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船頭平閘門を訪ねて…13

(『船頭平閘門を訪ねて…12』のつづき)

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さっきニャンコ先生が渡っていた、閘室側のゲートが閉まるさまを橋の上から。いいですねえ、マイタゲートの開閉を真上から眺められるのって。

径間が狭く、動きがゆっくりなせいでしょうか、扉体が動いても水面に目だった渦もなく、まことに静か。ローラーゲートとは対照的であります。

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213068.jpg扉体が閉まると、いったん閘室の真ん中あたりまで入っていた「葛木丸」が後退してきて、船頭さんが扉室の側壁にしがみつきました。やはり法面の閘室は、使い勝手がよくないようです。

右はほぼ排水が終わったところ。先ほど通航したときも触れたように、法面の目地から水が流れ出ているのがわかります。

213069.jpg泥色の法面がすっかり露出すると、木曽川方のゲートが開き、エンジンがふたたび回り始めました。お世話になった「葛木丸」ともお別れです。

乗り組みさんやお客さんたちと手を振り、声を掛け合って、ちょっとふらつき気味に遠ざかる船影を見送りました。お世話になりました!


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陽射しで暖を取っている風情の、木曽川方ゲートを掲げておしまいといたしましょう。雄大な2河川に挟まれた地に在って、狭水路の奥で美しく整備されて息づく、齢115を数える現役の複式マイタゲート!

剪定された木々に彩られ、こじんまりと可愛らしくさえあったその風情は、実際にこの地を踏まなければ感じることができなかったでしょう。訪ねてよかったと、閘門バカとしてしみじみ思ったことではありました。

(29年11月19日撮影)

(『木曽三川公園展望タワーにて』につづく)

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タグ : 船頭平閘門閘門木曽川観光船

船頭平閘門を訪ねて…12

(『閘門ニャンコ』のつづき)

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「葛木丸」が、葛木港へ戻る時刻が迫ってきました。閘門通航シーンを撮ってみたくなったのと、例のギミックと電光掲示のモニターが、作動するところもあわよくば見てみたい、という欲望が抑えきれず、乗り組みの方に「途中下船」を相談してみると、快諾してくださいました。見学ツアーをパスしたことといい、我儘ばかりで申しわけありませんでした。

ご一緒した皆さんが乗り込んで、もやいを解き微速で進んでくる「葛木丸」を、橋の上から見守って。皆さん口々に「気をつけてね」「さようなら」と、手を振ってくれました。

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213063.jpg通船要求の鐘を鳴らすと、係の方が出てきて機側操作盤を鍵で開き、扉体を作動させます。おおお、間近で眺める開扉シーン、いいですなあ!

さて、気になる例のモニターですが‥‥残念ながら動きませんでした。もう長い間使っていないのかなあ。まあ、見学者が私一人では、よしんば可動状態にあったとしても、動かし甲斐がないでしょう。


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そして「葛木丸」を直下に見下ろしての通航シーン。径間5.63mは、小型船舶から見ても決して広くなく、実際通ったときは扉体が鼻先をかすめるように感じたものですが、こうして見下ろすと、改めて狭さが実感できます。

213065.jpg閘室に入りました。現在は満水状態ですから、排水後は両岸の石垣も露出して、また印象が変わるでしょう。

閘室の護岸が法面というのは、眺める分には味があってよいものですが、通る船からすれば取り付くところがない上、接岸もできないしと、あまりありがたくないのは容易に想像できます。「葛木丸」も長いボートフックで突いたりして艇の回るのを防いだりと、落ち着かない風情でした。

(29年11月19日撮影)

(『船頭平閘門を訪ねて…13』につづく)

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閘門ニャンコ

(『船頭平閘門を訪ねて…11』のつづき)

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話は少し戻って閘門の通航時、閘室から長良川方のゲートを眺めていたときのことです。

私はすっかり頭に血が上り、お恥ずかしいことにまったく気づかなかったのですが、連れが一部始終を撮っていたのでご紹介します。注水中、ゲートの右手から黒白の猫さんがのそりと現れ、船を一瞥した後にひょいひょいと扉体のかたわらまで降りてきて、何と歩み板を渡り始めたそうです。

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いかにも慣れた様子でゆったりと、それでいてときどき立ち止まっては、チラリ、チラリとこちらに目線をくれる様子が可愛らしく、またおかしかったとのこと。

その悠揚迫らぬ(?)雰囲気から、このルートを日々利用していることが察せられ、橋があるにもかかわらずゲートを選ぶあたり、もしかしたら閘門好きなのかも、と思ったそう。

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歩み板を渡り終えたところで、猫はこちらをチラ見しながらやおら座り込み、後ろ足で脇腹をボリボリ毛づくろい。くつろいだそのさま、「閘門猫」と呼んでやりたいほどだったとか。

213056.jpg閘門を出て、長良川を一巡し戻ってくると、桟橋の手前にある階段状の護岸に先ほどの猫が。やはりゆったりとした足取りで水際に降りてくると、水面に口をつけて水を飲み始めました。

閘門を我が道とし、河水でのどを潤す猫! まさに「閘門猫」の称号にふさわしい生活ぶりじゃないですか!


213060.jpg閘門ニャンコ先生、我々が「デ・レーケ像広場」でパンをかじっていたら、いつの間にやら背後に出現。おねだりする風情だったので、一緒に食べることに。首輪をしていないから、ノラかな?

と、お散歩中らしいご夫婦が猫に気づいて、「××ちゃん、おいで!」というと、その後について行ってしまいました。ノラらしからぬきれいさですが、飼い猫にしては妙だったので、公園で餌付けされている、いわゆる「外猫」といったところでしょうか。

(29年11月19日撮影)

(『船頭平閘門を訪ねて…12』につづく)

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タグ : 船頭平閘門閘門

船頭平閘門を訪ねて…11

(『船頭平閘門を訪ねて…10』のつづき)

213051.jpg管理棟の裏手は「デ・レーケ像広場」。その名のとおり木曽三川のみならず、我が国の治水に功績のあったオランダ人お雇い工師、ヨハネス・デ・レーケを顕彰した銅像があり、芝生の広場と東屋が配されています。

観光船でお弁当を予約したお客さんは、すでに東屋でお食事中。こちらは別の意味でガツガツと、木曽川文庫へ向かうのでありました。


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公園の小径をたどって、木曽川文庫へ。閘門の雰囲気に合わせたような瀟洒な建物で、玄関の受付横には、旧扉体から取り外した円弧形ラックの開閉機構も展示され、実際にゴリゴリと動かすこともできます(動かすのに夢中で、写真を撮り忘れてしまった!)。

ガイドさんのツアーに遅れてお邪魔したにもかかわらず、係の方が2階の書庫兼展示室に案内してくださり、お話を伺うことができました。ありがとうございました!

213053.jpg2階は多くの資料やパネルで、木曽三川改修や閘門について解説されており、お話を伺いながら興味深く拝見。扉体の注排水用ゲート、パネルによると「下部に小窓を設け、側壁内の給水溝に故障が出た場合に備える」とあり、予備装置的存在であったことが判明。

さて、この木曽川文庫、9年前に過去ログ「閘門の研究団体が発足していた!」でも紹介した、「日本の閘門を記録する会」の事務局的存在であり、その調査結果を反映して刊行された書籍、「運河と閘門 ―水の道を支えたテクノロジー―」の元となった資料が、すべて所蔵されているところでもあります。
ファイルに整理された膨大な資料の一部を拝見しながら、会員の方々のご苦労話を伺うなど、短いながら閘門バカ冥利の時間を過ごすことができて、幸せでありました!

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一階受付のある事務室内をふとのぞくと、壁面やコンソールにいくつものモニターがあって、閘門の映像が写っています。よく見れば、コンソールには操作盤や放送機器らしきものが‥‥閘門の遠隔操作室だ!

先ほど「葛木丸」で通航した際には、扉室の上で機側操作していたので、遠隔操作できるとは意外でした。写真はもちろん許可を得て、解説をいただきながら撮ったものです。

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閘門操作盤の木曽川方をアップで(コーフンのあまりピンボケ)。扉体の注排水用ゲート、こちらでは「子扉」と呼ばれていることが判明。動かすのは手動ながら、状態はパイロットランプでモニターできるようになっていますね。

ちなみに年1回程度、扉体の開閉や注排水まで、すべて手動で操作する非常訓練を行っているそう。また、先ほど見た旧扉体の解説では、年間通航量は500隻とのことでしたが、係の方のお話によると、1000隻ほどはあるだろうとのこと。

色々と興味深いお話を伺った中で、一つ気になった話題がありました。デ・レイケのよしみもあり、オランダの方が訪れることもたびたびあるそうですが、決まって「保存するなら、なぜ動力化してしまったのか? 元どおり人力操作に復元すべきではないか」との指摘があったそうです。

竣工時の姿やメカニズムを保って、後世に伝えることは理想ではありますし、技術の伝承者であるオランダ人としては、もっともな感想ではあります。操作法も含めての「保存」のみが目的であるなら、選択肢はそれしかないともいえましょう。

乗り物にしろ建物にしろ、保存する際にどこまでこだわっていくかは、先立つもののこともあり、非常に難しいところではありますね。個人的には、閘門は気軽に通航できてこそ、活用されてこそ、という想いがあるので、船頭平閘門を改修し、稼働状態を維持している方々の姿勢にはさほど違和感を覚えないどころか、むしろ頭が下がるほどなのですが、これは「保存」の姿勢をうんぬんするのと、別のベクトルになってしまい、同列には論じられません。

オランダの方の考えにできる限り従うなら、別途新閘門を建造して実用はそちらに譲り、旧閘門は竣工時の姿に復して、イベント的な通航のみに供する、というのがよいのでしょうか‥‥。
撮影地点のMapion地図

(29年11月19日撮影)

(『閘門ニャンコ』につづく)

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タグ : 船頭平閘門木曽川文庫

船頭平閘門を訪ねて…10

(『船頭平閘門を訪ねて…9』のつづき)

213046.jpg以下、いくつか落ち穂ひろい的に。閘室のかたわらに、なぜか陸側に向けて掲げられていた大正4年施行、昭和33年改訂の通航規則。

時代相応の文言が味わい深く、しばし読みふけってしまいました。第三条、「汽船は予め適当の距離に於て音響等を発」しないと科料、すなわちだんまり接近は罰金、というのが厳しいですね。

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長良川方の通船要求鐘をアップで。形鋼の枠やボルトでの取付けを見てもわかるように、最近作られたもののようですが、竣工当初から同様の鐘はあったのでしょうか。

上の「汽笛なし接近は罰金」という一文があることから、意外と竣工後だいぶ経ってから、考え出されたやり方なのかもしれませんね。まあ、いずれにせよ、無線やインターホンが登場する以前の方法としては、簡単かつ合理的ですし、観光船の乗客からすれば、味のあるイベントとして楽しめることはいうまでもありません。

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長良川方の扉室には、本来無かった橋が架かっているおかげで、真上から扉体のディテールを眺めることができます。給排水ゲートのスピンドルや、歩み板の様子もいいですが、やはり気になるのは円弧形のラック。こちらも扉体同様、ステンレスみたいですね。

よく見るロッドや直線状ラックと違い、押し引きのストロークがいらないため、開閉設備が実にコンパクトにまとまっていることが、真上から見るとしみじみ実感できます。

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長良川方の水路を橋の上から。通っても、こうして高所から眺めても、本当に素敵な川景色です。

木曽川方と同様の量水塔がよいアクセントになっていて、右手のなだらかな法面上は並木が紅葉し、穏やかな水面を彩っています。左手、「葛木丸」のもやう奥は広くなっていて、桟橋が備えられていました。

213050.jpgさて、閘門もあらゆる角度から堪能できたことだし、遅ればせながら木曽川文庫に向かうこととしましょう。

閘室横には、「船頭平閘門」と木の看板がかかった、やはり木造の管理棟が。最近建てられたのか、壁の塗り色もまだ新しい感じ。先ほど機側操作をしてくれていた、係員さんの詰所でしょうか。ここに管理施設が集中していると思いきや、違うことは後で分かりました。

(29年11月19日撮影)

(『船頭平閘門を訪ねて…11』につづく)

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タグ : 船頭平閘門閘門