船頭平閘門を訪ねて…11
(『船頭平閘門を訪ねて…10』のつづき)
●管理棟の裏手は「デ・レーケ像広場」。その名のとおり木曽三川のみならず、我が国の治水に功績のあったオランダ人お雇い工師、ヨハネス・デ・レーケを顕彰した銅像があり、芝生の広場と東屋が配されています。
観光船でお弁当を予約したお客さんは、すでに東屋でお食事中。こちらは別の意味でガツガツと、木曽川文庫へ向かうのでありました。

●公園の小径をたどって、木曽川文庫へ。閘門の雰囲気に合わせたような瀟洒な建物で、玄関の受付横には、旧扉体から取り外した円弧形ラックの開閉機構も展示され、実際にゴリゴリと動かすこともできます(動かすのに夢中で、写真を撮り忘れてしまった!)。
ガイドさんのツアーに遅れてお邪魔したにもかかわらず、係の方が2階の書庫兼展示室に案内してくださり、お話を伺うことができました。ありがとうございました!
●2階は多くの資料やパネルで、木曽三川改修や閘門について解説されており、お話を伺いながら興味深く拝見。扉体の注排水用ゲート、パネルによると「下部に小窓を設け、側壁内の給水溝に故障が出た場合に備える」とあり、予備装置的存在であったことが判明。
さて、この木曽川文庫、9年前に過去ログ「閘門の研究団体が発足していた!」でも紹介した、「日本の閘門を記録する会」の事務局的存在であり、その調査結果を反映して刊行された書籍、「運河と閘門 ―水の道を支えたテクノロジー―」の元となった資料が、すべて所蔵されているところでもあります。
ファイルに整理された膨大な資料の一部を拝見しながら、会員の方々のご苦労話を伺うなど、短いながら閘門バカ冥利の時間を過ごすことができて、幸せでありました!

●一階受付のある事務室内をふとのぞくと、壁面やコンソールにいくつものモニターがあって、閘門の映像が写っています。よく見れば、コンソールには操作盤や放送機器らしきものが‥‥閘門の遠隔操作室だ!
先ほど「葛木丸」で通航した際には、扉室の上で機側操作していたので、遠隔操作できるとは意外でした。写真はもちろん許可を得て、解説をいただきながら撮ったものです。

●閘門操作盤の木曽川方をアップで(コーフンのあまりピンボケ)。扉体の注排水用ゲート、こちらでは「子扉」と呼ばれていることが判明。動かすのは手動ながら、状態はパイロットランプでモニターできるようになっていますね。
ちなみに年1回程度、扉体の開閉や注排水まで、すべて手動で操作する非常訓練を行っているそう。また、先ほど見た旧扉体の解説では、年間通航量は500隻とのことでしたが、係の方のお話によると、1000隻ほどはあるだろうとのこと。
●色々と興味深いお話を伺った中で、一つ気になった話題がありました。デ・レイケのよしみもあり、オランダの方が訪れることもたびたびあるそうですが、決まって「保存するなら、なぜ動力化してしまったのか? 元どおり人力操作に復元すべきではないか」との指摘があったそうです。
竣工時の姿やメカニズムを保って、後世に伝えることは理想ではありますし、技術の伝承者であるオランダ人としては、もっともな感想ではあります。操作法も含めての「保存」のみが目的であるなら、選択肢はそれしかないともいえましょう。
●乗り物にしろ建物にしろ、保存する際にどこまでこだわっていくかは、先立つもののこともあり、非常に難しいところではありますね。個人的には、閘門は気軽に通航できてこそ、活用されてこそ、という想いがあるので、船頭平閘門を改修し、稼働状態を維持している方々の姿勢にはさほど違和感を覚えないどころか、むしろ頭が下がるほどなのですが、これは「保存」の姿勢をうんぬんするのと、別のベクトルになってしまい、同列には論じられません。
オランダの方の考えにできる限り従うなら、別途新閘門を建造して実用はそちらに譲り、旧閘門は竣工時の姿に復して、イベント的な通航のみに供する、というのがよいのでしょうか‥‥。
【撮影地点のMapion地図】
(29年11月19日撮影)
(『閘門ニャンコ』につづく)

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観光船でお弁当を予約したお客さんは、すでに東屋でお食事中。こちらは別の意味でガツガツと、木曽川文庫へ向かうのでありました。

●公園の小径をたどって、木曽川文庫へ。閘門の雰囲気に合わせたような瀟洒な建物で、玄関の受付横には、旧扉体から取り外した円弧形ラックの開閉機構も展示され、実際にゴリゴリと動かすこともできます(動かすのに夢中で、写真を撮り忘れてしまった!)。
ガイドさんのツアーに遅れてお邪魔したにもかかわらず、係の方が2階の書庫兼展示室に案内してくださり、お話を伺うことができました。ありがとうございました!

さて、この木曽川文庫、9年前に過去ログ「閘門の研究団体が発足していた!」でも紹介した、「日本の閘門を記録する会」の事務局的存在であり、その調査結果を反映して刊行された書籍、「運河と閘門 ―水の道を支えたテクノロジー―」の元となった資料が、すべて所蔵されているところでもあります。
ファイルに整理された膨大な資料の一部を拝見しながら、会員の方々のご苦労話を伺うなど、短いながら閘門バカ冥利の時間を過ごすことができて、幸せでありました!

●一階受付のある事務室内をふとのぞくと、壁面やコンソールにいくつものモニターがあって、閘門の映像が写っています。よく見れば、コンソールには操作盤や放送機器らしきものが‥‥閘門の遠隔操作室だ!
先ほど「葛木丸」で通航した際には、扉室の上で機側操作していたので、遠隔操作できるとは意外でした。写真はもちろん許可を得て、解説をいただきながら撮ったものです。

●閘門操作盤の木曽川方をアップで(コーフンのあまりピンボケ)。扉体の注排水用ゲート、こちらでは「子扉」と呼ばれていることが判明。動かすのは手動ながら、状態はパイロットランプでモニターできるようになっていますね。
ちなみに年1回程度、扉体の開閉や注排水まで、すべて手動で操作する非常訓練を行っているそう。また、先ほど見た旧扉体の解説では、年間通航量は500隻とのことでしたが、係の方のお話によると、1000隻ほどはあるだろうとのこと。
●色々と興味深いお話を伺った中で、一つ気になった話題がありました。デ・レイケのよしみもあり、オランダの方が訪れることもたびたびあるそうですが、決まって「保存するなら、なぜ動力化してしまったのか? 元どおり人力操作に復元すべきではないか」との指摘があったそうです。
竣工時の姿やメカニズムを保って、後世に伝えることは理想ではありますし、技術の伝承者であるオランダ人としては、もっともな感想ではあります。操作法も含めての「保存」のみが目的であるなら、選択肢はそれしかないともいえましょう。
●乗り物にしろ建物にしろ、保存する際にどこまでこだわっていくかは、先立つもののこともあり、非常に難しいところではありますね。個人的には、閘門は気軽に通航できてこそ、活用されてこそ、という想いがあるので、船頭平閘門を改修し、稼働状態を維持している方々の姿勢にはさほど違和感を覚えないどころか、むしろ頭が下がるほどなのですが、これは「保存」の姿勢をうんぬんするのと、別のベクトルになってしまい、同列には論じられません。
オランダの方の考えにできる限り従うなら、別途新閘門を建造して実用はそちらに譲り、旧閘門は竣工時の姿に復して、イベント的な通航のみに供する、というのがよいのでしょうか‥‥。
【撮影地点のMapion地図】
(29年11月19日撮影)
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