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雨の大河津にて…6

(『雨の大河津にて…5』のつづき)

256031.jpg閘室内のディテールにも少し目を向けてみましょう。右写真は前扉室のバイパスゲートで、長い丸棒のロッドで天端近くの巻上機とゲートを結んでいます。きれいに凹部に収められた巻上機周りは、ガードフレームと金網で守られているのが目を引きますね。巻上方式はスピンドルなのか、油圧シリンダーなのかはわかりませんでした。

下は側壁の低まったところに設けられていたハシゴ。帯金材に丸棒を溶接したオーソドックスなつくりですが、水面近くがフェンダーで被覆されたようになっており、接舷した艇への気遣いが見られる点、高感度大(?)です。

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各地の閘門を訪ねて、閘室内のハシゴについてたびたび触れているので、妙なやつだと思われるでしょうが‥‥。通航艇が接舷して艇を傷つけたり、逆にハシゴを壊したりしてはことと、気になってしまう性癖があるのです。

ちなみに私のハシゴ一番推しは、鍋川閘門にあったような、フェンダー一体型のタイプ。

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後扉室のマイタゲートを眺めて。扉体の天地寸法があるマイタゲートの存在感たるや。河口から遠く60㎞あまりを隔てたここに、整備された可動状態の閘門が在る、という事実に、可航河川と通航施設愛好者としては、深い感動を覚えるわけであります。

河口からの道のりとしては、江戸川の関宿閘門も似たようなものですが、あちらは扉体が腐朽し、閘門としての働きを止めすでに久しく、おまけに道中も可航状態といい難い荒廃ぶりとくれば、大河津の存在がいかに光るものがあるか、おわかりいただけるでしょう。

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雨のぱらつきが次第に強くなってきた中、洗堰を離れてすぐ下流にある本川橋へ。少し距離がありますが、正面から閘門の扉体を眺めてみたいと思ったのです。

神の助けか、何と橋詰に着いた瞬間、洗堰に薄陽が差した! この貴重な一瞬を逃すまじと、あわててシャッターを切ったのはいうまでもありません。

256035.jpg閘門径間を正面からとらえるべく、本川橋を渡って南詰近くへ。雲の動きは速く、たちまち陽は陰ってしまいましたが、明るさの残っているうちにマイタゲートを写すことができました。

上流側から見た水面とこちらの水面の高さの差‥‥閘程が、扉体の継手から看取でき、来てよかったとしみじみ。雨にたたられた一方幸運にも恵まれて、有意義な時間を過ごすことができました。
撮影地点のMapion地図

(令和2年10月24日撮影)

(『栗ノ木排水機場舟通しを訪ねて…1』につづく)

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タグ : 信濃川大河津洗堰大河津洗堰閘門閘門

雨の大河津にて…5

(『雨の大河津にて…4』のつづき)

256026.jpg洗堰の東岸、下流側に出てみました。水音はますます激しく、こちらから見ると堰柱の頂部まで石張りが及んでいることも手伝い、西洋の古城のおもむき。

閘門は写真の左端ですが、堰の径間から吐き出される落差の波立ちと流速は結構なもので、船の通航時は針路の保持に苦労しそうではありますね。


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閘門径間をアップで。逆流防止用扉体の戸袋を設けた分、奥行きがあるため後扉室のマイタゲートは拝めませんでしたが、赤を現示する信号と監視カメラが、航路であることを感じさせてくれます。

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堤防を駆け上がり、前扉室を訪ねるべく先ほど目にしたもう一つの管理橋へ。橋詰には写真のような案内板があり、分水公園のレイアウトが一目瞭然です。

天候が安定していれば、時間をかけて全体をじっくり見て回れたのですが‥‥。今回は、閘門を愛でられるだけの時間、雨が上がっていたことだけでも、幸いとしなければなりますまい。

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256030.jpg前扉室上から下流側を眺めたところ。60mの閘室長を改めて実感。

右写真、前扉室の扉体は、後扉室のそれよりだいぶ低く造られていますね。また扉体上に歩み板を設けてあるのも大きな違いです。こちらは管理橋がないので、点検通路の確保を考えたのでしょう。
左に見える信号灯器の裏面には、「株式会社京三製作所」の銘板がありました。

撮影地点のMapion地図

(令和2年10月24日撮影)

(『雨の大河津にて…6』につづく)

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雨の大河津にて…4

(『雨の大河津にて…3』のつづき)

256021.jpgお待ちかね、閘門です。これをひとめ見るために、ご当地を訪ねたといってもいい過ぎでないほど。いや、この堂々たる側壁! しかも堰柱と揃えてこの面積が石張りなのですから、豪奢な感じすらします。

堰併設の閘門だと、堰の下流側に閘室があり、前扉が堰の一部を構成する例が多いように思えますが、この洗堰は上流側に閘室を伸ばし、後扉を常時閉としていました。

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管理橋上から上流側、閘室を眺めたところ。100m超の延長はさすがにボリュームがあり、高さもあいまって結構な迫力。側壁の中間が低めてありますが、後扉が堰の扉体を兼用しているので、閘室側壁は計画高水位を割っても問題がないからでしょう。

両側壁に計3基の階段、点対称に配置された信号とタレット式の監視カメラ、手前には両側に排水用のバイパスゲートと、諸設備の配置が見て取れますね。左手奥には、堤防上から前扉室に至るもう一つの管理橋も見え、その下には魚道が走っています。

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管理橋の高欄から乗り出して、後扉室のマイタゲートをのぞいてみると‥‥うわ。天地寸法が大きいのと、裏面にもプレートを貼った扉体の広大な平面が織りなす相乗効果で、高さが強調されゾクゾクするような眺め。いや~、マイタゲートっていいですね! (閘門を見られたので喜びもひとしお)

256024.jpg前扉室周りをアップで。ここから扉体は見えないので、後でもう一つの管理橋を渡って、見に行ってみましょう。

先ほどから気になっていたのですが、向こうの水面に、点々と橋脚みたいなものが並んでいますよね。道路橋にしては橋脚が細く、また低すぎるし、人道橋か何かの痕跡かしら?

ここで閘門の緒元を。大河津資料館のサイトから引き続き引用すると、平成12年竣工、閘室長60m、幅員10mとありました。

物足りないので、「運河と閘門」をひもとき、巻末の「全国閘門一覧表」を繰ってみると‥‥あったあった、より詳細な寸法が。全長132.5m、閘室長60m、前扉~後扉後方逆流防止用扉間の寸法80m、閘頭部有効幅員10m、敷高からの堰柱高12.83mだそう。ん? 「後扉後方逆流防止用扉」って、何だろう?

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管理橋から下流側に目をやると‥‥これが「逆流防止用扉」。洗堰閘門、実は3組のマイタゲートを持っていたのです。横利根閘門のように、前後とも二組のマイタゲートを備えたタイプを「複式閘門」と呼びますが、後扉室のみのこの場合は、何と称したらいいのでしょう。

低水位側の背圧に耐えられればよいレベルの設備とあって、扉体の高さはずいぶん低いですね。洗堰を閉鎖し、可動堰を開いて全量を分水に“抜く”ような大増水時には、信濃川の方がわずかに高水位になることもありうる、ということでしょう。
撮影地点のMapion地図

(令和2年10月24日撮影)

(『雨の大河津にて…5』につづく)

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