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吊られる桁 VS 喰われるトラス

(『新芝運河に拾う…4』のつづき)

まずは、一見本題と関係なさそうな写真を、二枚ご覧いただきましょう。隅田川の河上から見た、両国ジャンクションの東側。首都高愛好家なら知らぬ者のない、桁から桁をワイヤーで吊り下げたという、珍しい工法が採られたところです。

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この吊り構造の存在を知ったのは、佐藤淳一氏のブログ「Das Otterhaus」の記事、「【速報】荒川ロックゲートでお腹いっぱいツアー」で写真を拝見してから。最近イカロス出版より発行されたムック「首都高をゆく」(実に面白い本でした!)でも、「橋から橋を吊り下げる!」と題して、大きく取り上げられており、関心の高さがうかがえました。

本来、自身にかかる重さをよそに分担してもらうべき橋桁が、他の橋桁をぶら~んと吊り下げているさまは、まさに奇観。「首都高をゆく」の記事でも、橋脚を設けることが難しかった現地の厳しい環境や、着工前の模型を使った振動実験の様子が説明されており、ナルホドと、見るほどに知るほどに、興味を引かれる光景ではあるのです、が…。

「橋が、他の橋を支えている」という意味では、両国ジャンクションの朋輩とも言える今回のお題、高浜西運河芝浦橋(↓)
コイツの発散する禍々しさと、改めて見くらべてみると、「吊られる桁」の珍奇さもいっぺんで消し飛び、スマートかつ穏便な、周辺景観に配慮した設計に感じられてしまう…というのは、ちょっと大げさでしょうか?

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頭上を圧する二本の高架桁のうち、一方は身を沈めてがっぷりと喰い付いており、もう一方も4本の太い脚で、しかもトラスの天端を延長させてまで(下写真)、ずっしりと体重をかけている凄まじさ。

最初にこれを意識したときは、高架橋脚が工事中だったこともあり、あまりのあり得なさに、「高架桁を支えているのではなく、ぶら下がっているのかしら? いや、これはあくまで一時的な措置で、いずれ別に橋脚が設けられるに違いない」などと、あれこれ妄想したほど。国内に、これほど虐げられた(?)体のトラス橋があるでしょうか。高架下の橋の景観をうんぬんするなら、まず芝浦橋の惨状を見てから議論せよ! と言いたいです(笑)。
まあ、冗談はともかく、橋に関心のない方でも、この状態を見れば、いかにも哀れを誘うのではないでしょうか。このような変わった工法を採るに至った経緯にも、興味をそそられますね。

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今回、改めてしげしげと眺めて、想像するに…橋の前後には、写真にも写っているように、河道をまたいだ橋脚が隣接しているので、芝浦橋自身にかかる高架の重さは、見てくれほどではなく、桁の垂れ下がりを抑える程度の、補助的なもののように思えました。

芝浦運河地帯、唯一のトラスということもあり、橋めぐりでもアップされていないかしら、と検索してみると…2つヒット。「MINATOあらかると」の「芝浦橋」には、データがありました。昭和45年7月竣工、長さ43.1m、幅9.5mとのこと。頭上を走る貨物線、汐留~東京貨物ターミナル間の開業が、昭和48年とありますから、ごく近い時期の竣工ですね。高架桁を支えるのは、初めから考えられていたことなのでしょうか。(参考:Wikipedia『東海道貨物線』)

今ひとつ。おお、これは…「映画“転校生 さよならあなた”日記」の写真、路上から見たところですが、水上から見た感じより、さらに重苦しいのしかかられっぷり。こりゃ前言撤回! 道路幅のみの短い桁とは言え、全体重が芝浦橋にかかっている感じですね。

ともあれ、同じ「橋で橋を支える」珍工法とは言え、片や都心のジャンクション、片や運河の隅の文字どおり日陰者と、対照的なロケーションの二物件。皆さんはどちらに興味をそそられるでしょうか。
撮影地点のMapion地図

(21年12月13日撮影)

(『高浜運河に拾う…1』につづく)

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タグ : 高浜西運河隅田川高架下水路

新芝運河に拾う…4

(『新芝運河に拾う…3』のつづき)

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「桁下高2.2m▼」と、珍しく桁下高表記のある藻塩橋。毎度同じことを書いて恐縮なんですが、橋や水門はオレンジとか赤とか、暖色系の方がよろしいです。特に、このようにビルに囲まれた狭水路では、視認性をよくする意味でも。

これが下路式のトラスとなれば、渡る人から見て悪目立ちするから、という理由も考えられるでしょうが、道路上からは構造がまったく見えない上路式の桁橋は、すべからくアカ~く塗るべきと、信じて止みません。
だんだん、暖色塗装原理主義者になってきた(笑)。

20112.jpg藻塩橋西詰は、橋の下をくぐって、分断されているテラスをつなぐ桟道が設けられているのが特徴。橋の上に上がることなく、水辺の散策が楽しめるようになっています。

ここ、以前紹介したとき(過去ログ『芝浦の運河めぐり…3』参照)はまだ設けられておらず、真上に家のある暗渠の開口部や、石垣護岸が見えていたあたり。芝浦運河地帯、着々と整備が進んでいるのが見て取れます。

20113.jpg新芝南運河との変形丁字流を、百代橋を左に見ながらゆるゆる通過。

左手、木が茂っているあたりは旧来の石垣護岸が残って、テラスや桟道もなく、昔の面影が感じられる一角でもあります。


20114.jpgここ、通るたびに気になっていたのですが、油槽らしきタンクとホイストが、チラリと見えるんですよね。

造作から見てそう古いものではなく、ホイストのブームの長さも、旧護岸を越えて荷役するには足りませんから、水運とは関係がないのでしょうが、新河岸川の例もあるので、やはり気になってしまいます。


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新芝運河の南端と、高浜西運河の西端部が接する「運河の曲がり角」は、JR・東海道貨物線と、新幹線の大井車輌基地に至る枝線が斜めにかぶさる、都内でも珍しい、鉄道高架下の水路。(『高架下水路づくし』参照)

そうそう、ここを通ったら吸い寄せられざるを得ない、例のモノについて、改めて興味をそそられていたところでした。次回、別項を設けてご紹介しましょう。
撮影地点のMapion地図

(21年12月13日撮影)

(『吊られる桁 VS 喰われるトラス』につづく)

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タグ : 新芝運河新芝南運河高架下水路