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インクラインが写ってる!

ささやかな一件ですが、心覚えとして。今年の5月、阿賀野川を訪ねたのがきっかけで、鹿瀬ダムに舟航用インクラインがかつてあったことに気づいた件は、「鹿瀬ダムにインクラインがあった!」「道の駅「阿賀の里」に向かう」ですでに触れました。

大きな落差を持つダムに、舟航施設が備えられていたことを知っただけでも大興奮で、その後も折に触れては目ぼしい史料を当っているのですが、なかなかよいものに当たらず、ため息をつく日々。何枚か絵葉書を手に入れたものの、そのものズバリというものが見つかりません。

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新潟縣阿賀野川 東信電氣鹿瀬發電所堰堤
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行。切手欄に「OK Oriental Photo Paper's」の銘あり。

昨日、まとめて入手した数枚を、ルーペ片手に改めて眺めていました。上に掲げたのはその一枚、ゲート天端に万国旗らしいものが飾られ、右下の橋の上(スゴイところに造ったものです!)に人影がちらほら見えるところから、竣工直後の記念式典の光景でしょうか。

ゲートを全径間フレームに収めた、絵葉書にはもってこいの構図ですが、左下、黒くごちゃっとしているあたり、肝心なモノが写り込んでいたのにようやく気付いたのですから、何をかいわんやであります。トリミングしたのが下の写真!

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インクラインの線路が! 左の四角いのは、台車かしら?

上空から撮ったものを眺めたかぎりでは、ここは築堤っぽい土盛りをした区間のはず。やはりここから、放流しているゲートが見えたんだ!

あれこれと妄想していた、インクラインに乗った舟や筏からの視点と近い風景が眺められて、いやが上にも気持ちは盛り上がります。ゲートが吐き出す大瀑布と、放流の轟音を視界いっぱいに堪能しながら登る船頭や川並たち! 国内ではまれな、勇壮かつ豪快な舟航風景であったことを、ますます確信して一人感動するおっさんでありました。

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タグ : 阿賀野川鹿瀬ダムインクライン絵葉書・古写真

阿賀野川頭首工を愛でる…11

(『阿賀野川頭首工を愛でる…10』のつづき)

193121.jpg頭首工の上流側に歩いてゆく間にも、陽はぐんぐん高くなり靄も次第に吹き払われて、ずいぶん明るくなってきました。可愛らしい花が咲き乱れる水際の草原越しに、光に満ちあふれた川面を一枚。

せっかくここまで来たのですから、できるだけ水面近くの目線から、朝日を浴びる頭首工を眺めてみたいものです。へっぴり腰で法面を降り、下の護岸に立って西へ目を向けると‥‥。

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おおお! 何ていうんでしょう、この凛とした、力強い中にも暑苦しさを感じさせない、引き締まった面持ち。昨日の午後には見られなかった、新しい一面に触れた気分です。

真正面から注ぐ、朝日の効果が絶大であるのはいうまでもありませんが、各堰柱に掲げられた抜き文字のナンバーが、表情をきりりと引き締めているのだと悟りました。書体がまとう雰囲気か、掲げた位置の塩梅によるものか、たかが数字などと片付けられない佳さを感じたものです。

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ああ、舟通しの凛々しさたるや。たぐって眺めるとさらに素敵。これで通航シーンが眺められたら、もっと素敵‥‥いや、無いものねだりはよしましょう。

たとえ稼働するところは拝めなくとも、腰を落ち着けてじっくりと、昼夜から朝にかけての表情の変化や、あらゆる角度から現役閘門を愛でられたのは、自艇の行動範囲でもほとんどなかった、貴重極まりない体験。これもホテルさきはなあったればこそ、ありがたやありがたや。

193124.jpg洪水吐ゲートの堰柱たちもズームで。いやもう、ナンバーフェチになりそうです。扉体のそれは都内にも見られるし、堰柱のナンバリングだって過去に目にしているのですが、ここは何かが違う。なぜだろう。

陽射しはますます強くなり、堰柱たちのディテールもよりシャープになってきました。今日も好天で、陽気がよくなりそうですね。あっ、そろそろ戻らなければ‥‥。


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お別れ前の一枚。山深い谷間が平野に開けゆくところに在って、13,000ha余をうるおす頭首工の頼もしさ、ディテールの豊かさ。そして何より、上流への通船の希望をつなぐ、舟通しの魅力と存在感!  

今回、絶好の場所に宿を得たことで、足かけ2日頭首工漬けといってよいほど、心ゆくまで楽しむことができました。雪の季節の表情も、さぞ素晴らしいことでしょう、いずれ機会があったら、ぜひ訪ねてみたいものです。

(28年5月29日撮影)

(『丘の上の高架水路!』につづく)

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タグ : 阿賀野川阿賀野川頭首工阿賀野川頭首工舟通し閘門

阿賀野川頭首工を愛でる…10

(『阿賀野川頭首工を愛でる…9』のつづき)

193116.jpg翌朝、普段のねぼすけには珍しく、5時に目が覚めました。朝霧がからむ早朝の頭首工も拝んでおきたいものと、一枚余分にはおって河畔へ出かけてみました。

こりゃ「夜討ち朝駆け」だ‥‥いや、夜討ちはしませんでしたが、こうして気軽に飛び出せるのも、頭首工の見える宿に泊まったおかげ。昼間は初夏の陽気だったとはいえ、山間とあってさすがに早朝は肌寒いもの。冷気に身震いしながら、林の中の道を急ぎます。

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橋詰から舟通しを望む法面上に出てみると‥‥うひょ~!

稜線をすべる朝霧が、上りつつある陽光を半ば透き通らせ、風に波打つ川面も白く輝いて、神々しいばかり。河水の水気をたっぷり含んだ爽やかな冷気も嬉しく、寒さを忘れて夢中でシャッターを切りました。

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昨日と同じく法面をこわごわ降りて、護岸上から。逆光がきつすぎて舟通しのディテールはつぶれてしまいますが、この角度の方がより夜明けらしいかも。背後の山々のシルエット、乱反射でオレンジ色に染まった雲がとてもきれい。

上流からの風は思ったより強く、低い場所に立っているせいもあるのか、しぶきがやたらと顔に当たります。はて、洪水吐ゲートからの放水がしぶきになって飛んでくるのかしら、と思っていたら、違いました。

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ザン、ザンと断続的な音を立てて、扉体の天端からオーバーフローしている水が、風にあおられて飛んできていたのです。単なる吹き寄せか、それとも上流部の雨で水位が上がったのか、これも前日の穏やかな表情とは違った勇壮なシーンで、早起きしてよかったと思えたものです。

193120.jpg法面上にふたたびよじ登って、ふと下流側を望むと、遠く馬下橋が朝日を浴びて、ほんのり赤味がかった姿を見せていました。両岸の森はまだ朝霞にけぶっていますが、視界が徐々に開け、いかにも川面から一日が始まったような感じがして、よいものですね。

そうだ、頭首工を上流側から眺めてみよう! 橋同様、朝日に輝く美しい姿を拝めるかもしれません。

(28年5月29日撮影)

(『阿賀野川頭首工を愛でる…11』につづく)

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阿賀野川頭首工を愛でる…9

(『阿賀野川頭首工を愛でる…8』のつづき)

193111.jpg阿賀野川頭首工を心ゆくまで堪能し、快い疲れを覚えながら宿に帰り一息ついたところで、部屋の外がにわかに騒がしくなりました。聞けば、日中に立津川漕艇場で出会った「ばんえつ物語号」の上りが、間もなく通過するとのこと。

宿泊客の皆さんと、ホテル前の道路に出て待ち構えていると、ボッボコ、ボッボコと腹に響くようなドラフト音とともに、C57がヌッ、といった感じで登場。

日中とは違い、登り勾配のおかげで迫力あるサウンドが楽しめたものの、法面の藪がえらい繁茂ぶりで、列車の姿はよく見えなかったのがちょっと残念ではありました。

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頭首工の周りをうろつきまくったせいで、いうまでもなく汗だくです。温泉で汗を流し、部屋で夕涼みがてら頭首工の姿を眺めるという、何とも優雅かつ贅沢なひととき。

夕陽が堰柱を朱に染め、霞みゆく山並みをバックに、落ちる陽に合わせて刻々と表情を変えてゆく水門と閘門を、いながらにしてほしいままにできる部屋! この宿を選んで本当によかった‥‥。

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193114.jpg陽がすっかり落ちて、宵闇に沈みゆく頭首工の表情。橋上の街灯が点々と灯り始め、川面の白波や扉体などのディテールが、漆黒に溶けてゆくさまを、飽きず眺めていました。

右は手持ちで撮ったのでブレてしまいましたが、街灯だけでなく、巻上機室の一部は、室内の照明をつけてあるのですね。扉体の天端が反射して、赤い塗色がぼうっと浮かび上がって見えます。

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夜半に目が覚めて、やはり頭首工の様子が気になってしまい、そっと布団を抜け出して窓辺へ。今度はブレないように、カメラを窓枠に置いて撮ってみました。

宵の口と違って、ホテルの部屋から漏れる光もなく、黒々と広がる闇の中、頭首工だけが息づいているかのような、真夜中の表情。夜の冷気に霧がかかっているのか、明かりがたんぽぽの綿毛のようにほわっと霞んで、実に幻想的でした。

(28年5月28・29日撮影)

(『阿賀野川頭首工を愛でる…10』につづく)

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タグ : 阿賀野川阿賀野川頭首工ホテルさきはな

阿賀野川頭首工を愛でる…8

(『阿賀野川頭首工を愛でる…7』のつづき)

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「阿賀用水左岸取付橋」の真下、左岸取水口の樋門の堰柱に掲げられていた「阿賀野川頭首工のあらまし」。これで全体の概略はもとより、不明だった各部の寸法も載っていて、フンフンと興味深く拝見。

舟通しの延長33mは、図面上の寸法から見て、閘室有効長と考えていいのかな? いやそれより、目を剥いたのは赤矢印をつけた部分! 舟通し上流側に、1本だけではあるものの、背割堤が長く伸びている! 
もしこれが現実にあったら、通航船の進入は格段にやりやすくなります。ではなぜ、本来ないものが描いてあるのか‥‥。計画だけで、最初からなかったのか、それとも撤去されたのでしょうか?

193107.jpgそこで気になったのが、管理棟前の水面にぽつりと顔を出していたコレ! 位置的にもちょうど、閘室側壁の延長線上で、図面と照らし合わせると、背割堤の先端とほぼ同じのようです。

妄想するに、造ってはみたものの、後に樋門からの取水や土砂吐ゲートの機能を阻害することがわかって、改修時に撤去されたのか、それとも図面上の計画だけで、建設前に同様のことが指摘され、最初から造られなかったのか‥‥。でも後者とすれば、コレが痕跡のように残されたのは、ちょっと腑に落ちませんよね。

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謎を残しつつも、舟通しをものするベストポジションを求めて下流側へ。危なっかしい足取りで法面を駆け下り、護岸上の平場でつんのめるようにして踏みとどまって、やおら顔を上げると‥‥おお!

ここは結構いいかも! 目線がちょっと高いけれど、舟通しそのものの質量を味わうには、十分すぎる距離の近さ。堰柱基部から、手前に伸びる2本の背割堤、丸められた天端の感じが、ちょうど前に伸ばしたネコの足のようで、エジプトのスフィンクスを連想させるものがありますね。

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扉体のディテールをとらえておきたいと、もう少し正面に近い立ち位置を探して、さらに下流側からズームで狙ってみました。

陰っていた陽射しも戻り、白く輝く堰柱を振り立てて、威風堂々の面持ち。この日一番のお気に入りとなりました。

193110.jpg気になっていた扉体もズームでたぐって一枚。先ほど橋の上から見つけた、天端近くに切られた二つのスリットから、水がほとばしっているのが見えました。

前扉(上流側の扉体)にも、同様のスリットが設けられているとすると‥‥これは、閘室内の水位を保ちながら、少しづつ水の入れ替えをし、水質の悪化を防ぐ手立てなのではないでしょうか。

そういえば、「釜口水門を訪ねて…4」で、閘室の中に大量の魚が閉じ込められて、腐臭を放っていたことがありましたっけ。いずこの閘門も通航量は決して多くありませんから、この工夫はまことに的を射たもので、感心させられたものでした。

(28年5月28日撮影)

(『阿賀野川頭首工を愛でる…9』につづく)

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