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三十石舟の宿・月見館…2

(『三十石舟の宿・月見館…1』のつづき)

15116.jpg玄関前右手には、「伏見大阪三十石早船出所」という立札と、「淀川 三十石船由来」「淀川三十石船 舟唄」と題された石碑が建てられ、川船とのゆかりの深さが感じられます。あっ、この舟唄、さっき淀川の水上バスで聴いた歌だ…。

そういえば、「舵」誌旧号で読んだ、時おり淀川下流まで航行していたという、三十石舟を模した屋形船は、今でも営業されているのでしょうか、宇治川の水量の少なさを目にした後だったので、ちょっと心配になりました。

この後、女将さんにうかがったところによると、最近は琵琶湖の水位維持のためか、宇治川上流にある天ヶ瀬ダムの放水量が少なくなり、ために宇治川の水位も下がって、とても舟遊びを提供できる状況では、なくなってしまったとのこと。

ああ、やはり…。宇治川を悠然と下る、屋形船の姿を目にしたいと思っていただけに、実に残念。「水があったころは、風情のあるいい川だったんですけれどね、今はこんな谷間みたいになってしまって…」と女将さん。
(女将さんのブログ『おかみ's EYE』の『月見館の浜』には、降雨時に放水量が増え、一時的ではありますが、水をなみなみとたたえた、宇治川の景色が掲載されています。)

15117.jpg玄関で案内を請うと、通されたのはお目当ての資料室。女将さん手作りのシフォンケーキと、美味しいアイスコーヒーをいただきながら、ガラスケースに展示された写真や、史料の数々を拝見。

舟運時代の写真は、他では見られないものが多く、川蒸気の、ダイナミックに水をかく外輪のアップ、川瀬の揚水車のかたわらを航行する川蒸気など、その筋の方なら、興奮することうけあいのスナップばかり。さすが川船ゆかりの老舗! 

そんな中で、女将さんがコレクションしたという、極彩色の泥人形…伏見人形の一群が目に留まりました。
そのうちの二つは、明らかに外輪の川蒸気。 これは珍しい、ゼヒ手に入れたい! 今も作っているのかしら?

女将さんにうかがってみると、ご親切にも、すぐに製造元の連絡先を調べてくれました。さっそく連絡してみると、人形を焼くのは年1回で、今は在庫していないが、木型はあるので来年改めて注文してほしい、とのこと。うひょひょ、嬉しい! よ~し、来年早々にも注文してしまおう…。

15118.jpg食事の準備ができたとのことで、案内されたのは2階の一室。宇治川の川景色が望める、しっとりとした和室です。う~ん、こちらに泊まればよかった、と今さらながら後悔。

川面を見下ろすと、堤防の法面の繁みを通して、月見館所有の屋形船が繋留されているのが見えました。今ではほとんど、使われることもないのでしょうか…。治水は大切ですが、船の走れない川は、やはり寂しいものが…複雑な気持ちになりました。

15120.jpg歴史を感じさせる静かな部屋で、美味しい料理をゆっくりいただき、大いに満足。料理を載せた敷き紙の絵柄があまりにも素敵だったので、置いてゆくのが惜しくなり、連れて帰ってきました。ゴメンナサイ。

ご覧のとおり、月見館前の宇治川に棹差す、屋形船を描いたもの。残念ながら、偲ぶ昔の光景となってしまいましたが、いつの日か、船影が復活することを祈りたいものです。

15119.jpg帰りがけ、お帳場のカウンターで「三十石舟」と銘打った、舟の形のお菓子を発見。女将さんが差し出す試食品をつまんでみると、生姜入りの甘いお煎餅で、素朴な味わいが気に入り、お土産に購入。

美味しいので食べ過ぎると、生姜入りとあって体がポカポカあたたまり、これからの季節、寒がりの私には、うってつけのおやつになりそうです。なくなったら送ってもらおう…。


(21年9月11日撮影)

(『蹴上インクライン…1』につづく)

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タグ : 月見館三十石舟宇治川

三十石舟の宿・月見館…1

(『平戸樋門』のつづき)

15111.jpg平戸樋門から、宇治川の堤防道をてくてく上流側に歩き、観月橋をくぐってふたたび堤防の上に出ると…、目指す割烹旅館、月見館の建物が見えてきました。

水運趣味的なモノを訪ね歩く中で、なにゆえ旅館に立ち寄るのかと申しますと…、まあ、動機は例によってよこしまです。


15112.jpg以前、旧ブログでも触れましたが、あらためて説明すると…。

月刊「舵」の旧号、86年7月号(右写真)の特集記事「淀川をゆく」を読んでいたら、月見館所有の屋形船が年数回、淀川下流まで下ってくること、月見館のオーナーさんに水先案内を務めてもらい、遡上限界点に挑戦することなどが書かれていました。

遡航も困難な上流部で、舟遊びをさせる旅館があることに驚き、早速月見館のサイトを拝見すると、淀川舟運の史料を展示した資料室があり、三十石舟の実物も展示されている! これはぜひ訪ねてみたいものだと、機会を狙っていたのです。

15113.jpgそしてこの度の機会到来。見たいものが多いので、行程のどこに組み入れるか、ずいぶん悩みました。泊まってもよかったのですが、都合で宿は別にとることになったので、夕食のみのコースを予約。

前庭の玉砂利はきれいに掃き清められ、これもよく手入れされた植え込みの木々に、見え隠れする月見館の建物は、羽目板の木目も美しく、風格満点。
入口の左側には…。
撮影地点のMapion地図

15114.jpg
実物の和舟が! 
長さ10数mあまり、幅は1.5mほどあるでしょうか、大きさから見て、三十石舟ではありませんでしたが、棚板(側板)二階造りの扁平な船型からは、本物の川舟の匂いが感じられます。

台座の横木が、なぜか棚板を貫通する形になっていたのが残念ではありましたが、復元などではない、実際に使われていたもの特有の迫力がありました。小屋がけも立派で、月見館のシンボルとして、大切にされていることがうかがえますね。

15115.jpg船尾、舵の座周りのディテール。川船独特の、深さより幅が長い舵の羽板、舵身木(舵軸)がはまる床梁の手前側には、艪の支点となるログイが突き出ているのも見られます。

舟の大きさにくらべて、舵の羽板が小さすぎ、また舵柄も短いように思えましたが、久しぶりにみる純和船、しかも川舟の姿を目にできたのが嬉しく、月見館の心意気が伝わってくるようでした。


(21年9月11日撮影)

(『三十石舟の宿・月見館…2』につづく)

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タグ : 月見館三十石舟宇治川