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蹴上インクライン…2

(『蹴上インクライン…1』のつづき)

15126.jpg並木は線路の上を覆い、緑のトンネルさながら。坂をさらに登ると、頂上に舟を乗せた台車が小さく見えてきました。

軌道敷の石畳は、近所の人には格好の散歩道のようで、軽装の老人や、犬を連れた人に出会いました。



15127.jpg線路の左手に、小さな噴水と石のベンチを備えた小公園が。ここで線路を外れて、脇にそれてみましょう。

噴水からほとばしる水は、ドッ、ドドッと不規則に、脈を打つような流れ方をしています。ポンプアップされたものではなく、琵琶湖疏水から自然流下した水が、ここに導かれているのでしょうね。


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石段を登ると目前に現れたのが、明治時代、琵琶湖疏水の建設を指揮した土木技術者、田辺朔郎の像。図面でしょうか、右手には丸めた紙のようなものを持ち、長髪にフロックコートのいでたちは、弱冠23歳で疎水建設の重責に就いた、はつらつとした青年技師の気概を、髣髴させるものがありました。

しかし、小面憎かった朝の大雨のお陰で、木立に囲まれたインクラインや疎水の景色が、しっとりとよい雰囲気に包まれ、今や雨様々といったところ。かんかん日照りの中で訪れたら、もっと違った感じになっていたことでしょう。

15129.jpgさらに奥をうろついてみると、わが国の水力発電の草分け、蹴上発電所の水圧鉄管が一望できるところに出ました。

落差36mは、現代のレベルからすると小規模なものですが、直上から見下ろす鉄管は太く、力強さが感じられ、大迫力でした。


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ここで毛馬閘門に続いて、昔の絵葉書をご覧に入れましょう。前項の写真とほぼ同アングルで、インクラインを越える南禅寺橋の上から撮ったものです。時期はわかりませんが、昭和の初めころでしょうか。

蹴上インクラインの写真と言うと、その多くが麓の南禅寺船溜を写したもので、橋の上からの写真は珍しく、また旧橋の木製トラスのディテールがわかること、トラスの構造を透かしてインクラインを望むという、構図が面白いこともあり、選んでみました。


(21年9月12日撮影)

(『蹴上インクライン…3』につづく)

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タグ : 蹴上インクライン琵琶湖疏水田辺朔郎絵葉書・古写真