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木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…6

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…5』のつづき)

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真正面から、堰柱を含めた舟筏路を思い切りたぐってみました。橋の高欄にカメラを固定できたことで、この距離からでもブレずに撮ることができ、ディテールがそこそこ観察できて嬉しいものが。
レールは琵琶湖疏水のインクラインのように、サミットから下がって水面へ向かっておらず、スロープの角度のまま空中で途切れ、台車を水面上に留めています。台車上には並べた盤木のようなものが見られ、船艇を直接載せるつくりになっているようです。

かつてゲートがあった径間は、周囲よりも新しい色のコンクリートで閉塞されています。原木の一本流しや筏の場合、シュート式の舟通し‥‥つまり、単純に堰の一部を切って急流を下らせる、という方法もありましたから、ここもゲートを開いてレール間の凹部に流れをつくり、流下させたこともあったに違いない、と妄想。

224027.jpg美濃川発電所の東側にやってきました。柵越しですが、舟筏路の上流部分がよく見えます。右手、柵で囲われた管理橋のような構造物は、台車を牽引する巻上機架台でしょうか。

台車の載っているレールの終端部分、コンクリートの色が新しいのが気になります。かつては疏水のインクラインみたいに、サミットから泛水していたのかもと想像していたこともあり、ズームでも少し拡大して観察。

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う~ん、ここから見たかぎりでは、変遷がいま一つはっきりしないなあ。左端水面近く、ゴミが溜まってよく見えませんが、水中へ入る角度のついたスロープがあることから、アレが初代のレール架台で、泛水する造りになっていたのでは、と妄想。

わずかなよすがは、左端近くの2本の柱の中腹、滑車の軸受跡らしき金具が残っていること。泛水していたころは、ここに滑車がついていて、台車が水没してもワイヤーを導く仕組みになっていたのかもと。あと、コンクリートの色からすると、泛水せず水平に台車を留めていた時期があったことも想像されますよね。いずれにせよ、根拠のない妄想ではあります。

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さらに拡大。レール終端に溶接された車止め、滑車軸受のある2本の柱とレール架台の、コンクリートを継ぎ足した生地の変化、チャンネル材を背中合わせにして作られた台車のフレームと、ディテールはつぶさに見てとれたものの、やはり距離のせいで、すべての謎が氷解したわけではありません。

素人目ながら、ワイヤーの細いのも驚きでした。この細さでは、大した重さのものは運べないだろうと感じたものです。舟筏路の「舟」、文字どおり小舟を対象としたものなのだなあ、と実感。

224030.jpgほぼ真横から、クレーンのフレームを見て。台車が泛水しない以上、載せてきた舟を水に下ろす設備が、別途必要なのはいうまでもなく、何と手間のかかることをするものだと、生意気にも呆れてみたり。

増水時、激流で破壊されないよう、台車を守るために徐々に終端を高いところへ上げるようになったとか、きっと理由があるに違いないと考えたものでした。

犬山頭首工のそれとは異なり、クレーン自身が水平移動する必要はほとんどないので、レールも位置調整程度の短さ。台車同様、吊り上げ荷重はいかにも小さそう。台車上の枠ごと吊るのか、何か別の方法があるのかはわかりませんでした。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『小山観音…1』につづく)

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タグ : 今渡ダム木曽川舟筏路

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…5

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…4』のつづき)

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木曽川右岸を約15㎞遡り、今回のお話の発端となった今渡ダムに到着。昭和14年竣工、遠く山々の稜線を背に、20径間の黒いゲートが並んださまは壮観の一語です。

手前2径間から放水される水音を聞きながら、下流側に長く突き出た舟筏路のスロープを、ようやく訪ねられた思いもあってしみじみ見下ろしました。思っていたよりずっと勾配が急な印象で、もし自分が艇とともに上架されたら、足がすくんでしまうだろうな、と想像。

ダムの愛好者はよくお分かりかと思いますが、市街地に囲まれた発電施設だけに警戒は厳重で、およそ眺望の得られるところには、高い柵がめぐらされています。Googleストリートビューでの事前偵察でも、近くで狙える地点はほとんどないように思えました。

そんなわけで、ダムの周りをずいぶんウロウロさせられたため、今回の写真は時系列ではありません。本来の順番は‥‥美濃川合発電所近く下流側→同じく上流側→新太田橋・南詰近く→今渡発電所近く下流側(上の写真)→同じく上流側(全く撮れず)‥‥であります。

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1枚目の写真と同じ地点から、舟筏路のスロープを思い切りズームでたぐって。レールは継手にフィッシュプレートが見えることから、鉄道と同様の断面を持った軌条であることがうかがえます。

外側にはそれぞれ、台車を牽引してきたワイヤーを案内する滑車の列も見えますね。向こうのは白く塗料が残り、手前のものはむらなく錆びていますが、これは放水している径間が手前に多いことを示しているのでしょう。

224023.jpgレールが水面に潜るあたりから、突堤状の構造が長く伸びています。向こう側にも同様のものがあるのですが、水量が多いせいで水没していました。

通航船艇が待機するような、小岸壁の機能があるのかなと想像していたのですが、アイやビットなど繋船設備が一切見られなかったので、単にゲートの放流から舟筏路を守るための、導流堤の一種とみてよいようです。

224024.jpg新太田橋の上流側歩道から。だいぶ距離がありますが、舟筏路を真正面から狙えるのはここくらいです。

ダムは河道中心に対して、わずかに南寄りの角度がついていたため、南詰近くからカメラを構えました。豪雨が続いた影響もあってか、2径間から盛んに放水しているのが見えました。


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舟筏路が正面に来るところを捜し、さて、と狙いをつけていると、ゴォッと音がして、太多線の列車が通過。ダムの堰柱を透かして、2輌編成の気動車が渡るシーンをものにできました。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…6』につづく)

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タグ : 今渡ダム木曽川舟筏路

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…4

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…3』のつづき)

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管理橋からズームでクレーン周りをたぐってみました。I型鋼の2本のレールと、ライン大橋の高欄越しに見たゴンドラです。

ゴンドラに吊り下げられた枠は、井の字に組まれたシンプルなもので、とてもこの上に舟艇を載せるような構造には見えません。先ほど想像したとおり、やはり船台か何かを吊り下げるためのものなのでしょう。

224017.jpg銘板でもあればと堰柱の左右をウロウロしたものの、特に新味のある発見はなく、手すりに一本足で留まって、少し羽毛をゆるめ気味にしてくつろぐ、鷺さんの姿に惹かれたくらい。

左下、通路の床越しにピョコッ、と頭だけ見える鷺がいたのも笑いを誘いました。水の落し口で魚道も併設されているだけに、餌にはこと欠かないのでしょうね。

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ライン大橋から下流側の真下をのぞき込んでみたいのですが、すでに触れたとおり2車線ギリギリの幅しかなく、徒歩で近づくことはできません。苦肉の策として、後続車のいないときにクルマで橋へ進入、一時停止して、同乗者に撮ってもらうことに。

柵越しになりましたが、何とかディテールはわかりました。ゲートの下流側は嵩上げされており、舟艇が横付け待機できるよう、舟入様の細長い凹部が造られていました。左手に後付けされたと思しき階段も見えることから、船の吊り上げ移動は、下船してから行うようにしているのかもしれません。

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同じ位置から、目線を上げてもう一枚。左手、通路脇の堰柱フラット上には監視カメラらしきもの、右手のレール近くには、防護枠をつけた緑灯も見えます。平成18年の改修時に設備したということは、すでに12年経つわけですが、手入れはなされているようで、痛んだ箇所は見られません。結構な頻度で運転されているのでしょうか。

すでに紹介した「犬山頭首工の概要」の諸元表にある舟通しの記述は、「幅員:6.0メートル、長さ:20.0メートル、型式:クレーン式」と極めて簡単で、このタイプを選ぶに至った経緯や、メーカーなどには触れられていません。閘門から、あまり他に例の少ないこのタイプがなぜ選択されたのか、機会があったら知りたいものです。

224020.jpg木曽川を渡り、「ライン大橋北」交差点近くから望んだ舟通し。マリーナや漁港には上架設備として、この手のクレーンを備えたところは普通にありますが、堰の舟航施設でお目にかかれるとは!

何分まだ不勉強なので謎ばかりですが、閘門でもインクラインでもない、いわば「舟航施設第三のタイプ」の存在をを知ることができただけでも、大きな収穫だったと喜んだものでした。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…5』につづく)

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タグ : 舟筏路木曽川犬山頭首工

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…3

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…2』のつづき)

224011.jpg信号を渡って、上流側にある人道橋から舟通しをのぞいてみましょう。幅員には余裕があって、自転車同士ですれ違っても問題なさそう。堰柱の並ぶ少し手前あたりが、中高に盛り上がっていますね。

橋詰の扉にあった注意書き(下写真)を読むと、この橋は犬山頭首工管理橋といって、あらら、自転車は下車通行、原付の通行は禁止と規制が厳しいようです。なるほど、堰の管理施設を便宜的に開放している建前、公道の橋のようにはいかないとうことでしょう。

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224013.jpg管理橋をずんずん小走りに歩いて、脇目も振らず舟通しを目指します。いや、脇目も振らずとはいいながら、その実犬山城や美しい川面をチラ見してはいたのですが、ゆっくり眺める時間はないのが残念なところ。

堰柱が立ち並ぶところまで来ると、今度は巻上機室の屋根に留まったハトさんに脇目。どこか獰猛(?)というかマッチョな雰囲気で、子供のころ秋葉原のやっちゃ場で見かけたハトを思い出しました。

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ちょっと白飛びしてしまいましたが、舟通しの径間、管理橋から下流側を見たところ。手前から両側に堰柱、ライン大橋、橋の桁手前まで伸びたクレーンのレール、舟通し下流側ゲートの2本の堰柱に渡された巻上機室と、位置関係がわかります。

下をのぞき込んでみると(下写真)‥‥下流側ゲートの手前、両岸にはフェンダーが並べられて、繋留のためのアイも一つづつ見られ、あそこに船台なりを沈めてから舟艇を進入させ、クレーンで吊り上げるのでしょう。パッと見閘室に似ていますね。

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ん? 閘室?‥‥そういえば、上流側の堰柱には戸溝があるのに、扉体は見られないなあ。下流側のゲート見える扉体は、増水時のみ開放する放水用だと思っていたけれど、これはもしかして、以前は前後一対のゲートがある、閘門型の舟通しだったのかしら? だとしたら、何でわざわざあまり例のない、クレーン式にしたんだろう? 観察できる視点は限られていたものの、こういったことは訪ねてみてこそわかるもので、興味がそそられますね。

帰宅後に改めて検索してみたら、「犬山頭首工写真集」(東海農政局)がヒット。おおおお、そのものズバリの写真があるじゃないですか! やはり、かつては閘門で、「河床低下のため水位が確保できず」、平成18年度竣工の改修時に、吊り込み式クレーンに改められたとあります。鵜飼舟らしい和船の通航時が、記録されていたのも嬉しかったです。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…4』につづく)

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タグ : 舟筏路木曽川犬山頭首工

木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…2

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…1』のつづき)

224006.jpg頭首工を一枚撮ってからふと川面に目を落とすと、素朴な造りの和船が3隻。ご当地名物の鵜飼舟ですね。

舟筏路‥‥舟通しが設けられているということは、この手の地場の船たちが、頭首工の下流へ下航する用が結構あるということなのでしょうか。もっともこのクラスなら、「長瀞渓流下りふたたび…5」で見たように、大型トラックで積んでいった方が早いような気もしますが‥‥。

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脱線しますが、出発前、朝の散歩時に撮った写真から。

船といえば頭首工の上流、犬山橋の下にはご覧のような屋形船が数隻もやわれ、舟遊びの盛んなことが見て取れたのですが、この大きさならトレーラーで陸送するより、自航して舟通しを利用した方が、効率的な気がしますね。‥‥とまあ、舟通しの存在意義をあれこれ妄想したものの、実物を目にしないことには何ともいえません。

224008.jpg話を戻して、ライン大橋南詰に来ました。下流側の橋詰スペースには、犬山頭首工の就航を記念した立派な石碑が。碑文は「蘇水濃尾潤」、時の首相・佐藤栄作の揮毫によるもの。

ライン大橋は車道のみの2車線ギリギリで、歩いて舟通しまで近づけそうもありません。やむを得ず、橋詰からズームでたぐって、構造を検分してみることに。

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愛しの舟通しとの初邂逅です。手前下に見える、コンクリートで床固した高水敷から狙えればベストだったのですが、もちろん施設内とて立入禁止なのでした。

ほぼ道路と同じ高さに架設された、2本のI型鋼レールが橋から下流側に向かって伸びており、その先端にはゴンドラ様のものがぶら下がっています。いわば天井クレーンのような構造物に見えました。

右側の側壁が高められていることから、あそこに入った舟艇をクレーンでいわば上架し、下流側へ移動した後、吊り下げて泛水させる仕組みのようです。ゴンドラをアップにして観察してみましょう。

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レール上、パーツの一部かと思っていたら、羽根を半開きにして日光浴していた鷺君だったのはご愛嬌(笑)。

ゴンドラの下には、4本のワイヤーで枠が吊り下げられているのが見えました。ここに舟艇を載せて搬送するには、いかにも華奢に過ぎる感じですし、枠の下四隅にスリングポイントらしいものが見られることから、これは単なるフレームだろうと想像。さらにこの下へ船台か、船底を回すレザーベルトを介して吊り下げるのでしょう。
撮影地点のMapion地図

(30年9月2日撮影)

(『木曽川・飛騨川舟筏路めぐり…3』につづく)

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タグ : 舟筏路木曽川犬山頭首工