捕鯨船に涙する…3

(『捕鯨船に涙する…2』のつづき)

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右舷後部から眺めて。最近の船ではまずお目にかかれない、まろやかなカーブを描く船尾形状に目を奪われます。クルーザー・スターンというのでしょうか、いかにも追い波に強そうな形ではありますね。

しかし、本当に手入れがよく、塗装もキレイですね。「捕鯨ライブラリー」の「配役」に記載された共同船舶設立時の保有船リストよると、第二昭南丸の竣工年は昭和47年(1972年)とのこと。これが本当だとすれば、船齢38年という超ベテラン船ということになりますが、そんなお年寄りとはとても信じられないほど、よい状態に保たれているようです。

27017.jpgほぼ真後ろから。この角度から眺めると、ダビットを利用して張りめぐらされたネットの様子がよくわかりますね。

また、側面から見ると、上部構造物の高さが目立って、重心が高そうな印象を受けますが、後ろからの印象はいかにもどっしりと腰の落ち着いた感じで、暴風圏を越えて南氷洋を目指す船相応の、重心の低く、復元力の良さそうな船型であることが見て取れます。

27018.jpg近づきながら、ふたたび船首方向に向かって微速で移動。ここで船橋前の甲板に、乗り組みの方の姿がチラリと見えたのですが、我々を見て心配なしと判断されたのか、すぐに見えなくなりました。

第二昭南丸の要目は、残念ながらわからないのですが、このクラスのキャッチャーであれば、排水量が700~800t前後、速力が17~18ktといったところでしょう。
航洋性能が良く、速力も出る捕鯨船は、本来の用途以外でも重宝されたようで、戦時中は旧海軍の指揮下に入り、特設監視艇駆潜艇として哨戒活動に従事した例があり、また戦後も、海上保安庁に借り上げられ、巡視船の代用として働いた船もあるほどです。

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ふたたび船橋近くを眺めて。狙う獲物が大きいだけあって、逞しい魅力にあふれた、まさに漁船の中の漁船…。内外の厳しい情勢は、彼を本来の仕事から遠ざけてしまいましたが、健気にも、黙々と与えられた任務につくその姿に、不覚にもみたび目から汗が…。

精悍にして、健気。これが初めて出会った、捕鯨船の印象でした。

27020.jpg第二昭南丸と別れて、桜探しのお散歩を再開。芝浦運河に入りました。

とは言うものの、またも前方に意識を吸い寄せられる気配が。やはり今回は、「花より団子」に終始しそうな予感がします。
撮影地点のMapion地図



(22年3月22日撮影)

【22年4月5日追記】3段目、最後の3行について追記。戦時中、旧海軍に徴用された捕鯨船は、特設監視艇だけでなく、特設駆潜艇として働いたものもありました。戦後、海上保安庁では、昭和30年代に、短期間巡視船として用船された数隻のほか、昭和20年代に測量船として購入されたもの1隻、昭和50年代には漁業監視船として、2隻を数年間、乗組員ごとチャーターした例もあったそうです。
(参考:海上保安庁全船艇史、海人社)

【22年4月7日追記】ふと気になって、手持ちの関連資料をひっくり返してみたのですが、戦時中、捕鯨船を特設監視艇に使用した記録が今のところ見当たらず、特設駆潜艇のみでしたので、お詫びして訂正します。

(『桜探し散策で…2』につづく)

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捕鯨船に涙する…2

(『捕鯨船に涙する…1』のつづき)

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タイトルとあまり変わらないアングルで申しわけない。いや~、この角度から見ると、本当にタメ息が出るほど格好がよくて、何枚でも貼って眺めていたい気分。ぐっと反り返った舷側の曲線や、船首楼の高さが強調されて、私のヨタ写真でも、捕鯨船の魅力が存分に堪能できます。
船体は長さ/幅比を大きく取った細長いもので、いかにもスピードの出そうな、贅肉をそぎ落とした精悍さを感じさせます。主な漁場はご存知のように南氷洋でしたから、水線部は当然、耐氷構造になっているのでしょう。

捕鯨船の一大特徴である、船橋から砲甲板に至る橋(キャットウォーク)は、ガンナーズ・パッセージとも呼ばれ、その名のとおり、砲手の往来を確保するためのものです。いい響きだなあ、ガンナーズ・パッセージ。

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舷側に近づいて、船橋部分を見上げてみました。なんとこの船、マストと船橋が一つになった、昔の軍艦のような檣楼構造を採っているのですね。マスト上に鈴なりになった装備もあいまって、筋骨隆々とした逞しさが感じられますね。
よく見ると、デッキから立ち上がり、操舵室横の二層を貫く二本脚のトップには、キノコのようなキャップが。荒天時の通風筒も兼ねているのでしょうか。

マストのトップに見える四角い箱は、クロウズ・ネストと呼ばれる見張り台で、いざ漁が始まれば、ここに登って目視で鯨を探すわけです。中には、ここにレピータという簡単な操舵装置を備えて、直接舵を取れる船もあったとのこと。

27013.jpg船橋直後の上部構造には、ご覧のとおり「RESEARCH」と大書きされています。意味は言うまでもありませんが、失礼ながら何か生真面目と言うか、健気な感じがして…、あれっ、目から水が…。

舷側のブルワークに並ぶ穴は、捕獲した鯨の尾をゆわえておくためのロープホールで、曳鯨孔と呼ばれるのだそう。
写真左上には、ニュースでも報じられた長距離音響発生装置、通称LRAD(エルラド)も見えますね。効果は絶大だったようで、敵さん(笑)もこれにはずいぶん困らされたようです。

27014.jpg煙突も、黒い塗装と斜めにざっくり切り取ったデザインのせいか、なかなか精悍。後部マストと一体化した構造で、米国流に呼べば、マックといったところでしょうか。

もうお気づきとは思いますが、第二昭南丸、舷側上のぐるりにネットが張りめぐらされています。かつてはアンカーや、鯨を引っ張るために使われたであろう、船首尾のダビットを利用して、文字どおり防御網を張ったというわけです。

洋上では薬品の入ったビンを投げつけられ、その上接舷切り込み(?)まで仕掛けてくる輩がいるとなれば、これも仕方のないことなのでしょうが、船も窮屈そうで、いかにも哀れな感じが拭い去れません。

27015.jpgしかも、一息つけるはずの国内の港…晴海にもやってすら、「防御網」を解けないあたりに、この船の置かれた緊張状態が垣間見えて、また目から水が…。写真は、船尾に備えられた放水銃ですが、斜めに右舷を向いたままで、戦いぶりがしのばれるようでした。

救いだったのは、手入れがよいせいか、船体がきれいだったことでしょうか。万里の波濤を越え、さらに例の珍船(もったいないことをしました)にぶつけられたりした割には、大きな傷や錆垂れもなく、隙のない、凛とした風情に、頭が下がる思いがしたものです。


(22年3月22日撮影)

(『捕鯨船に涙する…3』につづく)

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捕鯨船に涙する…1

(『桜探し散策で…1』のつづき)

27006.jpg東雲水門のセクターゲートを通っていると、後ろから3隻のPWCが追いついてきました。青空の下で、勇ましい水しぶきを上げつつ水門を抜けるPWC艇隊、絵になりますね。

水門を抜けてから道を譲ると、手を振りながら爆音も高らかに追い越してゆきました。お天気にも恵まれて、きっと楽しい航行になることでしょう。お気をつけて。


27007.jpgで、また晴海なんですが、この日はいつものフネ見物と、ちょっと違っていました。

青みがかったグレーに塗り上げられたその船は、軍艦でもなく、客船でもありません。晴海に来航する船としては、むしろ小さい部類に入るでしょう。
視界に入った瞬間、遠目にもその特徴ある船型が見て取れ、嬉しくなって思わず声を上げたほど。そう、
捕鯨船だ!

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砲甲板を頂く、ぐっと高められた船首楼、船橋から伸びるキャットウォーク、流れるような曲線を描く舷側のライン…何度も本で見ては脳裏に思い描いていた、キャッチャーボートの実物が、今、目の前にある!

船の名前は、第二昭南丸。ニュースなどでご存知のように、調査捕鯨中に例の反捕鯨団体の船に体当たりされたり、その船長を名乗る男に乗り込まれたりと、矢面に立って辛酸をなめてきた船でもあります。
去る3月12日、容疑者を乗せて晴海に接岸した(産経ニュース『第2昭南丸が接岸 シーシェパード船長逮捕』参照)とのことですから、検分のためなお留めおかれている、といったところでしょうか。本当にご苦労さまです。

27009.jpg何分そういう状況下にある船だけに、むやみに近づくのもためらわれるのですが、魅力には抗し切れず、様子をうかがいながら、ゆっくりと接近してみることに。

友人の父上が、かつて大捕鯨船団(船団の合計トン数20数万tでしたか、もうスゴイ規模でコーフンした覚えが)を擁していた会社に勤められており、彼から社史を借りて読んで以来、捕鯨船の魅力にとりつかれて幾星霜。
乗り組みの方のご苦労を思うと不謹慎かもしれませんが、初めてホンモノの捕鯨船に出会うことができ、泣けてくるほど嬉しいものがありました。

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船首楼上の砲甲板を仰ぎ、固定式照準器のついた、砲身の短い捕鯨砲の姿を見られるかと期待していたのですが、そこに備えられていたのは捕鯨砲にあらず、タレット式の放水銃。

第二昭南丸は現在、捕鯨船ではなく、反捕鯨団体の攻撃から船団を守る監視船として就航しているため、船首尾に各1門の放水銃を取り付けていたのですね。ニュースでもさんざん見ていたはずなのに、うかつでした。


(22年3月22日撮影)

(『捕鯨船に涙する…2』につづく)

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