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八郎潟の閘門を訪ねて…9

(『八郎潟の閘門を訪ねて…8』のつづき)

302076.jpg周囲のほとんどは、地平線かと見まがうような平坦な地勢ですが、西側には男鹿半島の山並がはるかに望めました。

山の頂近く、斜面が大きく切り開かれて、遠目にも土色が目立つところがありましたが、位置的に見て寒風山展望台あたりかしら。寒風山、採石場もあるのですね。


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南下していて気になったのがこれ、中洲‥‥といってよいのでしょうか、砂洲に草が茂ったような、平坦な小島です。

Googleマップで見るとほぼ楕円形で、特に名前はついていないようでしたから、流入河川の土砂が堆積し、自然にできたものなのでしょう。ちょっと上陸してみたくなるような、冒険心をそそられるものがありました。

302078.jpgふたたび閘門に入り上陸。閘室横の護岸から見えるところには、銘板や説明など一切の掲示物がないのは、先ほどの通通航時に確認したばかり。

しかし、せっかくここまで来ながら、諸元的なものを何もこの目で確かめられないのは、あまりにも寂しいもの。よくないこととは知りながら、万止むをえまいと、扉体が操作される待ち時間を利用して、法面のブロックをわしわしよじ登り、管理橋の上に立ったのでした。

というわけで、ここで遅ればせながらお詫びしておきます‥‥。
申しわけございませんでした。

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管理橋上から撮った、放流ゲートの堰柱に掲げられていたメーカーズプレート。実は進入時、堰柱正面にチラリと黒く四角いものが目に入っていて、立入禁止だがさてどうしようかと、移動中ずっと悩んでいたのでした。

閘門ゲートは純径間4m、扉体高さ2.7m、開閉速度2m/分、扉体重量2.5t。極小閘門のカテゴリーに入れて差し支えないサイズのデータを、ここで目の当たりにすることができたのであります。まことに申しわけないことをしたとはいえ、最後に決断してこの前に立つことができ、閘門好きとして遠路訪ねてきた甲斐があったと、しみじみ実感した瞬間でもありました。

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船尾に離れゆく閘門を、名残惜しく振り返って。説明の掲示はもとより、作動中の警報音も一切ない「黙して語らぬ」閘門、とでも呼びたくなるような、ここをよく知る地元艇のためだけに在る、といってよい閘門。私の記憶に数ある閘門のイメージに、また一つ新しいパターンを認識させてくれたのでした。

地元の皆様のご協力と、好天に恵まれ、さらに閘門も故障などしておらず、長年の懸案であった訪問だけでなく、通航が実現できたのは本当にありがたく、嬉しいことでした。改めて厚く御礼申し上げます、ありがとうございました!
撮影地点のMapion地図

(令和5年7月25日撮影)

(『真山神社の丸木舟…1』につづく)

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八郎潟の閘門を訪ねて…7

(『八郎潟の閘門を訪ねて…6』のつづき)

302066.jpg閘室に入って、もやいを取るSさん。一瞬ながら強い水流が生じるので、船首尾でしっかりと繋ぎ、艇が振れないようにしてくれます。

それからふたたび「海側閘門ゲート現場盤」を操作して後扉室ゲートを閉じ、閉扉を確認してからまた「潟側閘門ゲート現場盤」へ‥‥。いやもう、お手数をおかけし恐縮です。


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扉体を運転している待ち時間、防潮水門のズラリと並ぶ堰柱群を眺めるのも乙なもの。対岸に見える二連のゲートは、もう一径間ある魚道ですが、ゲートの高さに差がつけられていて、遠目にはいかにも小閘門ですよね。

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302069.jpg前扉室ゲートの上昇ボタンが押されて、2回目の「どばぁー」! 閘室への注水だけに、強烈さも当社比5割増し(動画はこちら)。黒い湛水線まで、一瞬で水面が上がる様子を堪能。

水面が波打ち、扉体が上がる様子に見とれていたら、早くも出発のお声がかりが。名残惜しいような気持になりながら、濃厚な八郎潟防潮水門閘門の通航初体験、往路分はここに大団円を迎えたのでありました。

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後ろに離れてゆく閘門・魚道ゲートにカメラを向けたら、ちょうど背割堤がセンターに来て面白い表情に撮れました。この角度から見ると、魚道の水面に勾配がついているのがわかり、何分水位差が小さいだけに、エンジン全開であの「坂道」を突破できそうな気すらしてきますよね。

ささやかな閘程を経た水面はもう、八郎潟調整池(八郎湖)。中心部と沿岸の干拓でぐっと狭まったとはいえ、国内の湖沼では18位の面積を誇る広大な水面。せっかく訪れたのですから、その片鱗だけでも味わってゆくとしましょう。
撮影地点のMapion地図

(令和5年7月25日撮影)

(『八郎潟の閘門を訪ねて…8』につづく)

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タグ : 八郎潟防潮水門閘門船越水道

八郎潟の閘門を訪ねて…6

(『八郎潟の閘門を訪ねて…5』のつづき)

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302062.jpg前扉室ゲートが閉じたのを確認してから、Sさんは艇のある方に戻ってきて、今度は後扉室ゲートの「現場盤」を開き、上昇ボタンを押しました。

前扉室が閉じていて後扉室が開いていたら、並んでいる順に現場盤を操作すればいいのでしょうが、今回のような場合はどうしても、行ったり来たりしなければならないのが面倒ではありますね。


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後扉室ゲートは、スイッチを押すと一定の速度で上がり続けるため、閘室内の水が
どばぁー
といった感じで、ほぼいっぺんに排出されます。もう本当にどばぁー、としかいいようのない、いっそ潔い排水っぷり。

バイパス注排水の設備はもとよりなく、扉体からの直接注排水だと、細めに開いた時点で一旦停止、注排水を完了したころに上昇再開といったプロセスで扉体を制御するパターンのものもありますが、本閘門はまことに単純明快。閘程もきわめて少なく、通航船艇も小型のものに限られるので、これで差し障りはないのでしょう。

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302065.jpgもやいを解いて微速前進、閘室に進入。上がった扉体を眺めると、海苔らしい黒ずんだ汚れだけで、貝は全く見られませんでした。汽水域とはいえ上流から常時越流しているせいか、海水の濃度はごく薄いようです。

扉体の手前に一対下がっている平角パイプ、何かと思ってのぞいたら、扉体を吊っているチェーンの"鞘"でした。扉体が上がると、余ってたるんだ分のチェーンが、ここに収まるというわけですね。

(令和5年7月25日撮影)

(『八郎潟の閘門を訪ねて…7』につづく)

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八郎潟の閘門を訪ねて…5

(『八郎潟の閘門を訪ねて…4』のつづき)

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艇は後扉室の扉体直前まで進入すると、左側に並ぶフェンダーにもやいを取り、接岸しました。扉体越しに向こうの水面が見えますが、腰かけたままでも余裕をもって眺められる高さ。先ほど放流ゲートで目測したとおり、閘程は0.5mほどのようです。

扉体の巻上装置、遠目にはその梯子状の外観から、ラックだと思っていたのですが、近づいてみるとチェーンであることが判明。扉体とチェーンは、ねじれ止めのスイブルで連結されていました。

302057.jpgセルフ操作のボックスが護岸上にあり、しかも陸側を向いていて上陸しないと操作できないのは、ディリーポータルZの記事で知ることができたので、Sさんとともに上陸。操作シーンをものしようというわけです。

Sさんは上陸すると、スタスタと上流側へ。あれ? 操作ボックスは後扉室の下流側にあるのに、なぜ? 例えば関東の利根川筋なら、操作把手は下流、閘室内、上流と3ヶ所に設けられ、進入側の1ヶ所を操作すれば、その後の運転はほぼ自動で行われるしくみだからです。

302058.jpg
Sさん、閘室の横まで歩くと、2つ並んだ操作ボックスのうち上流側のフタをおもむろに開き、中のボタンを押してから艇の方に戻って待つ姿勢に。その上流側操作ボックスの表記を見ると、「潟側閘門ゲート現場盤」。蓋には「MEIDEN」の銘板がありました。ちなみに写真手前は「海側閘門ゲート現場盤」‥‥えっ?。

よくよく見まわしてみたら、操作ボックスは前扉室、後扉室とも上下流側、つまり合計4つもあるのでした。わざわざ「潟側」を操作しに歩いてきたのは、前扉室ゲートを閉じるためだったのです。

‥‥ということは、一つを操作すれば、閘門全体が自動で運転するタイプではなく、ゲートごとに独立している、単なるスイッチということなのですね。これは新鮮かつ、衝撃でした。
(前扉室ゲート下降の様子は、こちらの動画をどうぞ)

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302060.jpgこれが「現場盤」の内部。上昇、停止、下降の3種ボタンが並んだ、単純明快なもの。本当に扉体を上下させるだけの、実に簡素な機能であります。ご覧のように、非常時連絡先の電話番号も掲示されていました。

他にも堰柱側面に、インターホンのボックスが備えられていました。「CCTV装置」とあったので、家庭用のそれ同様、カメラもついているのでしょう。今は携帯電話で用が足りるにせよ、非常時にも安定して作動する通信装置は必須ですものね。
撮影地点のMapion地図

(令和5年7月25日撮影)

(『八郎潟の閘門を訪ねて…6』につづく)

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タグ : 八郎潟防潮水門閘門船越水道

八郎潟の閘門を訪ねて…4

(『八郎潟の閘門を訪ねて…3』のつづき)

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いよいよ閘門が近づいてきました! 閘門の径間は一番左で、その右が魚道ゲート。その左手陸上に見える二階家は、防潮水門全体の操作室棟でしょう。閘門と魚道の部分のみ、管理橋が橋脚にRC桁を載せた造りでなく、橋台を兼ねたラーメン構造になってるのが面白いですね。

302052.jpgその右に隣接した、越流ゲート。水位差は見たところ、0.5mあるかなきかといったところ。正式名称は放流ゲートで、東(潟上市)側にももう1径間あります。

防潮水門閘門、ウェブ上の情報が極めて少なく、公式である「八郎潟防潮水門施設情報」、「秋田県八郎潟防潮水門管理条例施行規則」ともに、閘門の通航法や通航可能船艇の寸法、通航時間など、本来掲げてしかるべき告知は、何もありません。

通航の様子をレポートした記事としては、「八郎潟水門を自分で開閉して海に出る」(乙幡啓子氏著・デイリーポータルZ)が長らく唯一で、平成19年8月のアップですから、もはや古典(?)といっていいほど。この記事のおかげでようやく、閘室で上陸してのセルフ操作であることが判明、嬉しく拝見したことを思い出します。

動画は「水門突破!八郎潟からボートで海に出て釣りをする!」(野外観察倶楽部 O.O.C)がありますが、アップされたのはつい最近で3年前。何分釣りが主題とて、閘門のシーンはほんの一瞬に過ぎず、製作者の方には申しわけないことながら、通しで拝見して拍子抜けしてしまったのは正直なところです。しかし、現役で稼働しているのはわかったのですから、ありがたいことには違いありません。検索漏れでほかにもあったらごめんなさい。

閘門好きの一喜一憂はさておき、公式がこうも閘門に対して(駄洒落ではありませぬ)冷淡かつ、ウェブ上の通航談も限られるとくれば、訪問の難易度も高いような気がして、不安になるもの。

それだけに今回、戸田釣具店さん、船頭のSさんが引き受けてくださったときは、まことに、嬉しさもひとしおだったのでありました。重ねて御礼申し上げます!

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八郎潟―防潮水門
104㎜×143㎜  絵葉書セット「男鹿半島-八郎潟-」の一枚。裏面「TOHOKU CARD PRINTED IN SENDAI」の記載あり。切手欄7円。


ここで、絵葉書セットの中から、先代防潮水門‥‥幸運にも閘門の姿を間近に写した一枚があったのでご紹介しましょう。切手貼付欄が7円でしたから、昭和41~47年に発行されたものと推定できます。河岸に接した現在の閘門と異なり、3径間の固定堰と魚道を介して設けられていました。

閘門に隣接してひときわ高い堰柱の径間がありますが、これは可動橋を備えた径間のため、ゲートも高く上げる必要があるから。いわば通船門というわけです。船越水道には、短期間ながら3つの可動橋が併存していたのですね!

先代防潮水門は昭和36年3月竣工。昭和58年5月に発生した日本海中部地震で一部が破損したこともあり、現在の防潮水門をすぐ上流側に新設、平成19年に竣工したそうです。

302053.jpgさてさて、閘門通航のお話に戻りましょう。右手の魚道径間をチラ見しながら、トンネルのようなラーメン橋台に突入。うひひ。

セルフ操作の閘門なら、少なくとも関東のそれであれば操作方法や運転時刻、緊急時の対処法や禁止事項などなど、もろもろの説明が書かれた看板が掲げられているのが普通ですが、こちらはご覧のとおり何もなし。

ウェブ上に公式の情報が皆無であることに加え、この淡泊(?)さを目の当たりにして、う~んと唸ってしました。例え地元の限られた方々のみに供する施設にしても、セルフ閘門で注意書きが全くないのは、失礼ながら少々異様な感じがしたものでした‥‥。

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何はともあれ、十数年来の念願がかなう瞬間がやってまいりました!

ゲートのステータスは、前扉室が開、後扉室が閉。前扉室ゲートを閉めて閘室を排水、後扉室ゲートを開く、というプロセスをフルに楽しめるのです!
撮影地点のMapion地図

(令和5年7月25日撮影)

(『八郎潟の閘門を訪ねて…5』につづく)

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タグ : 八郎潟防潮水門閘門船越水道絵葉書・古写真