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川崎の枝運河めぐり…10

(『川崎の枝運河めぐり…9』のつづき)

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東端近く、土堤に沿った形で設けられた、入江崎運河唯一の橋。この橋も桜堀運河の橋同様、構内専用道のものなので名称不明です。

228057.jpg橋の向こうには、特筆すべき物件もなかろうとは思いながら、一応くぐっておこうとスロットルを倒すと、先ほどからおかんむりだった水鳥たちが、いっせいにギャアギャアと大騒ぎしだしたのです。水面低く飛んで逃げ回るものですから、その水音と羽音も加わって、静かな運河は時ならぬ喧騒に包まれました。

ここまで騒がれ、嫌われては、トリ好きとして引き下がらざるを得ません。水鳥たちにお詫びしながら転回、入江崎運河を出ることに。

なお魚探の感は右のとおり、西端付近で5m弱。最低潮位がこのマイナス1mくらいですから、艀船運河としては、そこそこの水深といってよいでしょう。


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帰路、東から先ほどのクレーン群を眺めて、この角度からだと、バージに隠れていた西側のクレーンが見え、こちらは先端まで塗り替えられていることがわかりました。順次手入れされているようですね。

228059.jpg十字流に戻ることみたび、これでいったん京浜運河に出て、次なる枝運河を目指さなければなりません。今回の目玉物件だった、新大扇橋を遠望しながら南へ。

距離を取って眺めると、新大扇橋と都心のビル街のように固まったプラント群、ガット船の横付けする岸壁との位置関係が明瞭に。ほんの短時間の滞在なのに、何か去りがたい気持ちが湧き上がってきて、しみじみしてしまいました。

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まあしかし、雲はなかなか薄まらず、我が身の行いの悪さは棚に上げて、天の意地悪さをくさすばかりです。

池上運河を南下し、東洋埠頭の近くまで来たところで、前方から台船を曳いた曳船が北上してくるのを発見。向かって気持ちやや右‥‥西側に寄せ気味で向かってきたので、通常なら右側通行の原則から左に避けるところ、やむなく右に見て行逢。

曳船は「十三長生丸」。重苦しい曇天にも鮮やかな、美しいブルーの船体で、黒い水面にくっきり浮き上がって見えるようです。
撮影地点のMapion地図

(30年12月9日撮影)

(『川崎の枝運河めぐり…11』につづく)

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タグ : 入江崎運河池上運河新大扇橋曳船

川崎の枝運河めぐり…7

(『川崎の枝運河めぐり…6』のつづき)

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228042.jpg浅野運河を出て左折し、十字流をさらに北上。西岸ではガット船「英晴」が盛んに荷役中、ザザー、ガシャンと賑やかです。

右の写真は池上運河の終端部。北・東辺ともに岸壁で、二方とも建屋で囲まれ、鋼材を積んだ大きな台船が接岸していました。周囲はほとんどがJFEスチール東日本製鉄所の敷地なので、建屋もその工場の一部でしょう。

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終端部の西の角から、北西へ斜めに伸びる水路は、桜堀運河。延長約0.6㎞の小水路です。ぐっと幅も狭まり、いよいよ「枝運河」めぐりらしい雰囲気になってきて、ちょっとワクワクしますよね!

入口を渡る青い桁橋は、先ほどの新大扇橋に続く構内道路を渡しています。船溜の水路に架かっているとあって、専用道のそれとはいえ桁下高が明記されているのがいいですね。残念ながら名前はわかりませんでした。

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228045.jpg左手、桜堀緑地沿いは垂直護岸が整備され、プレジャーの繋留場になっていました。護岸上もフラットがあり、PWCの陸置スペースになっているようですね。ここだけ切り取ると木々が茂って、工業地帯の隣地とは思えないようなのんびりムードです。

水深と底状は安定しており、喫水の深い大型艇の出入りにもまず不安のない感じでしたが、面白かったのが、明らかに魚群らしい感が頻繁に表示されること。

中には、水底からぐっと盛り上がったような塊状の感が出ることもあり、沈置物でもあるのかと驚かされましたが、深度表示はそのままなので「あぁ、魚群だったんだ‥‥」と胸をなでおろす一幕も。釣り好きの艇長たちには堪らないものがあるでしょう。
撮影地点のMapion地図

(30年12月9日撮影)

(『川崎の枝運河めぐり…8』につづく)

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タグ : 池上運河桜堀運河

川崎の枝運河めぐり…2

(『川崎の枝運河めぐり…1』のつづき)

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JFEの「超弩級舟屋」を北西側から改めて。本船が実際に入って、巨大なドンガラが一杯になっているところを見てみたいもの。手前側のコンクリート基礎上、支柱の取付座が橋の支承に似た形なのですね。

さて、本日何をさておいても見たかったもの、第一の目的地とした物件は、この「超弩級舟屋」のほぼ対岸にありました。

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新大扇橋(しんたいせんきょう)!
浅野運河の入口に架かる単葉式跳開橋! 構内の専用道とはいえ、可動状態にある実用の跳ね橋として貴重な存在です。有名な物件ですので、ご存知の方も多いでしょう。

錆色のプラント群をバックに初見した新大扇橋の第一印象は、跳開橋とは思えない、工業地帯らしい地味な鋼桁橋そのもの。中央の可動部分を支える基礎の大きさが、わずかに跳開橋らしさを感じさせはするものの、意識していなければ見過ごしてしまいそうなほどです。かえって背後に併設された三弦式の管路橋の方が、その高さゆえに目を奪われました。

228018.jpg少し北に移動して、浅野運河の軸線上から眺めたところ。写真右手、北側からドルフィン式の繋船施設が伸びており、橋の鑑賞にはいま一つです。管路橋の高さはいうまでもなく、船舶通航のクリアランスを確保するためでしょう。

なお本橋についての詳細は、「川崎区の宝物シート 新大扇橋」(PDF)にまとめられています。

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可動桁の先端から3分の1くらいの位置に、「緊急連絡先:水江保安センター」と書かれた電話番号が掲げられていました。先のPDFによれば、JFEスチ-ル東日本製鉄所の所有だそうですから、この番号も同社の一部署なのでしょう。

諸元を抜き書きすると、全長84m、昭和59年(記事によっては58年との記述もあり)竣工、橋名は両岸の地名、大島・扇町両地区から頭文字を取ったもの。先代は鉄道橋で、昭和14年に創架されたのですね。

気になったのは「全面改修」という書き方がされていたところ。「改修」という言葉からすると、旧橋の構造を一部流用したようなニュアンスにも読めますが、見たかぎりでは、古さを感じさせる部分はありませんでした。

228020.jpg橋に近づいてから、北詰をふと見ると、鉄道の踏切にあるものを流用したとおぼしき、遮断機と警報機が。跳開時、道路の交通を遮断するための設備ですね。

他地方の跳開橋はもとより果ては閘門まで、鉄道用の踏切設備が利用されているのはいくつか見たことがありますが、線路のないところにこれがにょっきり立っているのは、やはりミスマッチというか、ユーモラスな感じがします。
撮影地点のMapion地図

(30年12月9日撮影)

(『川崎の枝運河めぐり…3』につづく)

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タグ : 池上運河浅野運河新大扇橋

川崎の枝運河めぐり…1

(『川崎の運河群へ向かう…2』のつづき)

228011.jpg多摩運河を出て十字流を直進、千鳥運河を過ぎ次の十字流で左へ折れ塩浜運河を南下、京浜運河に出たら西へ向かい、次の十字流で池上運河へ入り‥‥といったコースで、まずは第一の目的地を目指して先を急ぎました。

写真は千鳥運河の狭窄部・千鳥橋付近を振り返ったところ。名物の派手なセメントサイロも健在です。

ちなみに川崎港の運河の名称と区間については、「かわさき区の宝物シート 川崎港・運河」(PDF)に掲載されています、ご参考まで。埋立地の造成にともなう、運河成立の歴史が一枚のシートによくまとめられています。

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重苦しい雲が途切れない中、未踏破区間の1本、池上運河に入りました。入口である南西角地に、ランドマーク然と威容を見せるのは、東洋埠頭川崎支店の橋型クレーン群。「MISATO K」なる巨大ばら積み船が接岸中。

野積場に盛り上げられた真っ黒な山は、石炭のようですね。もし荷役中だったら、粉塵で真っ黒になるかも‥‥と覚悟してきたのですが、クレーンは先端を跳ね上げており、操業はしていないようで胸をなでおろしました。

228013.jpg東洋埠頭の質量過剰ぶりに圧倒されながら、初めましての池上運河を一枚。

何分この天候とて、ご覧のとおり暗く沈んだ水路風景になってしまうのが残念ですが、「枝運河」と呼ぶのがはばかられるような、広大な幅員を有する本船運河。奥には小型の本船の姿も見えて、十全に機能を発揮していることがうかがえました。

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曇天がつくるモノトーンに少し辟易していたのでしょう、マストを警戒色に塗った、カラフルな曳船を目にして、ホッとさせられるものがありました。船名は左から「竜神丸」「第二ふじ丸」。

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右へ入江崎運河が伸びる十字流の北東角、本船がそのまますっぽり入る、「超弩級舟屋」の出現にテンション上昇。船が入れる巨大上屋というだけで、すごく惹かれますよね。

ここまで極端ではありませんが、東京も有明に似たような施設があるので、鉄鋼系の荷役設備かなと想像していたら、やはり、「JFEスチール東日本製鉄所京浜地区」の工場の一角みたい。接岸していた青い本船も、ファンネルマークがJFE。船名は「マドカミヤ」、定繋港は今治でした。
撮影地点のMapion地図

(30年12月9日撮影)

(『川崎の枝運河めぐり…2』につづく)

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タグ : 千鳥運河池上運河曳船