松川と彼岸花

(『庄川峡の船旅…10』のつづき)

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小牧ダムを離れた後は、一つ下流にあるやはり戦前竣工のダム、合口堰堤にちょっと寄り道。昭和14年竣工、7カ所の水力発電所に給水し、11,000haの田畑を潤しているとのこと。

休憩所など近隣の施設も充実しているせいか、多くの人で賑わっていました。ダムそのものは扉体ともきれいに整備されて、戦前にできたとは思えないほどでしたが、手前の魚道は苔や草が生い茂り、コンクリートの表面も風化して、過ごしてきた時間の長さを感じさせました。

211157.jpg帰路は違ったルートをたどってみたくなり、福光駅より城端線、高岡であいの風富山鉄道に乗り替えて、富山に出ることに。

写真は城端線ですが、懐かしくなるような朱色のディーゼルカー2輌編成に乗って、開けた窓から入る風を受けつつ、田園地帯を爆音高らかに疾走するのは楽しいものです。

211158.jpg富山到着後、帰りの新幹線まで少し時間があったので、市内線に乗って松川茶屋へ。

船に乗るのは時間的に無理にしても、ちょっとお茶でも‥‥と思っていたら、河畔は生バンドの演奏が聞こえるなど大変な賑わいで、橋台跡をステージにしてこれからイベントが始まる模様。中村専務もお忙しそうなので、失礼してお散歩に切り替えました。

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法面では彼岸花がちょうど満開で、本当に見事です。花の名前などろくに知らない、無粋ものの船頭ですが、こと大好きな松川畔。これは一枚スナップしておきたく、カメラを向けてみました。

相変わらず下手な写真ですが‥‥。よく陽が当って目に沁みるような彼岸花の紅と、木陰に黒く沈む川面、さらに遊覧船の赤い塗色がよいコントラストをなして、素敵な川景色が撮れました。

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少し歩いて、七十二峰橋を渡ろうとしたら、いま一隻の遊覧船‥‥たぶん「神通Ⅰ」が、いいタイミングで戻ってきました! くぐる前に迎え撃ち、くぐった後を見送って(10月1日からのタイトル)と、何度もシャッターを切りました。

底まで陽の射した澄んだ河水、玉石垣を固めた法面にテラスと、松川ならではの川景色を愛でる遊覧船。絵になりますねえ。次回はぜひ乗ってみたいものです。ともあれ2日間、最後までお天気に恵まれた旅行になり、何よりでした。お世話になった皆様、ありがとうございました!
撮影地点のMapion地図

(29年9月24日撮影)

(この項おわり)

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タグ : 庄川 合口堰堤 松川 松川遊覧船

庄川峡の船旅…10

(『庄川峡の船旅…9』のつづき)

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「庄川峽遊覧」
460mm×148mm 発行者:庄川水力電氣株式會社 
昭和5~8年の発行と推定


小牧ダム竣工間もないころの、観光案内を見てみましょう。上が表紙・裏表紙と鳥瞰図のある表面、下が見どころの写真と解説を載せた裏面です。

ちなみに推定発行年を昭和5~8年としたのは、昭和8年に落橋した仙納原大橋の写真が、裏面に掲載されていたことからです(『庄川峡の船旅…5』参照)。

鳥瞰図では、石動から福野を経て小牧に至る庄川水電鉄道、小牧~大牧~祖山の航路を中心とした景勝や観光名所が示され、色彩的にも美しく眺めていて楽しいもの。

裏面も、大牧温泉の外観と大浴場の写真が目を引かれます。建物は改築されても、この当時の雰囲気を受け継いだことがうかがえますね。大浴場は、水面に近い半地下式に造られた、窓の大きいいかにも眺めがよさそうなものですが、残念ながら現存していません。

さて、裏面の案内を読み下していて、大いに気になった部分が2点ありました。一つは、本文左「庄川峽案内」の19行目、「祖山より更に巡航船にて奥の仙境五ヶ山を探勝し」‥‥えっ、祖山ダム上流にもかつて航路があった? これは気になりますね。今のところ資料がないので、今後の宿題とさせていただきましょう。

二つ目はお詫びも兼ねて。「千願瀧」の項、「小牧、大牧間の中程下原橋附近に在り」鳥瞰図と照らしてみると‥‥二本目の吊橋あたり。あっ、これはもしかして、長崎大橋(『庄川峡の船旅…6』)の東詰に遺構があった吊橋? 申しわけありません、よく読んでいませんでした。お詫びして後ほど追記・訂正します。

211153.jpg以下、帰路のスナップを。上流側から眺めた大牧発電所。山肌に伸びゆく水圧鉄管の様子、狭い谷の出口に造られたことがわかる角度。

濃厚な緑に囲まれ、陽に輝いているさまは実にのどかで、改めて箱庭チックというか、浮世離れした雰囲気を感じさせたものでした。


211154.jpg大牧発電所の下流西岸に見えた、国道156号線の橋。航路沿岸の国道では唯一大型の橋で、格好のよいラーメン橋ということもあり、やはり目を引かれました。

川の名前を調べる地図」によると、駈足谷橋というそう。廃橋も含め橋見物の見どころが結構あって、その筋の愛好家には楽しい航路ではあります。


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小牧港着桟の直前にとらえた、「やまぶき」の航行シーン。我々の「クルーズ庄川」が出た少し後に、団体さんを乗せて長崎大橋一周コースに出発したのです。

帰路、長崎大橋上流で回頭しているところが見え(29年10~12月のご案内画像参照)、その後はずっと間合いを取りながら、航跡を追う形で小牧まで来たのでした。あっ、左奥のダム堤体に見える錆色のカゴみたいなの、かつてあったインクライン式魚道の搬器かしら?

(29年9月24日撮影)

(『松川と彼岸花』につづく)

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タグ : 庄川遊覧船 庄川 小牧ダム

庄川峡の船旅…9

(『庄川峡の船旅…8』のつづき)

211146.jpg大牧温泉前をひと巡りした後、船は上流側に向き直って桟橋に達着。階段の上には、すでに何人かのお客さんが船を待っていました。

桟橋はどうやら、太い丸太を何本か並べた筏に、歩み板を張った構造のよう。階段の中ほどには、待合所らしいコンクリート造りの小さな上屋が見えますが、その形にすごく惹かれてしまったのです!

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水面が近く、木々に囲まれた湿っぽい環境のせいか、だいぶ痛んでいますが、波形の屋根と小ぶりなサイズが醸し出す、可愛らしさに惚れ込みました。右半分を階段の傾斜に合わせてあるせいでしょうか、どこかケーブルカーの停留場を思わせます。デザインの感じから、昭和30年代くらいの竣工でしょうか。

ここで一つ目を引かれたのが、窓の上に「大牧」と駅名標イヤ、港名標が作り付けられていること。その下にも小さな文字で、何か書いてあります。もしや、と期待させるものがあって、ズーム一杯にたぐり寄せてみると‥‥。

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「こまき← →そやま」‥‥やはり!
かつての終点、祖山の名前が書かれている! そう、このさらに上流、祖山ダムの近くまで航路があり、原木と人員の輸送を行っていたのです。

ダム湖の河川航路で、これほどの距離を、また「中間駅」も有しながら長きに渡って維持されていた、というあたりに川舟好きは萌えるのであります。祖山行きが存続していれば、ぜひ行ってみたかったところです。

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(越中庄川峡)千古の蒼翠倒影して夢の如く美しき祖山着船塲(程近く平家の落武者が幽居せし五箇山あり)
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行(小牧ダム竣工は昭和5年)。


ここでまた、ダム竣工から間もないころの写真を、絵葉書で見てみましょう。曳船タイプの船が今まさに達着せんとする、祖山船着場を写したもの。川幅さらに狭まり、山肌の急峻さはいわずもがな。国内にはまれな、大峡谷をゆく舟航風景! もし現存していれば、素晴らしい川景色が堪能できたことでしょう。

Googleマップの写真でこの区間の現状を眺めてみると、屈曲の内側などに砂洲が多く生じ、流路も全体的に浅そうで、今なお需要があったとしても、通船は難しそうではあります。もちろん、現在はスノーシェッドも完備した道路が整っていますから、船はお呼びでないことはいうまでもありません。

211150.jpg「待合所」の素敵な形を愛でながら、階段を降りて乗り込んでくる大牧温泉のお客さんたちを眺めていたら、早や出港の時刻。

乗り組みさんが二人がかりでもやいを解きにかかり、うんしょと船を押し出すと爆音が高まって面舵一杯。珍しい峡谷の奥地に息づく河港とも、わずかな時間ながら名残惜しくお別れです。

小牧で乗ったときも感じたのですが、遊覧船の職員の皆さん、高齢の方もおられながら動作がきびきびとして無駄がなく、身なりも清潔で、大船社の職員顔負けの凛々しさ。かつては電力会社の直営だったそうですから、もしかしたら、そのころの雰囲気が今も受け継がれているのでしょうか。

(29年9月24日撮影)

(『庄川峡の船旅…10』につづく)

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タグ : 庄川遊覧船 庄川 絵葉書・古写真

庄川峡の船旅…8

(『庄川峡の船旅…7』のつづき)

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河道は発電所の正面で、右へほぼ90度曲がっているので、ゆとりをもって眺めることができました。名前は建屋の正面に、抜き文字で銘が掲げられているとおり「大牧発電所」。「関西電力 大牧発電所」(水力ドットコム)によれば、昭和19年5月18日運用開始、山を越えた利賀ダムより取水しているとのこと。

建屋がきれいに整備されているせいか、こぢんまりとまとまった風情が模型的というか、どこかメルヘンチックに見えて素敵。建屋の正面にある排水路からは、水が小瀑布をつくって流れており、稼働中であることを示していました。

211142.jpg戦中竣工の発電所があるということは、どこかに船着場があるはず。今は林道レベルの道は通じているようですが、当時なら庄川航路を頼る以外なかったでしょうからね。

目を凝らしていたら、右手にありました。すっかり木々に覆われているけれど、コンクリート製でかなりな規模の立派なもの。街灯や手すりの様子から、廃止はそう古くないように思えました。

211143.jpg山裾が落ち込む左手に、目的地、大牧港が見えてきました! 安着を知らせるためでしょう、着桟前にボーッと長声一発が鳴らされ、それがまたこの地の山深さをいや増して、ちょっと感動。

木々が枝をさしかけた下に、ささやかな桟橋と1隻のプレジャーがポツリと浮いています。で、有名な大牧温泉の建物は?

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ここでアナウンスがあり、いったん大牧温泉の前を一巡してから、転回して桟橋に着けるとのこと。船は行き足を落としたまま、桟橋のある突端をかわして‥‥おお!

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狭隘な斜面にすがり、水面に張り出すようにして建つ大牧温泉旅館!もっと苔生したような建物を想像していたのですが、 こちらも発電所同様、美しく整備されています。確かにこれだけで、船をひと巡りさせて眺める価値がありますね。
撮影地点のMapion地図

(29年9月24日撮影)

(『庄川峡の船旅…9』につづく)

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タグ : 庄川遊覧船 庄川

庄川峡の船旅…7

(『庄川峡の船旅…6』のつづき)

211136.jpg庄川橋梁から2度の屈曲を過ぎたあたりで、川幅がぐっと狭まってきました。水際の様子も少し変化してきて、谷の出口にささやかな扇状地ができていたり、崩壊した土砂が溜まって渚を作っていたりと、今までとは違った河相に。

そんな水辺を観察していたら、あるものに目線が吸い寄せられました。


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崩壊した大小のゴロタ石が積もって、小さな岬状をなしたような上に、先ほど利賀大橋跡でも見かけた、道路標識のようなものが。

今回のこれは「22」‥‥あれ? さっきのは「8」だったよね? 表裏同じ標識を対にして、上下航どちらからも見られるようにしてあります。てっぺんには再帰反射板らしきものも付けてあって、夜間の視認性も考えられているようです。通航船に向けた、何かの標識には間違いなさそうですね。

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もっとありそうだと目で探していると、間なしに「23」が現われました。う~ん、これは何だろう? 今まで気づいたものだけで判断すると、岬状に突出した地形の先端を選んで、設けられているようですが‥‥。

浅瀬や暗岩など、航路の障害を示すなら、もっと目立つ標識にするはず。何より、番号を振る理由がよくわかりません。首をひねりつつ、引き続き岸を眺めていると‥‥。

211139.jpg24」が出ました。今度はさほど突出した地形でないので、航路障害説も薄くなったような。降りるときにでも、乗り組みさんにきちんと訊いておくべきでした。

急カーブの多い峠道で、「R=××」のようにカーブ毎に番号を振るのは見たことがありますから、その伝でいけば突出のカウントと、里程標を兼ねたようなものかしら。

謎のままでお恥ずかしいかぎりですが、現役河川航路の標識ということで、興味をそそられる存在ではあります。ともあれ、ヨッキれん氏が「双竜湖(小牧ダム)に架かる巨大廃橋(跡) 後編」で述べられていた、速度制限標識でないことだけはわかりました。

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さらに狭まった河道を、直角に近い屈曲で抜けた先、水際を切り開いた平地に、大型の建物が見えてきました。発電所ですね!
撮影地点のMapion地図

(29年9月24日撮影)

(『庄川峡の船旅…8』につづく)

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