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釜口水門を訪ねて…4

(『釜口水門を訪ねて…3』のつづき)

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‥‥閘門です!
いや、正式には「舟通し」を名乗っているのですが、この存在から天竜川最上流部が、正真正銘の可航河川であることが実感でき、遠路訪ねてきた感慨もひとしお。

例え途中にいくつものダムがあって、中下流部とは連続しておらず、またごく一部の区間に過ぎないとしても、わざわざ閘門をあつらえてまで守られてきた、舟航環境があるというこの嬉しさ! 閘程(水位差)が3.5mあるというのもワクワクしますね!

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少し目線を上げて、後扉室の堰柱を眺めて。左側に見えるシャフト、やはり律儀に丸窓が開けてあるのが面白いですね。

しかし、径間が狭い! 大した高さのない堰柱でも、スリットのように感じられる狭さ、閘室の幅は5mほどでしょうか。明らかに、昨日見た泥舟(『諏訪湖の船溜と泥舟』参照)など、地場の細長い舟のみを通すのに、特化した設計とみてよさそうです。

162063.jpg管理橋上の諏訪湖側から、少し離れて前扉室の堰柱を。高欄とくらべても、狭さが実感できますね。右側、ちゃんと「舟通し水門」の解説板が掲げられているあたり、公園地に挟まれた水門の面目躍如といったところ。

ちなみに、諏訪湖の湖面標高は759m、天竜川の流路延長は213km。本州が一番太くなる場所の、ほぼ真ん中あたりにあることを思うと、国内で最も内陸にあり、かつ最も標高の高い場所にある閘門、といえるかもしれませんね! 
他にもっと高く、もっと内陸にある閘門があったら、ぜひ教えていただきたいものです。

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ここでも銘板を探してみると、調節水門と同じく、見づらい場所に掲げてありました。

純径間4.0m! 極小閘門(『極小閘門づくし』参照)といって差し支えないこの狭さ。訪ねた甲斐があったというものです。閘室長が書いてありませんでしたが、私が気付かなかっただけで、他にも銘板があったのかしら。

162065.jpg舟通しの周りをうろつき始めてから、臭いが気になってはいました。何というか、掃除の行き届いていないお手洗いに近い臭い‥‥。

はて、と思っていたら、閘室内の水面をよく見ると、結構な量の小魚の死骸が、後扉室近くに浮いているのに気づかされました。臭いのもとはこれだったのか‥‥。もっとも大半は生きていて、酸欠にパクパクしながらも泳いでいましたが、しかしすごい量ですね。釣り人さんが多いのも、うなずけます。

考えてみると、これだけの魚が入っているということは、少ないとはいえ通航があるということに他なりません。釜口水門舟通しは、現役の生きた閘門なのです!

(26年11月30日撮影)

(『釜口水門を訪ねて…5』につづく)

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タグ : 釜口水門釜口水門舟通し閘門天竜川諏訪湖

釜口水門を訪ねて…1

(『湖畔の宿にて』のつづき)

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湖面にそびえる、噴水の白い水柱を背に、釜口水門へお初のご挨拶。

ちょっとずんぐりむっくりながらも、がっしりとした堰柱の居並ぶその姿! 国内有数の急流河川、天竜川を制するにふさわしい頼もしさですね。

162047.jpgこの釜口水門、昭和11年竣工の同名旧水門に代わり、10年の歳月を費やして昭和63年に完成したもの。31河川が流入しながら、吐口は天竜川たった1ヶ所という諏訪湖の洪水防止、天竜川の流量調節など周辺の治水を一手に担う、まさに要の存在といってよい水門です。

両岸に広がる湖畔公園は、旧水門の撤去と併せて平成5年に整備完了したものだそう。好天も手伝ってか、散策の人はもとより、釣り人さんの姿も多く見られる、人影の絶えない賑やかな水門でもあります。

162048.jpg上に掲げた案内図とは変わって、こちらは残念ながらすっかり退色し、判読も難しいほどですが、諏訪湖側上空から見た公園のレイアウトと、水門との位置関係がわかりますね。

駐車場、お手洗い、東屋だけでなく、水門にゆかりのあるいくつかの記念物・展示品、管理棟には「水の資料室」まであるという、その筋の方にとっては退屈しないところです。


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「キノコ型」と分類したくなるような、堰柱の一つをアップで一枚。‥‥あらら、手前に街灯が入ってしまった。

背はそんなに高くないので、見上げるような、といった迫力はないものの、エッジの立った外観は、なかなかシャープな印象です。

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横から見ると、シャフトの部分にさりげなく丸窓が配されていたりして、目立たないところにも気配りされた感じがします。単なる治水施設でなく、公園の一部という一面もありますから、人の目線を意識して考えられたのでしょう。管理橋も、路面にはタイルが貼られ、植え込みもきれいに刈り込まれて、あまねく手入れが行き届いています。

さて、どちらから眺めようか‥‥。越流する水音が耳に心地よいこともあり、まずは下流側から見てみることにします。
撮影地点のMapion地図

(26年11月30日撮影)

(『釜口水門を訪ねて…2』につづく)

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タグ : 釜口水門天竜川諏訪湖

湖畔の宿にて

(『諏訪湖の船溜と泥舟』のつづき)

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162042.jpgお散歩を終えて宿に到着。一息ついて窓の外を見れば、薄霞のかかる山稜に夕陽が射して、暮れゆく湖畔の風景を楽しむことができました。眺めのよい部屋に当たってよかった。

ふと見下ろすと、最終便でしょうか、尾っぽをピンと立てて沖へ出てゆく「竜宮丸」の後姿が。船を高いところから、しかも部屋の中からゆっくり眺める機会があまりないので、ちょっと新鮮な感じ。他にも「おやこはくちょう丸」や、水陸両用バスの航行する姿も撮ることができ、満足満足。

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陽も落ちて夜になってみると、驚いたのが初島のさま変わりです。

162044.jpg地味で平べったい島だと思っていたのが一転、夜目にも鮮やかなイルミネーションが施されているとは、さすが上諏訪温泉街! 鳥居がちゃんと赤い電飾になっているのが、効いていますね。

明けての風景も、これまた素晴らしいものでした。雲でおおわれている湖面の対岸、山肌のみが陽に照らされて、くっきりと浮かび上がり、まるであそこだけ別世界のよう。いや、山の迫る水辺って、さまざまな表情を見せてくれるものですね。

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さて、朝食を済ませてみると、夜明けのどんよりした空とは一変して、光量過多と思えるほどの上天気に。

いやが上にもテンションは急上昇し、勇躍宿を出て、諏訪湖唯一の吐口、かつ天竜川の流頭部、釜口に到着。さあ、力いっぱいうろつきまくるぞ!
撮影地点のMapion地図

(26年11月29・30日撮影)

(『釜口水門を訪ねて…1』につづく)

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タグ : 諏訪湖諏訪湖観光汽船

諏訪湖の船溜と泥舟

(『諏訪湖の遊覧船…7』のつづき)

前後しますが、諏訪湖遊覧船の桟橋に向かう道々、小さな船溜に出会いました。水郷などでよく見られる、この手の船溜に弱い自分としては、見過ごすわけにゆきません。

162036.jpgぐるりを囲む防波堤は、木の杭をすき間なく打ち込んだ外側に、大ぶりの石を積み上げた素朴なもの。開口部は左右各一ヶ所ありますが、いずれもフェンスや防材で塞がれていました。中に一隻、舟がもやわれていますね。見てみましょう!

長さ7~8mあるでしょうか、船首は戸立て、側板は一階造りで、上に行くほど丸みを帯びさせてつぼまってゆく、タンブルホームのような船型。どこか、丸木舟を思わせるスタイルです。諏訪湖独特の船型でしょうか。

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帰宅後に検索すると、諏訪法人会の「泥舟と漁法」、レンタサイクルアトイーズの「豊田アホウ丸大会」がヒット。なるほど、地元では「泥舟」と呼ばれていて、かつては漁舟だけでなく大型の荷舟もあり、またご当地の偉人・伊藤五六郎の業績を讃えて、毎年記念レースも行われていることがわかりました。

この舟とまみえたことで、翌日訪ねることになる物件への理解がさらに進み、嬉しくなりました。これは後ほどお話しましょう。

162038.jpg宿への帰路、さらに嬉しいことに、泥舟の航行する姿を見ることができたのです! 船外機と漁師さんが船尾に乗れば、普通ならアップトリムになるところ。長さのせいか、ほとんど姿勢の崩れない、実に優雅な走りぶりじゃないですか。

加えて目の前で、漁師さんが網を入れる光景も拝見することができ、ラッキーなことこの上なし!


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名物のわかさぎ漁でしょうか。水郷十六島のサッパ、近江八幡水郷のマルコブネと、観光用として残る伝統的船型の和船を見てきましたが、ご当地諏訪では、漁舟として現役なのですね。

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宿の近くで、古いながら美しく整備された、重厚な洋館を発見。説明板を読むと、この建物は国指定重要文化財の「片倉館」、製糸業者片倉家が昭和3年に造った、なんと温泉の公衆浴場なのだそう。

片倉家といえば、あの旧富岡製糸場を近年まで操業していた、かつての片倉財閥。ここ諏訪湖畔は、片倉家の創業の地なのだそうです、知りませんでした!
撮影地点のMapion地図

(26年11月29日撮影)

(『湖畔の宿にて』につづく)

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タグ : 諏訪湖泥舟

諏訪湖の遊覧船…7

(『諏訪湖の遊覧船…6』のつづき)

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水鳥たちの姿を愛でつつ、湖畔公園をぶらぶら南下するうち、いま一隻の白鳥型遊覧船が帰ってくるところに出会いました。これがもう一つの船社、諏訪湖遊覧船の「おやこはくちょう丸」です(ハルに書かれた船名は『はくちょう丸』ですが、船社サイトに従いました)。

162032.jpg頭には王冠をいただき、露天甲板もある三層構造なのが「すわん」との違い。なぜ「おやこ」なのかと思ったら、背中に小さな白鳥‥‥よく見ると、足漕ぎのスワンボートがぽつりと置かれている! 何ともほほえましい「おやこ」ではあります。

面白く思ったのは、桟橋に着くと、新旧「はくちょう丸」の対面が見られること。もっとも手前の先代船は、すでに引退して桟橋に固定され、券売所兼待合所に転用されたものです。江戸川の佐野遊船さん(『江戸川で貸しボートを楽しむ』参照)を思い出しました。

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桟橋にもやわれているこちら「いるか号」、尾を跳ね上げたイルカが玉遊びをしているという、また奇抜なスタイル‥‥。いや、この船見たことあるぞ?

リンク先でもある「東関東アクアライン」さんの「水郷汽船の遊覧船」に載っていた、「ふりっぱー号」にそっくり! トップにオーニングを張っていることをのぞけば、口や尾の形など細部は異なるものの、船体はまず略同型船といってよいでしょう。単に模倣をしたにしては、似すぎています。同じ造船所で近い時期に建造された、姉妹船なのでしょうか。まさか、「ふりっぱー号」そのもの、ということはないですよね?

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諏訪湖遊覧船の隣にも桟橋があったので、のぞいてみると、真っ茶色に塗り上げられた船が。

後付けありありの大きなT字尾翼が目立ちますが、元水上バスと思しき、前歴が気になってしまうタイプ。船上にパイプで手すりがこしらえてあるなど、全体の様子から、どうもこちらも動かない船のようですね。看板には「ウィンドウェーブ桟橋」とあり、残念ながらお休みのようで、待合所のシャッターは閉まっていました。

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桟橋の前には、D51型蒸機が保存されていました。キャブに上がってみると、想像していたより状態はよく、計器類はほとんどそのままで、大切にされていることがうかがえました。
撮影地点のMapion地図

(26年11月29日撮影)

(『諏訪湖の船溜と泥舟』につづく)

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タグ : 諏訪湖諏訪湖遊覧船