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富岩運河で遊ぶ…4

(『富岩運河で遊ぶ…3』のつづき)

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緊急時の脱出経路図が掲げてありました。側面図を含めた甲板ごとの配置図にもなっていて、各ハッチの位置や法定装備品の収納場所から、電池を含む動力のレイアウトまで、略図でわかりやすく描かれており、興味深く拝見。

バウスラスターのトンネルも、ちゃんと描かれているあたりが嬉しくなります。アウトドライブ‥‥プロペラと舵が一体になったようなユニットが、船底よりあまり出っ張っていないのは意外な感じがしましたが、これは後でその効能を確認することになりました。

特に目立つのは、主な動力源たる蓄電池の存在です。2区画に振り分けられた6群のバッテリーユニットは、全長の実に半分近くを占め、2基ある電動機も、図の上では船外機とさして変わらない大きさに見えます。重量も相当なものでしょう、ガソリンエンジンにくらべて余剰馬力は決して多くないでしょうから、操縦には高い技量が求められるに違いありません。

175017.jpg法定掲示をもう一つ。旅客定員56名、16総tとのこと。船主は富山県で、これはガイドさんの説明でも触れられていました。

タイミングよく、先月末購入した月刊「世界の艦船」2015年8月号に、「新造船紹介」のページで本船が大きく紹介されていましたので、スペックを抜き書きさせていただきましょう。

船質アルミ、全長17.8m、幅3.3m、深さ1.25m。推進システムは大洋電機・TIT-200L型電動機2基・2軸、出力各22kW、ドライブユニットはヤンマーSZ203型。最高速力6kt以上、巡航4kt。造船所は尾道のツネイシクラフト&ファシリティーズ。

顔をのぞかせていた船外機が、スズキDF100Aだとすると、最大出力は73.6kWとありました(SUZUKI 『DF140A/DF115A/DF100A』より)。蓄電池6群と電動機2機で44kW、これは比較の対象にするのはおかしいのかもしれませんが、内燃機関は動力源としてコンパクトなのだなあ、と実感。屋根一面にはソーラーパネルを敷きつめ、太陽光発電で充電しているむね、ガイドさんからも説明がありましたが、夜間、外部からの充電はどれくらい必要なのでしょう、質問しておけばよかった‥‥。

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船への関心はさておいて、「ふがん」はスラスターをふかして桟橋を離岸、岩瀬運河を西に向かってまずは港内へ。運河の出口近くから港内に出るまでは、乗り組みさんが一人バウに出て、ワッチに立ちます。あそこで運河を眺めてみたい‥‥。

風の影響を考えてか、それとも流速があるのか、船長はここで船外機を始動、スロットルをわずかに押して加速していました。もっとも、エンジンを使ったのはこの前後の短い区間だけで、あとは水音が聞こえるような、静かでのんびりとした航行ぶりが楽しめました。

175019.jpg「ふがん」は岩瀬運河を出て、大きく左に舵を切りました。むう、さっきまで陽が差していたのに、雲がだんだん厚くなって、薄暗くなってきた‥‥。降り出さないように、心の中で祈る船頭。

前回と違って、港内はひっそりしています。本船が一隻だけ接岸しているのが見えますね、近くを通るので、船名くらいは確認できそうです。


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黒い船体を、すれ違いざまズームでたぐって。船名は「鶴宝丸」、帰宅後に検索してみたら、鶴見サンマリン(『自社船舶』参照)の持ち船と判明。内航白油(灯油やガソリンなどの総称)タンカー、3869tとありました。

(27年6月20日撮影)

(『富岩運河で遊ぶ…5』につづく)

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タグ : 岩瀬運河富岩水上ライン水上バス富山港

富岩運河で遊ぶ…3

(『富岩運河で遊ぶ…2』のつづき)

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175012.jpgお客さんが降りたのを見計らって、桟橋に達着した「ふがん」に近づいてみました。この角度から見ると、丸みを帯びた船尾のデザインが目立ち、なかなか愛嬌があります。

船尾水線近くにのぞく推進機は、2軸見えるドライブが主機で電動、真ん中のスズキ100馬力船外機は、あくまで補機だそう。この船は電動船なのです。電動で2軸というのは、珍しいのではないでしょうか。

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操舵室後ろの入口で、乗り組みの方に迎えられ、改札と同時に救命胴衣を渡されます。船室内は新造船らしくきれいでシンプルな内装、座席は右舷3人、左舷2人掛けの配置。日和もよかったせいか、側面の窓ガラスはすべて取り外され、気持ちのよい風が抜けてゆきます。

しかし、これだけの収容力がある船だと、救命胴衣を配り、着用の指導をするだけもひと手間ですね。各地の水路で観光船や水上バスを楽しみましたが、オープン艇でも救命胴衣なしの船社も少なくないのは、考え方の温度差というより、割ける人手や着脱の面倒があるのかもしれません。

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後部は開放デッキですが、雨天や寒気に備えてでしょう、三方にビニールカーテンを張れるようになっていました。天井高が船室と違わないのと、船尾の装飾もあって視界は広くなく、眺望の点では船室内とあまり変わりません。

シートはクッション付きベンチが4列。遊歩甲板として眺めを楽しむ場所というより、着席収容力重視の考え方が感じられました。全部に密閉船室、後部に開放デッキというレイアウトは、水上バススタイルとしてオーソドックスなものながら、他の船社、特に新潟のそれ(『新潟の水上バス…2』以下参照)などとは、考え方が異なるようです。

175015.jpg操舵室は収納棚で囲われているのみで仕切りはなく、コンソールをのぞき込めるという点が嬉しいところ。GPS魚探ももちろん装備されているので、道々水深もチェックできますね。楽しみです!

コンソールの左手は通路になっていて、フロントグラスの下に小さなハッチがあり、バウデッキへ出られるようになっていました。繋留作業を考えてのことでしょう。

(27年6月20日撮影)

(『富岩運河で遊ぶ…4』につづく)

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タグ : 岩瀬運河富岩水上ライン水上バス

富岩運河で遊ぶ…2

(『富岩運河で遊ぶ…1』のつづき)

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テラスが橋桁の下を貫いて設けられているので、橋の裏側も気軽に楽しめます。

梁も筋違もリベット組み、後年の増設部分もないようで、原型のままらしいですね。相応の古び方をした構造を透かして、木の枕木や錆色のレールがのぞいていました。

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175008.jpg鉄橋をはさんで西側から、岩瀬運河の奥を望んで。櫛型のポンツン桟橋に、プレジャーボートがずらり。フィッシングタイプのボートが多いところを見ると、プレジャーばかりでなく、漁師さんが多いのかもしれません。一番奥まで行ってみたいなあ。

水面をのぞき込んでいたら、いいタイミングで電車がゴオッと通過。ちょうど一編成がしっくり収まりそうな長さで、低い桁が小さな車輌によく似合います。

175009.jpg対岸橋詰近くの線路沿いに見えるこれが、富岩水上ラインの岩瀬カナル会館船着場。ポンツン桟橋にアクリル屋根つきの待合ベンチ、壁面には航路案内図と、ひととおりストラクチャーも揃った立派なもの。

もっとも、カナル会館の本屋(ほんおく)からはだいぶ離れた位置にあるので、使い勝手の点はどうでしょう。正面の水際にはプレジャーの繋留施設があり、動かすのも手間ですから、難しいところではあります。

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カナル会館前に戻って間もなく、岩瀬橋をくぐって船が姿を現しました。本年3月に就航したばかりのフラッグシップ、「ふがん」!

お客さんを満載して、微速で静々と進んでくる悠揚迫らぬ姿。今さらながら、富山の運河群に新時代が訪れていたことを感じさせた一瞬でした。
撮影地点のMapion地図

(27年6月20日撮影)

(『富岩運河で遊ぶ…3』につづく)

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タグ : 岩瀬運河富岩水上ライン水上バス橋の裏側

富岩運河で遊ぶ…1

175001.jpg6月20日はお休みをいただいて、翌21日とあわせ、富山を訪ねてきました。19年8月8日に訪ねて以来、実に8年ぶりです(過去ログ『岩瀬運河…1』以下参照)。前回はなかった、富岩運河の定期観光船も就航してはや6年。閘門通航が楽しめる航路ということもあり、かねがね一度乗ってみたいと思っていたのです。

再訪のハードルを下げたのは、やはり北陸新幹線の開通が大きいでしょう。東京駅より、ピカピカの新車「かがやき」に乗っていざ出発。


175002.jpg東京よりわずか2時間と14分。もう本当に早い。飛行機という手もありますが、羽田まで電車を乗り継ぎ、長い通路を歩く手間を考えれば、乗り換えなしで中心地に出られる便利さはいわずもがな。子供のころ、座席夜行急行「越前」で、一晩かけてたどり着いたことを思うと、夢のようです。

駅に降り立って、街並みがずいぶん変わったのに驚かされました。中でも素敵だったのが、この市内線ターミナル! 市電も数少なくなった今、富山の路面電車網は国内屈指の規模。ターミナルが立派なのもうなずけます。

175003.jpg北口に回り、前回同様ポートラムに乗って、終点岩瀬浜を目指すことに。岩瀬カナル会館前の船着場から出る、遡上便を予約したからです。

こちらも駅前近くは路面区間があって、乗っているだけで楽しくなる路線でもあります。




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岩瀬カナル会館に到着。8年前と変わらない(たぶん)たたずまい。以前と違うのは、単なる運河に面した物産館ではなく、運河をゆく定期船乗り場としての機能も兼ね備えるようになったこと。名実ともに「カナル会館」になったのであります。

出発まで少し時間があるので、足早に岩瀬橋を渡り、対岸のテラスへ。一つ見ておきたいものがあったのです。

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カナル会館の東にあるのは、この古そうな鈑桁橋。さっき電車で渡ってきたばかりの、富山ライトレールの鉄橋です。

ご覧のとおりリベット組みで、簡素ながら震災復興橋と近い世代であることを思わせるもの。大正13年に私鉄として開業、後に買収され国鉄富山港線となったそうですから、まず開通当初からあるものとみて間違いなさそうです。
撮影地点のMapion地図

(27年6月20日撮影)

(『富岩運河で遊ぶ…2』につづく)

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タグ : 岩瀬運河富岩水上ライン