10月10日の江戸川閘門

(『江戸川閘門のディテール…4』のつづき)

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180057.jpg出渠後、10月10日に見た帰路の川景色を少し。上は本流からの江戸川水閘門遠望。この朝はあいにくの薄曇りで、少し肌寒いほどでしたが、朝靄にけぶる水門風景は風情があって、よいものでした。

4日と違って水位差があるので、例によって楽しみながら通ろうと、さっそく魚探の感をチェック。
入閘時4.8m、出閘時3.1mと、数字の上ではその差1.7mという結構な閘程でしたが、自分の感覚ではせいぜい1.2mといったところで、そんなに下がった気がしませんでした。魚探がおかしかったのか、それとも気泡や底質で、エコーが狂わされていたのかしら。



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いつもと違ったのは、排水が終わって水位の低下が止まったものの、すぐ開くはずの後扉室のゲートが、なかなか開かなかったこと。

その間ほんの数分でしたが、艇とともに閉じ込められた格好になったわけで、さすがに閘門好きとはいえ、ちょっと不安になったものです。係の方がお手洗いにでも立たれていたのかな? しかし、今考えてみると、シーンと静まり返った閘室の雰囲気は一種独特で、貴重な体験ではありました。

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藤代繁造船所の前を通ると、4日は河道上にもやっていた測量船「たんかい」が、船台が空いたようで上架していました。

二つのプロペラを外して、軸系の修理をしているようですね。カタマランの水線下の形も興味深く、いいタイミングで出会ったと嬉しくなりました。

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荒川を横断して砂町運河へ入ると、ちょうど独航艀「第二十三芝浦丸」が進入するところに出くわしました。過去にも何度か出会ったことがある(『4月2日の川景色…7』参照)、おなじみの船影です。

低い爆音を轟かせて、ゆっくりと重量感ある走りぶり。ウェーキにつけて排気の匂いを嗅ぎながら、新砂水門を通りました。
撮影地点のMapion地図

(27年10月10日撮影)

(この項おわり)

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江戸川閘門のディテール…4

(『江戸川閘門のディテール…3』のつづき)

180051.jpg逆光で写りがいま一つですが、前扉室ゲートのアップはあまり撮ったことがなかったので一枚。

この時点での光の加減か、日照時間によるのか、壁面の感じが後扉室のそれより歳相応に見える気が‥‥。しかし、小さい扉体は竣工時、もう一組の巻上機一式を備えていたのでしょうか。もし巻上機室の中に入れる機会があったら、確かめてみたいものです。

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日照時間といえば、これも触れておきたい物件。入口の壁面に一つづつ掲げられている、「徐航」の看板。「航」のアレンジされた書体が味わいがあって、よいものです。

上の写真は前扉室のものですが、これが後扉室になると‥‥。

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ご覧のとおりすっかり褪色して、そろそろ判読も難しくなりそうなくらいですね。「10月4日の新中川…1」で触れた今井水門の扉体同様、“日陰者”ほど命長らえる好例であります。

看板は天地計6か所でボルト留めされていますが、周りの壁面に着脱痕らしきものが見えるので、何度か交換されているのでしょう。最初から同様の書体だったのでしょうか。

180054.jpgというわけで、長い付き合いの閘門にもかかわらず、注意してみるとさまざまな発見があって、楽しめました。例によって行徳可動堰も眺めてゆこうと、分流点を右へ折れて本流を南東へ。

近づこうとすると、堰の右手水面に猛スピードで水煙を上げて走り回るナニカが見え、カン高い爆音も聞こえてきました。どうやら、ラジコンボートの競技会を催しているみたいですね。引き波でお邪魔をしてはいけないので、残念ですが堰見物はあきらめました。

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180度回頭、京葉道路・江戸川大橋を望んで。青空を映す川面はいかにも水量豊かで、爽やかなことこの上なし。

そういえば、江戸川本流もしばらく遡上していないなあ‥‥。優しく波打つ流路を眺めていたら、三郷中之島以北とはいわないまでも、金町浄水場の取水塔や、緑したたる国府台の風景を、久しぶりに訪ねてみたくなりました。
撮影地点のMapion地図

(27年10月4日撮影)

(『10月10日の江戸川閘門』につづく)

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江戸川閘門のディテール…3

(『江戸川閘門のディテール…2』のつづき)

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180047.jpg管理橋直下、側壁に見える繋留用のアイ。お椀型の金物を埋め込んだ中に、鉄環が備えられているタイプです。「北上運河閘門めぐり…7」の、石井閘門にも似た形式のものが見られますね。写真左角と右の角落しの戸溝に見られる、石材とあわせて、これまた時代を感じさせるディテールです。

下流側の後扉室側壁にもあるのですが、こちらは管理橋の分延長があり、ズラリと並んだアイの穴が壮観。これは通航船の繋留用というよりは、場所から見て、扉体メンテナンス時に供するためのものなのでしょうか。

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扉体を見上げて。後扉室のそれより、草の繁り方がだいぶ多め(笑)。こちらの特徴は、ご覧のとおり下流側に、鋼製の梁が設けられていること。

‥‥と、単なる梁だと長年思い込んでいたのですが、どうも、もう一枚の扉体だったようです! 前回触れた「土木建築工事画報」昭和14年6月号の「江戸川水門工事に就て」によれば、
扉は引揚式で、上扉室に高6.0米(重量30瓲)1枚及高1.5米(重量10瓲)1枚計2枚
扉運転の動力は、50馬力電動機2臺、10馬力1臺を装置
ええええ!?

いや、驚いたと同時に、恥ずかしくなりました。最も長い付き合いの閘門について、こんな肝心なことを知らなかったとは。江戸川閘門君に心からお詫びしたい。小さい扉体のワイヤーや滑車は、取り外されて久しいのか、それとも左右の戸溝の中にでも隠れているのでしょうか。

記事の諸元でもお分かりのように、高さ1.5m・重量10tがこの小さい扉体のスペック。2枚に分けた目的は、通常の通船は主扉体のみで運転し、恐らく本流が増水したときのみ、小さい扉体を積み増して計画高水位をクリアする、ということでしょう。
それがわかると、さて気になったのは、この扉体がいかなる動作をしていたかです。

180049.jpg小さい扉体は段の上に載っているので、大きい扉体の下に入るにせよ、上に積み増すにせよ、現在地から上流側へ前進する動作が必要になります。

航過しながら仰いだかぎりでは、どういったからくりなのかわかりませんでしたが、下流側に凸部がある扉体の構造から考えても、前進させて、大きい扉体に「乗るか、乗せるか」しなければ、水密は保てないでしょう。ちなみに大きい扉体の全閉時、天端は小さい扉体の現在地下端より、ずっと低い位置になります。

戸溝を改めて観察してみると、下流側に、ぷつりと途切れる鋼製のレールがあるのに気づきました。大きい扉体のローラーは、この向こうにあるレールと接しているようだし、もしかしたらこれが、小さい扉体のレールなのかもしれません。だとすれば、大きい扉体の上に乗るかたちだったことになります。

そうだとしても、大きい扉体の上には滑車とワイヤーがあり、扉体の厚みも上にもう一枚乗せるような、特別な厚みがあるようには見えず、疑問が残りますね。動作の仕方を含めて、これはぜひ、陸路観察して謎を解きたいものです! ‥‥いや、これすらも、よく探せばウェブ上に資料があるのかしら?

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前扉室をくぐった直後に振り返って。縦に帯状の継手を見せるスキンプレートの下端には、アングルで作られた樋が取り付けられ、通航船への水垂れを軽減するようになっているのがわかります。

いやしかし、江戸川閘門で通航初体験をしてから実に20年目にして、新たな事実に気づかされるとは! お恥ずかしいかぎりではありますが、何か妙な因縁も感じさせたりして、ますます惹かれてしまうのでした。

(27年10月4日撮影)

(『江戸川閘門のディテール…4』につづく)

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江戸川閘門のディテール…2

(『江戸川閘門のディテール…1』のつづき)

180041.jpg夜間設備の中でも目立つのが、堰柱側面に設けられた、この電柱取り付け型水銀灯。各堰柱に前後2本、計8本あります。街灯としてはLEDタイプに駆逐され、もはや懐かしいスタイルですよね。

夜設にはこの他、巻上機室上に16基、閘室左右にポール型の水銀灯が6基、巻上機室桁内に後述の照明が3基と多彩で、ここが通船の要衝であることを改めて実感できます。

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くぐりながら扉体を見上げて。扉体は一度更新されているので、リベットの見られない溶接組み。訂正・竣工当初より溶接組立、追記参照)中央の梁4列分に渡って、木製の平角材がボルト止めされています。船舶などの衝突に備えての、フェンダーといったところでしょうか。

構造の水平部分には泥が溜まるようで、上から2列目は湿気と日照の塩梅もよいのか、草が生えてしまっていますね。

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そして、開放時ならではの一枚を。扉体の断面というか、水密材の様子を記録しておきたかったのです。

ご覧のとおり、黒く分厚なゴム板をボルト止めしたものでした。改修後、バイパス装置での注排水を取りやめ、扉体を細めに開けて注排水を行うようになりましたが、そのあたりの対策も講じられているのでしょう。

180044.jpgくぐってから振り返って、巻上機室桁裏を見上げたところ。ここにも3つの照明があって、扉体を真上から照らす形になっています。4つの水銀灯で十分とも思うのですが、扉体の上下を確認するためでしょうか。

平成7年8月に、夜に撮った写真(過去ログ『平成7年8月・江戸川…2』参照)を確かめてみたら、前扉室のこれを点灯していることがわかりました。堰柱の水銀灯は点いていなかったので、ここを照らしておくことに、何か特別な意味があるのかもしれません。

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閘室周りは過去にたびたび触れているので、前扉室に視点を移してみましょう。管理橋の高欄に刻まれた英国旗のような模様、最近の橋ではまず見られない意匠で、時代を感じさせるパーツではあります。

以前から気になっているのは、水門の径間を渡る部分にも同様の装飾が施されているものの、水門のそれは向こうに抜けているのに、閘門の部分は凹凸の表現のみで抜けていない、いわばムクであるということ。これにも何か、意味があるように思えます。例えば通船の安全や、閘室の保全を考えて、小石など異物の落下を極力防ぐようにしたため、というのはいかがでしょうか。

【11月5日追記】
土木学会附属土木図書館で公開されている、「土木建築工事画報 第15巻6号(昭和14年6月発行)」の記事「江戸川水門工事就いて」(PDF)によれば、扉体は「電弧溶接扉」とあり、竣工当初より溶接組みであることがわかりました。お詫びして訂正します。

(27年10月4日撮影)

(『江戸川閘門のディテール…3』につづく)

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江戸川閘門のディテール…1

(『10月4日の旧江戸川…5』のつづき)

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流頭部近く、河原水門を一枚。最近は年2回くらいしか訪ねていないので、年間通して閉鎖されているのかはわかりませんが、閉じた状態でまみえることが多くなった気が‥‥。中の船溜も、もう利用する艇がいなくなったのでしょうか。

180037.jpg左に目を転じて江戸川水門を見やれば、本日はご覧のとおり、全径間解放状態。潮位が高く、水位差がほとんどないためです。

閘門通航のプロセスを楽しめないのは残念ですけれど、堰柱を透かして見える上流の風景、橋の上まで扉体を揚げた水門の表情もまた乙なもの。流速も緩く、穏やかな川面に姿を映す水門を、投錨して眺めたくなるような、のんびりした空気が漂っていました。

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無粋な潮位に、せっかくの楽しみを奪われた形といえばそうなのですが、今回は少し前向きに考えてみることにしました。

扉体からの水垂れを気にして、泡を喰ってゲートをくぐることもないわけですから、ここは一つゆっくり通りながら、閘門のディテールを味わってみようと思ったのです。

180039.jpgまずは後扉室ゲート、巻上機室から。ここだけ切り取ってみると、とても昭和18年竣工とは思えません。地肌も屋根は歳相応の感じがしますが、側面は後年塗り直したのでしょうか。

アルミサッシももちろん後の更新でしょう。飾り気の全くないフラットな外観によく似合い、違和感を感じさせませんよね。

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巻上機室を支える、桁下の真ん中に取り付けられた2色信号の灯器。ここから見るかぎりでは、点灯していないようです。ちょっと取り付け位置が高すぎ、灯器も小さく見づらいので、実用性には難がありますね。

エドルネさんのブログ「エドルネ日記」の記事、「昔の写真の撮影場所はこの辺!?その2~江戸川閘門の風景」に掲載されていた昔の写真を拝見すると、それらしきシルエットが同じ位置に見えるので、灯器は更新されたにせよ、当初からここに信号が備えられていたのかもしれません。
撮影地点のMapion地図

(27年10月4日撮影)

(『江戸川閘門のディテール…2』につづく)

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