奥阿賀遊覧船…5
(『奥阿賀遊覧船…4』のつづき)

●船は次第にスロットルをしぼって、大きく舵を切りました。まだ奥へ遡上したい気もするので、ちょっと残念ではありますが、ここが折り返し地点です。幸い雲も次第に薄くなり、明るくなってきました。
下流側に目を向けてみると、あれほど広がっていた引き波が、ほぼ消え失せていたのに驚かされました。スゥーッと吸収されたように、もとの水鏡に戻ってゆくさま‥‥。無風と川幅、そして両岸の環境がなせるわざだとはわかったものの、どこか表面張力の強い、油か何かの上を走っているような気すらしたものです。
●帰路、倒木の上で憩う鷺(?)にカメラを向けたものの、残念、白飛びしてしまいました。水鳥の姿は、平野部の河川よりかえって少ないようです。
帰りの道々、船頭さんと雑談の中で、平成24年7月の大増水が、流域へいかに被害をもたらしたかを教えていただいたのですが、このあたり後のお話しとも関連してくるので、回を改めて触れるとしましょう。
●山間の清浄な空気と緑濃い川景色、そして水鏡を堪能したおよそ40分の船旅も、これにておしまい。桟橋にはすでに法被を着たスタッフが出て、もやいを取る準備をしていました。
船頭さん、桟橋左側で待っている「第二奥阿賀丸」に乗り換え、間髪入れずに出港しなければならないとのこと。お疲れさまです、そしてありがとうございました!

●桟橋に達着する直前、鹿瀬ダムの表情をものしておこうと、ズームでたぐって一枚。
アップでゲートを眺めてみると、昭和3年竣工の歳相応というか、堰柱の肌や巻上機室の雰囲気が、いかにも星霜を経た風格がありますね。表のディテールも見てみたいので、後でダムサイトに寄り道してみよう。

●桟橋から階段を上がると、団体さんを乗せた「第二奥阿賀丸」が、後進で離岸するところでした。
水面に枝をひたす、濃厚な対岸の森をバックに、静穏な水面を分ける屋形船‥‥街場とは違った、船のある山間の川景色。以前訪ねた最上川のように、急流を下る豪快さとはまた違った魅力が味わえて、よいものでした。
(28年5月28日撮影)
(『鹿瀬ダム拝見』につづく)

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●船は次第にスロットルをしぼって、大きく舵を切りました。まだ奥へ遡上したい気もするので、ちょっと残念ではありますが、ここが折り返し地点です。幸い雲も次第に薄くなり、明るくなってきました。
下流側に目を向けてみると、あれほど広がっていた引き波が、ほぼ消え失せていたのに驚かされました。スゥーッと吸収されたように、もとの水鏡に戻ってゆくさま‥‥。無風と川幅、そして両岸の環境がなせるわざだとはわかったものの、どこか表面張力の強い、油か何かの上を走っているような気すらしたものです。

帰りの道々、船頭さんと雑談の中で、平成24年7月の大増水が、流域へいかに被害をもたらしたかを教えていただいたのですが、このあたり後のお話しとも関連してくるので、回を改めて触れるとしましょう。

船頭さん、桟橋左側で待っている「第二奥阿賀丸」に乗り換え、間髪入れずに出港しなければならないとのこと。お疲れさまです、そしてありがとうございました!

●桟橋に達着する直前、鹿瀬ダムの表情をものしておこうと、ズームでたぐって一枚。
アップでゲートを眺めてみると、昭和3年竣工の歳相応というか、堰柱の肌や巻上機室の雰囲気が、いかにも星霜を経た風格がありますね。表のディテールも見てみたいので、後でダムサイトに寄り道してみよう。

●桟橋から階段を上がると、団体さんを乗せた「第二奥阿賀丸」が、後進で離岸するところでした。
水面に枝をひたす、濃厚な対岸の森をバックに、静穏な水面を分ける屋形船‥‥街場とは違った、船のある山間の川景色。以前訪ねた最上川のように、急流を下る豪快さとはまた違った魅力が味わえて、よいものでした。
(28年5月28日撮影)
(『鹿瀬ダム拝見』につづく)

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奥阿賀遊覧船…4
(『奥阿賀遊覧船…3』のつづき)
●今までは深い谷の連続で、四周見回すかぎり山肌だった視界が、ふと開けてきたのに気づかされました。
稜線が引いて、空が次第に広くなってゆくこの感覚、どこかワクワクさせるものがありますね。左前方には、またもスノーシェッドの柱列がのぞけてきました。今度はかなり長いもののようです。

●規模が大きいのと、水際ギリギリまで迫った姿が印象的で、真ん中あたりはご覧のとおり錆色の鋼矢板で固められた区間もあり、水鏡に映える物件ではあります。
船頭さんによると、この鋼矢板は平成23年7月の増水で被害があったのを、補修したものなのだとか。激しい流速で、護岸が壊れ洗掘されてしまったのでしょう。
●開けたところは、どうやら河道が右手へ大屈曲する区間で、屈曲の内側には狭いながら、平地があるように見えます。灌木がぽつぽつと立つ小さな沖積地(?)、どこか、別天地のおもむきがありますよね。
あっ、前方の岸にコンクリートらしい構造物が! 見え隠れする道路以外、人工のものが乏しい水辺が続いていただけに、この出現には正直、色めき立ちました。

●おおお、桟橋だ! 床下水際に鋼矢板がのぞけているところを見ると、杭を打ち込んだ上に板を載せた構造でなく、埋め立てて造ったようで、相当な荷重を見込んでいるように思えました。
重厚な造りとうらはらに、側面は石垣風の化粧板で装飾され、柵も備えられと、無骨なタイヤのフェンダーがなければ、観光用桟橋と見まがう外観。左手に電柱が立っていることからもわかるように、桟橋右角に2本、スポットライトらしい照明まで備えられています。
これはどう見ても、工事のために設けられたものに違いないでしょう。先ほどのスノーシェッド下の鋼矢板とか、護岸工事に携わった台船などが、資材を搭載するために造られたのではないでしょうか。遊覧船の乗降場としてもよさそうですが、立地が山奥に過ぎるかもしれません。

●大屈曲区間の中ほどまで来ました。内側に広がった小さな平地、近づいてみると、その雰囲気の佳さは思った以上でした。
周りを囲む山並みをバックに、ひとかたまりの林が水に影を映す、静かな川景色。かつては集落があったに違いない、そう思わせる素敵な風景でした。
【撮影地点のMapion地図】
(28年5月28日撮影)
(『奥阿賀遊覧船…5』につづく)

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稜線が引いて、空が次第に広くなってゆくこの感覚、どこかワクワクさせるものがありますね。左前方には、またもスノーシェッドの柱列がのぞけてきました。今度はかなり長いもののようです。

●規模が大きいのと、水際ギリギリまで迫った姿が印象的で、真ん中あたりはご覧のとおり錆色の鋼矢板で固められた区間もあり、水鏡に映える物件ではあります。
船頭さんによると、この鋼矢板は平成23年7月の増水で被害があったのを、補修したものなのだとか。激しい流速で、護岸が壊れ洗掘されてしまったのでしょう。

あっ、前方の岸にコンクリートらしい構造物が! 見え隠れする道路以外、人工のものが乏しい水辺が続いていただけに、この出現には正直、色めき立ちました。

●おおお、桟橋だ! 床下水際に鋼矢板がのぞけているところを見ると、杭を打ち込んだ上に板を載せた構造でなく、埋め立てて造ったようで、相当な荷重を見込んでいるように思えました。
重厚な造りとうらはらに、側面は石垣風の化粧板で装飾され、柵も備えられと、無骨なタイヤのフェンダーがなければ、観光用桟橋と見まがう外観。左手に電柱が立っていることからもわかるように、桟橋右角に2本、スポットライトらしい照明まで備えられています。
これはどう見ても、工事のために設けられたものに違いないでしょう。先ほどのスノーシェッド下の鋼矢板とか、護岸工事に携わった台船などが、資材を搭載するために造られたのではないでしょうか。遊覧船の乗降場としてもよさそうですが、立地が山奥に過ぎるかもしれません。

●大屈曲区間の中ほどまで来ました。内側に広がった小さな平地、近づいてみると、その雰囲気の佳さは思った以上でした。
周りを囲む山並みをバックに、ひとかたまりの林が水に影を映す、静かな川景色。かつては集落があったに違いない、そう思わせる素敵な風景でした。
【撮影地点のMapion地図】
(28年5月28日撮影)
(『奥阿賀遊覧船…5』につづく)

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奥阿賀遊覧船…3
(『奥阿賀遊覧船…2』のつづき)

●左手、垂直に近い岩肌が露出したあたりに、スノーシェッドの柱列が見られました。本来なら地表区間になるところを、頑丈そうなひさしですっかり覆ってしまっているあたり、冬の雪深さが察せられます。
左舷側から後ろに目を向けると、てろりとした平らかな水面と、それを裂くような引き波の境界線が対照的で、しばらく見入ってしまいました。

●緑の山肌だけでなく、だんだんと岸壁が露出したところが散見されるようになり、峻険な雰囲気になってきました。川面から山頂近くまで、ぐっと立ち上がる岩塊、迫力がありますね。
ここにも赤く塗りあげた、鋼製のスノーシェッドが見られます。ちなみにこの道は、国道459号線で、岩山を貫く素掘りトンネルと、スノーシェッドが連続する名うてのルートなのだとか。ご存知ヨッキれん氏が「山さ行がねが」で、「国道459号 和風月名隧道及び橋梁群」として、詳しくレポートされています、ご参考まで。
●ここで船頭さん、「もうすぐ名物『ハートの木』が右手に見られますよ! ゆっくり走りますから、探してみてください!」と、ひと調子高い声で案内してくれました。
どれどれ、どのあたりが「ハート」なのかしらと、物見高く窓から首を突き出していると‥‥あっ、あれかな? なるほど、木のウロがちょっといびつなハート形だ! 童話の中で出てくるような、物知りなフクロウの爺さんが住んでいそうな感じですね。

●見上げる風景はさらに険しさを加え、グレーの岩肌が大きく露出したところにさしかかりました。特にこの、少し岬状に突き出した岩塊、見事の一言に尽きる迫力。
写真がまずいので、いま一つ素晴らしさをお伝えできないのですが、寄る辺のない岩肌から、けなげに幹を伸ばす松の枝ぶりが素晴らしく、大陸は三峡の難所もかくやと思わせるような風景でした。
(28年5月28日撮影)
(『奥阿賀遊覧船…4』につづく)

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左舷側から後ろに目を向けると、てろりとした平らかな水面と、それを裂くような引き波の境界線が対照的で、しばらく見入ってしまいました。

●緑の山肌だけでなく、だんだんと岸壁が露出したところが散見されるようになり、峻険な雰囲気になってきました。川面から山頂近くまで、ぐっと立ち上がる岩塊、迫力がありますね。
ここにも赤く塗りあげた、鋼製のスノーシェッドが見られます。ちなみにこの道は、国道459号線で、岩山を貫く素掘りトンネルと、スノーシェッドが連続する名うてのルートなのだとか。ご存知ヨッキれん氏が「山さ行がねが」で、「国道459号 和風月名隧道及び橋梁群」として、詳しくレポートされています、ご参考まで。

どれどれ、どのあたりが「ハート」なのかしらと、物見高く窓から首を突き出していると‥‥あっ、あれかな? なるほど、木のウロがちょっといびつなハート形だ! 童話の中で出てくるような、物知りなフクロウの爺さんが住んでいそうな感じですね。

●見上げる風景はさらに険しさを加え、グレーの岩肌が大きく露出したところにさしかかりました。特にこの、少し岬状に突き出した岩塊、見事の一言に尽きる迫力。
写真がまずいので、いま一つ素晴らしさをお伝えできないのですが、寄る辺のない岩肌から、けなげに幹を伸ばす松の枝ぶりが素晴らしく、大陸は三峡の難所もかくやと思わせるような風景でした。
(28年5月28日撮影)
(『奥阿賀遊覧船…4』につづく)

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奥阿賀遊覧船…2
(『奥阿賀遊覧船…1』のつづき)
●「第一奥阿賀丸」の、船尾から船首方向を見たところ。屋形船というと、船室の高さが取れないことから側面の窓も天地が狭く、眺望の点ではいま一つという印象があるのですが、こちらはご覧のとおり窓が大きく、天井高もあるので明るく広々とした感じ。
考えてみれば、全高を制約する橋がないのですから、天地に余裕があるのも道理であります。窓も船首側の扉も全開で、気持ちのよい山間の空気を浴びながらの遊覧となりました。
●貸し切り状態でもあることだし、船首扉に陣取って、左手の操舵室で舵を取る、船頭さんの話に耳を傾けながら、前面展望を特等席で楽しむことに。
あっ、開け放たれた扉の表面に、造船所の銘板が。新潟市の田中造船所建造、進水年はわかりませんでした。完成したのをトレーラーで搬入したのか、分割して現地で組み立てたのか‥‥。

●さて、鹿瀬ダムは後ほどゆっくり眺めるとして、船頭さんご推奨の、水鏡がおりなす風景は如何と乗り出してみると‥‥。
おお! 水面に裾を接するもくもくと緑濃い山肌が、くっきりと姿を映すまさに水鏡! 細波一つない川面を、一本ミヨシで切り裂いてゆくこの爽快さ。船頭さんが自慢するだけありますね!

●左手、森の間からヌッ、といった感じでトラス橋が姿を現わしました。荒砥沢なる小渓谷の落し口を渡るこの橋の名前は、睦月橋というそう。
水鏡に映る真紅の塗装は、マゼンタの色味を強くし過ぎた印刷物のような、一種毒々しいとも思えるほどの鮮やかさです。下部にシートがかかっているところを見ると、塗り替えたばかりなのかもしれませんね。
【撮影地点のMapion地図】

●水面に落ち込む山裾で、閉じていると錯覚するほどの深い谷間が、船が進むほどに開け、さらに新たな水面が奥に見えてくる! この分け入ってゆく面白さ、山深い当地でなくては味わえません。
ダムで分断されているとはいえここも河道、「山間の可航河川」には違いなく、平野部のそれとは全く違った川景色を、存分に堪能できそうです。
(28年5月28日撮影)
(『奥阿賀遊覧船…3』につづく)

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考えてみれば、全高を制約する橋がないのですから、天地に余裕があるのも道理であります。窓も船首側の扉も全開で、気持ちのよい山間の空気を浴びながらの遊覧となりました。

あっ、開け放たれた扉の表面に、造船所の銘板が。新潟市の田中造船所建造、進水年はわかりませんでした。完成したのをトレーラーで搬入したのか、分割して現地で組み立てたのか‥‥。

●さて、鹿瀬ダムは後ほどゆっくり眺めるとして、船頭さんご推奨の、水鏡がおりなす風景は如何と乗り出してみると‥‥。
おお! 水面に裾を接するもくもくと緑濃い山肌が、くっきりと姿を映すまさに水鏡! 細波一つない川面を、一本ミヨシで切り裂いてゆくこの爽快さ。船頭さんが自慢するだけありますね!

●左手、森の間からヌッ、といった感じでトラス橋が姿を現わしました。荒砥沢なる小渓谷の落し口を渡るこの橋の名前は、睦月橋というそう。
水鏡に映る真紅の塗装は、マゼンタの色味を強くし過ぎた印刷物のような、一種毒々しいとも思えるほどの鮮やかさです。下部にシートがかかっているところを見ると、塗り替えたばかりなのかもしれませんね。
【撮影地点のMapion地図】

●水面に落ち込む山裾で、閉じていると錯覚するほどの深い谷間が、船が進むほどに開け、さらに新たな水面が奥に見えてくる! この分け入ってゆく面白さ、山深い当地でなくては味わえません。
ダムで分断されているとはいえここも河道、「山間の可航河川」には違いなく、平野部のそれとは全く違った川景色を、存分に堪能できそうです。
(28年5月28日撮影)
(『奥阿賀遊覧船…3』につづく)

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奥阿賀遊覧船…1

●5月28日土曜日はお休みをいただいて、翌29日日曜日と合わせ2日間、新潟県は阿賀野川を訪ねてきました。
昨年11月に訪ねた最上川同様、山間を流れ下る急流河川として、また豊富な流量から幾多のダムが建設された川としてつとに知られていますが、こちらにも川を走る遊覧船があることを知り、かねてから一度乗ってみたいと思っていたのでした。
早朝の新幹線で新潟に出て、3輌編成の快速「あがの」で、磐越西線の鹿瀬(かのせ)駅を目指します。ディーゼルカーに乗るのは久しぶりで、ちょっとウキウキ。

爆音も高らかに走ること1時間10分、鹿瀬駅に到着。結構な人数のお客さんが下りたのは、対岸下流に麒麟山温泉、上流に鹿瀬温泉と、保養地に恵まれているからでしょうか。

すでに電話で予約はしてあったので、手続きを済ませてから、今回乗る船とのご対面をしようと、外に出てみました。

●河畔に出ると、岸を掘り込んで護岸で固めた船溜に、二隻の屋形船がもやっているのが見下ろせました。乗るのは手前の「第一奥阿賀丸」。
新緑の木立に囲まれた河畔は、シーンとして音もなく、水面も静謐そのもので鏡のよう。向こうにはすでに、鹿瀬ダムの一部がのぞけていることからもわかるように、ここは阿賀野川の河道とはいえ、ダム湖でもあるのです。

●船頭さんから声がかかり、いそいそと乗船。船外機の爆音が静けさを破るように響き、10:00発の第一便は後進で桟橋を離れました。お客は我々のみ、貸し切り状態でしたが、この後の便は団体さんで満員御礼とのこと。イヤ、第一便に予約しておいてよかったです。
河道中央に出るとさっそく、鹿瀬ダムのゲートが文字どおり、ズラリと並ぶ姿が下流側に遠望できました! 曇っていたのが残念でしたが、船頭さんによればこの曇天のおかげで風がなく、最高の水鏡が楽しめるとのこと。なるほど、ダムのゲートもくっきりとした倒立像が眺められて、川景色としては実に新鮮なものが。山間さらに深く分け入ってゆくこの後、どんな風景が楽しめるでしょうか。
【撮影地点のMapion地図】
(28年5月28日撮影)
(『奥阿賀遊覧船…2』につづく)

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