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木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…9

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…8』のつづき)

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堰堤の北、発電所上流側には駐車場があり、そこから謎のトラス構造物の上半分だけを見ることができました。天端にはボルトが多数突き出ていて、いくつかある滑車の様子から考えても、かつて巻上機の架台だったのではと思わせるものが。

台車の巻上機を載せる架台としては、ちょっと小さいような気もしますが、設置された場所やレールをまたいでいることからも、他の用途は考えづらいですね。今渡ダム同様、周囲の柵は高く厳重で、視点が得づらいのが実にもどかしいです。

224052.jpg愛好家の皆さんがアップされている写真を拝見すると、ダム天端の通路から撮ったものがあるので、入口を探しうろついたものの、どうやら工事中で立ち入り禁止の模様。

写真の注意書きにもあるように、許可がなくとも自由に通れるらしいのですが、探し方が悪かったのかしら。上からのぞければ、舟筏路のレールがそのまま泛水していたかどうか、確認することができたかもしれません。

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駐車場の前には発電所の取水路があり、3径間のゲートが間近に望めました。堰柱同士を結ぶ梁の曲線とコンクリートの肌が、いかにも戦前製を感じさせるよい雰囲気の水門です。扉体の塗色や番号にも、街場の水門とは違った風情があって惹かれますね。

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もう少し悪あがきしてみたくなり、さらに上流側をウロウロ。しかし私有地が連なっていて、舟筏路を望める場所はありませんでした、残念。写真は中部電力の川辺艇庫脇から、堰堤を見たところ。

スペックや運用など詳しいことはさておいて、ただ現状をこの目で確かめたい一心で訪ねたものですから、わからないことだらけでお恥ずかしいかぎりではありますが、閘門やインクラインとはまた違った舟航施設が、人知れず息づいていたことを実感できて、水運趣味者としては新しい世界が開けた気持がしたものでした。
撮影地点のMapion地図

224055.jpg帰りは高山本線に乗ろうと、中川辺駅へ向かいました。特急に乗れば、富山まで出られるんだよなあ、と何か不思議な気持ちに。

駅前には、ゲンゴロウかアメンボを擬人化したような、キャラクターの看板や横断幕がいくつか。いや、よく見ると、レガッタを上から見た形に顔をつけたんだと気づかされました。ダム湖には艇庫がありましたし、漕艇場を町の看板として宣伝しているのですね。

(30年9月2日撮影)

(この項おわり)

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タグ : 舟筏路飛騨川川辺ダム

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…8

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…7』のつづき)

224046.jpg舟筏路を水面から眺めてゆきましょう。川面近くは岩が盛り上がり、手前が隠れて見えませんが、激しい水流で横圧にさらされるためか、レール周りのコンクリートには破損したところがいくつか見えますね。

ご覧のとおりカワウ君たちの社交場になっており、天敵もいないのかくつろいだ表情。コンクリート構造物の上に集中しているのを見ると、ゴツゴツした岩の上より、平たいところの方が居心地がいいみたいですね。

224047.jpg少し上に目線を移して。この辺りで勾配が緩くなっているのか、画面上やや左のレールがかすかに折れているように見えます。

ここもレールを支える側壁の破損が目立ち、向こうへ素通しになっている部分もありますね。増水時に水面下となったのなら、泥やら木っ端屑があってもよさそうですが、見たかぎり意外とさっぱりしていました。


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さらに上へたどってゆくと‥‥ううん、この前後は圧巻といっていいかも。レールは高度を増して右手の壁が垂直に切り立ち、両側に並ぶ滑車もカーブを受けて、水平だけでなく垂直のものが備えられています。ここを舟に乗ったまま眺める光景は、さぞ迫力があったでしょうねえ。

こちらも今渡ダム舟筏路同様、レールの間は凹形に造ってあるので、シュート式の筏流しが行われていたのかもしれません。写真上、短く切断した原木がレールの間に積んでありますが、これはすぐ上に発電所の取水口があり、除塵機に溜まった流木を処理したものでしょう。何でわざわざここに置いたのかはわかりませんが。

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さて、何より興味の注がれる最上部。レールをまたぐトラスの構造物、その向こうにレールに乗った台車、奥の上には錆びたワイヤーを巻き取ったドラムと、ディテールがいきなり濃くなってきました。

ドラムは左右に一対あり、軸で結ばれた中央に駆動装置らしいものが見えることから、台車の巻上機に違いないでしょう(ゲートの巻上機という線も、捨てきれませんが)。ドラムの間口は左が狭く、右が広いですが、理由は何でしょう。ワイヤーの延長の違いが反映されているのであれば、右がわずかに狭くなるはずですが‥‥。

手前の、水門の堰柱にも似たトラス組みは? 舟を吊り上げる仕掛けとしては位置が中途半端だし、滑車が見えることから、ワイヤーを中継して取り回すナニカかな?

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気になる台車を一杯まで引き寄せて。ギギギ、さすがにこの距離だと手ブレの影響が無視できない‥‥。

距離があるので断定はできませんが、台車はレールのサミットを少し超え、下り坂になり始めたあたりで停まっているように見えます。目の錯覚でなければ、ここを境にレールは堰上げた水面に向かい、台車を泛水させていたのでしょうか。だとすれば、この舟筏路は舟航用インクラインの機能を有していたことになります。

台車は今渡ダムのそれとよく似ていて、魚腹状に中央が垂れ下がった梁の上に、船台になる枠組みが載った構造。朽ちていますが、盤木らしい木製部分も見えますね。

台車にはワイヤーがかかっておらず、周囲の傷み方からしても、運転を止めて久しいことが改めて実感できました。しかし、舟筏路を3つ巡ってきて、現役で使っていそう→使用頻度は低いけれど何とか動かせそう→確実に放置状態――という、遡上につれて稼働率が下がってゆくのを目の当たりにしたわけで、舟航の衰えはもとより、舟航施設としての使いづらさ、敷居の高さも思われたものでした。

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…9』につづく)

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タグ : 舟筏路飛騨川川辺ダム

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…7

(『小山観音…2』のつづき)

224041.jpg舟筏路めぐりのトリにして最大の物件、川辺ダム下流に到着。ダム愛好家諸兄はご存知と思いますが、カメラで狙えそうな場所が実に少ないダムです。崖をよじ登ったり、藪を漕いだりする装備も覚悟もないヘタレとしては、なおさら。

事前のリサーチで目星をつけたのが、ご覧の護岸というか堤防というか、古びたコンクリート壁の天端です。

写真奥、壁のL字になった場所には高水敷に降りる階段もあり、あわよくばあそこから河畔に出て、よりよい視点まで攻められるかも、というのもありました。

224042.jpg階段をのぞき込んでみると‥‥う~ん、激藪。服がボロボロになりそうなので、涙を呑んであきらめました。

道路からわずかな距離ですが、細い農道を失礼することにはなるものの、堤防を割って階段があることから、一般の通行は認められているだろうと判断。それに少なくとも堤防上は公有地でしょうから、地元の方に迷惑をかける可能性も減ると思ったのです。

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というわけで、堤防上を恐る恐る歩いて、舟筏路を観察できるところまで後退。この辺なら何とかイケるかな?

岩場の露出している高水敷をよく見ると、まだ濡れた泥土や石塊が厚く積もっていて、豪雨の影響を色濃く残していました。仮に階段を降りられたとしても、歩くのは難しかったと思います。

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ズームを効かせて、豪快に放水している第6径間を一枚。

今立っている堤防上からダムまで、直線距離で約500m。満足のゆくディテールが、記録できるか否や‥‥。

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目線を左に移して、舟筏路と待望のご対面。いや~、屈曲しつつ上昇してゆく軌道の姿、想像以上に素晴らしいですね! ダム愛好家諸兄のサイトでは、幾度となく目にして憧れた光景、まさに百聞は一見に如かず(何度も同じようなことをいってすみません)。

鹿瀬ダムのインクラインも、現存していたらこのような情景が楽しめたに違いありません。一見して、使われなくなって久しい状態であることが看取できるにせよ、いま現在形をとどめているというのは、やはりありがたいことだと思わずにはおれませんでした。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…8』につづく)

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タグ : 舟筏路飛騨川川辺ダム

小山観音…2

(『小山観音…1』のつづき)

224036.jpg橋詰広場から、曲線を描く玉石垣の護岸を見下ろして。普通の中洲なら、流圧のある上流側を固めるところですが、橋詰の拡張・造成が目的なので、下流側に施されているのが変わっています。

木曽川、飛騨川の沿岸をここまで道々見てきて、農家の基礎や段畑の土止めなど、玉石垣が多く目につきました。入手しやすい素材なのでしょう。

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橋詰から見た光景。左手奥に鐘楼、右手はすぐ上りとなって、その奥には庫裏というか、休憩所らしい建物も。

すべてが小ぶりでぎっしりと詰まり、山上の狭隘さが実感できます。拡張した橋詰を除けば、本当にささやかなスペースしかないのです。

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階段を上って右に折れ、観音堂にお参り。ご本尊は馬頭観音で、重要な産業であったお蚕さんの守り仏として信仰を集め、他にも道中安全、子授けの霊験もあられるとのこと。私にとっては、かつて舟航盛んだった川におわす仏様ということで、よ~く拝んでおきました。

224039.jpgお参りの後は、袖高欄のある橋詰のベンチで、川面を眺めつつ一休み。今渡ダムからここまで、おおよそ1.7㎞ありますが、水面は鏡のようで流れもなく、まさにダム湖であることが実感できます。

川沿いは両岸とも街場ながら、段丘は観音堂より高さがあって家並みはあまり見えず、両岸は切り立って木が生い茂っているので、山深いところにいるような雰囲気です。

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観音橋から上流側、県道350号線青柳橋を望んで。前回掲げた写真は、この橋から撮りました。他地方の可航河川にも、小山観音みたいに、お寺や神社だけが詰まっている中之島ってあるのかしら(ぐぐれ)。

飛騨川が浸食によってかたちづくった谷の中に、たまたま硬質な岩塊があり、それが段丘の左岸に削り残された、ということでしょうか。河中にある今の姿も素敵ですが、谷間の河畔に屹立するさまも、名勝として人々の目に留まったことでしょうね。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…7』につづく)

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タグ : 小山観音飛騨川

小山観音…1

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…6』のつづき)

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今渡ダムを離れて、お次は飛騨川の川辺ダムに向かうわけですが、舟筏路めぐりの道々に、ぜひ立ち寄ってご挨拶したいところがありました。上の写真は、下流側から見たところ。

幟を連ねた古めかしいRC橋が、玉石垣の橋台とともに、静かな川面へ姿を映すさまは風情があってよいものでしたが、これではちょっとわかりづらいかも。

224032_02.jpg上流側に回ってカメラを向けると‥‥ううん、あまり変わりませんね。木々の間から、お堂の屋根がちょっとのぞけているので、まだわかりやすいかも。

対岸は切り立った崖に近い地形で、その崖線から水面近くに至るまで緑が濃いため、手前にある木々と同化して、埋まってしまうのです。よ~し、次は奥の手だ。


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上流の青柳橋より撮ったものですが、これでおわかりでしょう。飛騨川の真ん中に、もこりと盛り上がった岩山、緑豊かなお饅頭のような山のてっぺんに祀られているのが、通称小山観音

盆景を思わせるその愛らしい姿、川とのゆかりがこれ以上ないほど濃厚そうな場所柄に、日ごろ不信心な不審船長といえど大いに惹かれるものがあり、お詣りせずにおらりょうかという心持ちになったのでした。

何しろ沖積した平たい中洲などでなく、対岸とあまり変わらぬ比高を有する岩山なのですから、まさにゆるぎなきこと巌のごとし、霊験もさぞあらたかでしょう。

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骨材の浮き出た、星霜を感じさせる擬宝珠付きのRC橋は「観音(かんおん)橋」。白雲が浮かぶ青空の下、さっぱりと掃き清められた橋を渡って、水面や緑を楽しみながらのお参り。踏み出すほどに、爽快な川景色が広がります。

当寺の詳しいご由緒に関しては、「小山観音」(美濃加茂市観光協会)を参照いただきたいのですが、かつては陸づたいに参詣ができたものの、今渡ダムの竣工によって水位が堰上げられ、中之島となったそう。観音橋の竣工はダム工事の終了と同時期、昭和13年だそうですから、RC橋としても結構な古株で、こちらも貴重なものといえそうです。

224035_02.jpg観音橋を渡り切った橋詰近くは、岩山に生い茂る木々がかぶさり、参拝者に涼しい木陰を提供していて、これまた良い雰囲気です。

何分お堂だけでほぼ一杯な小さな岩山のこととて、橋詰広場(?)はコンクリートで固めた玉石垣で護岸し、下流側にささやかな平場を拡張、築造したもの。一つ一つがこぢんまりと盆景的で、嬉しくなってしまうのでした。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『小山観音…2』につづく)

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タグ : 小山観音飛騨川