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庄川峡の船旅…6

(『庄川峡の船旅…5』のつづき)

211131.jpg大きなS字屈曲を抜けたあたりで、前方に上路式鋼アーチが見えてきました。庄川遊覧船サイトの案内にもあった、長崎大橋ですね。あれ、その向こうにももう一つ橋が。新しい橋かな?

ただ峡谷美を味わうだけでなく、橋くぐりも楽しめる庄川航路! 街場の水路になじんでいるだけに、河上から構造物を愛でる機会があると、やはりテンションが上がります。

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くぐりざま西詰を振り返って。仰いだ印象は、側面を遠望したときよりずっと華奢で、色褪せた塗装も手伝ってか、どこかはかなげに感じられたこと。渡している道幅が狭いせいでしょうか。

とやまの橋 長崎大橋(南砺市利賀村)」(北日本新聞)によれば、昭和46年竣工で全長191m、幅(道路幅と思われます)4mの林道橋とのこと。

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おお、ここにも吊橋の主塔が遺されている‥‥。写真の東詰上流側のみ確認でき、西岸には見当たりませんでした。橋名は下原橋。廃止時期は今のところ不明ですが、後ほど紹介する「庄川峽遊覧」の鳥瞰図や解説にも描かれていたので、小牧ダムとそう違わない時期の竣工なのでしょう。

211134.jpg長崎大橋を透かして見えた橋、近いように思えて1㎞ほどでしょうか、結構な距離がありました。右手の橋詰には巨大な足場があり、桁もメッシュをかぶっているようで、どうやらまだ建造中のようです。

アーチが鋼管を組んだ三弦になっていて、素人目にも長崎大橋から40年以上を隔てた、技術の進歩を感じさせる造作。庄川の新しい名所になりそうですね。


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上流側に出て振り返ると‥‥アーチの塗色、まるで口紅を引いたように、ぬめりのある鮮やかさ! 山肌の緑をバックにくっきりと浮かび上がって、目立つことこの上なし。

検索したところ、工事の経過を紹介したPDFがありました。「さんかくでつなぐ橋~庄川橋梁上部架設工事報告~」。なるほど、お隣の峡谷、利賀峡に新設されるダム工事の道路として造られたのですね。ダム工事終了後は、国道に昇格する予定なのだそう。名前は「庄川橋梁」(仮名と思われます)、全長368m、アーチ支間190m、平成30年度竣功予定とのこと。
撮影地点のMapion地図

【29年11月12日追記】
長崎大橋西詰の吊橋遺構、「庄川峽遊覧」の解説文に下原橋とありました。見落としており失礼しました。お詫びして追記させていただきます。「庄川峡の船旅…10」をご参照ください。

(29年9月24日撮影)

(『庄川峡の船旅…7』につづく)

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タグ : 庄川遊覧船庄川橋の裏側

庄川峡の船旅…5

(『庄川峡の船旅…4』のつづき)

211126.jpg船が進むにつれて、上流側の側面が見えてきました。下流側からだと、木々に埋もれているのと、逆光も手伝ってディテールが楽しめず、主塔の陸側にある桁の様子もわからなかったので、目を皿にして観察。

むう、こちらも光の加減がよくないか‥‥。しかし、主塔の間から、路面に生えた草がもりもりはみ出ているな。植物にとって、よほど環境がよいようだと、妙なところで感心していると‥‥。

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船がさらに進み、順光になった瞬間、驚くとともにようやく思い出したのです。
陸側の径間がRCアーチ! ‥‥あっ、この橋、「山さ行がねが」のヨッキれん氏が探検した橋だ!

興味深い廃橋探訪の様子は、「双竜湖(小牧ダム)に架かる巨大廃橋(跡) 序」以下のシリーズをご覧ください。というわけで、橋の名前は利賀(とが)大橋。アーチの魅力は絶大で、ヨッキ氏が惚れ込んだのもうなずけるものがありますね。

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岬の突端を回り切ったところで、アーチをズームでたぐって。「双竜湖(小牧ダム)に架かる巨大廃橋(跡) 後編」で、ヨッキ氏が主塔基部の張り出しに身を曝すという、危険を冒しても眺めるだけの価値を認めた、優美なアーチの曲線! それを安全な船上から、ほしいままに見られる嬉しさと、後ろめたさ。

高欄が少し苔生し、路面にみっちり草がそよいでいるほかは、意外ときれいなコンクリートの肌。このまま整備して、川面を眺める展望台にしてもいいくらいだと思えました。

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ここで、観光パンフレット「庄川峡遊覧」(後ほど紹介します)より、当時の写真をご覧にいれます。

とはいっても、写真は利賀大橋ではなく、ヨッキ氏が「双竜湖(小牧ダム)に架かる巨大廃橋(跡) 歴史編」で調査結果を述べておられるように、昭和8年に突風で落橋した先代橋、「仙納原大橋」を写したものでした。昭和12年に竣工した利賀大橋も、最後は火災によって失われたそうですから、架橋地点としては、微妙にツキがなかったのかも知れません。

211130.jpgいや~、「船でしか行けない温泉」ならぬ、「(ほぼ)船からしか見られない遺構」、堪能させていただきました! 庄川遊覧船とも縁浅からぬ間柄の廃橋ですから、観光パンフレットなどでの案内も欲しいところ。(Googleマップには、西側主塔跡が観光名所として記載されていました)

旧利賀大橋が、屈曲の向こうに見えなくなったあたりで振り返って。山間ますます深く、緑ますます濃く。次は何が出てくるでしょう?
撮影地点のMapion地図

(29年9月24日撮影)

(『庄川峡の船旅…6』につづく)

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タグ : 庄川遊覧船小牧ダム庄川絵葉書・古写真

庄川峡の船旅…4

(『庄川峡の船旅…3』のつづき)

211121.jpg山肌に軽く靄がかかるくらいの無風とあって、穏やかな川面を進む「クルーズ庄川」の乗り心地は、まさに滑るが如し。グリーンの水面を白く切り裂いて、後ろに伸びてゆく引き波も快く、川走り日和を噛みしめたものでした。

屈曲する河道をたどって、右へとゆるく舵を切っていた船が左へ戻し、少し視界が開けたかな、と思ったあたりで、前方に見えてきた構造物に目を奪われました。庄川峡、一つ目のハイライトというべき物件に接近したのです!


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ここは写真左手から合流してくる、利賀川との丁字流にあたる地点。その河口である岬状の突端に、黒々とそそり立つ門形の構造物が。吊橋の遺構ですね!

対岸、右手にも木々の間より、主塔の半ばから上がにょっきり顔を出しているのに気づきました。吊橋である中央の径間が撤去され、両岸の径間と主塔のみが放置されている状態だとわかりました。

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左手、東岸の方が露出度が高そうではあるので、左舷に移動してワクワクしながら接近を待つことしばし。おおお、第一印象よりずっと大きくて、厳めしい感じがするなあ‥‥。

この距離から眺めても、あたりを払う存在感がビリビリと伝わってきます。廃墟となってなお、目線を吸い寄せずにはおかない荘厳さ。山塊が限界まで細まり、険しい稜線がすとんと尽きかける、まさに岬のような地勢の先端に位置することも、その雰囲気を助長しているように思えました。

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左舷正横に来たところで、うまくシャッターが下りました。逆光に黒く沈んで、ディテールはいま一つ判別できませんでしたが、路面に生い茂る雑草が背高くそよ風になびいているさまを目にし、寂寥感とともに深い、深い感動が。人の手を離れてから久しいにもかかわらず、厳しい風雪に耐えてなお立つ健気さのようなものを、勝手に感じてこうべを垂れる船頭。

ところで左端の水際、赤丸に「8」と書いた標識様のものがありますね。この後もたびたび登場するので、改めて紹介します。

211125.jpg右手、西岸の主塔はご覧のとおりで、ほとんど木々に埋もれ、鑑賞するにはちょっと物足りない状況でした。背後に国道156号線のシェッドが見えますが、橋よりずっと高いところを走っていますね。

さて、この橋の正体は‥‥。イヤ、その筋には有名物件なので、正体も何もありませんが、詳しくは次回お話しましょう。
撮影地点のMapion地図

(29年9月24日撮影)

(『庄川峡の船旅…5』につづく)

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タグ : 庄川遊覧船庄川

庄川峡の船旅…3

(『庄川峡の船旅…2』のつづき)

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(庄川峡)漫々たる碧流を水鳥のごとく快走する遊覧船
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行(昭和10年8月27日の記念印あり)。


前々回に紹介した「庄川流材写真」にも出ていますが、ダム竣工間もないころに活躍していた船影を絵葉書で見てみましょう。上流側から見た小牧港の光景、4隻の船が写っていますが、少なくとも手前の2隻は略同型で、曳船タイプなのがわかります。

上流で集められた原木を筏に組み、あるいは艀に載せて連ね、堰堤のチェーンコンベアまで曳いてくる仕事は、原木業者に対する補償の一環でもありましたから、現在と異なり、曳船タイプで数を揃えたのはうなずけるところであります。

船橋の後ろにオーニングを張って客扱いをしているさま、夏は涼しげでよいですが、甲板室の狭さから考えると、収容力は限定的だったことと思います。また煙突の白線の数で、船の通番を判別していたらしいこともうかがえますね。桟橋のポンツン、四角い台船でなく、船首尾のある艀を利用しているあたりも面白いものが。

211117.jpg遠ざかりゆく小牧ダムのゲートたちを、振りかえって一枚。2本のワイヤーで操作される黒いラジアルゲートが並ぶさま、昭和初期竣工のダムらしい、風格に満ちた眺め。

落差75m、竣工当時は国内に比類なき大型ダムとして威容を誇ったここも、今や90歳になんなんとする高齢。河川用ダムとしては初めて、登録有形文化財に指定されたのも納得できます。

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前方に目を転じれば、光に満ちた谷間の向こうへ羊腸と続く川面! 山並を縫って分け入ってゆく面白さ、ダム湖の河川ならではの醍醐味といえるでしょう。

しかも、一周して元の場所にただ戻る(我々は大牧で降りずに戻ってくるのですが)のでなく、目的地を目指して文字どおり遡上する、立派な河川航路なわけですから、興趣いや増そうというものです。

211119.jpg進行方向右手を、見え隠れしつつ国道156号線・飛騨峡合掌ラインが通っているのですが、まず目を奪われたのがここです。

分厚いロックシェッドに、浅い谷を短い桟道で渡る区間に設けられた、それを支える堅牢そのもののラーメン構造‥‥。ここに道を通すことの難しさと、環境の厳しさが感じられる眺めでした。


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上流へ続く区間も同じく、ごくわずかな地上部分も落石防止の柵や壁で手当てされ、ほとんどをロックシェッドで覆われた、風光を愛でることすらままならない構造。

岩勢荒々しく、また崩壊防止の工作を施された山肌は、船から見てこそ興味深いものですが、道路にとっては難物以外の何物でもない地勢であることが、ひしひしと迫ってくる川景色ではありました。

(29年9月24日撮影)

(『庄川峡の船旅…4』につづく)

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タグ : 庄川遊覧船小牧ダム庄川絵葉書・古写真曳船

庄川峡の船旅…2

(『庄川峡の船旅…1』のつづき)

211111.jpg周囲のもろもろに気を取られ、ここでようやくフネブネを眺めるに至りました。桟橋にもやっているのは、手前に通船タイプの「はやぶさ丸」、上層に操舵室を持つ「やまぶき」の2隻(庄川遊覧船『施設のご案内』参照)。

昔風の「はやぶさ丸」が自分的に惹かれるんですけれど、一見した様子から予備船扱いのようで、乗ることはかなわなそうですね。


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間なしに改札開始のアナウンスがあり、柵から身を乗り出してみると、大牧から戻ってきた船がすでに近づいていました。「クルーズ庄川」、二層の甲板室を持つカタマランで、一見したかぎりでは、モノハルでもおかしくないくらい細身に感じられました。この3隻が庄川遊覧船船隊の、客扱いをする船のすべて。

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改札を通り、形鋼でがっちり組まれた橋を渡ると、「やまぶき」の向こうに接舷した「クルーズ庄川」に案内されました。陽射しはますます鋭く、歩み板にトラスの影がくっきり映り、対岸の緑も鮮やか。風光を愛でるには絶好の天気になってきました。ありがたやありがたや。

211114.jpgでまあ、毎度のごとく密閉された船室は苦手とあって、いっさんに2階へ駆け上がりました。

こちらは幅を狭めているとあって、席は中央にベンチが一本とシンプルですが、これはむしろ柵にもたれて眺めを楽しむ人のため、動線に余裕を持たせた結果とみてよいでしょう。船頭のような物見高い不審者からすれば、ありがたいレイアウトであります。


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エンジンの振動が高まり、乗り組みさんがきびきびとした動作でもやいを解くと、船は桟橋を離れてゆっくりと回頭し、一路大牧へ舳を向けました。

岸との距離が空いたところで、小牧港を眺めてみるとこれがまた、味のあるものでした。山肌を削平した、このささやかな平場を守る護岸は、玉石をコンクリートで固めた石垣護岸! ダム竣工当初から変わらぬ姿を留めているであろう、その星霜を経た肌、戦前の雰囲気を今に伝える川の船着場として、貴重な存在かもしれません。
撮影地点のMapion地図

(29年9月24日撮影)

(『庄川峡の船旅…3』につづく)

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タグ : 庄川遊覧船庄川