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さようなら、扇島閘門…2

(『さようなら、扇島閘門…1』のつづき)

がっくりと気落ちして、しばらくその場に立ちつくしながらも、これは不幸中の幸いだったのではないか、と考えるようになりました。撤去が終わって、何も無くなったこの場所を見て愕然とするよりは、しのぶよすがの残る工事途中に今出くわせたことが、むしろ僥倖なのではないか、と…。

22006.jpgそう思えれば、現金なもので立ち直りは早い船頭です。ディテールを記録して残すことが、素晴らしい閘門風景を見せてくれた、扇島閘門へのせめてものはなむけではないかと、例のペースを取り戻して、うろうろと眺めて回ることに。

今や単なる塞ぎ板となり果てた、エンマ側扉体にはざっくりと、四角い穴が開けられていました。何でしょう、ポンプで閘室の水をかい出す際、パイプでも通した跡でしょうか。

22007.jpg
扉体の上では、かつてラックをつないでいたリンクが、あるじを失い、ほこりだらけで首うなだれていました。
寂寥感が胸に沁みる光景です…。

22008.jpgほとんど水がかい出された閘室をのぞくと、赤錆びた側壁の鋼矢板や、底にポツポツとブロック状のものが出ているなど、湛水状態では見ることのできないディテールもあり、興味津々。

以前読んだ文献では、昔の閘門では床のコンクリート面に、石などを埋めてわざと凹凸をつくり、竿が滑らないようにしたとのこと。竿を突いて航行する舟が多かった時代の気遣いですが、このブロック状のものも、同様の効果をねらったものだったのでしょうか。

22009.jpg橋の下をのぞくと、ガレキが山をなしており、以前もやわれていたサッパの姿はすでになく、フェンダー代わりのタイヤや竿だけが、さびしくぶら下がっていました。

向こうに見える鉄板は、元の扉体ではないようです。手前左、無造作に置かれた数枚の鉄板が、解体された本来の扉体なのかもしれません…。


22010.jpg
道路に戻り、大割水路側ゲートを見上げると、悲しげな唸り声にドキリとさせられました。

ブォオォォオン…
ブォォオォオゥン…

扇 島 閘 門 が 泣 い て い る !

いや、大丈夫です、病膏肓に至っておかしくなったわけではありません。折からの強風で、天端の柵が震えて、唸りを生じているだけなのでしょう。
しかし、どうしても自分の耳には、扇島閘門の慟哭としか聞こえませんでした。よし、行こう!
泣いても笑っても、これが最後だ!

(22年1月2日撮影)

(『さようなら、扇島閘門…3』につづく)

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タグ : 扇島閘門閘門水郷