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木戸堰…2

(『木戸堰…1』のつづき)

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上流側にで眺めようと、いったん堤防道へ上がってみると、ゲートの管理通路に至る扉の内側に、銘板を発見。もっとも、笹がみっちり生い茂っていて、角度を変えながらのぞき込まないと判読が難しいほどでした。以下に書き下してみますね。

       木  戸  堰
        1988年3月
発注者 千葉県八日市場土木事務所
管理者 栗山川下流沿岸土地改良区
型 式 アルミニウム合金製スライドゲート
門 数 14門.       長さ 37.22m
施工 機械設備 住友軽金属工業株式会社
    躯   体 株式会社 畔蒜工務店


まあ、すでにタイトルにしていたので今さらですが、木戸堰という名前であることがここで判明。これはもちろん、ゲート設備更新時の銘板ですから、レンガの堰柱が創設された時代の、いわば旧銘板も探したのですが、見つかりませんでした。

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上流側に出ました。光線の塩梅もよろしく、白雲が浮かぶ青空を写した川面も明るくて、のどかかつ静謐な、外房の河川らしい水門風景。

名前も分かったことだし、何かアップされている資料はないかしらと検索したところ、PDFの1ページがヒット。「木戸堰の改修について」(横芝光町HP)という記事が掲載されています。体裁や内容から、旧横芝町の広報誌か何かでしょうか。

この記事によると、木戸堰は「地下水止めと潮害防止のため」に造られ、昭和3年の竣工だそう。レンガの堰柱は、御年95歳ということになりますね。

昭和60年、台風増水時にゲート運転におもむいた土地改良区役員が犠牲となったことから、電動化の計画が持ち上がり、昭和61~62年の二か年計画で改修が進められているとありました。銘板にあった竣工年は、その翌年ということになります。

293038.jpg対岸は横堤というのもはばかられるような、草ぼうぼうの高水敷を掘り残して狭窄部をつくったような状態ですが、それでもコンクリートの護岸が備えられ、葦原と流路を分けています。

護岸上、木製の扉のようなものが打ち捨てられているのが目に入り、すわ、旧扉体か? と色めきだったものの、よくよく観察すると、造りから考えてその可能性は薄そうとクールダウン。ぬか喜びに終わりました。


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傾いてきた陽に染まって、ほんのり赤味を帯びた姿もまた佳きもの。遠目にはわりときれいに見えた扉体周りも、泥で汚れ錆も生じていて、年齢相応というか、ちゃんと閉鎖され活用されているのだなあと実感。

293040.jpgレンガの堰柱をよくよく眺めていると、石材と思っていた部分、骨材のブツブツがあるのに気づきました。これ、石材じゃなく、コンクリートだ‥‥。

欠けたりひび割れたりしていますが、小石を骨材とした昔風のコンクリートです。技術的な挑戦か、コストダウンのためかはわかりませんが、一見古風に見えながら実は、といったポジティブな肩透かしを食らったようで、これまた興味深く思えたことではありました。
撮影地点のMapion地図

(令和5年2月12日撮影)

(この項おわり)

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タグ : 木戸堰栗山川

木戸堰…1

(『利根川河口堰閘門を訪ねて…6』のつづき)

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1月のことです。例によって魅力的な閘門・水門はないかしらと、Googleマップで千葉県の太平洋側を徘徊していましたら、山武郡横芝光町の栗山川(こちら参照)に、こんな水門があるのに気づかされ、色めき立ちました。

実に14径間! 小さなスライドゲートがズラリと並んだその姿に、まず息をのみました。農業用の取水堰でしょうか、左手から高水敷に横堤(?)を伸ばしてなお、これだけの径間があるということは、古いものでしょう。巻上機は手動かな?

あれこれ想像して、周囲の鄙びた川景色とともに、すっかり魅せられてしまいました。そう遠方でもないし、一度訪ねてみようと考えていた矢先に今回のお出かけが持ち上がったので、利根川河口堰の次なる目標として、足を延ばしてみようということになった次第です。

293032.jpg同じ千葉県東部とはいえ、道のりは40㎞ほどあります。道々で食事をしたり、休憩を兼ね散策したりと、のんびり向かうことにしました。

写真は途中で立ち寄った九十九里浜。この日は結構な強風で、飛砂がバチバチ顔に当たるかしらと身構えていたのですが、地面は適度な湿り気を帯び固く締まっていて、逆巻く怒涛を眺めることができました。


293033.jpg浜沿いの道から県道122号線に出て、栗山川の木戸大橋を渡り、西岸でクルマを降りました。狭い農道をたどって、水門の下流側の河畔に出てみると‥‥おお、見えた!

遠望した第一印象は、思っていたのとだいぶ違う、ということ。こう、扉体も木製といわずともヨレヨレで、古びた感じを想像していたのに、意外と新しそうで、シャンとしていたからです。

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さらに接近して検分。う~ん、扉体も巻上機周りもピカピカ。しかも巻上機、電動ですね。どう見てもキチンと設備更新された水門でした。

しかし、目の前で眺める14径間、小規模な水門ではなかなかお目にかかれない多径間ということもあって、まことに圧倒されるものがあります。中央の6径間と、両端の8径間では、縦横とも寸法が異なり、ゲートの役割も違うことが想像されます。

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そして目を奪われたのが、この堰柱基部。レンガと石材で造られている! 設備は更新されていたとはいえ、やはり古いものだったのですね! この点はストリートビューでは判別できなかったので、訪ねてよかったと思えたものです。

レンガの堰柱の間にコンクリート製の細い堰柱を増設して、径間を増やしたのですね。レンガの堰柱は5基で、もとは6径間だったことになります。巻上機を持つタイプだったのか、それとも農繁期だけ堰上げるような、単なる角落しの素朴な堰だったのか、舟航はあったのかな‥‥。などと、あれこれ妄想がはかどるものがありました。
撮影地点のMapion地図

(令和5年2月12日撮影)

(『木戸堰…2』につづく)

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