fc2ブログ

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…4

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…3』のつづき)

224016.jpg
管理橋からズームでクレーン周りをたぐってみました。I型鋼の2本のレールと、ライン大橋の高欄越しに見たゴンドラです。

ゴンドラに吊り下げられた枠は、井の字に組まれたシンプルなもので、とてもこの上に舟艇を載せるような構造には見えません。先ほど想像したとおり、やはり船台か何かを吊り下げるためのものなのでしょう。

224017.jpg銘板でもあればと堰柱の左右をウロウロしたものの、特に新味のある発見はなく、手すりに一本足で留まって、少し羽毛をゆるめ気味にしてくつろぐ、鷺さんの姿に惹かれたくらい。

左下、通路の床越しにピョコッ、と頭だけ見える鷺がいたのも笑いを誘いました。水の落し口で魚道も併設されているだけに、餌にはこと欠かないのでしょうね。

224018.jpg
ライン大橋から下流側の真下をのぞき込んでみたいのですが、すでに触れたとおり2車線ギリギリの幅しかなく、徒歩で近づくことはできません。苦肉の策として、後続車のいないときにクルマで橋へ進入、一時停止して、同乗者に撮ってもらうことに。

柵越しになりましたが、何とかディテールはわかりました。ゲートの下流側は嵩上げされており、舟艇が横付け待機できるよう、舟入様の細長い凹部が造られていました。左手に後付けされたと思しき階段も見えることから、船の吊り上げ移動は、下船してから行うようにしているのかもしれません。

224019.jpg
同じ位置から、目線を上げてもう一枚。左手、通路脇の堰柱フラット上には監視カメラらしきもの、右手のレール近くには、防護枠をつけた緑灯も見えます。平成18年の改修時に設備したということは、すでに12年経つわけですが、手入れはなされているようで、痛んだ箇所は見られません。結構な頻度で運転されているのでしょうか。

すでに紹介した「犬山頭首工の概要」の諸元表にある舟通しの記述は、「幅員:6.0メートル、長さ:20.0メートル、型式:クレーン式」と極めて簡単で、このタイプを選ぶに至った経緯や、メーカーなどには触れられていません。閘門から、あまり他に例の少ないこのタイプがなぜ選択されたのか、機会があったら知りたいものです。

224020.jpg木曽川を渡り、「ライン大橋北」交差点近くから望んだ舟通し。マリーナや漁港には上架設備として、この手のクレーンを備えたところは普通にありますが、堰の舟航施設でお目にかかれるとは!

何分まだ不勉強なので謎ばかりですが、閘門でもインクラインでもない、いわば「舟航施設第三のタイプ」の存在をを知ることができただけでも、大きな収穫だったと喜んだものでした。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…5』につづく)

にほんブログ村 マリンスポーツブログ ボートへ
にほんブログ村

タグ : 舟筏路木曽川犬山頭首工

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…3

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…2』のつづき)

224011.jpg信号を渡って、上流側にある人道橋から舟通しをのぞいてみましょう。幅員には余裕があって、自転車同士ですれ違っても問題なさそう。堰柱の並ぶ少し手前あたりが、中高に盛り上がっていますね。

橋詰の扉にあった注意書き(下写真)を読むと、この橋は犬山頭首工管理橋といって、あらら、自転車は下車通行、原付の通行は禁止と規制が厳しいようです。なるほど、堰の管理施設を便宜的に開放している建前、公道の橋のようにはいかないとうことでしょう。

224012.jpg

224013.jpg管理橋をずんずん小走りに歩いて、脇目も振らず舟通しを目指します。いや、脇目も振らずとはいいながら、その実犬山城や美しい川面をチラ見してはいたのですが、ゆっくり眺める時間はないのが残念なところ。

堰柱が立ち並ぶところまで来ると、今度は巻上機室の屋根に留まったハトさんに脇目。どこか獰猛(?)というかマッチョな雰囲気で、子供のころ秋葉原のやっちゃ場で見かけたハトを思い出しました。

224014.jpg
ちょっと白飛びしてしまいましたが、舟通しの径間、管理橋から下流側を見たところ。手前から両側に堰柱、ライン大橋、橋の桁手前まで伸びたクレーンのレール、舟通し下流側ゲートの2本の堰柱に渡された巻上機室と、位置関係がわかります。

下をのぞき込んでみると(下写真)‥‥下流側ゲートの手前、両岸にはフェンダーが並べられて、繋留のためのアイも一つづつ見られ、あそこに船台なりを沈めてから舟艇を進入させ、クレーンで吊り上げるのでしょう。パッと見閘室に似ていますね。

224015.jpg
ん? 閘室?‥‥そういえば、上流側の堰柱には戸溝があるのに、扉体は見られないなあ。下流側のゲート見える扉体は、増水時のみ開放する放水用だと思っていたけれど、これはもしかして、以前は前後一対のゲートがある、閘門型の舟通しだったのかしら? だとしたら、何でわざわざあまり例のない、クレーン式にしたんだろう? 観察できる視点は限られていたものの、こういったことは訪ねてみてこそわかるもので、興味がそそられますね。

帰宅後に改めて検索してみたら、「犬山頭首工写真集」(東海農政局)がヒット。おおおお、そのものズバリの写真があるじゃないですか! やはり、かつては閘門で、「河床低下のため水位が確保できず」、平成18年度竣工の改修時に、吊り込み式クレーンに改められたとあります。鵜飼舟らしい和船の通航時が、記録されていたのも嬉しかったです。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…4』につづく)

にほんブログ村 マリンスポーツブログ ボートへ
にほんブログ村

タグ : 舟筏路木曽川犬山頭首工

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…2

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…1』のつづき)

224006.jpg頭首工を一枚撮ってからふと川面に目を落とすと、素朴な造りの和船が3隻。ご当地名物の鵜飼舟ですね。

舟筏路‥‥舟通しが設けられているということは、この手の地場の船たちが、頭首工の下流へ下航する用が結構あるということなのでしょうか。もっともこのクラスなら、「長瀞渓流下りふたたび…5」で見たように、大型トラックで積んでいった方が早いような気もしますが‥‥。

224007.jpg
脱線しますが、出発前、朝の散歩時に撮った写真から。

船といえば頭首工の上流、犬山橋の下にはご覧のような屋形船が数隻もやわれ、舟遊びの盛んなことが見て取れたのですが、この大きさならトレーラーで陸送するより、自航して舟通しを利用した方が、効率的な気がしますね。‥‥とまあ、舟通しの存在意義をあれこれ妄想したものの、実物を目にしないことには何ともいえません。

224008.jpg話を戻して、ライン大橋南詰に来ました。下流側の橋詰スペースには、犬山頭首工の就航を記念した立派な石碑が。碑文は「蘇水濃尾潤」、時の首相・佐藤栄作の揮毫によるもの。

ライン大橋は車道のみの2車線ギリギリで、歩いて舟通しまで近づけそうもありません。やむを得ず、橋詰からズームでたぐって、構造を検分してみることに。

224009.jpg
愛しの舟通しとの初邂逅です。手前下に見える、コンクリートで床固した高水敷から狙えればベストだったのですが、もちろん施設内とて立入禁止なのでした。

ほぼ道路と同じ高さに架設された、2本のI型鋼レールが橋から下流側に向かって伸びており、その先端にはゴンドラ様のものがぶら下がっています。いわば天井クレーンのような構造物に見えました。

右側の側壁が高められていることから、あそこに入った舟艇をクレーンでいわば上架し、下流側へ移動した後、吊り下げて泛水させる仕組みのようです。ゴンドラをアップにして観察してみましょう。

224010.jpg
レール上、パーツの一部かと思っていたら、羽根を半開きにして日光浴していた鷺君だったのはご愛嬌(笑)。

ゴンドラの下には、4本のワイヤーで枠が吊り下げられているのが見えました。ここに舟艇を載せて搬送するには、いかにも華奢に過ぎる感じですし、枠の下四隅にスリングポイントらしいものが見られることから、これは単なるフレームだろうと想像。さらにこの下へ船台か、船底を回すレザーベルトを介して吊り下げるのでしょう。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…3』につづく)

にほんブログ村 マリンスポーツブログ ボートへ
にほんブログ村

タグ : 舟筏路木曽川犬山頭首工

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…1

224001.jpg9月1日土曜日は、名古屋は金山で業界の集まりがあり、同業者たちと出席することに。翌2日は体が空くので、かねてから気になっていた、木曽川・飛騨川にある舟筏路を見て回ることにしました。

当日はあいにくの雨模様。集まりは昼からなので、早めの新幹線で名古屋に着いたその足で、名古屋市博物館を見学。帝冠様式を現代風にしたような、なかなか格好のよい建物。特別展「海たび」を拝見と、まずは順調な出だしであります。

224002.jpg行事が終わって、金山駅から名鉄の快特で宿を取った犬山へ。気になるのはお天気で、翌2日も不安定との予報でした。もちろん来たからには、雨が降ろうが訪ねる覚悟ですが、強い降雨もあった1日の荒れ模様を見ると、正直不安になりました。

舟筏路については、『「舟筏路(しゅうばつろ)」! この甘美な響き』をお読みください。ダムや堰に設けられた舟航施設の一種で、言及した文献も見当たらず謎が多いことから、この目で見てやろうと思っていたのです。

224003.jpg
明けて2日‥‥宿から出て木曽川畔に立ってみると、
快 晴 で す !
まあ、小躍りするほど嬉しくなりました。草生す奇岩の向こうには、山並みを映す美しい川面が。限られた時間で例によって駆け足にはなりますが、大いに好奇心を満たすとしましょう。

224004.jpg
本日第一の目標は、すぐ下流に見える犬山頭首工。昭和37年竣工、濃尾平野の農地9353haを潤す取水堰です(『犬山頭首工の概要東海農政局)。

左手には有名な犬山城をいただく独立丘が迫る、風光明媚なところ。麓を河水が洗う丘があり、はるかには山並みを望めるという、可航河川としても魅力あふれる川景色ですね。

224005.jpg
犬山城のある丘の麓を過ぎて、上流側から頭首工を一枚。手前の分岐は、木津用水の取水口に至る導流堤です。上流側に渡された茶色い桁は人道橋で、車道橋である「ライン大橋」は、堰柱の下流側に設けられています。

一つお詫びが‥‥。上にリンクした東海農政局の公式サイトでは、舟筏路でなく「舟通し」と書かれており、いきなりブログとしてのタイトルが破綻してまいました(泣)。まあ、とにかく舟航施設なら何でも好きなおっさんの上滑りとして、ご勘弁くだされば幸いです。
撮影地点のMapion地図

(30年9月1日・2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…2』につづく)

にほんブログ村 マリンスポーツブログ ボートへ
にほんブログ村

タグ : 舟筏路木曽川犬山頭首工

「舟筏路(しゅうばつろ)」! この甘美な響き

閘門好きを公言してはばからない船頭ですが、閘門だけでなくインクラインや水斜面など、水位差のある場所に設けられた舟航施設全般にも、大いに食指が動くたちです。

一昨年、28年8月のこと。「阿賀野川頭首工を愛でる…11」の拍手コメントに、「Lambda の徒然日記」のLambdaさんからの書き込みがありました。お子さんと木曽川は関電今渡発電所の見学に行かれた際、ダムに舟通しの一種があって、「舟筏路(しゅうばつろ)」と呼ばれていたとのこと。

舟 筏 路!
初めて目にする言葉です。字面の佳さに加えて、その読みも水路バカの血を沸かすような、豊潤かつ甘美なものがあるじゃないですか! まさに声に出して読みたくなる日本語、いっぺんで気に入ってしまいました。

さっそくブログを拝見してみると、見学記が何本かの記事になってアップされていました。中でも興味深かったのが、舟筏路を間近で見た写真のある、「ぷにぷに発電所見学・その4」。

もう目ん玉見開いて掲載の写真を観察。下流側は両サイドに壁を立ち上げた、溝状の構造物がスロープをなしていて、水面下まで伸びています。壁の天端にはレールとガイドローラー様のものが敷設されていることから、恐らく台車がワイヤーに曳かれて上下する、インクラインに近い施設であろうことがわかりました。興奮でハフハフしつつ、Googleマップでさっそく今渡ダム(↓)を表示、交互に眺めながら記事を拝見したものです。

218055.jpg
ホンモノのGoogleマップで今渡ダムを表示

しかし、上流側のしくみがいま一つわかりません。Lambdaさんの記事にある、6枚目の写真には台車が写っていますが、インクラインだったらサミットを越えた後に、船を載せた台車ごと泛水するところ、写真を見たかぎりでは、台車はスロープの角度のまま上昇し、水面はるか上に位置しています。

上流側の壁天端には、レールやローラーも見えないようだし‥‥。まさか、泛水は船を鉄枠の上にあるテルファーで釣り上げて、台車を避けてから吊り下げるのかしら? それとも、ゲートを開放して溝の中に水を流し、台車は船や筏を浮かせたまま、牽引するためのものとか‥‥。例によって、ぐるぐると根拠の薄い妄想が脳内を駆け巡りました。ダムの上下流に橋がなく、管理橋も公道でないことから、ストリートビューでの観察もできず、興奮しながらもどかしい思いをしたものです。

218056.jpg
ホンモノのGoogleマップで川辺ダムを表示

そんなわけで、構造については壁に突き当たってしまったものの、ふと「ここに舟筏路が設けられているなら、流域の他のダムにもあるんじゃないか?」と思いつき、開いてあったGoogleマップをぐりぐり上流へスクロールしてみると‥‥あった!

今渡ダムすぐ上流にある合流点から飛騨川を遡上し、約5㎞を経たところにある川辺ダムです!
おおお、今渡ダムの舟筏路よりはるかに長い! しかも曲線がすごく魅力的!
一見してずいぶん古びており、長い間使われていないように思えましたが、これだけの規模の舟航施設が現存していたこと、さすが筏流しで知られた木曽川水系と、大いに感動させられたものでした。

218057.jpg
ホンモノのGoogleストリートビューで犬山頭首工を表示

さて、今度は下流へGoogleマップをぐりぐりすると、今渡ダムの14㎞ほど下流、犬山城のすぐ近くにある犬山頭首工にも舟筏路らしきものが! 幸いここの管理橋は「ライン大橋」と名付けられた公道なので、ストリートビューで堪能できました。

‥‥とまあ、Lambdaさんのご教示のおかげで、舟筏路の存在を知ることができ、大興奮のひとときを過ごした2年前でありました。遅ればせながら、Lambdaさんに厚く御礼申し上げます、ありがとうございました!

ダムファンの皆さんは先刻ご承知のものばかりで、何ともお恥ずかしい限りではありますが‥‥。謎の解明とともに、いずれ機会をとらえて木曽川・飛騨川を訪ね、舟筏路めぐりとしゃれ込みたいものです!

にほんブログ村 マリンスポーツブログ ボートへ
にほんブログ村

タグ : 舟筏路木曽川飛騨川今渡ダム川辺ダム犬山頭首工