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松重閘門ふたたび…5

(『松重閘門ふたたび…4』のつづき)

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前扉室、南側堰柱の先端部分を、ぐっとアップで見てみました。驚いたのが、エッジが極めてシャープであること。築85年ともなれば、表層の剥離による欠けくらいあって当たり前なのですが、見るかぎりその手のくたびれ加減が、まったく感じられない美しさです。

改修時、このあたりも徹底して補修されたのでしょうか。だとしたら素晴らしいですね。壁面の塗色も、12年前に訪ねたときよりずいぶん明るめになり、この点でも竣工当時の近代味(?)を感じさせ、好印象でした。

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扉体周りの観察によいポジションが取れないので、ここもやむを得ずズームで。角の部分に施された石張り、バイパスゲート周りは、船艇の接触から扉体を守るためか、一段張り出した形に造られているのが見て取れます。

ちなみに閘門のゲート寸法ですが、「鋼製ゲート百選」(技報堂出版)によると、径間9・1m、扉高9.09m(←原文は90.9mだが恐らく誤植)とあったものの、これが前扉室か、後扉室のものなのかは記述がありませんでした。施工会社は大同水道工業(株)だそう。

206023.jpg松重橋より南側、堀川の下流を望んだところ。山王橋は工事をしているのか、「この先航路幅員減少」の横断幕が掲げられています。12年前に訪ねたときも、左手に私設の桟橋があり、プレジャーが数隻もやわれていましたが、今回は一隻だけでした。

もやう艇や横断幕の存在が、生きている可航水路としての雰囲気を盛り上げてくれ、よいものです。これで松重閘門が稼働していたら、最高なのですが。

206024.jpgプレジャーといば、松重橋の西詰にもう一隻、小さなセンターコンソーラが。17ftくらいでしょうか、川走りにはもってこいのタイプですよね。

この艇の右、木の根元に隠れているモノ、船頭的には見逃せませんでした。コンクリートのビット! 閘門が竣工し、この船溜が整備された当時のものに違いありません。


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このままなら数年を経ずして、緑に覆われつくしてしまうでしょう。どこかけなげに感じられたその姿をカメラに収めて、松重閘門を後に次の目的地へ向かったのでした。

(29年5月3日撮影)

(『堀川口防潮水門…1』につづく)

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松重閘門ふたたび…4

(『松重閘門ふたたび…3』のつづき)

206016.jpg前扉室周りのディテールが眺められるところを探して、ウロウロするも厳重にフェンスで囲われており、網の目もカメラの鏡筒より小さく、どうにも具合の悪い状況。何とか写して、フェンスの針金をトリミングしたのがこの一枚です。

バイパスゲートの巻上機が、両岸とも草に埋もれずに観察することができました。


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こちらは仕方なく、フェンスに半ばよじ登って撮ったもの。ゲート周りをも少し近くで眺めてみたいのですが、これが精一杯です。

しかし、稼働していないとはいえ、水面に倒立像を映す姿は、現役時を髣髴させよいものです。新緑に見え隠れする堰柱も風情がありますね。

206018.jpg南側からはどうにも撮りあぐねて、北側から狙おうと、松重橋の上に来てみました。あっ、ここもグローブ灯だ。柱や灯器周りの造作もより凝った、なかなか瀟洒なものです。

ここなら南側よりはイケそうかな‥‥と、閘門を振り返り振り返り、橋の真ん中あたりまで出てみると‥‥。



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むう、いい角度ではあるのですが、電線が横切ってしまうのが玉にキズ。それでも午前中の陽射しを浴びて、うっそりと立ついい表情をものすることができました。

尖塔のディテールのきめ細かさ、基部の流れるようなラインの処理や石張装飾‥‥。こうして橋上から眺めてみると、多くの目に見られることを意識し、「街場の閘門」として造られたことを改めて感じました。高い建物がなく、4本の堰柱が抜きんでていた時代、その存在感は想像以上のものがあったでしょう。こうして保存・顕彰されているのも、長きにわたり人々の目に鮮烈な印象を与え続けたからこそ、といった思いを強くします。

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ズームでたぐらずにはおれない、巻上機架台。こちらの方が浅い角度でねらえたので、伝動軸や減速装置がよく見えます。信号の灯器、こちらは下向きに角度がつけてあるのですね。前扉室の方が、堰柱の高さがあるからでしょう。
撮影地点のMapion地図

(29年5月3日撮影)

(『松重閘門ふたたび…5』につづく)

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松重閘門ふたたび…3

(『松重閘門ふたたび…2』のつづき)

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206012.jpg閘室を挟んだ公園敷地を結ぶ人道橋から、南北橋の下をくぐる閘室を見たところ。埋め立てられた閘室にはフェンスが張られ、橋の下をくぐって前扉室との行き来はできないようになっています。右手、法面には階段が残されていますね。

「中川運河」と、水路名を掲げた南北橋の親柱。先代橋のものを流用したのでしょうか、石材張りの親柱と、優雅な感じのするグローブ灯が古風で佳し。そういえば、道々に見かけた名古屋の橋って、このグローブ灯を親柱に掲げている例が多いように思えました。中にはブドウのように、鈴なりに球を生やしたものもあって、「名古屋=グローブ灯好き」の印象を強く持ったのでした。

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市道江川線と、その上を通る高架道路、名古屋高速都心環状線の向こうに見る前扉室。交通量の多いいわば目抜き通りですが、すぐ近くに南北橋交差点の横断歩道があるので、行き来にはさほど難儀しません。

206014.jpg歩道には、「中川まちなか博物館」と銘打ったきれいな説明板があり、松重閘門への理解を助けています。ひとわたり読み下して、掲げられている写真にオッ、と惹かれるものが。

いや、上の俯瞰写真も、高い建物がなかった時代、尖塔状の堰柱が、いかに強烈な存在感を放っていたかをしのばせてよいのですが、吸い寄せられたのは下。久しぶりに和船趣味のツボを刺激する一枚に、鼻先をつけんばかりにして見入ってしまいました。通航中の船、もしかして「尾張ダンベエ」じゃないか?

尾張ダンベエとは、江戸時代、尾張・紀州ダンベエとも呼ばれたご当地独特の船型で、平底の船体と積載効率を買われ、材木積船として知られたのだそう。近代以降は曳船に曳かれる艀として、形を変えながらも戦後まで活躍したのだとか。つまり、純和船直系のバージというわけです。

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橋の上から、前扉室の扉体(?)と、堀川の水面を望んで。

この、キャンバーがついているの、単に気を利かせたとか、元の形をしのべるようにとか、そういうレベルじゃないような気がするんですがねえ。すっかり、「扉体はそのまま、コンクリート漬け」説に傾いてしまいましたが、本当のところはどうなのでしょう。ご存知の方、ぜひご教示ください。
撮影地点のMapion地図

(29年5月3日撮影)

(『松重閘門ふたたび…4』につづく)

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松重閘門ふたたび…2

(『松重閘門ふたたび…1』のつづき)

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まずは、堰柱間に渡された巻上機室‥‥いや、巻上機架台とでも申しましょうか。中央に据えられたモーターから、減速機を介して左右に伝動軸を伸ばし、スプロケットを回す仕組みが見てとれます。仕組みは三栖閘門のそれと略同のようですね。トラスはあちらが上路式、こちらが下路式(といっていいのか?)の違いはありますが。それにしても、きれいに塗装されているなあ。

トラスの構造はもとより、桁下に取り付けられた信号の灯器、ゲートのチェーンと、巻上機室をケーシングした昨今の水門には見られない、ディテール豊富なチャームポイントといってもよい部分。左上に見える点検用扉、ドアノブもしっかり真鍮色に輝いて、復元の際に塗装と手入れが、細部まで入念に施されたことがわかり、嬉しくなります。

206007.jpg12年前の訪問時は、取付痕が見られたのみだったランプケース、ご覧のとおり堰柱の重厚な意匠にぴったりの、立派なものが取り付けられていました。

当時のパーツ図面が残っていたのでしょうか。銅色(本当に銅か、塗装で表現しているのかはわかりません)に輝く八角断面の照明は、これ単体のみでも存在感十分で、近寄ったらまず目を奪われるでしょう。


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206009.jpg東側、松重閘門公園から見た後扉室ゲート。どこか古風な尖塔タイプの堰柱に、メカニカルなむき出しの巻上機架台、実にメリハリ(?)のある魅力にあふれています。閘室は埋め立てられていますが、コンクリート法面の護岸はそのまま残され、往時をしのばせてくれます。埋め立てた表面には雑草が茂っていますが、ときどき草刈りでもされているのか、背丈がそろっているので荒廃感はありません。花壇もよく整備され、ツツジがきれいに咲いていました。

堰柱内側、戸当り部分のアップ。三栖閘門、新井郷川閘門と同型式のストーニーゲートで、梯子状のローラーが扉体とは別に吊り下げられ、上下していました。戸溝近くに見えるワイヤーは、ローラーのものでしょうか。

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少し引いて、扉体を眺めたところ。前回来たときは、扉体は取り外されてコンクリートに代替されたと思っていたのですが、チェーンのリンクの埋まり方や、扉体のキャンバー(丸み)をそのままなぞっていることなどから、扉体の周りに型枠を作り、コンクリートを流し込んだと考えた方がよさそうです。何やら、老朽化した鋼アーチ橋にコンクリートを着せて、鉄骨コンクリート橋に変身させた例を思い出しました。

ゲート形式や外観のデザインなど、兄弟のようによく似ている三栖閘門と違い、スキンプレートを張ったキャンバー面は、高水位である堀川側を向けてあることがわかります。右手前、草に埋まっていますが、排水用バイパスゲートの巻上機らしいケーシングも見えますね。

(29年5月3日撮影)

(『松重閘門ふたたび…3』につづく)

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タグ : 松重閘門中川運河東支線閘門

松重閘門ふたたび…1

5月3日朝、私は名古屋におりました。かねてから、閘門群生地帯といってもいい過ぎでない、ご当地を訪ねたいと願って幾星霜。このたびようやく叶って、黄金週間の混雑もいとわず、閘門めぐりと気負いこんだのでありました。

206001.jpg鼻息も荒くまず降り立ったのは、名鉄の山王駅もほど近い、中川区は西日置橋。

西側には新幹線、東海道本線、中央本線、名鉄名古屋本線と、メインライン中のメインラインが並行しており、ひっきりなしに通る電車に目を奪われます。名鉄電車の赤い車体が、朝日に映えて目に沁みるよう。この反対、東側にあるのが最初の目的地です。


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松重閘門! 眼下にしているこの水路、中川運河東支線(支川、ではないのですね)とともに昭和7年竣工。東にある堀川との舟航連絡に活躍、昭和43年に廃止された後、現地で静態保存されているもの。

過去ログ「名古屋の閘門…1」以来、実に12年ぶり。前回は出張の合間、わずかな時間で立ち寄っただけだったので、今回はディテールまで、もう少しじっくり拝見できそう。右手には材木屋さんが残り、運河として賑わっていたころの面影をしのばせます。

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ズームでたぐり寄せて‥‥とはいっても、今立っている西日置橋と閘門は約400mの距離があり、もろに逆光で、まぶしさにカメラのモニターもよく見えないありさま。正面から撮りたくて橋上に立ったものの、時間帯的に無理があったようです。

206004.jpgゲートの手前にある橋のようなものは、松重ポンプ所の塵芥よけ格子の点検通路。右の写真正面が松重ポンプ所で、閘門より少し遅れ、昭和12年の運転開始だそう。こちらはまだ稼働しているようですね。

竣工年などのデータについては、名古屋市サイト中川運河」が非常によくまとまっています。年表や設備の変遷はもとより、各支派川の名称まで掲載されていて、一読の価値あり! 今回も大いに参考にさせていただきました。

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近づいて、南岸から仰ぐ後扉室。前回はなかった、堰柱側面のランプケースが追加され、外壁の塗装もずいぶんさっぱりした感じに。12年を経たのですから当然ともいえますが、復元・改修工事がなされたようですね。

ちなみに中川運河は一種の水位低下化河川で、水位はN.P.+0.2~0.4mと、朔望平均干潮面より若干高いくらいに維持され、低地である周辺地域の排水にも役だっています。N.P.すなわち名古屋港基準面は、なじみのあるT.P.より1.412m低く、朔望平均満潮面はN.P.+2.6mとのこと(参考:『中川運河の概要』および『名古屋港の潮位』)。
撮影地点のMapion地図

(29年5月3日撮影)

(『松重閘門ふたたび…2』につづく)

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