国府台に魅せられて

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あるときふと、「江戸川の国府台を、久しく見ていないなあ」と気づかされて、過去の写真をほじくり返してみました。

過去ログのころから、すでに何度か触れましたが、東京近郊では数少ない、緑したたる台地の崖線が流路に迫る、いわば水路の景勝地といってもよいところです。

青空の下、もくもくとした豊かな森を河水が洗うような、いかにも国府台といった写真があったはず‥‥と探してみると、見られそうなのは上に掲げた、21年6月7日撮影のもののほか、数枚くらい。足かけ7年前とは、ずいぶんご無沙汰してしまったものです。

写真を眺めていたら、水が温み、葉の色も鮮やかになる新緑の季節に、久しぶりに訪ねてみたくなりました。遠目には布団をかぶせたような、どこかふわりとした質感の緑のライン、大屈曲のアウトラインを走る堤防が、大地の裾に吸い込まれてゆく独特の風情に、変わりはないでしょうか。

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(市川名所)鴻之臺附近江戸川ノ清流(水月堂發行)
宛名・通信欄比率1:1、大正7年4月以降の発行

上の写真と近い角度から撮った絵葉書があったことを思い出して、アルバムをひっくり返してみました。すでに「利根川高瀬舟の写真四題」でも、国府台を題材にした昔の絵葉書を2点紹介しているので、併せてご覧ください。

端舟を曳いた高瀬舟が、順風を得て続々と遡上する光景! これがカラーだったら、満々と風をはらんだ白帆が、バックの緑に映えて、目に沁みるような美しさだったことと思います。当時の写真師にも、「絵になる風景」として認識されていたのでしょうね。また、仮に撮影が大正の半ばだったとして、江戸時代とさして変わらぬ舟航風景が展開されていたことにも、興味を大いにそそられるものがあります。

関東はともかく、目を全国に広げれば、平野で山を間近に見る、あるいはちょっとした高台が迫る可航河川というのは、多くないとはいえ、決して珍しいものではないでしょう。

それでも、国府台にどこか「別格」という感じがしてしまうのは、自艇の行動範囲内という身内びいきもありましょうが、ここが関東の大水運時代を支えた、メインライン中のメインラインであったことが大きいと思います。大型川船がひきもきらず上下し、白帆が絶えることのなかった大河だったからこそ、こういった絵葉書の題材として、たびたび取り上げられたのではないでしょうか。

船影濃かったかつてはもちろん、今なお水路の名勝であることは疑いのない国府台ですが、いにしえを思い起こさせるイメージがあると、興趣ますますそそられるものがあります。おりしも水ぬるむ季節、金町の取水塔とあわせて、河水洗う新緑の台地を久しぶりに訪ねてみたいものです。


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江戸時代の彩色川舟図鑑「船鑑」に涙する

船鑑
船鑑(ふなかがみ)
川名登 著
A4横判 並製本 本文92ページ
2013年2月 船の科学館発行


昨年、それも前半に発行された本で、今さらの感もありますが、遅ればせながら紹介させてください。川舟たち、それも大水運時代といってよい、全盛期のフネブネのイメージを追い求める船頭としては、待望の一冊だったからです。

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利根川高瀬舟の写真四題

94001.jpg関東の水運時代を支えた、代表的大型川舟である利根川高瀬舟。「高瀬舟の写真があった!」でも絵葉書を一枚紹介しましたが、川風に白帆を上げて快走する姿をもっと見てみたい、と願っていたところ、天に祈りが通じたのか、素敵な絵葉書を何枚か入手することができました。

今回はその中から4枚、江戸川と利根川、また常陸利根川に白帆を映す高瀬舟の艶姿を、ご覧に入れようと思います。うち3枚は「写真集・利根川高瀬船」(千葉県立大大利根博物館刊・過去ログ『関宿城博物館で購入した書籍』参照)にも掲載されていたものですので、ご存知の方も多いでしょう。

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関宿水閘門と横利根閘門の写真

91001.jpg水運に関連した古い絵葉書の写真は、当然ながら岸や船上など、低い視点から撮影されたものがほとんどを占めています。

なので、高所から俯瞰したものというだけでも動悸が高まるのですが、加えて被写体が大好物の閘門で、それも昭和初期の撮影、さらに組で航空写真付きとくれば、確実にオフィシャルなものですから、動悸どころかお熱も上がろうというもの。
他にもさまざまな意味で印象深い4枚でしたので、熱の上がるにまかせてあれこれと、暑苦しく…もとい、アツく語ってみたいと思います。お付き合いいただければ幸いです。

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高瀬舟の写真があった!


少し遅くなりましたが、6月19日からのタイトル画像について。

先日、「川蒸気の絵葉書二題」で、「いずれ、利根川高瀬舟のいい写真にも出会えたら、同様にタイトルにして楽しんでみたい」と書いたら、願いが通じたのか、なな何と、我が家で高瀬舟の絵葉書が発見されたのです! まあ、「発見された」というのは大げさで、単に気づいていなかっただけのことですが。

連れが以前手に入れた、昔の絵葉書ホルダーの中の一枚にあったのですが、まさかそんなところに高瀬舟の絵葉書があるとは誰も思わず、「これ、高瀬舟じゃないの?」と見せられたときは、驚きかつ嬉しくなったものです。まさに灯台もと暗し。気づいてくれた連れに、大いに感謝しつつ、さっそくタイトルに掲げさせてもらいました。

この絵葉書ホルダー、立派な表紙を付けた経本折りの分厚いもので、主に関東の名所旧跡から、博覧会や兵隊さんの演習風景に至るまで、表裏100枚近い絵葉書が収められたもの。中の数枚は、大正11年に上野で開催された、平和記念東京博覧会の絵葉書であることから、その前後に蒐集されたものと見てよいでしょう。

水郷を写した絵葉書も、高瀬舟を含め何枚かありました。写真は香取神宮の津宮と、息栖神社の浜鳥居の絵葉書です。
(過去ログ『津宮』『息栖船溜…1』ほか参照)

さて、絵葉書の写真ですが、帆をいっぱいにふくらませて追風で快走する姿を見事にとらえており、大きく反った船首尾、扇形の巨大な舵の羽板、角張った船首と、高瀬舟独特のディテールも判別できる、素晴らしい写真です。

ちょっと残念なのは、光の加減か、または製版時のボカシ加工によるものか、かなり白飛びしてしまっているのと、高瀬舟の特徴の一つである、船首付近のセイジ(居住区)が、帆布か何かにおおわれているのか、ディテールが判然としないこと。ですが、一反一反に山を作りつつ、はちきれそうに風をはらんだ帆の躍動感は、それらを打ち消して余りあります。

撮影地は、背景だけではなんとも判別しがたいので、「利根の風景 香取ヶ浦」というキャプションに従い、香取付近の利根川としましたが、いかがでしょうか。違っていたらご教示をいただきたいものです。

この写真を見て、オッと目を引かれたのは、艫車立(帆柱を倒したときに、支えとなるコロ付きの柱で、船尾にあるもの)に艫帆として、小さな洋式の縦帆を上げていることでした。

このタイプの縦帆は、先日「川舟の帆のかたち」でご覧に入れましたが、横帆と縦帆を併用した川舟の写真は初見で、珍しいものと思います。横帆から縦帆に置き換わる、過渡期の姿なのかもしれませんね。

川舟には、切り上がり性能はさして求められないでしょうから、あるいは、橋が次第に増えてきたことにより、橋をくぐる際、主帆柱を倒した際の補助帆として使われたのかも…。積荷の高さにくらべて喫水が深いのは、石でも積んでいるのかしら?…などと、妄想はとどまるところを知りません。

利根川高瀬舟! 各地に存在した同名の川舟とはまったく異なる、大きなものでは長さ約30m、1200俵積みの船もあったといわれる、国内最大級の川舟。浅喫水と柔構造を身上とし、年々浅くなる河床に苦しめられながらも、昭和に至るまで「歩き」続けた、関東大水運時代の立役者!

まさに順風満帆、帆のはためきが聞こえてくるような、見事な帆走姿の高瀬舟に出会えた嬉しさ、ちょっと言葉ではいい尽せないものがあります。

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