鯛の浦遊覧船…4
(『鯛の浦遊覧船…3』のつづき)
●内浦湾沿岸の風景を眺めながら、船は東岸に沿って湾奥へ進み、いよいよメインイベントの鯛の餌付けへ。
以前三浦半島の三崎港でも、同様の魚の餌付けをする遊覧船に乗ったことがあります。その船はいわゆるグラスボートで、水中から群がる魚の姿を楽しめたことから、今回のように船上からではどうだろう、と思っていたのですが…。

●決められた水面に船が停まると、間なしに鯛たちが銀色の背を水面にひらめかせて集まってきました。船頭さんが甲板上から餌をまくと、バシャバシャと時には水上まで跳ね上がってまで、身をくねらせて餌を奪い合うのです。
いや、その可愛らしいことったら! あまり魚を可愛いと思ったことはないのですが、それこそ手からでも直接餌を食べそうな、ハトやスズメのように人慣れしたさまが感じられて、面白く見入ってしまいました。
●心配していた船上からの視界も、ご覧のとおり透きとおった水質のよさも手伝って、鱗の模様まで観察できるほどでした。
日蓮さんの故事以来、食糧事情の悪かった戦時中も鯛を保護し続けた、地元の方々の累代に渡る愛情のたまものですね。もちろん今でも、鯛を捕ることは厳しく禁じられているそうです。
●鯛の餌付けを楽しんだ後、後部甲板に上がってみました。操舵室の船頭さんたちを後ろから一枚。お揃いの、真っ赤な鯛の絵柄を染め抜いた法被が素敵ですね。
コンソールの中央には、真新しいお榊を挿した神棚が見えました。遊覧船で神棚を見たのは、これが初めてのような…。しかも船の規模から考えると立派なもので、信仰の篤さを見た思いがしたものです。

●帰港後、船着場の目の前にあるスロープに上架されていた、もう一隻の遊覧船「第五妙の浦丸」を撮ってみました。操舵室側面に、「旅客定員64名」とあります。
ちなみに私が乗った船は「第二十一妙の浦丸」、最大搭載人員60名、うち旅客55名、19総tで、これより少し小型なのですね。
(23年6月6日撮影)
(この項おわり)

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以前三浦半島の三崎港でも、同様の魚の餌付けをする遊覧船に乗ったことがあります。その船はいわゆるグラスボートで、水中から群がる魚の姿を楽しめたことから、今回のように船上からではどうだろう、と思っていたのですが…。

●決められた水面に船が停まると、間なしに鯛たちが銀色の背を水面にひらめかせて集まってきました。船頭さんが甲板上から餌をまくと、バシャバシャと時には水上まで跳ね上がってまで、身をくねらせて餌を奪い合うのです。
いや、その可愛らしいことったら! あまり魚を可愛いと思ったことはないのですが、それこそ手からでも直接餌を食べそうな、ハトやスズメのように人慣れしたさまが感じられて、面白く見入ってしまいました。

日蓮さんの故事以来、食糧事情の悪かった戦時中も鯛を保護し続けた、地元の方々の累代に渡る愛情のたまものですね。もちろん今でも、鯛を捕ることは厳しく禁じられているそうです。

コンソールの中央には、真新しいお榊を挿した神棚が見えました。遊覧船で神棚を見たのは、これが初めてのような…。しかも船の規模から考えると立派なもので、信仰の篤さを見た思いがしたものです。

●帰港後、船着場の目の前にあるスロープに上架されていた、もう一隻の遊覧船「第五妙の浦丸」を撮ってみました。操舵室側面に、「旅客定員64名」とあります。
ちなみに私が乗った船は「第二十一妙の浦丸」、最大搭載人員60名、うち旅客55名、19総tで、これより少し小型なのですね。
(23年6月6日撮影)
(この項おわり)

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タグ : 鯛の浦遊覧船
鯛の浦遊覧船…3
(『鯛の浦遊覧船…2』のつづき)
●自分を含め7名が乗船し、内浦湾の沖へ向けて出港。船室内はちょっと懐かしくなるような内装ですが、くたびれた感じはせず、清潔な印象。よく手入れされているのでしょう。
椅子の配置は、両舷側に沿ったもの、中央に半分ずつ対面したものと、全てロングシート。前方の視界が限られるため、予想通り眺望はいま一つですが、お客さんたちはロングシートに立て膝をして、思い思いに眺めを楽しんでいました。
●出港直後に振り返った、展示館と乗り場の建物。「鯛の浦」のロゴが貼られた上の窓が、先ほど船の入港を眺めた展望室です。
山が迫るわずかな平地にホテルなどビル群がひしめき、展示館の建物はちょうど岩場に張り出したような格好で建てられています。波返しのある防波堤が設けられているところを見ると、あるいはここも波に叩かれるときがあるのかもしれません。

●船はまず内浦湾をぐんぐん沖へ向かい、湾口近くまで達したところで東岸へ舵を切ります。海況は穏やかでしたが、やはり沖へ出るとわずかながらうねりがあり、船はゆっくりとローリングを始めました。
上の写真は小弁天島、緑をかむった荒々しい岩場に、赤い鳥居がポツリとよいアクセントになっていて、箱庭のようです。東岸には磯をなぞった遊歩道が設けられており、昭和48年に、昭和天皇と香淳皇后が行幸された際の記念碑もあるとか(コースについては、『遊覧船コースと周辺の景色』参照)。

●外を眺めている側窓は、一枚の落としこみ窓なのですが、そのロック機構(?)が独特で気に入ってしまいました。テコを上に半回転するとシューが窓に向かって前進し、窓枠を押さえつける仕組みになっているのです。
窓枠はスプリングかバランスウェイトが仕込まれているのでしょう、ロックしなくても均衡して留まるようになっているのですが、よりしっかり固定するためと、全閉時の水密も考えられているのだと思われます。
(23年6月6日撮影)
(『鯛の浦遊覧船…4』につづく)

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椅子の配置は、両舷側に沿ったもの、中央に半分ずつ対面したものと、全てロングシート。前方の視界が限られるため、予想通り眺望はいま一つですが、お客さんたちはロングシートに立て膝をして、思い思いに眺めを楽しんでいました。

山が迫るわずかな平地にホテルなどビル群がひしめき、展示館の建物はちょうど岩場に張り出したような格好で建てられています。波返しのある防波堤が設けられているところを見ると、あるいはここも波に叩かれるときがあるのかもしれません。


上の写真は小弁天島、緑をかむった荒々しい岩場に、赤い鳥居がポツリとよいアクセントになっていて、箱庭のようです。東岸には磯をなぞった遊歩道が設けられており、昭和48年に、昭和天皇と香淳皇后が行幸された際の記念碑もあるとか(コースについては、『遊覧船コースと周辺の景色』参照)。

●外を眺めている側窓は、一枚の落としこみ窓なのですが、そのロック機構(?)が独特で気に入ってしまいました。テコを上に半回転するとシューが窓に向かって前進し、窓枠を押さえつける仕組みになっているのです。
窓枠はスプリングかバランスウェイトが仕込まれているのでしょう、ロックしなくても均衡して留まるようになっているのですが、よりしっかり固定するためと、全閉時の水密も考えられているのだと思われます。
(23年6月6日撮影)
(『鯛の浦遊覧船…4』につづく)

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タグ : 鯛の浦遊覧船
鯛の浦遊覧船…2
(『鯛の浦遊覧船…1』のつづき)
●展示されていたいくつかの艪の中で、興味をそそられたのがこれ。イレコ(艪の支点)が2段に作られているのです。
これも、外海を漕ぎ渡るための工夫でしょうか。ロウデからの距離を調整することで、短時間力漕したいときと、長時間巡航速度で漕ぐときとの、使い分けをしていたのかもしれませんね。

●展示をひとわたり拝見して、一層上の休憩室兼展望室へ上がってみました。上の写真は西側、小湊漁港の防波堤越しに松ヶ鼻を望んだところですが、水際まで勢いを失わない山塊と、外洋に面した入江らしい美しい海面が一望にでき、なかなかの眺め。
北側に目を転じれば、崖下のわずかな土地にこじんまりとまとまった家並が、漁港のスロープを前に肩を寄せ合い、好ましい漁港風景をかたちづくっていました。三浦ではこういった眺めにずいぶん親しんだので、何か懐かしい感じがします。

●展望室に上がって数分後、防波堤を回って入港してくる一隻の船が…待っていた遊覧船のようですね。
通船タイプの、質実剛健でがっしりとした印象。甲板室や操舵席の配置から、船尾機関船でしょうか。船首にブルワークを高々とめぐらせているので、客室からの眺望はいま一つのようですが、これは波の立ちやすい行動水域を考えれば、むしろ必要な装備なのでしょう。
●さっそく1階に下りて、桟橋に向かってみると、船はたくみに向きを変え、艫づけしてお客を下ろし始めました。てっきり横付けすると思っていたので、トランサムを密着させての客扱いには、ちょっと意外な気がしたものです。
遊覧船には決まった時刻表はなく、運航時間内であれば、お客さんが来次第出してくれるとのこと。海況も穏やかとあって窓はほぼ全開、気持ちのよい船行きが楽しめそうですね。
(23年6月6日撮影)
(『鯛の浦遊覧船…3』につづく)

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これも、外海を漕ぎ渡るための工夫でしょうか。ロウデからの距離を調整することで、短時間力漕したいときと、長時間巡航速度で漕ぐときとの、使い分けをしていたのかもしれませんね。


北側に目を転じれば、崖下のわずかな土地にこじんまりとまとまった家並が、漁港のスロープを前に肩を寄せ合い、好ましい漁港風景をかたちづくっていました。三浦ではこういった眺めにずいぶん親しんだので、何か懐かしい感じがします。

●展望室に上がって数分後、防波堤を回って入港してくる一隻の船が…待っていた遊覧船のようですね。
通船タイプの、質実剛健でがっしりとした印象。甲板室や操舵席の配置から、船尾機関船でしょうか。船首にブルワークを高々とめぐらせているので、客室からの眺望はいま一つのようですが、これは波の立ちやすい行動水域を考えれば、むしろ必要な装備なのでしょう。

遊覧船には決まった時刻表はなく、運航時間内であれば、お客さんが来次第出してくれるとのこと。海況も穏やかとあって窓はほぼ全開、気持ちのよい船行きが楽しめそうですね。
(23年6月6日撮影)
(『鯛の浦遊覧船…3』につづく)

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鯛の浦遊覧船…1
(『東京湾フェリーとフネブネ…5』のつづき)
●フェリーはさしたる衝撃もなく、金谷港に接岸。スターンのドアが開く瞬間が、また何ともいえず楽しいんですよね。上陸作戦で浜にビーチングしたLST(揚陸艦、今は旧海軍流に『輸送艦』と呼ぶようですが)の車輌甲板から、出撃する戦車になった気分。
下船したところで、ちょうどお昼どきになったので、フェリーターミナルで美味しい天丼の昼食をいただき、さて、次の目的地へ。
●ううむ、こういうトンネルを前にすると、右手から旧道のニオイがプンプンしてくる気がして、ちょっとのぞいてみたくなる! 「山さ行がねが」の読み過ぎかしら。
山また山、トンネルまたトンネルの、いかにも南房総らしい道をドライブして、ゆく先は…。

●県道34号線をひた走り、房総半島の反対側、鴨川市は内浦湾に面した小湊にある、鯛の浦遊覧船の乗り場にやって来ました。
このご時世とあって、地生えの遊覧船はどこも厳しいと聞いていますが、ここ鯛の浦は日中の通年運航を維持しており、初日の出にも船を出すなどイベントにも熱心で、地元が一丸となって盛り上げているさまに惹かれるものがあり、河川航路ならずとも乗っておきたいと思ったのです。
【撮影地点のMapion地図】
●出札口できいてみると、船は沖に出ているとのことなので、次の便が来るまで、併設の展示館を見学することにしました。
乗り場のすぐ近くに「誕生寺」というお寺さんがあることでもわかるように、ここ小湊は日蓮聖人の生誕地であり、鯛の餌付けや保護も日蓮さんに始まるのだとか。このあたり、恥ずかしながら全く知らなかったので、興味深く拝見しました。詳しくは、鯛の浦遊覧船のサイトをご覧ください。

●日蓮さんの故事にまつわる鯛の浦の歴史から、鯛の種類や生態に至るまで、パネルや映像でやさしく説明されており、勉強になります。まあ、写真の船具や機付き漁船、かつての遊覧船の模型が展示された一角に、ひゅっと吸い寄せられてしまうのは致し方のないところ。
外洋に面した地勢のせいでしょうか、漁船で使う艪も長大でがっしりしており、内湾や川舟のそれとはおもむきが異なります。これを一人で漕いだのかなあ…。
(23年6月6日撮影)
(『鯛の浦遊覧船…2』につづく)

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下船したところで、ちょうどお昼どきになったので、フェリーターミナルで美味しい天丼の昼食をいただき、さて、次の目的地へ。

山また山、トンネルまたトンネルの、いかにも南房総らしい道をドライブして、ゆく先は…。

●県道34号線をひた走り、房総半島の反対側、鴨川市は内浦湾に面した小湊にある、鯛の浦遊覧船の乗り場にやって来ました。
このご時世とあって、地生えの遊覧船はどこも厳しいと聞いていますが、ここ鯛の浦は日中の通年運航を維持しており、初日の出にも船を出すなどイベントにも熱心で、地元が一丸となって盛り上げているさまに惹かれるものがあり、河川航路ならずとも乗っておきたいと思ったのです。
【撮影地点のMapion地図】

乗り場のすぐ近くに「誕生寺」というお寺さんがあることでもわかるように、ここ小湊は日蓮聖人の生誕地であり、鯛の餌付けや保護も日蓮さんに始まるのだとか。このあたり、恥ずかしながら全く知らなかったので、興味深く拝見しました。詳しくは、鯛の浦遊覧船のサイトをご覧ください。

●日蓮さんの故事にまつわる鯛の浦の歴史から、鯛の種類や生態に至るまで、パネルや映像でやさしく説明されており、勉強になります。まあ、写真の船具や機付き漁船、かつての遊覧船の模型が展示された一角に、ひゅっと吸い寄せられてしまうのは致し方のないところ。
外洋に面した地勢のせいでしょうか、漁船で使う艪も長大でがっしりしており、内湾や川舟のそれとはおもむきが異なります。これを一人で漕いだのかなあ…。
(23年6月6日撮影)
(『鯛の浦遊覧船…2』につづく)

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