもの。ほのかに浮かび上がる日本橋の白い石積み、窓から漏れる白熱球の灯りと、それを映した水面が実に美しく、ボカシ処理も見事で、人着写真としても秀逸なものに思えます。


最後も「日本橋の夜趣」と題した夜景ですが、こちらはアングルも背景もぐっとモダンで、昭和戦前も二桁といった感じがします。人着写真というよりはもはや絵画で、いかにも明治風な装飾を施した橋灯と、バックの直線的なビル群のシルエットが対照的です。

撮影者(いや、画家?)も、そんな「モダン東京」と、星霜を経た日本橋のコントラストを意識して、視点を決めたのかもしれませんね。

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タグ : 日本橋川日本橋絵葉書・古写真