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新川河口の謎通船施設…3

(『新川河口の謎通船施設…2』のつづき)

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謎施設に上流側から近づいて。側壁はごく薄いもので、閘室を形成するには役不足であることは明らか。マイタゲートの戸袋になる凹部など、かつて閘門だった痕跡があるかしらと淡い期待を抱いてもいたのですが、もちろんそれも全くなし。竣工時から、見たままのつくりだったことは間違いないでしょう。

スロープはコンクリートで、見たかぎり陥没やクラックもなく、悪くない状態。乗り越し式の通船施設だとすれば、重量のかかる部分ですから基礎がしっかり造られたものと思われます。
水際からだいぶ離れたところに、Googleマップでも認められた線路みたいなものが見えますね。鉄道に使われているような、I 形のレールが敷いてあるのでしょうか。

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堰柱の横、水平にあつらえた区間に近づいて。レールは予想に反して、単なるアングルでした。このことから、ここを上架される舟艇も台車も、ごく軽量のものだったことが推察されますね。

軽いもののみにしても、まさか人力で押し上げたとも思えません。エンドレスロープとまでいかなくとも、簡単な巻き上げ機くらいは備えていたことでしょう。最低でも、小型エンジン付きの車地(シャチ)のたぐいがあったでしょうから、痕跡を探したのですが、草生したフラットはゴミが散乱しているばかり。

時間を取って中をうろつければ、あるいは機械の残骸かボルト穴くらいは、発見できたかもしれませんね。しかし本来立入禁止のエリアで、しかも雨のぱらつく中となれば、はばかられるのはいうまでもありません

256073.jpg水平区間の下流側を見て。右端、スロープの始まり近くに、ロープのガイドであるローラーらしき(本当に『らしき』で、単なるゴミかも)ものが。

アングルの板厚や敷設の仕方、レールが曲面を介さずカクンと下るあたりを見ても、床面の堅牢な造りとはうらはらに、ごく簡素な施設であったことが感じられました。小さなマリーナの上架施設の方が、よほど手厚く造られているように思えます。

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下流側スロープ。レールはすっかり錆びて消滅し、ボロボロになった先端がわずかに残るばかり。水防上から見れば、手入れを欠かすと漏水や破損の憂いがある扉体より、ガッチリとコンクリートで固めた土堤の方が、メンテナンスフリーでかつ安全であることは論を待ちません。

しかし、通船施設としては、えらく使い勝手の悪いものだったであろうことは、素人目にも明らかです。恐らく、竣工からさほどを経ずして使われなくなり、さらに舟艇の大型化が決定打となって、放置に至ったのでは‥‥と妄想しています。

256075.jpg帰宅後、検索の文言を変えてみたところ、一言だけですが、謎施設に言及した記事が見つかりました。「【新潟】内外エンジ・ナルサワJVに/新川河口自然排水樋門実施設計/北陸農政局」(地方建設専門紙の会)の記事中に、
洪水吐ゲート2門、舟通し1門を有している

舟通し! とりあえず、通船施設であることは最低限の裏付けがされて、嬉しいようなホッとしたような(笑)。

まあ、これまで変わった舟通しをいくつか目にしてきましたが、新川のこれは間違いなく、チープさともの悲しさでは最右翼でしょう。とはいえ貶める気はさらさらなく、この形に至ったいきさつをあれこれ妄想するとともに、存在を記憶にとどめたいと思うことしきりであります。

この珍物も樋門とともに、間もなく撤去されると思えば、訪ねられたタイミングに妙なご縁を感じるものが。ほんのわずかな時間ながら、消える前の姿を目の当たりにできたのは、通船施設好きとして幸せなことではありました。

(令和2年10月25日撮影)

(『弥彦山のりもの三昧』につづく)

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タグ : 新川(新潟市)新川河口自然排水樋門

新川河口の謎通船施設…2

(『新川河口の謎通船施設…1』のつづき)

256066.jpgわき目もふらずに全集中ということで、新川河口自然排水樋門に到着。青空がのぞいていますが、雨はぱらついています。写真は上流側、南から見たところ。

向かって右、東側の径間は鋼矢板で囲まれ、工事中なのがわかります。北陸農政局の「事業概要」によれば、老朽化のため現樋門を撤去し、下流に新たな樋門を建造するとのこと。同じサイトの「新川河口自然排水樋門」に、月毎の進捗を空撮した写真もあります。

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次に訪ねる機会があっても、もう見ることができないとなれば、謎の施設はひとまずおき、樋門を愛でてみたくなるというもの。飾り気のない、質実剛健そのものの表情。堰柱表面の剥離や鋼製部分の褪色、照明の灯器のかたちを見ても、竣工年から長きを経たことがわかります。

扉体はシェル式ローラーゲート。あれ、西側、残る未施工の径間も閉鎖していますが、道々目にしてきた河川繋留の漁船、相当な数でしたよね? どうやって出入りしているのでしょう?

256068.jpg堰柱南側に銘板が見えたので、ズームでたぐって記録。純径間26m、昭和47年1月竣工、川崎重工の施工。「鋼製穀型ローラーゲート」の「穀型」という表現がいいですね。

冬、強い北西の海風にさらされる日本海側の海辺にあり、竣工約半世紀となれば、更新の時期が来ても無理はありません。お疲れさまでした。


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北側も眺めてみようと、も少し歩を進めてみると‥‥おや、こちらの壁面のみ濡れているのですね。結構な強さの海風が吹き付け、ぱらつく雨もほぼ横なぐりのためでしょう。

ご覧のとおり、護岸の手前にはフェンスが並べられ、立入禁止の表示が。ううう‥‥遠路訪ねてきて、気になる物件を見もせずに帰るのは、さすがに難しいご相談であります。工事もお休みのようでしたので、安全を確認しつつ柵内に入らせていただきました‥‥。大変申しわけございません。

さて、本題の謎施設です。

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う~ん、これか‥‥‥‥!
撮影地点のMapion地図

(令和2年10月25日撮影)

(『新川河口の謎通船施設…3』につづく)

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タグ : 新川(新潟市)新川河口自然排水樋門

新川河口の謎通船施設…1

(『栗ノ木排水機場舟通しを訪ねて…5』のつづき)

この物件はウェブ上にも言及がなく、資料を当たってもいないので皆目見当がついておらず、お恥ずかしいかぎりなのですが、初見時の印象が強烈で、通船施設(? かどうかも定かではありませんが)好きとして惹かれるものがあったため、取り急ぎ見たままを垂れ流したいと思います。

話は昨年にさかのぼります。例によってGoogleマップ上を徘徊し、閘門探しをしておりましたら、新潟市西区の新川の河口で、ちょっと引っかかるものがありまして。

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ホンモノのGoogleマップで新川河口自然排水樋門を表示

河口には新川河口排水機場に併設された、新川河口自然排水樋門という長い名前の水門がありました。外観はごくオーソドックスな、シェル式ローラーゲートとおぼしき2径間の水門です。以前も他所でありましたが、堤防を貫通していないにもかかわらず、樋門と呼ばれているのが面白いですね。

‥‥で、何が引っかかったかというとですね。水門径間の左、もう、「ひゅっ」と音を立てて目線と意識を吸い寄せられるものが!

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なな何だコレは!

堰柱の左に上下流方向へ長々と伸びている側壁‥‥そのさまから当然、閘室だと思って目をむいたのはいうまでもありません。ただ、よく見てみると様子がおかしい‥‥。

閘室らしい径間は、元からそうなのか、はたまた埋められたのか、側壁の天端まで土かコンクリかわからないもので満たされており、前後はどうもなだらかな法面になっているようです。

この時点で現役の閘門である線は消え、ぬか喜びであることは想像できたものの、レールのような錆色の線が2本、法面に見えるのもすごく気になります。

閘門廃止後、転用されて上架施設にでもなったのかしら? はたまた、船台とレールによって水門閉鎖時にこの盛り上がりを乗り越す、えらく面倒な通船施設? 現地に行って確認したい気持ちを募らせたまま、コロナ禍のもと悶々とした日々を過ごしたのであります。

256063.jpgそして今回、新潟行きが実現したので、行程に組み入れることができました。24日、大河津からの道々に寄れれば効率的だったのですが、弥彦山を訪ねたりしたので、翌25日の朝食後に持ち越すことに。

新潟駅から乗った越後線では、思いがけずその筋好みの電車に当たり、ファンの皆さんが静かに盛り上がっているのを眺めながら、小雨のぱらつく中、新川最寄りの内野駅へ向かいます。

256064.jpg関谷分水を渡ったとき、大きく雲が切れて青空がのぞき、これはイケるかな‥‥とほくそ笑んだのもつかの間。ふたたび雲に覆われ、雨粒がパチパチと車窓をたたき出すありさま。

せめて水門を眺めている間は止んでくれよとの願いもむなしく、強弱はあったものの雨にたたられ、滞在時間30分に満たない、あわただしい訪問となりました。

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新川、前回訪問の折、新潟市歴史博物館でも展示を拝見しましたが、土木史上注目にあたいする河川で、江戸時代に潟湖の排水と新田開発のため、砂丘を掘り割り、既存の西川との交差部を伏越にするなど、当時最新の技術を駆使して新規開鑿された川です。

写真は帰路に新川元橋を撮ったものですが、砂丘といっても結構な高さのある台地で、これを人力で掘り割った当時の人の苦心がしのばれますね。現在、西川との交差部はトラスの水路橋になっていることも知られており、訪ねてみたかったのですが、今回は謎物件に集中ということで、次の機会としました。
撮影地点のMapion地図

新川開鑿については、「新川(新潟県)」(Wikipedia)、排水機場については「穀倉西蒲原の農地や集落を守る 新川河口排水機場(新潟市西区)」(にいがた土木構造物めぐり)に記述されています、ご参考まで。

(令和2年10月25日撮影)

(『新川河口の謎通船施設…2』につづく)

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タグ : 新川(新潟市)新川河口自然排水樋門