ご当地銘菓、その名も「河川蒸気」!

(『朱鷺メッセから眺める新潟…3』のつづき)

いやもう、今回新潟を訪ねるまでまったく知らなかったあたり、川蒸気バカとしてお恥ずかしい限りであります。ご当地の、それも全国区で名の知れたお菓子に、「河川蒸気」なる、そのものズバリの商品名のものがあったなんて!

新潟から帰宅した直後にも、テレビ番組で人気ぶりが紹介されており、ますます自分の無知を恥じ入った次第。全国から注文が殺到し、生産量に限りがあるため発送に数日かかることも少なくないのだとか。
ちなみに製造元は、新潟菓子工房・菜菓亭です。

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この、泣かせるイラストをご覧ください! 

川蒸気バカの目から見ても、十分鑑賞に堪えるディテールを備えているあたりも嬉しく、それでいて誰が見てもいやみのない、ほっこりとした味がありますね。

外輪カバーの前後に、大振りな階段が造りつけられたように描かれていますが、これは間違いではなく、実際にこのような造りの船がいたのです。その他、煙突の横にエントコック(キセル型通風器)がないこと、屋根上に荷物や人が載っているところなども、当時の写真と合致しています。

イラストとしてモディファイしながらも、きちんと資料を見て描かれたことがわかり、製造元やイラストレーターの方の真摯さが感じられて、なおさら感動が深いものになりました。

ちなみに上の写真は、下から時計回りに箱を包んでいた包装紙、手提げ袋、お菓子の個別包装、同梱の商品カタログで、背景やコピーのパターンがそれぞれ異なり、眺めていても楽しいものでした。

70305.jpgさっそく開封してみると、ふわりとした半円形の生地に、小豆のクリームがはさまれたもの。ちょっとこってり目ですが、甘いものが好きな向きにはたまらないでしょう。

お菓子本体に、蒸気船の絵柄が刷ってあるわけではないものの、見方によっては、この半円形が外輪カバーを模したように見えないこともありません。

製造元サイトの説明によると、製造当初の商品名は「蒸しどらやき」だったそうで、後に素材や製法を改めてから、名前も「新潟の経済・文化に一大革命をもたらせた」(製造元サイトのコピーより)蒸気船にあやかって、「河川蒸気」としたのだとか。

蒸気船の持つ、「明治のハイカラ」っぽい雰囲気と、洋風を加味した和菓子(?)というあたりに、どこか通じるものを感じての命名のように思えます。それにしても、よい題材を選んでくれたものですね。

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先代の萬代橋近くにもやう川蒸気と、川舟・コウレンボウ。大正末~昭和初期の絵葉書より

ちなみに、こちらで「ご当地の呼び名は『河川蒸気』」などと書いたのは、このお菓子の存在に引っかけてのことだったのですが、新潟市歴史博物館で購入した史料をいくつか読んでみたところ、当時の通称として「大川蒸気」「外車(ソトグルマ)」「川蒸汽」などが挙げられており、本文での呼称は「川蒸汽船」「川汽船」とされ、「河川蒸気」なる呼び方は、ついぞ出てきませんでした。

川蒸気の現役当時、本当に「河川蒸気」と通称されたのかは、そんなわけで今のところ謎なのですが、少なくともこれからは、ご当地ではこの呼び名が広く一般化してゆくことは疑いなく、また川蒸気を商標とする、というアイデアがさらりと出てくるあたり、この地がかつて水運王国で、川をゆくフネブネがいかに人々の記憶につよく焼きついていたかを示す、何よりの証拠のように思えます。

恐らく全国で唯一の、川蒸気の名を戴き、またその姿をパッケージ上に留めた、まさに水運趣味横溢のお菓子! 末永く盛業されんことを、心より願っています。

【8月9日~10日の項の参考文献】
新潟の舟運 ~川がつなぐ越後平野の町・村~  新潟市歴史博物館
船と船大工 湊町新潟を支えた木造和船  新潟市歴史博物館
絵図が語るみなと新潟  新潟市歴史博物館
白根市史 巻七 通史  新潟県白根市
豊栄市史 民俗編  新潟県豊栄市
運河と閘門(久保田 稔 ほか著)日刊建設工業新聞社


(この項おわり)

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タグ : 川蒸気船 信濃川 萬代橋 絵葉書・古写真

新潟の水上バス…5

(『新潟の水上バス…4』のつづき)

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萬代橋西詰船着場には、屋根つきの待合所がありました。

特に陽射しの厳しいこの時季、屋根があるとなしとではだいぶ違うでしょう…と、よく見たら、奥のベンチまできっちり陽が差し込んでいる(笑)。時間帯によっては、逆にツラそうではあります。

70022.jpg着岸と同時に、若い男性の甲板員が飛び出してきて、二本のビットに素早くもやいを取り、ドアを開けてからキャビンアテンダントと二人でタラップを渡して、お客さんの送り迎え。終わるとタラップを納め、ドアを閉めてもやいを解き、船首に飛び乗って出発…。

子供たちと、見事なロープさばきにほれぼれと見入る船頭。下流の4つの船着場では、これを数分おきに繰り返すわけで、しかもこの酷暑、まったく頭が下がります。

70023.jpg船着場を出て迫りくるのは、新潟を代表する橋としてあまりにも有名な、萬代橋。この角度から見ると、バックのホテルオークラが白く輝き、石張り装飾でしっとりとした落ち着きを見せる萬代橋と好対照で、なかなかの雰囲気。

西詰には、かつて川蒸気の船着場もあり、沿岸は荷揚場として賑わっていたことが、当時の写真からも髣髴できます(『続・川蒸気のイメージを求めて』参照)。東京でいえば、両国橋あたりといったところでしょうか。

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石張りの装飾、昭和初期らしいデザインの高欄、橋脚直上に取り付けられた橋側灯と、ディテールを堪能しながらの橋くぐり。竣工当時の外観をほとんど損なっていないあたりが素晴らしい。日本橋に次いで、重要文化財に指定されたのもうなずけます。

70025.jpg上流側から眺めて。明治から昭和初期に至るまでの木造橋時代は、信濃川下流部に架かる、まさに唯一の橋であった萬代橋。

現在は全長306.9mとのことですが、木造橋時代の対岸が霞むような写真を眺め慣れていた目には、昔よりずいぶん短い感じがしました。

目の錯覚かしらと思っていたら、昔は今よりはるかに川幅が広く、初代橋は何と、780mあまりもあったとのこと(新潟市ガイド萬代橋』参照)。

当時としては、全国有数の長大橋だったのではないでしょうか。これを木造桁橋で架けたのですから、名所として絵葉書などに盛んに取り上げられたのも、うなずけますね。 
撮影地点のMapion地図


(23年8月9日撮影)

(『新潟の水上バス…6』につづく)

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タグ : 信濃川ウォーターシャトル 信濃川 萬代橋 水上バス