福地運河の水門…4
(『福地運河の水門…3』のつづき)
●水門を間近で見ようと、草をかき分けて堤体に入ってみると、先ほど釜閘門で見たものと同様の、管理符号らしきプレートが貼られているのを発見。「河追―水1」とありますね。
方々探し回ってはみたものの、これ以外に銘板らしいものは見つかりませんでした。まだプレートが新しいことから、水門として機能はしなくとも、員数のうちには入っているのかもしれません。
●またも失礼させていただいて、赤錆びた管理橋の上へ…。
命を預ける(笑)には、ちょっとどころか、だいぶ心許ないものがありましたが、欲望には勝てずに、恐る恐る足を踏み出しました。片足で踏みしだいて、鉄板の朽ち具合と相談しながら、じりじり前進。
いくら福地運河に惹かれてここまで来たとは言え、「落水し水路の露と消えり」なんて最後は、ぞっとしませんからね。
●何分、いつ橋が落ちるかと、ビクビクしながらカメラをかまえているので、ろくな写真になりませんでしたが、なんとか扉体のディテールがわかるものを一枚。
右奥にプーリーが見えるように、扉体下端に結ばれたワイヤーで開閉する、単純明快なメカニズム。雑草に隠れてよく見えませんが、写真左に手動ウインチがありました。
面白かったのは、閘門の注排水設備のように、扉体に二つのスルースバルブ―小型スライドゲートと言ったほうがいいでしょうか―が設けられていたこと。
妄想するに、ゲートの構造上、半開きにするのが難しいため、このスライドゲートを開けて運河内外の水位を均衡させてから、扉体を開放したのではないかと…。

●管理橋の上から眺めた、福地運河の東側。雨脚も弱まり、雲もわずかながら薄くなって、静かな水面に光りが宿ってきました。
北上川の堤防に沿って開かれた、紅葉を望む清々しい水路。国内でも数少ない、山並みを間近に感じられる内陸運河…。水門ももちろん楽しめましたが、この水路風景を見たくて来たのですから、まったく感無量でありました。
ちなみに、土木図書館のデジタルアーカイブスには、福地運河竣工時の写真が収蔵されています。「162.北上川改修工事 :新堤上より二俣水路を上流に向かって望む」北上川堤防上から、西を望んで撮ったもののようですね。
先に触れた大内健二氏の記事によると、福地運河が完成したのは、北上川新河道の竣工と時を同じくした昭和9年、水路幅7m、水深1.5mの基本断面で建設されたとのことです。
●水門を裏側から見て。水平に倒された扉体上端に、スライドゲート操作のハンドルが二つ見えています。
雨の中の閘門・水門めぐりも、このフラップゲートにたどり着いたところで時間切れ。福地運河と北上川の接点にある、有名な福地水門も見たかったのですが、またの機会とすることにして、残念ながら撤退です。
この他、塩竃から松島に至るまでのお話もあるのですが、こちらもまたの機会とさせていただきます。
(21年12月3日撮影)
【12月3日の項の参考文献】
鋼製ゲート百選(水門の風土工学研究委員会・『鋼製ゲート百選』選定委員会)技報堂出版
水門工学(水工環境防災技術研究会・『水門工学』編纂委員会) 技報堂出版
月刊「世界の艦船」第690集(2008年5月号)海人社
(この項おわり)

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方々探し回ってはみたものの、これ以外に銘板らしいものは見つかりませんでした。まだプレートが新しいことから、水門として機能はしなくとも、員数のうちには入っているのかもしれません。

命を預ける(笑)には、ちょっとどころか、だいぶ心許ないものがありましたが、欲望には勝てずに、恐る恐る足を踏み出しました。片足で踏みしだいて、鉄板の朽ち具合と相談しながら、じりじり前進。
いくら福地運河に惹かれてここまで来たとは言え、「落水し水路の露と消えり」なんて最後は、ぞっとしませんからね。

右奥にプーリーが見えるように、扉体下端に結ばれたワイヤーで開閉する、単純明快なメカニズム。雑草に隠れてよく見えませんが、写真左に手動ウインチがありました。
面白かったのは、閘門の注排水設備のように、扉体に二つのスルースバルブ―小型スライドゲートと言ったほうがいいでしょうか―が設けられていたこと。
妄想するに、ゲートの構造上、半開きにするのが難しいため、このスライドゲートを開けて運河内外の水位を均衡させてから、扉体を開放したのではないかと…。

●管理橋の上から眺めた、福地運河の東側。雨脚も弱まり、雲もわずかながら薄くなって、静かな水面に光りが宿ってきました。
北上川の堤防に沿って開かれた、紅葉を望む清々しい水路。国内でも数少ない、山並みを間近に感じられる内陸運河…。水門ももちろん楽しめましたが、この水路風景を見たくて来たのですから、まったく感無量でありました。
ちなみに、土木図書館のデジタルアーカイブスには、福地運河竣工時の写真が収蔵されています。「162.北上川改修工事 :新堤上より二俣水路を上流に向かって望む」北上川堤防上から、西を望んで撮ったもののようですね。
先に触れた大内健二氏の記事によると、福地運河が完成したのは、北上川新河道の竣工と時を同じくした昭和9年、水路幅7m、水深1.5mの基本断面で建設されたとのことです。

雨の中の閘門・水門めぐりも、このフラップゲートにたどり着いたところで時間切れ。福地運河と北上川の接点にある、有名な福地水門も見たかったのですが、またの機会とすることにして、残念ながら撤退です。
この他、塩竃から松島に至るまでのお話もあるのですが、こちらもまたの機会とさせていただきます。
(21年12月3日撮影)
【12月3日の項の参考文献】



(この項おわり)

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タグ : 福地運河追波川上端ヒンジフラップゲート
福地運河の水門…3
(『福地運河の水門…2』のつづき)
●雨がやや小降りになり、空も少し明るくなってきたのに勢いを得て、福地運河をさらに奥へ。いまひとつの水門を目指します。
お目当ての水門の近くには、追波川排水機場がありました。このあたりが、かつての追波川の河道を堤防で締め切った地点。排水機場の向こうは北上川。先にも触れたように、追波川の旧河道を拡幅利用した、いわば放水路です。
ここから東が、追波川分断後に開鑿された水路となるのですね。楽しみです。
●排水機場のかたわらには、ご覧のようにいかにも仮設橋然とした雰囲気の、赤錆びた鋼桁橋がありました。
橋脚や桁はI形鋼、高欄もガードレールと、既製品を組み立てた橋だけにあまり興味が湧かず、銘板も探さずに帰ってきてしまいましたが、この橋が今回目指した水門の、絶好のビューポイントだっただけに、意識は全部そちらに持って行かれてしまっていたのでしょう。
【撮影地点のMapion地図】

●橋の上から東を望むと…うほほ!
雲に煙る紅葉した山々と、はるかに続く運河をバックに、素晴らしい水門風景が広がっていました。
しかも、初めて生で見る上端ヒンジフラップゲート(で、いんですよね?)です。堤体には潅木が生い茂り、廃水門の空気が濃厚な印象ながら、悪天候をついて来てよかったと、心洗われる思いのした眺めでした。
●上端ヒンジフラップゲートとは、あおり戸のように、上端に備えられた軸を中心として扉体を開閉させる方式で、招き扉とも呼ばれるそうです。巻上機室など上部構造を持たず、外観がすっきりしている点はマイタゲートと同様ですね。
地図でおわかりのように、ここは排水機場の西に合流地点があるので、運河東側への逆流防止のために、この水門が造られたのでしょう。
●この水門、残念ながら名前はわかりません。梨ノ木水門と同じく、佐藤淳一氏のFloodgates List 11にも収録されているのですが、やはり「名称不明水門」として扱われています。
ここで気になったのが、堤体の向かって右側にある、銘板がはがれて落っこちたのでは、と思わせる四角い凹み。水面をのぞいてみても、それらしきものは見られなかったので、人の手ではがされた跡なのかもしれません。すでに用途廃止され、放置されて久しいのでしょうね。
(21年12月3日撮影)
(『福地運河の水門…4』につづく)

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お目当ての水門の近くには、追波川排水機場がありました。このあたりが、かつての追波川の河道を堤防で締め切った地点。排水機場の向こうは北上川。先にも触れたように、追波川の旧河道を拡幅利用した、いわば放水路です。
ここから東が、追波川分断後に開鑿された水路となるのですね。楽しみです。

橋脚や桁はI形鋼、高欄もガードレールと、既製品を組み立てた橋だけにあまり興味が湧かず、銘板も探さずに帰ってきてしまいましたが、この橋が今回目指した水門の、絶好のビューポイントだっただけに、意識は全部そちらに持って行かれてしまっていたのでしょう。
【撮影地点のMapion地図】

●橋の上から東を望むと…うほほ!
雲に煙る紅葉した山々と、はるかに続く運河をバックに、素晴らしい水門風景が広がっていました。
しかも、初めて生で見る上端ヒンジフラップゲート(で、いんですよね?)です。堤体には潅木が生い茂り、廃水門の空気が濃厚な印象ながら、悪天候をついて来てよかったと、心洗われる思いのした眺めでした。

地図でおわかりのように、ここは排水機場の西に合流地点があるので、運河東側への逆流防止のために、この水門が造られたのでしょう。

ここで気になったのが、堤体の向かって右側にある、銘板がはがれて落っこちたのでは、と思わせる四角い凹み。水面をのぞいてみても、それらしきものは見られなかったので、人の手ではがされた跡なのかもしれません。すでに用途廃止され、放置されて久しいのでしょうね。
(21年12月3日撮影)
(『福地運河の水門…4』につづく)

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タグ : 福地運河追波川上端ヒンジフラップゲート
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