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さようなら、扇島閘門…3

(『さようなら、扇島閘門…2』のつづき)

22011.jpgここを訪れるたび、いけないこととは知りつつも、吸い寄せられるように登っていた水路側ゲートの天端。これが最後なのだと、今回はまなじりを決してハシゴを踏みました。

まあ、見事に何もない。
「ニューコン」のついた昇降装置も、機側操作盤も…。はがした跡が、無残に鉄筋を露出させているだけの、荒涼たる天端の惨状。
(初訪時の天端の様子は、過去ログ『扇島閘門…3』参照)

22012.jpg荒れたコンクリートの肌を見せる撤去跡に、ぽかり、ぽかりと二つ開いているのは、扉体を釣っていたラックが、かつて貫いていた穴。
ひゅうひゅうと風の通る音が聞こえ、さらに四周から、柵が唸る音にもさいなまれ、まさに慟哭の大合唱。お別れを言ってくれているのか、それとも、むくろをさらすような仕打ちへの恨み節なのか…。

さて、降りる前に、扇島閘門と同じくらい好きだった、この天端から眺めた風景を撮っておこうと、顔を上げ、重くなった腰を叱咤して、やおら立ち上がりました。

22013.jpg
大割水路、北側を望む。

22014.jpg
同じく大割水路、南側。

そして、タイトルにもすでに掲げた、もっとも水郷らしい、エンマ側の閘門風景…。
昨年7月20日に撮った、お気に入りの一枚をまず再掲して、扇島閘門への鎮魂としたく思います。

11053.jpg

22015.jpg

ご覧のとおり、大規模な改良工事が始まっており、エンマには全面的にコンクリート護岸が施され、クロ(あぜ道)も拡幅されるようです。
もし、この地にふたたび閘門が設けられるとしても、あの草から萌え出たような、のどかで、清々とした閘門風景には、もうお目にかかれないでしょう。

さようなら、扇島閘門

さようなら、水郷のど真ん中の閘門風景…
 


(22年1月2日撮影)

(この項おわり)

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タグ : 扇島閘門閘門水郷

さようなら、扇島閘門…2

(『さようなら、扇島閘門…1』のつづき)

がっくりと気落ちして、しばらくその場に立ちつくしながらも、これは不幸中の幸いだったのではないか、と考えるようになりました。撤去が終わって、何も無くなったこの場所を見て愕然とするよりは、しのぶよすがの残る工事途中に今出くわせたことが、むしろ僥倖なのではないか、と…。

22006.jpgそう思えれば、現金なもので立ち直りは早い船頭です。ディテールを記録して残すことが、素晴らしい閘門風景を見せてくれた、扇島閘門へのせめてものはなむけではないかと、例のペースを取り戻して、うろうろと眺めて回ることに。

今や単なる塞ぎ板となり果てた、エンマ側扉体にはざっくりと、四角い穴が開けられていました。何でしょう、ポンプで閘室の水をかい出す際、パイプでも通した跡でしょうか。

22007.jpg
扉体の上では、かつてラックをつないでいたリンクが、あるじを失い、ほこりだらけで首うなだれていました。
寂寥感が胸に沁みる光景です…。

22008.jpgほとんど水がかい出された閘室をのぞくと、赤錆びた側壁の鋼矢板や、底にポツポツとブロック状のものが出ているなど、湛水状態では見ることのできないディテールもあり、興味津々。

以前読んだ文献では、昔の閘門では床のコンクリート面に、石などを埋めてわざと凹凸をつくり、竿が滑らないようにしたとのこと。竿を突いて航行する舟が多かった時代の気遣いですが、このブロック状のものも、同様の効果をねらったものだったのでしょうか。

22009.jpg橋の下をのぞくと、ガレキが山をなしており、以前もやわれていたサッパの姿はすでになく、フェンダー代わりのタイヤや竿だけが、さびしくぶら下がっていました。

向こうに見える鉄板は、元の扉体ではないようです。手前左、無造作に置かれた数枚の鉄板が、解体された本来の扉体なのかもしれません…。


22010.jpg
道路に戻り、大割水路側ゲートを見上げると、悲しげな唸り声にドキリとさせられました。

ブォオォォオン…
ブォォオォオゥン…

扇 島 閘 門 が 泣 い て い る !

いや、大丈夫です、病膏肓に至っておかしくなったわけではありません。折からの強風で、天端の柵が震えて、唸りを生じているだけなのでしょう。
しかし、どうしても自分の耳には、扇島閘門の慟哭としか聞こえませんでした。よし、行こう!
泣いても笑っても、これが最後だ!

(22年1月2日撮影)

(『さようなら、扇島閘門…3』につづく)

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タグ : 扇島閘門閘門水郷

さようなら、扇島閘門…1

う~ん、新年早々、ちょっと悲しいものを見てしまった…。というわけで、「羽田周辺の船溜めぐり」の途中ですが、いったん寄り道させていただきます。

22001.jpg本日1月2日は、毎年恒例となった、水運の神様・あんば様(阿波大杉神社。過去ログ『あんば様…1』ほか参照)への参拝行。昨年1年間、艇を守っていただいたお札を納め、新しいお札をいただいた後は、これも恒例の水郷で昼食。

常陸利根川にも白波が立つような強風下、水郷十六島を愛でつつ帰ろうと、写真の潮来大橋を渡り、右へ折れて、大好きな大割水路沿いの道へ。

22002.jpg目指すは愛しの極小閘門、扇島閘門。最近では、夏の姿を「扇島閘門みたび…1」ほかで紹介しましたが、冬枯れたこの時期の表情も、また宜しかろうと水路沿いの道を近づいてゆくと…。

逆光でハッキリしませんが、前回同様、視界に何か違和感が…。いや、決定的に足りないパーツがある!
まさか!
撮影地点のMapion地図

22003.jpg
エンマ側のゲートが消え失せている…。

22004.jpg
大割水路側のゲートも、機器類がすべてはがされ、取り壊し絶賛進行中…。

22005.jpg寂しかったですねえ。言葉を失いました。
もう、使われなくなって久しい状態だったとは言え、こうもあっさり撤去が始まってしまうとは…。

大好きな水郷十六島の中でも、一番お気に入りの場所だっただけに、ショックも少なからざるものがありました。あの、広大な田んぼの真ん中に、小さくとも誇らしげに屹立する、愛らしい閘門の姿は、もう見られなくなってしまったのか…。

繰り返し出るタメ息も、体がよろめくような強風に吹き消されて、自らを慰めることもかないません。


(22年1月2日撮影)

(『さようなら、扇島閘門…2』につづく)

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タグ : 扇島閘門閘門水郷

扇島閘門みたび…2

(『扇島閘門みたび…1』のつづき)

11051.jpg…ええ、旧ブログからご覧くださっている方は、すでにご承知かと思いますが、この大割水路側ゲートに登って眺める景色が、また絶景で…。いえいえ、本当はいけないことですので、お勧めはいたしませんが。

まあ、毎回ここへ上がって、エンマ側ゲートを撮っているので、今回も定点撮影をしたいと思ったわけです。では失礼して…。

11052.jpg上って東側を眺めると、おおお、一面緑のじゅうたん!
やはり米どころ水郷は、夏の盛りが一番美しいかもしれませんね。いつもながら、閘門そっちのけで見惚れる爽快さ。

というわけで、すでに8月1日からのタイトルでもご覧に入れましたが、念願の緑豊かな閘門風景を撮ることができました。せっかくですから、以下に過去訪問時の写真も並べて、一人悦に入りたいと思います…。

11053.jpg
今回、7月20日撮影。
錆びて穴の開いた扉体が少々わびしいですが、ふさふさと風になびく田んぼに囲まれたエンマと閘門、これが見たかったんですよ! お気に入りの一枚となりました。

11054.jpg
前回、今年1月3日の写真。
掘り起こされて、茶色く乾いた田んぼ、蒼く澄み切った空と、上と対照的な冬枯れの風景。扉体が降りきって、ラックも引っ込んでいるせいか、堰柱が妙に長く見えるのが印象的でした。

11055.jpg
初回、19年4月30日の表情。
まだ土の色が見える田んぼながら、水が張られて、田植えから間もない春先の水郷です。このときは、釣り人さんの姿も多く見られました。

(21年7月20日撮影)

【21年11月8日追記】扇島閘門初訪時の記事を、過去ログにアップしました。
扇島閘門…1
扇島閘門…2
扇島閘門…3
扇島閘門…4

(『浪逆浦閘門…1』につづく)

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タグ : 扇島閘門水郷閘門

扇島閘門みたび…1

(『仲江間ふたたび』のつづき)

約3ヶ月ぶりとなり恐縮ですが、7月20日に水郷を訪ねたときのお話を再開させていただきます。

11046.jpg念願の仲江間閘門通航と、仲江間遊覧を楽しんだあと足を向けたのは、旧ブログでもすでに2回ご紹介した、お気に入りの超小型閘門・扇島閘門。

一面に田んぼの広がる、水郷十六島のど真ん中、大割水路から分岐するエンマ(小水路)を守るミニ閘門の可愛らしさに魅せられて、みたびの訪問となりました。夏の盛りに訪れるのは初めてなので、青々とした盛夏の田んぼに囲まれた表情を、撮っておきたいと思ったのです。

11047.jpg
一直線に伸びるエンマ、緑濃い田んぼ、晴れ渡った空…まさに絶好の閘門日和! いや~、来て良かったです…。
あ、あれ? 視界の隅に、ちょっと違和感が…。

11048.jpg扉体に穴が開いている(泣)。
腐食が進んで、とうとう残念な結果になってしまったようで…。

以前から、あまり実用もされていなかった様子でしたし、いきおい塗り替えなどのメンテナンスも、おろそかにならざるを得なかったのでしょうが…ショック。

11049.jpg裏に回ってみると…う~ん、予想以上にひどい痛みようです。

構造の水没部分、縦補助桁も錆び崩れて、すでになくなってしまっています。これでは、スキンプレートに穴が開くのも、無理はありません。


11050.jpg
なかば廃閘門となってしまったことを知り、寂しくはあったのですが、周囲360度、さえぎるもののない中にぽつりと屹立する、水郷ならではの閘門風景は、まさにここだけのもの。何度訪ねても、飽きさせない魅力のある閘門です。

せっかく来たからには、憚られることとはいえ、やらずにはおれない閘門バカの性。毎度のことながら、先にお詫びしておきます。申しわけありませんでした。
さて…。
撮影地点のMapion地図

(21年7月20日撮影)

(『扇島閘門みたび…2』につづく)

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